三人は今しがた太陽が逃げ込んでいった、正面から見て左側の一番大きな玄関口に向かった。門扉を少し奥に入ったところから玄関口にかけては、例の色とりどりのタイルが埋め込まれた小道のようなものが作られていて、とても綺麗だった。
「あ」
建物の玄関口まで一歩手前と言うところで、声が上がった。桜が立ち止まり、何かに気づいた、というふうに口に手を当てている。
「そういえば、今日あいつら来てるんだった」
「えっ!」
その言葉に、翔も驚いたように声を上げた。そのままちらりと出久の方に視線を送る。何だろう。今日は来客があって都合が悪い、ということだろうか。
「そっか……タイミング悪かったな。全員?」
「うん。伝えとこうか?」
「ごめん。頼む」
翔が頼むと、桜はひらりと手を振って踵を返した。すれ違いざまに出久の肩に手を置いて、「じゃあね、緑谷くん」と囁く。一度も名乗っていないのに名前を呼ばれるのは・・・しかも女子に呼ばれるのは何だか妙にぞわぞわして、出久は口をもごもごと動かした。翼(が変身した茶トラの猫)が、そんな出久を金と灰青色の瞳でぎろりと睨みつけ、桜に続いていく。
(こわい……)
二人(正確には一人と一匹)が建物の別の出入り口に向かって歩いていくのを見届けて、翔が言った。
「ばたばたしててごめんな。こっち」
翔と出久はそろって玄関口へと入った。建物の内部は玄関口より一段高くなっていて、床は木目調になっている。下駄箱も木製のものがいくつか置かれていて、ともすると学校のような印象を受ける内装だった。
二人は靴を脱ぐと、靴下のまま中に入った。すぐ傍に備え付けられた階段を上がり、3階で長い廊下に出る。両側はやはり木目調の壁で、番号や名前の書かれたプレートが取り付けられた扉や、外が見渡せる窓、トイレらしき扉もあった。全体的に設備がまだ新しく、木目も明るい茶色であたたかい印象を受ける。
突き当たりは少し開けた空間になっていて、テーブルと椅子がいくつか置いてあった。奥にキッチンと冷蔵庫が見えたので、ここで食事をとったりするのかも知れない。そこを右に折れ曲がり、コの字になった建物の最奥部あたりに来たところで、翔はようやく止まった。
壁に一つだけある扉。そこも他の扉と同じように白いプレートが取り付けられていて、「院長室」と印字された上にマジックか何かで「なぎとのへや!!」という文字がプレートからはみ出しそうなほどダイナミックに書いてある。字の幼さからして、小学生くらいの子が書いたものだろうか。
翔は扉の前で立ち止まると、出久を振り返って言った。
「この辺でちょっと待っててくれるかな。すぐ戻るから」
「う、うん。分かった」
出久が頷くと、翔は扉を開けて部屋の中に入っていった。
今日の分更新です。
生活リズムが変わってから完全な夜型になってしまい、おそらく小説の更新はこのくらいの時間が続くと思います…。
ここから怒涛のキャラ紹介が始まります。それぞれの個性や過去など、色々想像しながら読んでもらえたら嬉しいです。