血まみれヒーローと黒の少年   作:べにこ

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第7章・獣の住処②

 それは30代くらいの男だった。がっしりと筋肉のついた体に、白いタンクトップと、親の敵のようにポケットが付いたカーゴパンツ、スケート靴かと見まがうごついブーツという出で立ちだ。彫りの深い顔には眼帯がかかっていて、ただ一つの目は魚のようにぎょろりとしている。

 

 

 男の背後にはもう一人、仲間とおぼしき者がこちらを正面にして立っていた(まさか二人いるとは思わなかったが、おそらく手前の男の陰に隠れて見えなかったのだろう)。こちらは首から下は人間、上は鷹なのか鷲なのか、とにかく大型の猛禽類で、まさに「鳥人」と形容できる風体だった。個性の関係で、人間でない別の動物の身体的特徴を持つ人は少なからずいるが(クラスメートの蛙水梅雨なんかはその典型だ)、それを考慮してもそのひどく憔悴したようにぎらつく瞳は常人のものとは言い難かった。はちきれんばかりに鍛え上げた肉体の上に迷彩柄のジャージを着込み、袖からは茶色い羽に覆われた手が飛び出している。

 

 

 どちらとも、たった今自分たちを追いかけている存在に気づいたといった様子でしっかりと出久を視界に捉えていた。その咎めるような脅迫するような剣呑な視線は、明らかに一般人のそれではない。人を傷つけ恐れさせることに慣れた、おそろしい人間の雰囲気が容赦なく出久を突き刺す。

 

 

「あ? 何だてめぇ」

 

 

 黙り込んでいる出久に痺れを切らしたのか、手前の眼帯男が半ば恫喝のように声をかけてきた。それでも出久は何も言えない。まさかこんな、陳腐な任侠ドラマのような状況に行き遭うなんて想像すらしていなかったからだ。

 

 

「おい、そいつか?」

 

 

 今度は鳥男が眼帯男に声をかける。眼帯男は出久から目は逸らさないまま、僅かに首だけ動かして質問に答えた。

 

 

「いや、さっきのガキじゃねえ。別のガキだ」

「リストに載ってた奴か?」

 

 

 眼帯男は黙り込み、ただ一つだけの目でじっと出久を見つめた。何かを見定めるような不躾な視線に、出久は体が内側から石になっていくような感覚を覚える。不安と恐怖で塗りつぶされそうになる頭の中で何とか思考する。

 

 

 リスト。リスト? 何だ。何のリストだ。さっきのガキ、とは誰のことだ。

 影のように路地裏へ消えていく翔の姿が脳裏をかすめた。

 

 

「………いや、違ぇ」

 数秒の間をおいて、眼帯男が言った。奥にいる猛禽男の表情が酷く歪む。鳥頭なのに、その表情の変化は出久にもよくわかった。

 

 

「はあ? おいおい、どうすんだよ。バレねぇようにやんねぇと報酬出ねぇんだろ?」

「わぁってるって、騒ぐな。………問題ねぇだろ、しゃべれねぇようにしたらよ」

 




お久しぶりです。紅玉あらため赤錆はがねです(だいぶ前に改名しました)。

前回の更新から1年以上間を空けてしまい、皆さんにはご心配をおかけしています。ごめんなさい。

ここ1年創作意欲がわかず、一時期PCを手放してしまったこともあり、かなり長い間創作から離れていました。今月新しくPCを買い替え、楽しみにしてくださっている方々のため、また自分の思い描いていた夢小説の世界を描ききるために、執筆・更新を再開することにしました。

相変わらず更新頻度は低いですが、精いっぱい執筆・更新を続けていきたいと思います。
心機一転、再スタートした『血まみれヒーローと黒の少年』を、どうぞ末永くよろしくお願いいたします!!他の私の執筆作品たちもどうぞご贔屓に!!
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