前話で九校戦に入ると言ったのですが、まだ入らず申し訳ございません。
それでは、どうぞ!
「お待ちしておりました、四葉様」
私が到着するなり、見知った顔の人物が私を招き入れた。
本来ならば、今頃九校戦の発足式に参加し達也たち2人の晴れ姿を見ることが叶うはずだった。
それが何を間違えたか案内された部屋に到着した私の目の前には、偉そうな態度のおじさんが並んでいる。
「お待ちしてました、四葉花楓殿」
真ん中の席に腰掛けていた偉そうなおじさんがこちらを確認するなり、重そうな腰を上げて私へと挨拶をした。
普段真夜さんにすら、対等に話そうとする彼が珍しく下手に出ているのは一重に私の機嫌の悪さからだろうか。
私は会釈をし、案内された席へと着いた。
「それでは、さっそくですが今回の議題に移らせてもらいます」
いつも以上に下手から来る彼らに違和感を覚えるが、それもそうだろう。私は四葉の所属であり決して彼ら直属の戦略級魔法師では無い。
国家直属の戦略級魔法師は澪さんだけであり、私は達也が軍属である代わりにあくまで四葉所属の戦略級魔法師であるという立場である。
もちろん、この国に反旗を翻すなんてことは考えないがある意味自由な立場である私に対して強くは出られないのだろう。
十師族である真夜さんには対等でいようとするあたりは、彼らにも意地はあるのだろうが。
「えぇ、できる限り手短にお願いします」
今日は発足式には出られないが、その後には深雪たちの九校戦選出を祝うパーティーがある。
それに遅れたとなれば、私の機嫌は最悪になる自信がある。
「え、えぇ。それではまず、我が国としては対外的に【戦略級魔法師氷月真宵】の存在を、四葉花楓殿であると発表したのですが、未だに各国としてはその存在を認めていない国も多いのです」
「まぁ妥当な意見ですね」
今の今まで存在以外の全てが隠されて来た戦略級魔法師の片割れが、突然名乗り出たのだから簡単に認められるとも思ってはいない。
まして、氷月真宵という魔法師が本当に存在するということは他国からすれば日本は大きな脅威となりかねない。
「そこで、我々としては一刻も早く氷月真宵もとい、四葉花楓殿の戦略級魔法師としての力を他国に示す必要があると考えております」
(……結局は対外的に強く出たいと)
魔法師は戦争の道具では無い。そんな綺麗事は言うつもりは無い。
元より、戦うための手段である魔法。それを戦争の道具では無いと言うなら、私たち魔法師の存在する意味は無いし、戦略級魔法師なんてものは必要ない。
だからと言って、この国のお偉いさん方のように魔法師を道具としか考えていない人達には少々嫌気がさすというものだ。
「そこでです。此度の九校戦、デモンストレーションとして四葉殿のお力を披露してはというのが我々の意見でございます」
「デモンストレーション…?」
エキシビションマッチというのは大方予想していたのだが、デモンストレーションは予想の範囲にはなかった。
つまり、魔法師として氷月真宵の存在を示すのではなく戦略級魔法師として氷月真宵の能力を示せと。
「私の戦略級魔法を知っていての、提案であるとは思いますが湖程度では済みませんよ?」
達也の戦略級魔法とは違い、いつかは湖が元通りになるだろうがそれが何年後になるかなんて保証は出来ないし残念ながら範囲指定もそこまで狭く出来ない。
なにより、近隣への影響だって馬鹿にならない。
「えぇ、もちろんです。その際には、日本近海の渡航を禁止致しますので全力で海に放っていただければと。もちろん、太平洋諸国には既に了承は得ています」
海ならば問題はない。なんてことは言わないが、私の戦略級魔法を知っていて言っているのだから、私が心配することはない。
なにより、太平洋諸国の許可がおりているならば気にすることもないだろう。大方、他国も私の戦略級魔法を知っておきたいという目論見だろうが、見たところで絶望しかないと思うのだが。
「えぇ、概ねわかりました。そのデモンストレーションは、大会の初日ということでよろしいのでしょうか?」
「その予定でございます。その日1日、太平洋諸国の船は全て取り払うとのことですので、存分に」
「了承しました」
私は形だけの文書に捺印だけし、直ぐにその場から去った。
これ以上話すこともないし、彼らの目の前にいるのもあまり気分が良くない。
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「相変わらずの態度じゃな」
花楓が去った後の会議室は、疲労と切れた緊張によるため息で埋め尽くされていた。
「彼女の政府嫌いは我々に非がありますからね」
ここにはいない現首相の政策や、態度がその大きな原因であることはここにいる誰もが周知のこと。
もちろん、彼らはそんなこと口にはしないがそれでも思うところはある。
「なにより、こんなデモンストレーション行うこと自体道具であるって言っているようなものですからね。あまり彼女の不満を買って四葉丸ごと他国へなんてこと起きたら我が国は終わりでしょうね」
「あぁ。それが起きないようにと四葉真夜を懐柔しようとした結果が今の彼女の政府嫌いじゃからのぉ。これ以上、彼女に不満を抱かせないことしか我々には出来んの」
「「「「「はぁ」」」」」
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早々に、切り上げたためパーティーには何とか間に合った。
それでも既に始まってはいた。
「あ!花楓遅いわよ」
私の姿を見るなり串を持った手を振るエリカ。
それを見て、みんな私に気がつくが深雪は何故かうずうずしていてこちらには来なかった。
「ごめんね、ちょっと用事が長引いちゃって」
元々、このパーティーの主役は私ではないため遅れたところでさほど影響は無いはずなのだが、主役並に歓迎されると嬉しいものである。
「ささ、楽しみましょ!!」
真由美さんはそう言って私の手を引いて、パーティー会場の中心へと連れていった。
「疲れたぁ」
パーティーも終わり、自宅へとたどり着いた私は水波ちゃんを抱き枕代わりにしてソファーに横たわっていた。
「お疲れ様です、花楓さん」
こういった時の水波ちゃんは、穂波さんと同等ぐらいの母性を出してくれる。唯一違う点は私に抱き枕代わりにされていることぐらいだろう。
そんな母性の塊である水波ちゃんに癒されていると、玄関のチャイムが鳴った。
「誰かな、私の癒しを奪ったのは……」
チャイムが鳴るなり、私の手元を離れ玄関へと向かってしまった水波ちゃん。人と用事によっては、その人物に恨みをぶちまけてしまいそうである。
「花楓さん、お客さんですよ〜」
そう言って水波ちゃんが連れてきた人物の姿を見て、私の恨みは綺麗さっぱり消え去った。
「お姉様!」
それだけ言うと、水波ちゃんの背後から現れた深雪は私へとダイブしてきた。
(……なるほど、だからパーティーで寄ってこなかったのか)
深雪とは最近話せていなかった。会ったとしても少しの時間だけで、こうして姉妹として過ごせていなかったのだ。
お互い忙しかったとはいえ、これは達也に任せ切りにしていた私の姉失格である。
「よしよし…」
私は抱きついてきた深雪を抱き締め返し、頭を撫でてあげた。
深雪は頭を撫でられたのが嬉しいのか、そのまま私に身を預け少しするとそのまま寝てしまった。
「ありゃま、水波ちゃん達也呼んできてもらってもいい?」
「あ、かしこまりました」
このまま寝かせてあげてもいいのだが、風邪をひかせても困るため私は呼ばれて来た達也に深雪を預けた。
その際達也も若干私を見るなり寂しそうだったので、頭を撫でてあげたが珍しく顔を赤らめたのには驚いた。
「それじゃあ、私たちも寝よっか」
「そうですね」
ひと段落つき、私は再び水波ちゃんを抱き枕代わりにしそのまま眠りについた。
九校戦、花楓の出場を期待されていた方々申し訳ありません。
今回の話で分かるように花楓の九校戦の正式な出場はありません。
この先どうなるか楽しみながら読んでいただけると幸いです!!
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