「……なぜ今になってそのような話を。面談の時にはごく普通の孤児だとお聞きしましたが」
「今の話をして、あなたはあれを雄英に受け入れましたか? 何をどう説明したところで門前払いが関の山だ。でも一度受け入れてしまったとなれば話は別ですよね。大量除籍も辞さないあなたでも、あれだけ戦闘に長けた優秀な金の卵を早々に何の理由もなく除籍処分になんてできないでしょう。あなた風に言うと、「合理的に」判断した、ということになるんでしょうかね。どうです、ご理解いただけましたか?」
白銀は含み笑いすらしながら事もなげに答えた。相澤は絶句する。この男、本気で言っているのか。仮にも政府直属の身分であるくせに、れっきとした教育機関である雄英に騙し討ちを仕掛けるようなことをするなんて。けれどその、あまりに飄々としたいっそ潔いとすら言える態度に、どこをどう反論すればいいのか言葉に詰まる。
「……今更そんな頓狂な話を信じろと言うんですか? 私にはあなたが自らの後ろ暗さを揉み消すために、下手な芝居を打っているようにしか見えない」
「我々の身分を証明する文書なら後日お送りしますけど。まぁ、今すぐ信じろというのは無理な話でしょうねぇ。私が教師だったら絶対に信じません。こんな胡散臭い男の言うことなんてね」
「信じられない」という相澤の率直な意思表示に、白銀は否定すらせずむしろ積極的に賛同の意を示した。ことごとく予想の上をいく白銀の反応に、相澤は思わず鼻白む。
「まぁま、そう言うと思いまして、相澤センセー。あなたにとっておきのサプライズを用意しておいたんですよ。あなたにこの話を信じてもらうために、特別仕様でねぇ」
そう言うと、白銀は再び白衣の内ポケットに片手を差し入れ、今度は四つ折りになった白い紙を取り出した。指と指の間に挟まったそれをそのまま差し向けられ、相澤は用心深く受け取る。
「……これは?」
「ある隠れ家バーへの道筋です。下に書いてあるのは扉の解錠番号、その下のはその先のセキュリティチェックで入力するパスワードです。本来はここにさらに指紋と網膜認証が必要なんですけど、センセーは特別にパスワードのみで入れるよう手配しておきました。あ、番号とパスワードは1日に1回変わってしまうんで今夜中に行ってくださいね」
折り目に沿って開いたその紙には、上半分に手書きの簡素な地図と住所、下半分には数字と、その下にアルファベットや記号を組み合わせたものが走り書きされていた。それぞれの文字がランダムに配置されているところを見ると、白銀の言うとおり何かのパスワードのようだ。
「ここへ行って何が分かると言うんです」
相澤は眉をひそめて訊いた。たかが隠れ家バーがこんなに厳重なセキュリティを備えているということもきな臭いし、そもそも今の話の流れでなぜそんなものの居場所を教えられなければならないのか、まったくもって分からない。
「簡潔に言いましょう。これ以上話を複雑にしないためにも」
白銀はにやりと笑みを深め、手にしていた湯飲みを置いた。再び足を組み直し、だらしなくソファの背に寄りかからせていた上半身をやや前に乗り出す。
「久那夜牙は生きている」
誰!?!?←
急に新キャラ(の名前)が出てきましたが、こいつも中々重要なキャラクターです。
どんどん出てくる……自分でも把握もれ出そうな多さなのでしっかり管理していきたいです。
「夜」がつく名前良いですよね。BLEACHの夜一さんとか。訓読みの音使いを活かした名前すんごく好きです。