血まみれヒーローと黒の少年   作:べにこ

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第7章・獣の住処⑦

 出久の方はと言うと、惚けたように少女を見つめたまま立ち上がることすらできなかった。翔のことも含め、あまりにたくさんのことが起こりすぎて、いよいよ脳が状況把握するのを拒絶しようとしている。彼らは誰で、今叩きのめされてのびている男達は誰で、なぜ両者は戦ったのか。疑問はわいてくるのに、思考がついてこない。口が馬鹿みたいに半開きになっているのを遠く意識する。

 

 

 そのまま何気なく視線を路地の奥の方に――気絶した鳥男とその上へ跨がる巨狼の方にずらした出久は、すんでのところで出そうになった声をのみこんだ。それはうずくまった姿勢からゆっくりと身を起こそうとしている。その身体の下には仰向けになって気絶した鳥男がいるが、サイズからして明らかにさっきの巨大な狼ではない。

 

 

 それは少年だった。180cmくらいの、薄暗い路地裏で発光しているように見えるほど明るい、金の髪の少年。少女のそれとまったく同じ色だ。目は――今気づいた。片方は髪と同じ金だが、片方は灰色のような青色のような、何とも名状しがたい淀んだ色をしている。見えているのか。よく分からない。

 

 

 しなやかで動きやすそうな筋肉をまとった肉体はすらりと長く、人間なのにどこか野生の獣を思わせる体つきだ。胸板が厚く、腹も六つに割れているのに、なぜか筋肉の重さを感じさせない。とことんまで実践を重んじて磨き上げられた肉体といった感じだ。

 

 

 ……なぜ出久にそのような彼の肉体の詳細が分かるのか。断じて男性の肉体を観察するのが好きというわけじゃない。確かにヒーローの活動を追いかけるのは好きというか、ほとんど趣味みたいなものだけれど、それとこれとは別だ。

 

 

 正直あまり声を大にして言いたくはないが――まあ実際に声には出していないが、むしろ声を上げそうになっているのを必死に抑え込んでいるというか。どういうことかと言うとつまり――少年は全裸だった。外に出るのなら当然身につけるべき衣服はおろか、下着すら着ていない。当然、いわゆる男性の象徴、もっとも大事な部分も丸見えだ。

 

 

 しかし少年は出久の視線など露ほども気にしていない様子で立ち上がると、のんびりと伸びをしてあくびまでしてみせた。その態度があまりに堂々としていて、目をそらした方がいいのかあえて気にしない方がいいのかも分からない。

 

 

 少年は実に気持ちよさそうな伸びを終えると、おもむろに足下に転がっている鳥男の襟首をひっつかみ、少女のいる方へずるずると引きずっていった。同じく意識のない眼帯男と背中合わせに座らせると、傍にいた少女が再び指でくるくると螺旋を描く。途端、手持ちぶさたに宙に浮いたままだった鉄鞭が彼女の指の動きにあわせて鳥男と眼帯男の身体をぐるぐる巻きにしてしまった。実に手際の良い拘束である。

 

 

(個性……物体操作、とか……? オーソドックスだけどなんて強力な……)

 

 

 指の動き一つで敵をのしてしまうなんて、個性ありきのこの世界でもちょっと信じられる光景ではない。彼女の魔法使いのような手際と佇まいにすっかり魅了され、出久はごくりと生唾を飲み下した。

 

 

「うーい、いっちょあがりーっと」

 

 

 二人の男の拘束が終わり、少年は人心地ついたとばかりにぐるぐると両腕を回して言った。うわ、喋った、と思って少し驚く。というか、未だ彼は当たり前のように全裸のままだが、良いのだろうか。そろそろ下着だけでも着てくれないと目のやり場に困る。

 




GWあたりに「書くのを諦めない」と豪語してからはや2ヶ月…。
みなさんいかがお過ごしですか…(震え

しばらくまた何もせず動画ばかり見て過ごす廃人生活を送ってしまっていたので、これから気合を入れ直して投稿を続けてまいりたいと思います。どうかお付き合いください…!
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