宇宙戦艦ヤマト2202外伝 波動実験艦武蔵   作:朱鳥洵

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「波動実験艦武蔵」第2話です。
今回は戦闘ありです。戦闘シーンは書くの難しいですね


第2話 「資源惑星奪還作戦」

第2話「資源惑星解放作戦」

 ソラが割れる。

 宇宙に突如現れたフネ達は、その体にまとわりつく氷を砕いてこの世界へと顕現した。

「全艦ワープ終了」

「各部点検、異常なし」

「無人艦各艦も異常ありません」

 航海長、気象長、技師長の声と共に、機関が上げるフライホイールの音が元に戻る。

 彼らの目の前には、この恒星系の太陽に照らされた火星によく似た星があった。

「ザリシアって、あんな星だったのか」

「昔の地球にそっくり……」

 戦術長、船務長の言葉で艦長は実感する。

 若い彼らにとって、赤い星といえばテラフォーミングされた火星ではなく、ガミラスの攻撃で赤錆びた地球なのだ、と。

「星の様子を観測せよ」

 波動実験艦武蔵の観測ドームには、ヤマトやアンドロメダと違い遠方の観測を行う装置が設置されており、ある程度の距離であれば接近や上陸をしなくともその星の観測が可能である。

「観測室から報告。軌道上に……ガトランティス艦隊⁉︎」

 技師長の言葉にブリッジの全員が振り向く。

 ――なるほど、ここ数日連絡が途絶えていたのはガトランティスの襲撃を受けていたからなのか……。

「艦種識別! メダルーサ級2、ナスカ級1、ククルカン級5、それと未確認艦が2隻、これらは同型みたいです」

 逡巡の後技師長から情報がもたらされた。

 近藤はそれを聞いて立ち上がると、

「中央作戦室へ。対処を考える」

 と言い残して艦橋を後にした。

 

武蔵/中央作戦室

「敵艦は10隻ですが、ナスカ級の艦載機数は少なくアルタイルと比較すると70機体以上のアドバンテージがあります。ですから、この星にいるガトランティス艦隊はそこまで脅威としてみる必要はないものと思われます」

 戦術長はこう言い、全艦での中央突破と殲滅を主張した。

 それに砲雷長が口を開く。

「惑星内に敵艦が潜んでいる可能性もあると思いますが」

「それは武蔵単艦の火力で十分撃破可能だと思われます」

「根拠はなんでしょう、戦術長」

「何が言いたい」

 苛立ちを隠せない有賀に来島は向き直り「お言葉ですが」と言葉を続ける。

「戦術長は、浅はかな予測で第十一番惑星で危機に陥ったヤマトの後に続きたいのですか」

「なんだと?」

「見てくれの戦力だけで判断するのは幼稚です。援軍を呼ばれる可能性や惑星内にカラクルム級のような強力な艦艇が陣取っている可能性を考慮に入れない今のプランは、この艦を沈めかねない」

「砲雷長はどうするんだね、作戦プランがあるのだろう?」

 艦長の問いかけに、砲雷長は「対案はあります」と答え、パネルを指す。

「私の案は、まず本艦、アルタイル、無人艦隊で敵艦隊の横をすり抜けて艦隊を静止、反転させて本艦の火力で敵を牽制したのち波動砲で宇宙の艦隊を一掃します」

 モニター内では彼女が示した通り敵を表すマークが消失、武蔵を示すマークはその後惑星内に進みだす。

「惑星内に艦が侵入してから航空隊を展開。惑星内に敵が潜んでいた場合は航空隊の火力をもってこれを叩きます」

「ふむ……」

 砲雷長と戦術長の作戦は両極端なように見えて、その根は同じであった。

 どちらも、一方を倒してもう一方へと向かうというもの。

 ――それでは、遅いな。

「二人の作戦はわかった。どちらも悪くはないが、少しだけ足りないな」

 

 

「……艦長」

 作戦会議が終わり皆が解散する中、技師長の佐伯が艦長の裾を引いた。

「どうした」

「次の作戦の時、私は艦橋から外してください」

「それは、どういう意味だね?」

「私がいても、足手まといなだけですから」

 それだけを残して、佐伯はその場を離れた。

 

 

武蔵/第一艦橋

「情報長、濱内水月、入ります」

「情報長。少しいいかな」

 技師長の代わりに艦橋に入った少女を呼び止め、近藤は彼女のもとへ行く。

「佐伯くんのことなのだが」

「あー……彼女、戦闘が大の嫌いなんです。昔友達がそれで死んだからって。だから、戦闘の時は代わりにあたしが出るって約束だったんです」

「そうだったのか」

「元々軍人志望じゃないのを無理に軍に引き込んだからですよ」

 そう言うと、濱内は席についた。

 艦長席へと戻った近藤は、パネルに表示された時間を確認して指示を出す。

「時間だ。両舷、第一船速。総員第一種戦闘配置」

「第一船速、ヨーソロー!」

 エンジンに火が灯る。

 武蔵を中心に4隻の無人主力戦艦とアルタイルが横に列をなして敵の待つ星へと向かう。

 背後には2キロを超える小惑星があり、その陰には輸送船むつきとその護衛艦2隻がとどまっている。

 眼前の小惑星帯を抜けると、光学レーダーが敵の反応を捉えた。

「全艦全速、アルタイルは艦載機を発艦させよ」

「アルタイルへ通達、艦載機発艦。繰り返す、艦載機発艦」

 身体が後ろへ引っ張られるほどの加速とともに、無人艦は武蔵の隊列から離れそれぞれの方向から敵艦へと接近する。

 ――刹那、艦橋にアラートが鳴り響く。

「ワープアウト反応! 本艦後方、アルタイルの正面です!」

「急速回頭! アルタイルを守る!」

 エンジンの噴射を止めた武蔵は姿勢制御スラスターを噴き無理矢理体を回すと、慣性に逆らい逆方向へと加速する。

「来島、主砲1番2番をワープアウト座標に向けておけ。出てきたところを沈めてやる」

「了解、戦術長」

 武蔵の主砲がわずかに左舷へと向く。

 ワームホールから敵艦の姿が見えた時、有賀は砲雷長に目をやる。

「今だ。撃て!」

 彼の声と共に放たれた閃光は、姿が見えた艦ではなく、その直後射線上にワープアウトした艦艇に直撃した。

 炎をあげる艦の向こうでは、発艦したばかりのアルタイルの艦載機が敵艦への爆撃を敢行していた。

 しかし、この後に控える作戦行動のため対艦装備を満足に使用することはできず、アルタイル自身も発艦作業のため身動きが取れない。

 ククルカン級の速射砲がアルタイルへと連続で砲撃を行う。

 直撃すれば、アルタイルは――。

「撃てええええええぇぇぇっ!」

 間一髪で間に割って入った武蔵が自艦の波動防壁でほぼ完璧に緑の光を弾きながら反撃の構えを見せた。

 三基の砲塔から放たれた青い光はククルカン級の船体を見事に貫くと、その爆発を見届けることなく武蔵は再び惑星へと軌道を戻した。

 発艦の終わったアルタイルもまた武蔵と共に惑星へと加速をかけ、その2隻の上を艦載機が飛んでいく。

 惑星上空では無人主力戦艦が苦戦を強いられていた。中には4発以上被弾している艦も。

 そこで、小惑星帯から一隻の艦が武蔵の横をすり抜けて惑星上空の敵艦隊へと突入を敢行した。

 それは無人艦として武蔵の指揮下にいた磯風改型の黒潮。

 敵の装甲を貫く火砲は無く、ただその速さと艦首に装備された魚雷を用いて敵を威嚇、撹乱して半ば密集していた敵艦隊の陣形に風穴を開けていく。

 そこにアルタイルから飛来した無数の艦載機が敵迎撃機を次々と堕としていく。

「今だ、あの中を抜けろ」

 アルタイルの前に躍り出た武蔵は、背後の艦を誘導するように艦隊の中に開いた隙間をすり抜けた。

 そのまま艦首を上げ惑星の大気圏で発熱を始める武蔵の後ろでは、アルタイルが回頭し、その横に主力艦隊が列をなす。

「アルタイル、主力戦艦群が波動砲の発射準備を始めました」

「よし、黒潮と航空隊はそのまま撹乱を続行せよ。本艦は大気圏離脱後、爆装させたコスモゼロを放って惑星内に潜む敵の索敵を行う」

「了解!」

 艦長の指示に返答した戦術長は窓から見える星の姿を見つめた。

 

武蔵/艦橋後部デッキ

 艦が安定し、窓からは星に浮かぶ雲と艦の後ろが見える。

 開け放たれた格納庫からカタパルトに乗る戦闘機には、追加タンクと空対艦ミサイルが搭載されていた。

「……このフネは、戦うためのものなの?」

 回転したカタパルトから炎を上げて飛び立つ二機のコスモゼロを見つめながら、彼女は手すりを強く握りしめる。

 エンジンノズルの翼から白く尾を引いて進む向こうでは、星の上で放たれた眩い閃光が走った。

「本当に、これでいいのかな」

 

武蔵/艦橋

「拡散波動砲発射を確認。上空の敵は一掃された模様です!」

 濱内水月の言葉に安堵したのもつかの間、レーダーには反応を示す音が鳴る。

「本艦周囲に浮上する物体3! これは……艦⁉︎」

「艦種識別……三隻とも未確認艦です」

「敵艦、ミサイル発射!」

 艦橋の窓から見える一隻が、艦首についた白い巨大ミサイルと中型のミサイルを放つのが見える。

「何発だ!」

「分かりません、全方位からミサイル来ます!」

「っ、波動防壁!」

 被弾直前に艦の周囲に展開された波動防壁にミサイルが直撃し、巨大な煙を上げた。

「ミサイル、第二波接近!」

「波動防壁のエネルギーが足りない、第三波は耐えられない!」

 刹那、第二波の着弾を告げる振動が艦をかすかに傾けた。

「敵艦、第三波発射ノ予兆アリ」

 サブコンピュータとして接続されているAU-09タイプが警告を発する。

「ドーム部以外の波動防壁を遮断、推力全開で正面の敵艦の下に入り主砲を下から叩き込め!」

「は、はい!」

 左へとかすかに傾いた艦をそのまま左舷へと倒し、降下してミサイルを放つ敵の下へと入り込む。

「照準よし」

 全ての主砲が敵艦の腹を捉え、艦橋へと入る光が敵艦の影で減少する。

「てぇ!」

 武蔵の砲塔から放たれた青い光は星の大気を切り裂いて雷をまとわせながら敵艦の艦艇を穿ち、融解させて貫く。

 炎をあげ惑星へと堕ちゆく艦の真下から抜け船体を起こした武蔵は残る2隻へとその砲口を向け、衝撃波と共に光を放つ。

 命中を示すように2隻から爆炎が上がるものの、敵艦は一矢報いようと果敢にミサイルを放つ。

「敵艦ミサイル発射!」

「迎撃、主砲三式、魚雷発射管開け!」

 艦が回頭し敵艦へと正面を向けたのとほぼ同時に、放たれた実弾と魚雷が敵のミサイルを迎え撃つ。

 その時、武蔵の後方から敵艦へと向かう弾道が確認できた。

 その弾は的確に艦橋を射抜くと、第二射、第三射で船体装甲を貫きミサイルに誘爆を促す。

「コスモゼロ帰還しました!」

 艦橋を沿うように後方から現れた二つの機影は、爆炎に包まれる敵艦の上空を旋回して武蔵へと帰還した。

『こちらアルタイル。敵艦隊殲滅後、援軍が現れる気配はない。指示を乞う』

「こちら武蔵、状況は終了した。アルタイルは航空隊収容後惑星へと降下、本艦と合流せよ。無人艦5隻は惑星上空にて待機」

 その指示と共に、近藤は肩の力を抜いた。

「みんな、初陣で良くやってくれた。作戦は終了だ。ご苦労」

 近藤の言葉に航海長以外が敬礼をする。

 航海長はゆっくりと武蔵を谷へと降下させていた。

『――るか――いるなら――』

 通信手席から聞こえてきた通信に、通信士が即座に答える。

「こちら地球軍、波動実験艦武蔵。聞こえるか、この星を占拠していたガトランティス艦隊は殲滅した。生存者は何人いるか」

「艦長、通信は前方5キロ地点の炭鉱内部からです」

「シーガル出撃、救出へと向かえ。輸送船むつきへ、惑星内へと降下指示」

 濱内からの報告に頷いた近藤はすぐに指示を出す。

 ヤマト級に共通で存在する艦底部第三格納庫のシャッターが開き、アームに吊られたシーガルのエンジンに火が灯る。

 アームから解放されたシーガルは勢いよく飛び出し、生存者の元へと向かった。

 一方、小惑星に隠れていた輸送船もまたエンジンを起動させて一路最高速で惑星へと向かう。

 武蔵の艦橋からは、さながら流星のようにアルタイルの姿が見えていた。

 

 ――1時間後。

 地球から送られてきたデータによれば、惑星上空と惑星内で遭遇した重ミサイル艦はヤマトが白色彗星内部、そしてテレザート上空で遭遇した艦と同型のようであった。

 被弾数の多い無人艦を辛うじて残ったドックを借りて修理しているのを見ながら、武蔵から降りた近藤らは生存者と向かい合った。

「まさかこの星がガトランティスに占領されているとは思わず、救出が遅れてしまいました」

「いいえ、たとえ偶然であっても助けていただいたのに変わりはありません。ありがとう」

 笑顔を見せる鉱夫。彼の後ろにいる人々もまた同じように「ありがとう」などと口々に言っていた。

「間もなくこの星には地球から守備艦隊が到着します。波動砲搭載艦が10隻程度配備されると聞きました。ヤマトからの報告ではガトランティスは――」

「そうそう、あんたらのフネはヤマトにそっくりだな。一瞬ヤマトが来たのかと思ったぞ」

 あっはっは! と大きく笑う彼に、近藤は武蔵の方へと振り返った。

 ヤマトの同型艦。それが指す意味は、武蔵のクルーが思っている以上に大きいのかもしれない。

 

武蔵/自室

「柑奈ぁー、起きてるー?」

 艦橋から降りてきた濱内水月が部屋に入ると、あかりは既に消えていた。

「寝てるー……」

「起きてんじゃん」

 部屋の扉にロックをかけた水月は、親友のベッドに腰掛けた。

「大丈夫だった?」

「大丈夫なわけないじゃん、星の外でも中でも構わず無理な挙動するし。壁にぶつかるかと思ったよ」

「まあ柑奈は非力だからね」

「科学者に筋力はいらないんですー」

「前もそんなこと言ってたね。そんなんだと将来たるむよー?」

「……何が」

「このへん」

 水月は布団の中に手を突っ込むと、柑奈の脇腹をくすぐり始める。

 布団の中で足をバタバタさせながらなんとか彼女から逃れた時には、柑奈は息を切らしていた。

 寝苦しかったのかチャックをへそのあたりまで緩めていた彼女の艦内服は肩が落ちている。

「あははっ、柑奈必死すぎ」

「急にくすぐってくるからでしょう⁉︎」

「もう一回やったげよっか?」

「遠慮しとく。……近づかないで、いやホントに⁉︎」

 その日は結局、柑奈に避けられつつも彼女が寝るまで隣にいた水月であった。

 

 

 ――同刻、武蔵の甲板へと出た有賀は、にわかに見える晴れ間に目を細めながら、かすかに吹く風を受ける。

「ガトランティスはなんだってこの星を……」

「意味なんかない、ただ進路上にあったからじゃないか?」

 声の元へ振り返ると、そこには航海長の三原泰平が立っていた。

「第十一番惑星だって、占領してどうにかなる星じゃなかったはずだろ?」

「あの星を占領したのは人工太陽が目的だったからだ。目的がなかったわけじゃない。けど、この星は違う」

「純粋に資材目的って訳でもなさそうだしな。ヤマトの見解では、ヤツらモノを作ることはできないんだろ」

「ああ、だからわからないんだ」

 そう話す彼らのはるか向こうでは、何者かの手によって大規模な掘削が行われた際に形成されたクレーターのようなものが広がっていた。

 それが、ガトランティスがテレザートを封印するために用いた岩石の一部である事は、誰も知らない。

 

 ――第二話 「資源惑星解放作戦」――




読んでいただきありがとうございます。
今回も技師長メインみたいな感じでした。もう半ば主人公っぽいですが、もっといろんな人たちを絡ませたいですね。
ヤマト2202第7章までには書き上げたいところです。
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