テレビドラマの題材ならば、やはり医療ものと刑事ものが二大巨頭だろう。ロシアの文豪レフ・トルストイが「幸せは似たり寄ったりだが、不幸は人それぞれである」と喝破したように、話が作りやすいからだ。弁護士や検事、教師を主人公にした作品が量産されているのも、同様の理由からだと思われる。
ふた昔ほど前に地上波で放映された『振り返れば奴がいる』という医療ドラマがある。舞台はある都市病院。物語は熱血漢の努力家と、クールな天才肌という対照的な医師の対立を中心として物語は進んでいくが、これは『白い巨塔』から続く医療ドラマの王道である。当然ながら私はどちらの作品もリアルタイムで視聴していないが、学生時代の春休みか夏休みだったかの昼間の再放送で、何度か視聴した記憶がある。今ではベテランとして扱われる俳優や女優による熱のこもった演技は、そのストーリーと共に奇妙なまでの強い印象を私の記憶に刻んでいた。
いつの事であったか。私は「ラビット・ハウス」で青山女史とコーヒーを楽しみながら、このドラマに関する意見を交わした。
結論から言えば、この作品の主人公である2人の医師は共に破滅して物語は終わる。いわゆるバットエンドなのだが、考えても見てほしい。片方が破滅して終わるのなら『白い巨塔』と何ら変わりはないし、人生観も価値観も異なる2人がご都合主義的に和解して、それぞれの生き方を尊重しあってハッピーエンドでは、面白くともなんともない。
王道ものとはいえ結末までありきたりか焼き直しなものでは、視聴者の不評どころか、記憶にすら残らなかっただろう。後味の悪いバットエンドだからこそ、この作品は、その印象的なタイトルとともに視聴者の記憶に残ったのだ。
「振り返れば青山がいる」と評してもいいほどに神出鬼没な青山女史は、相槌を打ちながら私の話を聞いていたが、それが終わると「そうですねぇ」と、首をこてんと傾けた。
『画面の向こうはフィクションとわかっているからこそ、視聴者である私達も、登場人物の不幸を無責任に楽しめるのではないでしょうか。私としてはハッピーエンドのほうが好きですね』
『世の中に不幸な話はいくらでも転がっているから、創作物の中ぐらい夢を見たいというわけですか?』
『そうですねぇ』
とはいえ基本的には内向的な性格であるため、青山女史は自分と異なる意見や見解であっても、それを正面から否定しない。相手の主張に理解を示しながら、持論をやんわりと主張する。もっとも私がそれに気が付いたのは、かなり後になってからのことだったのだが。
『私はどちらかといえば、物語の登場人物に感情移入をしながら見たり読んだりすることが多いんです。彼ら、あるいは彼女たちが作品の中で悲しくなれば、私も悲しくなってしまいますし、彼らが傷つけば私も傷ついた気持ちになってしまう。だからハッピーエンドが好きなのかもしれませんね』
自分の作品において「神」となる資格を持つのが、創作者である。その手にかかれば物語の世界観はおろか、時間軸に舞台背景、登場人物の性別から出生に性格、もっとも極端なものでは、その世界の運命まで、何物にも阻害されずに自分の一存で決められるからだ。
聞き方によっては青山女史のそれは、自分の志向を物語よりも優先させるという「神の傲慢」であると非難されたかもしれない。しかし私は彼女と直接会話を交わした経験から、それは彼女の自制された感受性の豊かさの証左であり、同時に創作者としての責任感と誠実性であると、少なくとも私は解釈していた。
「それが先輩なんですよ」
私の評価に対して、青山女史の文芸部の後輩である
*
いったいどうして、こんな奇妙な展開になってしまったのか。こちらを恨めしそうに睨む真手君の仏頂面に辟易としながら、私は『
公衆の面前で塩を投げつけられた私は、塩を投げつけた張本人である塩かけ婆-もとい
「何やってんだい、この馬鹿!」
「いや、その……すいません」
口論でヒートアップして真手君の体調不良を忘れていた私としては、ぐうの音も出ない。宇治松夫人は口汚く私達を叱責しながら「店の中で休んでいきな!」というと、真手君の腕をとり、半ば強引に店内へと連れ込んだ。私もそれについていこうとしたが「砂糖の納品は?」と、冷たい視線と共に眼前でドアを閉められた。
この糞婆と怒鳴り散らしたいところではあるが、まったくの正論であるだけに余計に腹が立つ。私は立っているだけで汗が噴き出す炎天下の下、砂糖の納品作業を終わらせた。そして納品伝票にサインをもらうと、真手君を宇治松夫人に任せて帰ろうとした。
「じゃあ確かに納品しましたので」
「……まさか帰るんじゃないだろうね?」
「え?いや、まぁ、納品も終わりましたし」
次の瞬間、宇治松夫人は目にも止まらぬ速さで羊羹を切っていた包丁を私に向けて宣言した。
「ジジイへの連絡はしておいたから、あの娘が落ち着くまで一緒にいてやんな!見捨てて帰ったら承知しないよ!」
実に男前な態度ではあったが、婆のツンデレなんぞ誰得なのか。
私は不承不承、宇治松夫人の提案を受け入れ、この失礼な女子高生と同席する事になった。当然ながら夫人との会話は、この胸の貧しい女学生にすべて見られており、彼女は道端の耳長の糞を見るが如き視線を私に向けているばかりである。
真手君と向かい合って座ったはいいものの、先ほどまでの口論の影響もあり、実にギスギスとした雰囲気が漂っていた。初対面の女子高生と盛り上がるようなウイットに富んだ話題や甲斐性が私にあるわけもなく、どうしたものかと私は途方に暮れた。
見知らぬ他人同士を結びつけるのは、共通の話題か知人の存在だ。私と真手君の場合、それは青山女史の存在であった。検察官のように青山先輩との関係を問いたす真手君に対して、私はこれまでの経緯を率直に話した。そして「青山先輩大好き娘」である真手君から請われるがままに、私の青山女史に対する印象や「ラビット・ハウス」における出来事などをつらつらと語った。
神様、仏様、青山様である。
当時の私の認識は、青山翠という女学生は、神出鬼没な女神であることを差し引いても、実に不思議な人であるというものであった。お嬢様学校の生徒らしく、ちょっとした立ち居振る舞いや言葉遣いは実に柔和そのものであり、知性はあっても鋭さを感じさせない。そんな普段の彼女の在り様が「自分の作品の事になると、頑固な完璧主義者に変貌する」という
ある時、青山女史は助詞の使い方がどうしても気に入らなく、カウンター席で2時間近くも悩み続けたという。頑固という言葉がこれほど似つかわしくない人もいないが、同じく頑固な職人肌のマスターの評価だけに、一概に見当違いであるとも思えなかった。
真手君は、私が青山女史を「地上に降り立った女神」と表現した点については「気持ち悪いです」と一刀両断に切り捨てたものの、それ以外に関しては「わかります」と何度も頷いた。
「青山先輩の作品の魅力は、そこにあるんですよ。どんな些細な点や疑問もおろそかにしないんです。森羅万象のあらゆることを、青山翠の世界に取り込んで咀嚼し、新たな糸として紡ぎ出した言葉を縦糸に、青山翠の世界観を横糸として、新たな物語という布を織ってしまうんですよ」
私も真手君に青山女史との出会いについて尋ねた。やはり青山女史と同じ有名なお嬢様学校の1年生である真手君は、入部した文芸部で活動していた青山女史と出会い、彼女の作品の世界観に魅せられたという。
「キーボードでの執筆を否定するわけではありませんが、辞典を片手に原稿用紙と真っ向から向き合う。本気モードで執筆に取り組む先輩には、居合いの立会いのような真剣勝負の気魄があります。でも、その本気モードになるまでが大変なんですけどね」
これらは真手君が青山女史について語ったほんの一部に過ぎない。真手君は実に生き生きとした表情で青山作品の魅力を事細かに語ってくれたのだが、ここでは割愛する。
真手君曰く、青山女史は「自由人」であり放浪癖があるという。興味の範囲が広いことは作品の世界観の深化につながっているというが、それゆえに執筆活動に集中する事は珍しい。「創作活動のネタ探し」をお題目に、学校中のクラブ活動を荒らしまわったかとおもえば、校外でお店巡りを楽しむなど、とかく神出鬼没で自由奔放。
そして文芸誌の締め切りが迫る度に、放浪中の青山女史を部室へと連れ戻すのが「青山係」である彼女の役割なのだそうだ。
「随分と惚れ込んでいるんだな」
「当然です!私は青山先輩のファン第1号ですからね!」
むっふーと得意げに鼻の穴を膨らませる真手君は、どうにも言動が子供っぽい。小型の愛玩犬のような印象を受ける。
それにしてもこの娘、青山女史のことが好き過ぎやしないか?私が真手君のフラットな胸を見なら、そんなことを考えていると、青山大好きっ娘は、またもや腕と手で胸元を隠しながら言った。
「何です?私に興味があるんですか?すいません、私は今のところ青山先輩にしか興味がありませんので、イケメンに生まれ変わってから出直してきてください。中身がそれじゃイケメンになっても生理的に無理ですけど」
「何を言うか、このフラット娘が。俺はこう見えても地元では性格だけはイケメンだと評判だったんだぞ」
「女性の外見をからかう人の、一体どこが性格イケメンなんですか?頭おかしいんじゃないですか?」
「お前、自分のこれまでの言動を、一度でもいいから振り返ってみたら?」
「それにしても貴方のような性格破綻者にも優しく接してあげるだなんて、青山先輩はやっぱり天使ですね」
「さっき青山さんを女神と賞賛した俺のことを、気持ち悪いって言ってなかった?」
「……あんた達、いい加減にしないと店から放り出すよ」
「「すいませんでした」」
宇治松夫人の一言に、私と真手君は即座に頭を下げて恭順の意向を示した。
*
どうにも宇治松夫人は、せっかく似た年恰好の男と女を同じテーブルに座らせたというのに、色気のかけらもない話を続けていたのが癪に障ったらしい。一定以上の年齢を越えたご老人方というものは、どうして若者同士の好いた惚れたの話に、必要以上に首を突っ込みたがるのであろうか。一方的に期待されても、ほとんど初対面同士では無理がある。
といっても、女主人に逆らってもろくなことにはならない事は経験済みである。私は冷たい日本茶を飲み干すと、女主人に丁寧に礼をする真手君と一緒に甘兎庵を出た。
冷房の効いた店内から表に出た途端、まとわりつくようなジトッとした湿気と熱気が、私の体を包み込む。眉を寄せて忌々し気に太陽を見つめて帽子をかぶると、私は台車を脇に抱えた。そしてあとは分かれるだけというタイミングにも関わらず、なぜか真手君は私のほうをじっと見つめていた。
「……何か俺の顔についてる?」
「勘違いしないでください。「ラビット・ハウス」という喫茶店から配達に出る前、店内で青山先輩を見かけたと言っていたじゃありませんか」
真手君は赤いベルトの腕時計で時刻を確認しながら言った。
「もうこの時間だと、他の店に出られているかもしれませんが、念のために確認に行こうと思います」
「そうか。じゃあな」
「貴方、人の話を聞いていましたか?」
真手君はじとっとした視線をよこし、身長差のある私を呆れた様に見上げた。
「私はその喫茶店を知らないと、先ほどお伝えしましたよね。だとすれば場所を知らないのは当然じゃありませんか?やっぱり頭が残念な人なんですね」
初対面のはずなのに、よくもまぁポンポンと悪口が出てくる娘である。
「それじゃ、ついて来たらいいよ」
「何ですか?それ新手のナンパですか?」
反論するのも馬鹿らしく、私はさっさと歩き始めた。
*
欧州には欧州の建築があるように、日本には日本の建築がある。フランスのある都市をモデルとして都市計画と建築が進められたという「木組みの家と石畳の街」は、明らかに日本の酷暑に対応したものではない。もっともそれは、伝統的な日本家屋であっても似たようなものだろう。打ち水をした先から水蒸気となって蒸発してしまうようでは、大した差はない。
上からの日差しを日陰で回避したとしても、石畳で舗装された地面から照り返す熱気は避けられない。じとっとした熱気に辟易としつつ、私は真手君と共にラビット・ハウスへの道程を歩いていた。
「……暑いですね」
「……夏だからな」
何を当たり前のことを言っているのだ、この女は。考えないようにしていたのに、余計に暑くなるではないか。とはいえ先ほどまで体調が悪かったこともあり、私はタオルで額を拭きながら、横目で真手君の様子を確認する。
真手君は甘兎庵での休養ですっかり元気を取り戻したらしく、暑さで顔をしかめてはいたものの、日陰を選んで歩く足取りはしっかりとしていた。袖タイプのブレザーの学生服に汗をかいており、なんとも色っぽ……くともなんともない。
本当に残念な奴である。私は心の中で合唱をした。
「……あ、ジェラート屋がありますよ」
「……そうか」
確かに私たちの進行方向から向かって右側の横手の広場には、野外のジェラート屋が暑さに耐えながら、今か今かとお客を待っている。車についた冷凍機の換気扇からは、台風のような轟音が鳴り響いていた。
この場において真手君が私に何を求めているのかを私は理解したが、あえて物分りの悪い振りをしてやり過ごそうとした。すると真手君の視線が再び険しさを増す。
「……ここは性格イケメンという、男の甲斐性を見せる所じゃないですか?」
「それにふさわしい相手ならな……痛い痛い、脛をけるな!脛を!!」
的確に急所を狙うとは、末恐ろしい女だ。
私が足をさすりながら「ラビット・ハウス」までは間もなくであることを伝えると、それまでぴーちくぱーちくやかましかった真手君が急に黙り込んだ。また体調が悪くなったのかと様子を伺うが、どうもそうではないらしい。俯いたまま、私の横を歩く足取りに変化はないが、その歩幅は確実に小さくなっていた。まるで目的地に到着するのを遅らせたいかのように。
先ほどまでの遠慮のない会話が突然途切れたことに、基本的に沈黙に耐えられない私は、妙に居心地が悪くなった。人のプライバシーには深入りするのは私の流儀に反するが、私は止む無く真手君にその理由を尋ねた。
真手君は最初こそは「なんで貴方にそんなこといわなきゃいけないんですか」と減らず口を叩いていたが、私はそれをどうにかこうにか宥めすかす。そして、どうにもまとまりのない話ではあったが、それを真手君から聞き出すことに成功した。
「青山先輩が部室からいなくなるのは、私のせいなんじゃないかと。私があんまり口煩くいうから、先輩が書くのを嫌になってたら……」
文芸部に入部するだけあり、真手君自身も創作活動の経験はあるそうだ。書くことの難しさというものは、書いたものにしかわからない。自分の中の知識や経験、想像を搾り出して原稿用紙やキーボードにぶつける。その苦しさは経験したものでないとわからないと真手君は語った。
青山先輩の作品が、真手君は好きだという。なのに青山先輩が書きたくないというのに、無理やり書かせようという自分は、本当に先輩のためになっているのか?締め切りを理由に、自分が読みたい作品を青山先輩に強要しているのではないか?「優しい青山先輩」は、直接それが言えないから、放浪という形で姿をくらませているのではないか……とまぁ、大体このような趣旨の話であった。
その話し方や態度からすると、真手君本人は真剣に悩んでいるようだ。
だからこそ私は、意図的に軽い口調で応じた。
「青春してるねぇ」
私の言葉に、真手君はきっと鋭く睨み返す。
「茶化さないでください!他人事だと思って!!」
「他人事だよ。俺と君は他人だし、青山さんと君も究極的には他人だ。俺は君の代わりに問題の当事者にはなれないし、君も青山さんの代わりにはなれない」
問題を抱えると一人で悶々と悩み続け、周囲に相談もできずに視野と思考が狭くなった結果、自分の抱える問題こそが世界のすべてだと勘違いするのは、青年期によくある病気である。感受性の強い文学少女である真手君には、その傾向が人よりも強かったのだろう。
お前はどうなのだと御叱りを受けそうだが、私もこれに関しては身に覚えがあった。ならば視線を変えてやるか高くしてやるかして、蒙を啓いてやるのが先達の役割というもの。私は一端の人生の先輩気取りで、真手君の蒙を指摘した。
「他人同士だからわからない。だからこそ、わからないことは聞けばいいんだ」
「……聞いてもいいんでしょうか」
「いいんだよ。だってそれが学生時代の特権なんだからね。現に俺と君は、性別はおろか、考え方も育ってきた環境も違う。でも今は違うだろ?言葉を交わしたからこそ、相手が嫌な奴だと認識する事が出来た」
これは大きな進歩であり相互理解だと、私が厳かに言うと、真手君はようやくクスリと笑った。
「確かにそうですね。私も直接こうやって話すまでは、貴方がそんなに失礼で嫌な男だとは思いもしませんでした」
「その調子だ。しかし君も言うじゃないか」
私がことさら憎憎しげに答えると、日陰の中に立つ真手君は、太陽のようにニカッと笑った。
*
「ラビット・ハウス」に到着した真手君は、外から店内を覗き込んでお目当ての先輩の姿を探す。やはりというべきか、青山女史の姿はどこにもなかった。
「どこにもいませんね。ここで青山先輩を見かけたと、あれだけ自信満々におっしゃっていませんでしたっけ?本当に時間を無駄にしましたよ」
「だから念押ししただろう。俺がここを出た時にはいたと」
「はいはい、そうですねー、言い訳するなんて、実に男らしいですねー」
ふふーんと鬼の首を取ったように得意げな表情をする真手君。先ほどまでの気鬱はどこかに吹き飛んでしまったようだ。さっぱりとした性格をしているようで、意外と根に持つタイプなのかもしれない。
「ところで俺も言いたいことがある。『あなた~、あなた~』って、俺を呼び捨てにするな。俺はお前の亭主になった覚えはない」
「その裏声、ひょっとして私の真似ですか?気持ち悪いのでやめてください」
「急に真顔になるんじゃねぇよ!」
そういえばこの時、真手君とああでもないこうでもないとやり取りする中で、私はいつのまにか会話の中での一人称が、僕から俺になっていた。真手君をからかう時に「僕」では様にならないからかもしれない。
それにしても我ながらどうして、こう、しんみりとした空気のまま別れることが出来ないのだろうか。おそらくその元凶であろう真手君は「もう会うこともないでしょうけれども」と、またもや余計な一言を口にしてから、綺麗なお辞儀をして見せた。
「私も青山先輩と、ちゃんと話してみようと思います。今日はありがとうございました。先輩」
言いたいことを言い終えたのか、真手君は踵を返して去って行った。
……ちくしょう、あんな生意気な性格をしているのに、あの笑顔はずるいじゃないか。
私は顔をタオルでぐしゃぐしゃと拭いてから、店内に入った。
「ただ今、戻りました」
「おかえり」
その時のマスターの「わかっているよ」とでも言わんばかりの嫌らしい笑みは、無愛想ながらもおせっかいを焼こうとした宇治松夫人のそれと大変よく似ていたことを、付け加えておく。
宇治松婆「なんだい、あのじれったいのは!」
香風老人「そこのところ詳しく」