血まみれヒーローと黒の少年   作:べにこ

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第7章・獣の住処③

 眼帯男は低く這うような声でそう言うと、カーゴパンツにくっついた大量のポケットの一つに手を突っ込んだ。中から現れたのは鞭。黒い握り手の先に太い縄がぶら下がり、地面にとぐろを巻く。

 

 

 出久の脳内がおそろしい予感で凍りつく間に、奥の鳥男も何やら得物らしきものを準備し始めた。眼帯男が出久の方へ一歩を踏み出す。すると彼の握っている鞭が、びきびきと硬質な音を立てながら変異し始めた。見るからに、硬く。縄は本来の柔らかさを保ちながらも鉄のような光沢を帯び、見るだけで気持ちが陰鬱になる暗い灰色に染め抜かれていく。何の変哲もなかった鞭は、まばたきをする間もなく凶悪に硬い鉛色の鉄鞭へと姿を変えた。

 

 

 まさか。切島と同じ「硬化」の個性。自分でなく、ふれたものに適用される個性か。

 

 

 頭の冷静な部分はそう瞬時に分析したが、出久がこの不穏きわまりない急展開についていけていないことに変わりはなかった。眼帯男がそれで自分に何をするつもりなのか、考える前に思考が自動的に遮断する。これから数秒後に襲うおそろしい未来の予感に、肩口からざあっと血の気が失われていく。

 

 

「え、ちょ、ちょ、と」

 

 

 ようやく出たと思った声はひどく掠れて素っ頓狂で、出久の内心の混乱を包み隠さず正直に表していた。だが眼帯男が聞く耳を持つ気配はない。

 

 

 まずい。逃げなければ。でもどこに? 出久が横方向に逃げられないよう、男たちは少しずつ動いて位置を調節している。慣れた動きだ。背後には今し方通ってきた道とも呼べない狭い隙間があるが、身体を横にしなければ通れないような場所で、後ろも見ずに素早く後ずさることなどできるはずがない。振り向いて飛び込むか? 駄目だ。その間に襲いかかられてしまう。

 

 

 出久は絶望とともに悟った。逃げ場はない。

 男たちが近づいてくる。膨れ上がった殺意が全身を貫き出久の足を地面に縫い止める。

 心臓が早鐘を打つ。後ろ頭が雪に吹き付けられたように冷たくなる。

 

 

 やばい。やばいやばいやばい。

 殺される!

 

 

「悪ィな、ガキ。居合わせたのが運の尽きだと思って、おとなしく死にやがれ!!」

 

 

 眼帯男の声高な死刑宣告とともに、ひゅるり、と残忍な音色を奏でながら鞭がしなった。陽光を受けた鉄鞭の先がぎらりと光り、毒蛇のような獰猛さで出久に襲いかかる。

 

 

「ひっ!」

 

 

 咄嗟に身体を丸め、頭部をかばった出久の両腕に、無意識にワン・フォー・オールの力が漲っていく。けれど放つことはできない。狭い路地。そこでワン・フォー・オールの絶大な力を使うことの恐怖。目の前の男二人に向かうであろう甚大な被害。一般人の公道での個性使用禁止。個性をひた隠す出久が背負う、様々なしがらみが無意識下でその防衛本能を絡めとり、決断力を鈍らせた。

 

 

 腕の中に溜まった力がすんでのところで踏みとどまる感覚に、出久は絶望する。何で。どうしてこんな時に。歯噛みする間に眼帯男の鞭が目の前まで迫る。鉛色の縄先が出久の頬にふれそうになる。

 

 

 ――その時だった。

 




お久しぶりです。赤錆はがねです。
この度ようやく最新話を更新させていただきました。読んでもらえると嬉しいです。

前回の更新で「執筆・更新を継続的にしていきたい」と言ったにも関わらず、さらに半年以上間を空けてしまい、楽しみに待ってくださっている皆さんにはご心配をおかけしています。本当にすみません。

正直に言うと、書き始めた頃より夢小説への創作意欲がかなり薄くなってきていて、私自身の遅筆さと集中力の短さも相まり、中々作品を書き進めることができずにいます。大変情けない話ですが、話のストックはあるのに投稿サイトで更新作業をするのさえ億劫になっている有様です。

でも、自分の頭の中に思い描いている世界を文章にしたいという思いはまだ残っています。続きを楽しみに待ってくださっている読者の皆さんのために、また自分自身の創作の世界をこのまま腐らせてしまわないためにも、執筆・更新を少しずつではありますが再開することにしました。毎日少しずつでも執筆する習慣を身につけ、時間がかかっても作品を形にするべく頑張っていこうと思います。

相変わらず更新頻度は低いと思いますが、意欲の続くかぎり執筆・更新を続けてまいります。

『血まみれヒーローと黒の少年』を、どうぞ今後もよろしくお願いいたします!他の私の執筆作品たちも、こちらはさらに更新頻度は低いと思いますが徐々に書き進めていきたいと思います!
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