遅くなりましたが第6話投稿です。
再び戦闘スタートですが、戦術長の作戦はどんなものなのでしょう。
武蔵/第一艦橋
「両舷前進強速! ディフダは武蔵後方につけろ」
数多の砲火が飛び交う中を、2隻の戦艦が進み始める。
「棚橋さん、近傍の星間物質の組成分析をお願いします!」
「了解。頭を貸しなさい、サブコンピュータさん」
戦術長に応えた気象長は艦橋に備え付けられたAU-09タイプを命令信号で叩き起こすと、次々にデータの照合を行い始める。
すると、技師長のモニターに赤い表示とともに警報音が鳴り響いた。
「両舷の波動防壁の圧が下がってきています!」
「被弾の少ない位置の防壁とのエネルギー転換で出力維持!」
「上空から接近する飛行物体多数、ミサイルです!」
「対空戦闘はじめ!」
船務長の声に答えた戦術長の言葉とともに武蔵両舷のシャッターが畳まれ、中から砲身が伸びる。
数秒で展開と照準を済ませた砲身から放たれた弾は的確にミサイルを貫いた。
頭上に爆炎を受け、なおも接近するミサイルを迎撃するために対空砲火を放ち続ける。
波動防壁に阻まれていた敵の砲火は次第に貫通し始め、艦は炎を噴き出し始めた。
「特定完了!」
気象長へと視線を向けると、彼女は有賀を見て続けた。
「大きなものには水が大量に含まれているようです」
「それは、撃ち抜いたら放出されるか」
「恐らくは撃ち抜いたら一時的に霧散し、再び氷となって……まさか」
ハッとした顔の棚橋にうなずくと、有賀は砲雷長に視線を移す。
「本艦周囲の小惑星を撃ち抜け。敵には当てるなよ」
「了解、照準開始」
既に指向していた砲塔がわずかに動くと、光を帯びたその砲身からそれぞれの方向へと青い線が伸びていく。
貫かれた岩石を中心に無数の白い粒が発生し、恒星の光に照らされてキラキラと輝き始める。
それは小惑星が粉砕されていくほど密度を増し、肉眼では武蔵の姿をほぼ視認できなくなっていた。
艦橋から見える外の景色は白く覆われ、微かに何かが触れる音が鳴り始める。
「船体に何かがぶつかってる……?」
「小さな氷の塊です。艦隊が隠れていた小惑星を粉砕して中の水を放出したことで煙幕として機能しているんです」
航海長の言葉に返した棚橋は続ける。
「この氷はごく微小ですから、船体に傷は残りませんし航空機も破損することはないでしょう」
「高密度の氷が本艦の周りを覆っていることで、若干ですがレーダーの感度が低下しています」
丹生の言葉にニヤリと笑って頷く有賀は航海長へと指示を出す。
「両舷半速、航空隊発艦。チャフを撒き散らせ」
氷の中で動きを止めた艦底ハッチを開け、中からコスモファルコンが飛び出していく。
艦体を舐めるように飛んだ後でそれぞれの方向へと飛び去る機体の後部からは煙幕の煙が尾を引いていた。
氷で内部の様子が観測できず、既に武蔵が動きを止めている事に気づくのが遅れた艦隊の砲撃が逸れ始める。
白く輝く氷の煙幕が砲撃によって消えた時現れたのは、チャフを撒き散らしながら艦隊をすり抜けるファルコンであった。
一方、艦橋横をすり抜けた二機のコスモゼロは中央艦隊へと飛行し、同じようにチャフを撒きながら直進する。
前方を飛ぶコスモゼロを横目に左右に分かれた武蔵とディフダはそれぞれ中央の艦隊を挟む小惑星の外側に進行した。
チャフを焼き尽くすように放たれる対空砲火をものもとせず、隼は飛び続ける。
本来高機動型のコスモタイガーでしかなし得ない挙動であるが、彼らの練度はコスモファルコンでの完璧な回避行動を可能としていた。
艦隊の頭上へと抜けたパイロット達が見たのは、巨艦とは思えぬ身のこなしで小惑星を旋回する2隻の艦の姿である。
岩肌に錨を撃ち込み、急旋回する2隻の艦内は強い横方向への重力に晒されていた。
遠心力によって艦尾が外側へと向くのを姿勢制御ノズルをフル稼働させてどうにか抑制し、錨を巻き取りながら巨艦を回す。
武蔵に行われている操艦操作を反転して同じ動きをする無人艦もまた、本来高速機動に用いるスラスターを使って体制を整えている。
艦の勢いそのままに岩塊から飛び出した2隻はすぐさま制動と旋回を行う。
「砲雷長、主砲を敵旗艦へ!」
「はい、主砲照準――」
彼女を見る戦術長の目を見返して、次に彼が何を言うのかがわかった。
今の彼はおそらく――。
戦術長に無言で頷くと、わずかに砲身を動かす。
そこから放たれた砲火は交わり、一つとなって――。
――敵の艦橋をかすめた。
しっかりと敵のエンジンへと狙いを定めた一番砲塔ではなく、ほんの数ミリ砲身を上に向けた二番砲塔から発砲したのである。
「これで良かったのですね、戦術長」
「ああ、完璧だ。砲雷長」
少し微笑みながら振り返った少女に答えると、有賀は立ち上がって一ノ瀬の肩を叩く。
「敵旗艦に打電。『我々はあなた達の言葉通り貴官らを超えた。審判の結果を問う』」
窓からは帰投してくる艦載機が放つエンジンの光が見え始めていた。
その後ラーゴラスの旗艦からの返答により、武蔵は彼らと共に星系の調査を実施することになる。
一週間にわたりトラピスト1星系の調査を行う中で、ラーゴラスの民についての情報も得られた。
彼らがラーゴラスと呼ぶのは、地球ではトラピスト1”d”と呼ばれている惑星である。
彼らがトラピスト1星系――彼らの言うところのミルタ星系へとやってきたのは百年程度前のこと。
元々はリースリアという、別の銀河にある地球によく似た美しい星に住んでいたようであるが、彼らの星に白色彗星、つまりガトランティスがやってきたことで彼らは星を捨てて彷徨いこの星系にやってきたというのだ。
彼らの惑星は白色彗星に取り込まれた後姿を消し、重力バランスの壊れた恒星系は死の星系へと変わったという。
「つまるところ、ヤツらの艦は内惑星用じゃなくて恒星間航行用だったってことなのか」
「いえ、それは違うと思います」
恒星に照らされた緑の星をぼんやりと見つめながら泰平が呟くと、背後から水月が口を挟んだ。
「彼らの艦を調べたところ、主機関はワープ航法が不可能でしたよ」
「じゃあどうやってここまで来たんだ?」
「彼らは用途に応じて内惑星用と恒星間航行用を使い分けているんじゃないでしょうか」
自らの席に座ったまま会話に参加した柑奈は、パネルを操作しながら続ける。
「もっとも使い分けているといっても、今は使えないんだと思いますけど」
「使えない?」
「彼らは恒星間航行用のエンジンの運用や整備、生産の技術を失っているのだと思います。彼らがここまで逃れてきた艦の姿は残っているそうですが、使用した波動コアが損傷したことと、この星にたどり着いたことで恒星間航行を行う意義が無くなったからでしょうね」
それを聞いた有賀は「そうか……」と再び窓の外に見える惑星へと目を向ける。
「やっとの思いで見つけた安息の地なら、必死に守るのも分かるか……」
「義弥さんの敵を沈めない戦い方が功を奏して彼らからの信頼は得たみたいですし、この星系にいるうちは安全ですね」
観測チームが帰投してくる通信を聞きながら、泰平は舵を握り直す。
「調査はこの星が最後なんだよな」
有賀の問いに「ええ」と水月が答える。
「あとは地球に帰って調査結果を届けるだけですよ」
第三格納庫にシーガルが着艦した報告が入ると、近藤は口を開いた。
「一ノ瀬、地球への定期報告。本艦はただいまより地球へと帰還する。そちらの状況を報告されたい」
「了解、超空間通信を打ちます」
一ノ瀬の言葉と共に艦が旋回を始め、景色が回る。
ラーゴラスの艦艇が、その国独自の光信号で武蔵に伝える。
『戻られるのか。白きほうき星との決戦に参戦できぬは心苦しいが、ここから地球の存続を願う』
共に調査を行なったこの一週間で、クルーは皆ラーゴラスの光信号を読めるようになっていた。
「一旦入ってしまえば友好的な国だな、ここは」
「ああ。この星の人たちがまた襲われないように、俺たちは戦わなきゃならないんだ」
三原と有賀の会話の直後、通信席から入電を知らせるブザーが鳴り響く。
「地球より入電しました」
淡々と報告した一ノ瀬はしかし、その内容に愕然とした。
「数日前に土星沖でガトランティスと会敵、戦果は大敗。アンドロメダは大破、アポロノームを含む地球艦隊は白色彗星相手に多数沈没。ヤマトもエンジン損傷により白色彗星へ落下、消息不明! 現在ヤマトのクルーを回収した銀河率いる艦隊が足止めを行なっているとのことですが、突破は時間の問題……」
「了解した。本艦はただいまより全速で地球へと帰還する!」
艦長の号令にクルーは敬礼で答え、波動エンジンに火が灯る。
彼らを見送る異星の民が見送るなか2隻の艦は速度を上げ、光をも超えて宇宙から消えた。
地球/時間断層ドック
男は1人、自らが指揮する艦へと入る通信に耳を傾ける。
――古代。
「お前はまだ、死んじゃないないよな」
ヤマトの消息不明。それは男にとって、かつて肩を並べて戦った戦友を失ったも同然であった。
しかし、彼はまた戦場に向かう。
――かの艦が、地球で英雄として語られる艦がまだ生きていると信じて。
「ノイ・ダロルド発進しました。艦長。バーガー艦長、指示を」
部下の言葉を受け、男は目を開けた。
ガトランティス艦隊は、かつて彼らがドメルと共に幾度となく屠った相手。
まさかこんなかたちで戦うことになるとは夢にも思わなかっただろう。
「ノイ・バルグレイ発進。戦列に続け!」
彼の指示と共に艦は飛び立つ。
彼らの母なる星とは異なる青き星を背に、人類を守る決戦へと。
銀河からもたらされた白色彗星の土星沖突破は、月に大使館を持ち、時間断層ドックの使用権を持つガミラスにとっても一大事であった。
彼らの中にはガミラスを救ったヤマトへの恩返しだと参加した兵士も多くいる。
バレラスまで侵攻しておきながら占拠する事なく、ガミラスを侵略せず、デスラーが放った滅びの一撃を波動砲の一射をもって粉砕してガミラスを救った。
はじめはイスカンダルに向けての演技だなどと言う声もあったが、それを絶ったのはヤマトと行動を共にしたメルダやバーガー、そして彼らと話したディッツ提督であった。
以後、地球や月の大使、第十一番惑星などからヤマトを英雄として讃える声が多くなっていったのである。
「お前らが戻るまでの足止めくらいはしてやるよ、古代」
火星を超え、彼はまだ生きているはずの戦友へと語る。
そしてもう1人、ヤマト救出に全てを賭ける男がいたのである――。
――第六話 「審判の時」――
読んでいただきありがとうございます。
言うて戦闘パート半分くらいじゃね? と思われた方。その通りです。
殲滅ではなく突破を目的とするとこんなに早く終わってしまうのかと思いました。
さて、次回はいよいよ(現時点での)最終回です。よろしければ最後までお付き合いいただけると幸いです。