十六夜の登る頃   作:雪楓❄️

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投稿期間が短いとは言いましたが、まさか同日とは思わなかったと思います。僕も思いませんでした

一応、この作品は人気不人気関係なく続けるつもりですのでよろしくお願いします




2話

(……少し早かったかな)

 

入学式当日の朝、私は真由美さんに言われた通り新入生の登校時間よりも少し早い時間に学校へとたどり着いた。だが、校門に辿り着いつたまでは良かったが周りには殆ど人の気配を感じず待ち合わせをしていたはずの真由美さんの姿も視認できなかった。

 

「………うーん、時間間違えてないよね…」

 

改めて自分の端末から時間を確認してみるが、早過ぎず遅過ぎずといった具合に丁度いい時間であった。

 

「四葉。こんな所でなにをしているんだ?」

 

周りをキョロキョロしていた所、よく知った顔に話しかけられた。

 

「どうも、十文字さん。」

 

彼の名前は十文字克人。巌のような風貌に加え、性格もかなり大人びているため同い年である同じ十師族である真由美さんと同じ年齢ということを疑いたくなる。

 

「ところで、真由美さん見かけませんでした?出迎えてくれる約束だったんですが…」

 

私がそこまで言ったところで十文字さんは大きくため息を吐き、呆れたような顔に変わった。

 

「…七草なら多分まだ来ていないのだろう。代わりに俺が案内してやる」

 

十文字さんは振り返り「すまないな」とだけ言うと、そのまま歩き出した。元より、真由美さんと正反対に物静かな人ではあるがこれから挨拶をしなくてはならない新入生の緊張を解してあげようという気遣いはないらしい。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

十文字さんの後を着いて行くこと数分、無言のまま会場へと辿り着いてしまった。

到着して改めてわかったのだが、やはりまだ真由美さんは来ていないようだった。十文字さんの姿が見えたのか、準備をしていた一人の女性徒がこちらに向かって歩いてきた。

 

「十文字さん、どうしてこちらに?」

 

「新入生総代が校門のところであたふたしてたのでな」

 

そう言うと十文字は私を指差し、相手に「よろしく頼む」と一言いうとそのままどこかへと歩いていってしまった。

 

 

 

「………あ、えーと四葉花楓です」

 

無言の間に耐えきれず自己紹介をしたのはいいのだが、私にはそれが限界だった。

 

「生徒会会計の市原鈴音です。申し訳ありませんが、会長はまだ到着してないのでもう少し待ってて貰えますか?」

 

「……あ、はい」

 

市原先輩はそのまま私の元を離れ、途中で投げ出していた準備の続きを始めた。

 

(………どうしたら…)

 

周りに知っている人もおらず、周りにいる生徒からはチラチラ見られるこの状況は人見知りの私にとって地獄でしかない。

そんな状況は良くも悪くもある人物の登場によって、解消された。

 

「遅れてごめんなさい!」

 

大きな声で謝りながら会場へとは入ってきたのは、先程の十文字先輩ととても同い年には見えない容姿をした真由美さんだった。

 

「あ、花楓ちゃーん!!」

 

真由美さんは私の姿をその視界に捉えるなり、周りの目など気にすることなくこちらへと突撃をしてくる。

 

「どうも、七草さん」

 

真由美さんの突撃を片手で防ぎつつ、敢えていつものような真由美さんではなく苗字である"七草"で呼んだのは私の心情によるものだろう。

 

「花楓ちゃん、七草ってなによ!七草って!!いつも見たく、お姉ちゃんって呼んでくれてもいいのよ?」

 

周りに生徒会の生徒しか居ないとはいえ、生徒会長がこんな姿を晒していいものなのかと少し戸惑いは感じたが聞き捨てならない台詞をそのままスルーすることは出来なかった。

 

「そんな呼び方1度もした事ないですよ、七草さん」

 

私の七草さん呼びに再度反論をしようとする真由美さんだが、それは叶わなかった。

 

「会長。会長のせいで時間が押しているんです、早く始めますよ」

 

市原先輩にそう言われて、真由美さんも私の元から離れた。

 

「おっほん、それじゃあ四葉さんよろしくね」

 

「分かりました」

 

入学式20分前にして漸く、簡単な予行が始まった。

 

 

◇◇◇◇

 

「それでは新入生総代四葉花楓さん。挨拶をお願いします」

 

四葉という苗字にざわめく会場。

確かに世間一般的に四葉は【触れてはならない一族】なんて呼ばれるぐらい恐れられていると言える。そんな一族の息女が堂々と名乗り、入学してきたとなれば驚くのも無理はない。

だが、私にとってはそのざわめきよりも、有望な魔法師の卵たちが集まる第一高校の入学式というのは生徒だけではなく、無駄に魔法師協会の役員やら十師族の人達やらが来るせいで余計に人が多いことのほうが辛い。

 

私は壇上に辿り着くなり、出来る限り人の顔が見えないように斜め上を見上げながら答辞を述べた。

 

 

「穏やか春の日差しにーーーーーーー」

 

 

予め貰っていた台本。そんなもの最初から存在しなかったかのように私は自分自身が思ったことを素直に述べることにした。

"入試の成績など、ただの指標に過ぎない"や"一科生も二科生もお互い高めあっていこう"など。

 

「ーーーー新入生総代 四葉花楓」

 

そう締めくくると私の思いとは裏腹に、会場は大きな拍手に包まれた。ここでこのまま退場すれば、私としては100点満点の答辞で終われるのだが残念ながらそれは叶わない。

 

「えっと、最後に答辞とは関係がないのですが少し私の話を聞いて貰えたらと思います」

 

私がそう言うと先程までの大歓声も収まり、会場が静寂に包まれる。それこそ、魔法師協会や十師族の人たちは先程までとは比べ物にならないぐらい私の方に注目している。

 

「………………それでは、改めて自己紹介をさせてください。私は四葉家次期当主の四葉花楓です。そして、氷月真宵とも言います」

 

私が2つ目の名前を告げた途端、会場全体から息を呑む音が聞こえた。【氷月真宵】とは、謎に包まれた戦略級魔法師の1人であり世界最強の魔法師と言われている人物。

何故このタイミングで発表したのかは、言うまでもなく叔母である真夜さんとの約束だから。16歳になったところで、次期当主であることと戦略級魔法師であることを世間に公開する。それが私に対して唯一真夜さんが強制したことでもある。軍属の達也とは違い、澪さんと同じく割かし自由な私だから出来ることでもある。

 

「えっと、氷月真宵というのは皆さんが想像している氷月真宵であっています。魔法師協会の皆さんにはこのことは黙っていろとは言いませんし、むしろ公開して頂いて結構です。お時間頂きありがとうございました」

 

そう言って私は壇上から降りた。先程とは違い、会場は静寂に包まれたままだった。

 

 

 

 

 

 




それではまた!
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