十六夜の登る頃   作:雪楓❄️

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この作品じゃなくて、ほかの作品を更新しろ!なんて言葉が聞こえてきそうですが、時間がないため話が思いついたものを書き上げている次第なのでご了承ください。




3話

入学式も無事?終わり、各自自分のクラスを確認しICカードを受け取って和気藹々している中私は周囲からの視線に晒されていた。

 

(はぁ…、こうなるよね)

 

元々、16歳になった時に公開することが決まっていたとはいえ、いざ公開してみるとやはり後悔が残るのは仕方がないことだった。

あの沖縄での防衛戦の際に私と達也は戦略級魔法師となったが、私も達也も年齢が年齢だったため真夜さんの圧力によって非公式の戦略級魔法師となった。その際私は次期当主であることにより軍属にはならず、達也は軍属になった。

それで済めば良かったのだが、対外的に優位に立ちたい国としてはあの戦争の幻となりつつある【摩醯首羅】と【氷帝】の存在をそのままにしておくはずもなく、しつこい政府に折れた真夜さんたちが私の方だけを公開することで約束を取りつけた。その際の真夜さんたちの謝りようには驚いたのは懐かしいものだ。その約束をこちらが破棄しないように、政府は氷月真宵という名の戦略級魔法師を対外的に公表。しかし、その実体は殆ど秘密に包まれており幻の戦略級魔法師とまで呼ばれていたのだ。

 

何はともあれ、戦略級魔法師に話しかけにくいのはわかるが見世物のようにジロジロ見るのだけはやめて欲しい。

 

「……あ、真由美さん」

 

入学式初日なので早々に帰り支度を済ませ、廊下を1人歩いていると前の方から真由美と生徒会の方が何人か歩いてきていた。

 

「あ、花楓ちゃん。すぐにいなくなっちゃうから探したのよ?」

 

前から歩いてきた真由美さんは周りの生徒がいるせいか、いつもよりはその威厳のようなものを感じられた。

 

「あ、すみません。少し人目に付く場所から離れたかったので…」

 

「……そ、そうね。私でも驚いたもの、花楓ちゃんがあの氷月真宵だったなんてね」

 

真由美さんは少し詰まったもののいつものような明るい口調で言ってくれる。

元々四葉家というだけでも関わりにくい私に、さらに幻の魔法師という事実が加えられてしまえば一般生徒としては対応に困るのは致し方ないし、同じ十師族の真由美さんですら戸惑うのだから周りから私を見ている生徒たちに罪はないのかもしれない。

 

「以前と変わらず接して貰えると嬉しいです……」

 

としおらしい言い方になってしまったが、これが意外と効果があったらしい。

目の前の真由美さんはもちろん、周りにいる生徒の先程までの少し怯えたような眼差しが和らいだように感じた。

 

「え、あごめんなさい。そんなつもりじゃなくて…ね?」

 

真由美さんは少し焦ったように私の体を優しく抱きしめながら、上目遣いでそう言うが周りに人がいることをお忘れではないだろうか。案の定、後ろにいる生徒会の男子生徒なんて顔を真っ赤にしている。

 

「あ、あの真由美さん?」

 

「…あっ、ごめんなさい」

 

真由美さんも周りの存在を思い出したのか、私の身体から即座に離れ先程までの威厳のある態度へと戻る。

 

「…おっほん……。本来は用事があったのですが、また明日にしましょう」

 

「いえ、私は別に…」

 

真由美さんが何故そんなことを言ったのか理由は分かったので、私は敢えて自分は大丈夫だという意思を伝え、真由美さんがここから立ち去れないようにしようと思った。だが、そう言った悪戯心でこの人に叶うはずもなかった。

 

「いえ、周りの方々も花楓ちゃんと話したいでしょうから。本日のところはお暇させていただきます」

 

真由美さんは私の意図を理解した上で、余計な一言を付け加えるとそのまま一礼して生徒会のメンバーと共にその場から立ち去る。

 

(………そんなぁ)

 

先程しおらしい言い方をして効果があったなんて思った自分を消し去りたかった。

真由美さんが余計な一言により、話しかけようか迷っていた人達をも巻き込んでくれたおかげで私は押し寄せる人波に飲み込まれることとなった。

 

 

◇◇◇◇

 

(……エラい目にあった)

 

記者やら、魔法師協会の人達に囲まれる覚悟こそしていたもののまさか一般生徒たちにこんな形で取り囲まれることになるとは思っていなかった。

 

「先ほどは大変そうでしたね、お……四葉さん」

 

ヘトヘトになっていた私にそう話しかけてきたのは深雪である。

学校では他人のフリをしろという真夜さんからの指令をきちんと守ろうとしているからか、少し違和感を感じたがさほど気になるほどでもなかった。

 

「いやぁ、流石に驚いたかな。司波さんこそ、取り囲まれたりしなかった?」

 

入試成績上位2名ということもあるため、少し面識があるぐらいは大丈夫だとは思うがあまり慣れ親しんでいるのは疑われる可能性があったため、お互いに苗字で呼んだ。

 

「えぇ、四葉さんとお兄様のおかげで。それと、私のことは深雪とお呼びください」

 

「わかったよ、深雪。それじゃあ、私のことも花楓って呼んで?」

 

「えぇ、わかりました。それでは花楓さんと呼ばせてもらいますね」

 

いつもの様にお姉様と呼ばせる訳にはいかないため名前を提示したのだが、あえてそこで呼び捨てにしてこなかったのは深雪なりの意地なのだろう。

 

「えっと、そっちの深雪のお兄さんは……」

 

流石に達也とも面識があるというのはかなり無理があると思ったので、ここで初対面にしておく方がいいだろう。

 

「……司波達也だ。達也でいい」

 

達也は私に初対面扱いされたことがショックだったのか、一瞬絶望したような表情をしたが直ぐに切り替えた。

 

「(……達也も大概か)私も花楓でいいよ。よろしくね、達也」

 

「……あぁ」

 

 

◇◇◇◇

 

達也との自己紹介を終えたところで達也たちの後ろにいた、3人とも自己紹介を交わした。千葉エリカに西城レオンハルト、そして柴田美月。全員E組ということで達也にしては珍しい相手だなぁとは思ったが、全員いい人そうなので一先ず安心した。

 

「でも、花楓があの四葉でしかもあの氷月真宵だなんて思えないわよねぇ」

 

「わかるぜ、それ。俺はてっきりもっと冷たい感じの奴だと思ってたぜ」

 

(……そんなイメージだったの?私)

 

改めて周りからの自分のイメージを聞き、落ち込みそうになるが前を歩く達也と深雪の肩が震えているのが見えて少しその気持ちも和らぐ。

その後も、西城くんとエリカが私の話題を永遠と話し続けた。時々、深雪と達也が反応していて面白かったのは私だけの秘密である。

 

「それじゃあ、私達はこっちだから」

 

別れ道に差し掛かったところで深雪がそう言うと、エリカたちとはここで別々になるらしく上手い具合に二手に分かれる。

 

「じゃあ、私も深雪たちと同じだから」

 

「そっか、じゃあね」

 

私たちは軽く挨拶を交わして、それぞれ帰路へと着いた。

そこから、他愛ない話をしながら数分歩いたところで深雪の我慢が限界に達した。

 

「お姉様っ!」

 

そう言うと私の腕へと抱き着いてくる深雪。我慢していたとはいえ、道端でどうかとは思うが。

 

「深雪、ここ道端だよ?」

 

深雪は私の言葉には耳を貸すことなく、腕から離れようとはしない。

 

(……まぁいいっか。悪い気しないし)

 

「それより、花楓の家ってこっちなのか?」

 

私が腕に抱きつく深雪を堪能していると、ふと達也がそんな質問をしてきた。

 

(…そう言えば、達也たちは知らないのか)

 

穂波さんには伝えていたため、達也たちにも伝わっているものだと思ったのだがそうではなかったらしい。

 

「達也たちには言ってなかったけど私の家、達也たちの家の2つ隣だよ」

 

本当は隣が良かったのだが、それだと怪しまれる可能性が高いということでギリギリ了承されたのが2つ隣。もはや、2つでも1つでも変わらない気もしなくもないがそこで反論するのも野暮であるというものだ。

 

「そ、そうか。それなら、CADの調整も出来るな」

 

「確かに、最近自分でやってたから達也にお願いしたかったんだよね。やっぱり、自分じゃ天下のトーラス・シルバーの調整には及ばないからね」

 

自分でも出来ないことはないが、それでも上手い人が近くにいるならばそちらにお願いするのが世の常である。

そんな話をしているうちに、家の近くへと着き私は深雪を達也へと預ける。

 

「それじゃあ、またね。近いうちに、穂波さんの料理食べにそっちに行くからその時はよろしく。あと、深雪も抱き着くのはこれっきりだからね?どこで誰に見られてるかわからないから」

 

深雪はあからさまに落ち込むが、これを了承してしまっては別々の家に住んでいる意味がなくなってしまう。

 

「他人の目のない家では今まで通りでいいから…ね?」

 

私が優しく深雪の頭を撫でながら、そう言うと深雪も笑顔をほころばせる。

 

「それじゃあ、達也、深雪。また明日」

 

「えぇ、ご機嫌ようお姉様」

 

「あぁまたな」

 

挨拶を交わすと達也と深雪は再び自宅へと歩を進め、私もまた自分の家へと入った。

 

 

 

 

 




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