対人戦闘演習は順調に続き、ついに最後の対戦を残すのみとなった。今日転校してきたばかりの、個性も知れない実力未知数の転校生。対するのはクラス随一の戦闘センスと獰猛性を誇る勝己。当然クラスメート達の注目度は高く、誰もが固唾をのんで試合が始まるのを待っている。
「ではラスト、一ノ瀬対爆豪だ。転校初日に演習なんぞ災難だとは思うが、これが雄英のやり方なんでな。慣れてくれ」
相澤が一言そう声をかけると、転校生は準備体操をしながらにこりと笑って「構いませんよ」と答えた。同じように体を温めながらも転校生を終始にらみ続けている勝己を見て、出久は気が気でない。やっぱり余計なことをするんじゃなかった、転校生はああ言っていたが本当に大丈夫なのだろうかと、後悔と不安が脈を速くさせる。
「では始め!」
相澤の合図とほぼ同時に、まずは勝己が飛び出した。姿勢を低くして転校生の懐に飛び込み、右から爆破を食らわせようとしている。それはまさに電光石火の攻撃で、見ていた出久は思わず息をのんだ。
右から攻撃するのは相変わらずだが、以前出久と対戦した際に指摘されたのを覚えていたのか、よりタイムロスがなくなるよう腕の軌道を修正している。キレもあり、何より速い。こんなもの、そう簡単に避けられないだろう。
「あぶな……!」
出久は思わず叫びかけた。が、すぐにそれが杞憂であったことを知る。勝己の右の手のひらが爆発を起こす一瞬前に、転校生がひらりと跳躍してその攻撃をかわしたからだ。やや前のめりの姿勢から左腕を突きだし、前傾姿勢になった勝己の肩に手をかける。そのまま勝己の背に自分の背を合わせるようにしてくるりと一回転し、軽やかにステップを踏んで距離をとった。
これには息をひそめて見守っていたクラスメート達の間からもどよめきが起こった。戦闘センスが飛び抜けている勝己の渾身の一撃を、片腕一本で易々とかわしてみせたのだ。その軽やかでしなやかな身のこなしは、彼が優れた戦闘能力を持っていると証明するのに十分なものだった。
「クソッ……が、まだだ!!」
渾身の一撃をあまりにも容易くかわされ、早々に勝己の苛立ちのメーターが限界まで振り切れた。すぐに振り向き、鋭く左足を踏み出す。焦ったのか、まだ右からの攻撃だ。転校生は今度は力を抜くようにして上体を後ろに倒した。対象物を失って宙をかく勝己の右腕を下から掴み、そのまま右、勝己から見て左の方に思い切り引っ張る。
体勢を崩された勝己は咄嗟に空いた左の手のひらを爆破させて立て直そうとしたが、踏ん張ろうとした左足を転校生の右足に掬われ、さらにバランスを崩してしまった。大きくつんのめるのを回避しようと、何とか体を丸め地面の上でぐるりと前回りをする。数mの距離をとってすぐさま振り向くと、既に臨戦態勢で体を構えた転校生と視線がぶつかった。
勝己を見下ろすようにして、整った顔がにこりと微笑む。
「うまいね。でもまだまだだ」
「あ”ぁ!?」
さも余裕だとばかりに言われ、勝己は思わず凄んだ。それにも動じず、転校生の目がきらりと赤い光をこぼす。
「知らないもんね。君は、まだ」
その小さな、呟きとも言えないような呟きを、もっとも近くにいた勝己だけが確かに聞いた。抑揚がなく、何かの感情を抑えつけたように妙に平坦なその声は、聞く者の心をざわつかせる不思議な響きをはらんでいた。
勝己の橙色の瞳に、転校生の端正な笑顔が映り込む。
「今度はこっちからいくよ」
さあこの勝負、どうなるか!?
このシーン見ると翔が俺TUEEEEしてるように見えますが、実力差自体はそんなにないと思います。かっちゃんならすぐ追いついてくるでしょう。