その癖にあまり進んでませんがお許しを…
「四葉花楓の九校戦出場を禁じるですって!?」
ブランシュを潰したことで第1高校が襲撃に合うことも無く、司一によって催眠にかけられていた一部生徒たちも達也によって普通に学校生活を送れている。
そんな中で迫りつつあるビッグイベント【九校戦】の出場選手について大会本部から御丁寧に手紙が来たのである。
「酷いと思わない?花楓ちゃんだって楽しみだったわよね?」
「いえ、戦略級魔法師ということ公表した時点で分かっていたことですから」
学生同士の真剣勝負の場である【九校戦】に国の最高戦力である戦略級魔法師が出場しては、興醒めになるだけ。私自身、学生なのだから別に問題はないとは思うのだが、その辺は大人の事情というものなのだろうと理解している。
「真由美。あまり花楓を困らせるな」
「でも、花楓ちゃんで1種目……いえ2種目は計算していたのよ??それにエンジニアの問題もあるのに………」
真由美さんの言う計算というのは恐らくその種目における優勝のこと。今年で真由美さん達3年生にとっては最後九校戦になる。それだけでも、熱が入るというものだが特に真由美さん達は今年で"九校戦3連覇"がかかっているのだから尚更だ。
(それにしてもエンジニアか…心当たりないことも無いかな)
周囲が認めるかはわからないけど、彼なら問題どころか最強の助っ人だろう。
「まぁたしかに、少しは花楓の本気が見れると思ったんだがな」
未だにぐずっている真由美と対照的に爽やかそうな摩利さんだが、明らかに落ち込んでいるのが見受けられる。
「…私は大人しく応援させていただきますね」
私は少しため息を吐き、一礼してから生徒会室を後にした。
「お姉様、流石です!」
中間試験も終わり、試験結果が発表された日の夜。
九校戦に出れないことが分かっている私にとってそれほど重要では無いのだが、わざわざ人に負けるのも癪だったため全力で挑んだ。そう全力で。
「………今回こそ、達也に勝てたと思ったのに」
「何を言ってるんだ?総合1位は花楓だろう」
若干ドヤ顔で言う達也。達也が言うように総合順位1位は私。
だが………。
達也のドヤ顔の理由は昼間に溯る。
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中間試験結果
総合
1位四葉花楓
2位司波深雪
3位北山雫
4位光井ほのか
5位十三束鋼
実技
1位四葉花楓
2位司波深雪
3位北山雫
4位森崎駿
5位光井ほのか
理論
1位司波達也
2位四葉花楓
3位司波深雪
4位吉田幹比古
5位光井ほのか
「やっぱり花楓が1番かー」
中間試験の結果というものを張り出すという文化は現代になっても変わることなく、昇降口のところに堂々と掲載されている。
特に九校戦の選手が選ばれる今回の試験に関しては皆の注目度も高く、ここまで堂々と張り出されると少し気恥しいのだが、それでも狙って取れた1位というのは気分がいいことには間違いない。
「あ、でも、理論は達也が1位なのね」
「エリカっ」
「…………」
深雪がエリカの口を塞ぐが時すでに遅し。私がスルーしていたことは、エリカの口から発せられたことで無視できなくなった。
そう今回、達也に勝ちに行った理論。かなりの自信があったにも関わらず負けたのだ。それも4点も差をつけられて。
「逆に理論以外は完敗だがな」
みんなには私を立てているように見えるように言う達也の巧妙なテクニック……感情が出にくいのをいいことに。
私には達也が内心ガッツポーズをしているのが手に取るようにわかる。
(………次こそは負けない)
みんなにこの敵意を知られる訳にはいかず、私は1人心の中で対抗心を燃やした。
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昼間にそんなことがあってから達也は気分が良い。長い間一緒にいるからこそ分かるが、口角が微妙に上がっているのだ。
「……次は負けないもん」
「ほぅ、楽しみにしてるよ」
そう言うと口角を少し上げる達也。これは今日はこの調子のままだろう。これは少し懲らしめてやらないといけない。
「はい、花楓ちゃん、達也くん」
私と達也の間に割って入り、紅茶を置いてくれたのはこの家の家事全般をしている穂波さん。
既に深雪はその手にマグカップを持っているあたり、少し前から居たのだろう。
「ありがとうございます、穂波さん」
1口紅茶を口に含む。
この紅茶を飲むとモヤモヤした気分でも、とても気分が良くなる。それぐらい、穂波さんの紅茶は美味しい。
「そーいえば、花楓ちゃんは九校戦出るの?」
穂波さんの質問だが、これは多分真夜さんの間接的な疑問だろう。恐らく家に電話したが誰もおらず、わざわざ穂波さんに電話でもしたのだろう。
「いえ、私は出ません。というか、わざわざ大会本部から出場禁止って言われちゃいましたし」
そう言った瞬間少し鳥肌が立った。原因の1人は深雪。そしてもう1人は、未だに繋がっている穂波さんの電話の先にいる真夜さん。
「戦略級魔法師が高校生の祭典に出るのは場違いもいいところですからね。仕方ないですよ。まぁその代わりと言ってはなんですけど、達也をエンジニアとして推薦するつもりですけど」
「……?」
「それは本当ですか!?お姉様!」
私の最後の一言に達也は口を半開きにして止まり、深雪は一瞬にして元気になり、恐らく悪寒が納まったということは電話先の真夜さんも笑顔になっている。
「うん、真由美さんがエンジニアで困ってるって言ってたしね」
先程まで気分が良さそうだった達也もこれは予想できなかったのか、未だに驚いたままである。
私は紅茶の最後の1口を飲み干し、立ち上がった。
「それじゃあ、そろそろ私は帰るね。また明日、達也、深雪」
そう言い私は自分の家へと戻った。
家に帰った私を待っていたのは何故か残念そうな水波ちゃんと、口を膨らませた真夜さんだった。
「あれ、真夜さん?なんでここに…」
「試験で1位とったって聞いたから来たのに、家に来てみれば花楓さん達也さん達の家に行ってるって言うし、私が行く訳にも行かないから水波ちゃんと留守番しながら電話で聞いてれば「九校戦には出れない」って言うじゃない?でも、安心して大会本部には私から言っておくから」
この人ほんとに40代なのだろうか。そんな疑問が湧いてしまった私を誰が責められるだろうか。いや誰も責められないだろう。
「お願い致します、真夜様」
「えぇ、任せなさい水波ちゃん」
何故か意気投合している2人だが、仲がいいのならそれはそれでいいと思えた。決して当主と従者の関係には見えないが。
「…あまり無茶しないでくださいね」
私は意気投合している2人を置いて自室へと戻り、そのまま眠りにつくことにした。
翌日起きた時には真夜さんの姿はなく、水波ちゃん曰く私が部屋に戻ったあとに帰ったとのことだった。
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