血まみれヒーローと黒の少年   作:べにこ

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第6章・謎の少年②

 

 ――あの対人戦闘演習の翌日。出久はオールマイトを空き教室に呼び出し、翔のことを相談した。彼がオールマイトと何らかの縁故があるのだと仮定し、何かの手がかりになればいいと彼の容姿や個性、戦闘能力なども含めて包み隠さず説明したのだ。

 

 

 しかし、オールマイトから返ってきた言葉は出久の予想だにしないものだった。

 

 

「ワン・フォー・オールの秘密を知ってる生徒!? 誰それ!?」

「ええ!? ご存じないんですかオールマイト!」

 

 

 事の次第を聞いたオールマイトが顔を青ざめながら言うので、出久は思わず驚きの声を上げた。どう見ても未成年の翔がどうやってワン・フォー・オールの秘密を知ったのか見当さえつかなかった出久だが、いざオールマイト本人さえ分からないと知ると、堰を切ったように疑心と不安が胸中をせめぎ合う。

 

 

「じゃあ、一ノ瀬くんは何でワン・フォー・オールの秘密を……?」

「私の知らない、私の秘密を知っている人物か……うーん……」

 

 

 二人そろって向かい合い、腕組みをしながら考え込む。「聖火のごとく受け継がれてきた、人に譲渡可能な個性で、その事実はごくごく一部の人間しか知らない」という以外にワン・フォー・オールの知識がない出久には、推測できることなどさして多くはない。それでも何とか知っていることから可能性のありそうなことを考え出してみる。

 

 

 オールマイトが把握していない、ワン・フォー・オールの秘密を知る少年。そこには必ず秘密を知り得た何らかのいきさつがあるはずだ。オールマイトが信頼し、自ずから秘密を話す以外に、それを知る、方法。

 

 

『5年前……敵の襲撃で負った傷だ』

『これは世間に公表されていない。公表しないでくれと私が頼んだ』

 

 

 飛び抜けた戦闘能力。好戦的にぎらつく、赤い瞳。

 

 

(まさか、)

 

 

 恐ろしい考えに行き当たり、出久はすぐさまそれを頭の中から追い払おうとした。けれどその予測は妙に現実味を帯びて生々しく、振り払っても振り払っても煙のように頭の中をくゆり続ける。

 

 

「うーん……もしかしたらもしかしてだけど……う~っすら心当たりらしきものならあるかも……」

 

 

「そうなんですか!?」

 

 

 ようやく解決の糸口が掴めたと思って、出久の声は格段に明るくなった。しかし、オールマイトの表情は固く話し方も歯切れが悪い。

 

 

「うん……でも、そうだとすると……うーん、これは厄介なことになったな……」

 

 

 オールマイトはさらに深く首を傾げ、何か考え込んでいるようだ。しばらくして顔を上げ、神妙な面持ちで出久を見据える。

 

 

「緑谷少年。少々きつい言い方になってしまうが、はっきり伝えておこう。彼には当分

近づかない方がいい」

 

 

「えっ」

 

 

 思わず間抜けな声が出た。それがおよそ、オールマイトから発されたとは思えない言葉だったからだ。

 

 

「何の説明もなしにこんなことを言うのは、ずるいと思われても仕方ないと思う。だが、事はかなり複雑に絡まり合っているようだ。相澤くんも何やら、一ノ瀬少年のことで動いているようだし……学校全体で対応すべき事案なのかも知れない」

 

 

「相澤先生が……?」

 

 

 急に予想だにしない名前が出てきて、出久は戸惑った。相澤消太。1-Aの担任教師。彼が翔のことで動くとすれば――一体そこにどんな事情があるというのだろうか。咄嗟にここ一週間の相澤の様子を思い出してみたが、特に翔だけに特別な態度をとっているような記憶はなかった。それもそうだろう。相澤は教師だ、どんな事情を抱えていようと生徒がそれと気づくような態度をとるはずがない。

 

 

「ともかく、そうなってくると、一介の教師でしかない私が個人でできることは少ない。君自身にも関わることなのに、何も教えることができなくてすまないね……事情が動き次第、君にも必ず伝えるよ。だからそれまでは、ひとまず一ノ瀬少年とは距離を置いていてくれないか」

 

 

 オールマイトは心底申し訳なさそうに眉尻を下げると、出久の肩をぽんと叩いた。大きくて肉厚な手のひらの感触。それを境に記憶は途切れ、出久は思考の海からゆっくりと浮上する。

 




回想~。何やら恐ろしい考えにたどり着いてしまったデクくん。
まあ突然あんなこと言われて(第3章参照)警戒しない方がおかしいんですよね。まず罠か何かだと疑うのが普通だと思います。

そのうえで一体どういう行動をとるのか?
常にも増して間延びした展開になりますが根気よくお付き合いいただければ幸いです……。
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