「一ノ瀬の個性は翼と伸びる爪だ。伸縮、出し入れ自在で今は引っ込めてるけどな。また、編入試験で優秀な成績を収め、奨学金を受けることになった特待生でもある。遅れをとるのはお前らの方かも知れんということだ。これを機により一層励むように」
相澤の発した特待生という言葉に、再び教室がざわめいた。雄英のヒーロー科は2クラスの少人数編成のため、編入での生徒はほとんど受け入れない。編入試験はともすると入学試験より門戸が狭いとも言われる中、編入学どころか特待生として選ばれたということは、並大抵の実力者ではないということだ。いくつものどよめきと「すごい」という言葉を受け恥ずかしそうに笑う転校生に、相澤は空いている席を指さし着席を促す。
早くも普段のホームルームが始まる中、転校生が小走りに教室の後ろへ向かう。相澤が指定したのは出久の右隣の席だ。しかし出久はそれが見えていないかのように一心不乱に机にかじりついている。相澤が口にした転校生の個性を早速研究ノートに書きとめているのだ。
「一ノ瀬翔くん……翼と爪かぁ。良いな、やっぱり空が飛べると戦闘でも救助でも自由度高くなるもんなぁ。しかも出し入れ自由、敵側に個性を悟られずに近づけるのは大きい。爪はどのくらいの強度なのかな、折れたらもう生えてはこないのかな? 再生能力が高いとすればわざと折って、投擲系の武器としても使えそう。となると翼も……? やばい、強度と再生力次第じゃ相当汎用性高いぞ……」
ぶつぶつと個性の推察を呟く出久の隣に、転校生が座る。自分のことを言っているのだろうかという疑問に満ちたぎこちない視線に、深く考え込んでいた出久はしばらくしてからやっと気づいて顔を上げた。自分の隣に空いた席に転校生が座るとはまったく思っていなかったのだ。
「あ、ご、ごごごごめん! き、気持ち悪かったよねブツブツと! 忘れて!」
「いや……」
やばい。先ほど転校してきたばかりの彼の声を女性のようだと聞き間違え、さらにはこんな失態まで犯してしまうなんて。申し訳なさと恥ずかしさから尋常でない速度で手を顔の前で振る出久に、転校生はぎこちないながらもにこりとあたたかく笑う。
「気持ち悪くなんてないよ。よろしく、えっと……緑谷って、呼んでいいのかな?」
「! うん! よろしく!」
出久は差し出された手を握って元気よく答えた。赤い瞳が優しく細められてこちらを見る。先ほど感じた異様さが嘘のようなその柔和な雰囲気に、出久は失態を犯した不安が一気に払拭されていくのを感じた。間違いない。この人、とってもいい人だ。
挨拶が終わると、転校生は早速隣の瀬呂に声をかけられ、そちらと話し出した。出久は今し方握手を交わした手をじっと見つめ、ふと思い当たる。
(あれ? 僕、自分の名前教えたっけ?)
今回はこんな感じで割と細かく区切って投稿しようと思います。
1000字~2000字くらいかな?なので更新頻度も上げられる……はずです!