銀河英雄ガンダム   作:ラインP

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この話を書いている途中、中間考査のテスト勉強をそろそろしようかと思ってた矢先、
とある無料FPSゲームにハマってしまいましてね。
日々戦い抜いていたら、いつの間にかテスト用紙が帰ってきてね。
チェックマークって正解ってことだよね、すべてチェックマークだから満点だよね。
テスト合格の○マークが赤く大きく書かれてるから大勝利だよね?
そう考えていたら何故か毎日補習授業を受けることになっていました。
解せぬ。


第十八話 伝説の頂点

 

 

 ザ・魔雲天の必殺技マウンテンドロップ。

 

 

 それは空高く飛び上がり全体重をかけて相手へとのしかかり押しつぶす、言ってみればただのフライングボディアタックである。だがそれを身長285m、体重1000キロもの巨漢、そして体が岩石で出来ているザ・魔雲天が繰り出せば、それ即ち必殺の技へと変わる。狭いリング上にいる敵に向かってその巨体の両手足を広げ飛び掛かることで逃げ場を無くすことができる、また、その頑丈なボディ故にスーパーアーマー効果が発生し、相手が昇竜拳などの対空攻撃繰り出してきても迎撃されることなく確実にダメージを与えれるのだ。さらに試合開始直後にいきなりこの技を出された相手は態勢を整える間もなく防御を固めることしかできず、仮にその攻撃に耐えれたとしてもその後の攻撃のイニシアティブはザ・魔雲天へと握られることになるだろう。

 

 

 ただ、今回の相手は百戦錬磨のシェーンコップ。

 

 

 マウンテンドロップは迫力満点の必殺技ではあるが、落下速度の変化が乏しく、途中で落下起動を変えることもできない。つまり、技の始動を見れば、落下位置から着弾タイミングまで容易に予測可能だ。

 シェーンコップは慌てることなく直撃する瞬間に合わせて前方回転受け身を行う。そして前方回転受け身で発生する無敵時間でその巨体をすり抜けたシェーンコップはリングに叩きつけられ技硬直状態のザ・魔雲天へとお返しとばかりに怒涛のラッシュをかける。

 リングで倒れているザ・魔雲天、その巨大な顔面に向けて基本のワンツー、踏み込みながら頬を抉る音速ブロー、そして菩薩の拳を発動させデンプシーロールで攻め立てる。シェーンコップはそのまま3分後、第一ラウンド終了のゴングが鳴るまで無酸素運動でデンプシーロールによってザ・魔雲天の顔面を強打し続けていた。それを食らい続けたザ・魔雲天の頭部は見るも無残なまでに削れ果て、セコンドへと向かう彼は千鳥足となりフラフラで今にも倒れてしまいそうだ。

 

 

「菩薩の拳を維持したままのデンプシーロールは賭けでもあったが、それに見合うだけのダメージを与えれたな。あの様子だと第二ラウンドまでに回復するのは無理だろう。このまま勝負を決めてしまうべきだな」

 

 

 ザ・魔雲天の様子を見て、勝利を確信していたシェーンコップ。

 だが、どこからともなくバタ臭い女の子が大きな岩を担いでリングへと駆け寄ってきて、「ザ・魔雲天!新しい顔よ!」と叫び、ザ・魔雲天へとその岩を投げつける。その岩がザ・魔雲天の頭部へと直撃すると、削れきった顔が取れ、なんと新しい岩がザ・魔雲天の顔へと早変わりしたではないか。ザ・魔雲天は今までの疲労困憊した様子が嘘のように軽快な足取りへと変わり、スキップをしながらセコンドへとたどり着く。

 

 

 結果、体力満点へと回復したザ・魔雲天と、3分間菩薩の拳を維持し無酸素運動を続け疲弊したシェーンコップと形勢がひっくり返る。

 

 

 1分間のインターバルの間、ユリアン・ミンツによるマッサージで少しでも疲労回復を試みたが、予選でのバトルロイヤルからの連戦により、思った以上に体力を消耗していた。超人強度が50万パワーもあるザ・魔雲天と、ただの人間であるシェーンコップではそもそもの体のつくりが違う。そもそも本来ならIS国家代表選手選抜に人間が参加するなど想定されてはいないのだ。ここに至っては致し方ない、シェーンコップは死をも覚悟して臨む。

 

 

「ユリアン君、アレを頼む」

 

「本気ですか?アレをやって正気を保てた人はいませんよ」

 

 

 シェーンコップの言葉にユリアンは思わず問い返してしまうが、彼の覚悟を決めた険しい顔を見て本気なのだと悟る。ユリアンはその覚悟に応えるべく、全身全霊の小宇宙(コスモ)を練る。上空ではユリアンの守護星座である牡羊座がユリアンの小宇宙(コスモ)に呼応して激しく輝いていく。更に、変化は彼の体にも及ぶ。彼の嫋やかな細い体、一見、少女のようにも見えるプリキュアドレスに相応しい美しい体。そんな彼の体が小宇宙(コスモ)の増大に応じて、次第に筋肉が膨張していき、ヘラクレスもかくやというべきな見事な逆三角形へと変化していく。

 リングサイドでは「いいよ!デカイ!キレてるキレてる!」「ナイスカット!」「大胸筋が歩いてる!胸がケツみたい!」「上腕二頭筋ナイス!チョモランマ!」などと、ユリアンの筋肉を見るためにわざわざ銀河帝国オーディン星からやってきた追っかけファンが恒例のコールをあげている。

 そんな彼らに見事なポージングで応えながら小宇宙(コスモ)を練り上げたユリアンは、シェーンコップの背後に立つ。覚悟を決めた男の背中。一本の指に全小宇宙を乗せて、その背中の中心にある秘孔を貫く。そしてその秘孔へと膨大な小宇宙(コスモ)を流しこむ。

 

 

  奥義・心霊台

 

 

 膨大な小宇宙(コスモ)を背中から流し込まれ、全身を駆け巡る。これは成功すればありとあらゆる死を克服し、絶大な力を得ることができる。だが効果が表れるまでに「死よりも辛い激痛」が被術者に襲い掛かる。

 実際、シェーンコップは今まで感じたこともない壮絶な痛みに声を上げることもできず目を見開き口に泡を吹く。しかし、しかしシェーンコップはそれに耐える。目を真っ赤に血走らせ、口を引き結び、拳を握りしめ、大地を強く踏みしめて耐え抜く。

 

 

 痛みに耐えること三日三晩。

 

 

 四日目の朝、ようやく痛みが引き、彼の全身には未だかつてない活力が沸き上がっていた。

 シェーンコップは、溢れ出る力をゆっくりと噛みしめ、その場に座り込む。彼はおもむろにスカートの中からバスケットを取り出す。バスケットの中に入っていたのは特大のタッパとバナナ、そしてペットボトルのコーラであった。特大のタッパの中にはおじやが入っており、うめぼしも添えられていた。シェーンコップはそのおじやを大口をあけて掻き込んでいき、バナナを飲み込むがごとく口に放り込む。最後にペットボトルを激しく上下に振り、コーラから炭酸を一気に抜いてから飲み干す。

 その光景に観客たちは唖然としている。

 

 

「おいおい、これから第二ラウンドだっていうのに、なんであんなに食べてるんだ」

 

「そんなに食ったらボディに一発で地獄だぞ。死んだなあいつ」

 

 

 彼の行動を測り兼ね、観客たちはヤジを飛ばすが、「さすがだな」と一人の男が感心する。

 

 

「炭酸の抜いたコーラというのはエネルギー効率が極めて高いのですよ。それに特大タッパに入ってたおじやとバナナも速効性のエネルギー食です。さらに梅干しを添えてあるので栄養バランスもいいだけじゃなく、四日前に作った弁当でも腐敗が抑えられています。そしてそれをあれだけ食べきれる消化力も常人離れしていますね。つまり彼は極めて高いレベルのカラテ家ということです」

 

 

 そう、シェーンコップはこの短いインターバルで一気に回復するためにこの速効性のエネルギー食を食べたのだ。

 更に1時間ほどかけてストレッチを行い入念に筋肉を解きほぐしていく。

 

 

「そろそろ次のラウンドか」

 

 

 リングの対面コーナーを見やると、ザ・魔雲天もゆっくりと立ち上がり、体をほぐしている。

 両者がリングの中心へと歩み寄り、互いに挨拶とばかりに左腕を伸ばし、お互いの拳を全力で打ち抜く。その衝撃に両者の左手が弾き飛ばされたところで第二ラウンドのゴングが鳴り響く。

 

 両手で顎を守るピーカブースタイルで前後左右に首を振って相手の隙を、そして飛び込むタイミングを伺うシェーンコップ。

 対して、王者の貫禄を見せつけるように、両手をだらりと下げ、胸を張って微動だにしないザ・魔雲天。

 

 一見、ザ・魔雲天のその態度はまさに打ってくれとばかりに隙だらけに見える。

 だが、それに反してシェーンコップには飛び込むことができずにいる。

 その理由は両者の対格差にあった。

 先ほどはマウンテンドロップによってザ・魔雲天がリングへとうつ伏せで倒れていたから顔面を攻撃することができた。しかし今回のザ・魔雲天は仁王立ちしている。するとどうだろう、その巨体はまさに聳え立つ富士の山。

 今、シェーンコップが全力で攻撃しても、彼の拳はザ・魔雲天の踵までしか届かない。シェーンコップの頭の高さはザ・魔雲天の踵の高さと同義。なぜならザ・魔雲天とは富士の山が膨大な魔力により超人化して動き出した存在なのだ。つまりシェーンコップは富士の山を前にして、その山を拳で倒そうとしているようなものなのだ。

 

 

「なるほど、この対格差はちょっと想定外だ。だがまだ勝機はある」

 

 

 シェーンコップは空間転移を行い、ザ・魔雲天の右足の外側へと回り込む。

 

 

「菩薩拳!10倍!」

 

 

 以前までと違い、心霊台を乗り越えた彼の体は菩薩拳の10倍をも軽く耐えれるほどに強靭になっていた。そして感謝の正拳突きをザ・魔雲天の右足、その小指へと叩き込む。正拳突きは彼の身長より大きな小指の中心部を貫き。クレーターのような痕を作り出す。

 

 

「~~~~~~っ!」

 

 

 ザ・魔雲天は小指で発生した痛みに悶絶する。

 人体には鍛えられない場所というものも存在する。その一つが小指である。タンスなどの角に足の小指をぶつけてしまい痛い目にあったことはないだろうか?それが菩薩拳によって数兆倍の痛みとなって発生したのだ。

 

 

「感謝の!正拳!突き!オスオスオスオスオスオスオス!」

 

 

 効果ありと見るやシェーンコップは小指へと感謝の正拳突きによる連続ラッシュをかける。菩薩の一念岩をも通す。如何に堅牢な岩肌だろうが同じ箇所へと何度も何度も殴りつけられれば耐えきれるものではない。鍛え上げられた菩薩の拳により、ザ・魔雲天の小指は根元から砕け折れてしまう。小指は人体バランスを支える重要なセンサーである。ここを損失するとまともに歩行することはできなくなる。特にザ・魔雲天は山形の太くて巨大の体をしている分、その巨体を支える足が弱点になる。従って、ザ・魔雲天の体が大きく傾げ、膝をついてしまうのも当然の帰結だ。こうなればもう後はシェーンコップの思うがまま。ザ・魔雲天の胴体部に飛びつき、一気に標高285mの斜面を駆け上る。100mを15秒で走り抜ける彼の健脚を持ってすれば1分も掛からずにザ・魔雲天の頭部へとたどり着く。

 

 

「大男総身に知恵が回りかね。つまり君のことだ。何事もデカければいいというものでは無いのだよ」

 

 

 シェーンコップは拳を高く振りかぶる。その拳にプリキュアの正義の力を集約していく。今はまだこちらが有利。だが長期戦になればバタ臭い女の子の援護がある分、シェーンコップが不利になっていくだろう。だからこそこの一撃で決める。歴代の先輩プリキュアたちの想い。今までの悪との戦いの日々。ひよっこ同然の自分を守り、そして導いてくれた。そしてそんな自分を生かすために志半ばで散っていった先輩プリキュアたち。彼女たちから受け継いだ正義の心がシェーンコップの拳へと集まっていく。今シェーンコップの妄想力は爆発的な勢いで回転していく。回転。すなわち螺旋。螺旋は力を加速させすべてを穿つドリルとなる。シェーンコップは今まさに新たなステージへと昇りつめていた。

 

 

「喰らえ。螺旋垂直瓦割り」

 

 

 シェーンコップの体重は85キロ。その握力は250キロ。いつもより振りかぶる高さは2倍。そして溜め時間は3倍。菩薩拳が10倍。プリキュアの想いで更に10倍。そして螺旋の力が加わり全ての力は冪乗する。

 その力を数値で表すならば85^250^2^3^10^10キロ。

 すなわち超人強度50万を遥かに超える力が放たれるのだ。計算が面倒なわけではない。ノリと勢いというのは大事なのだ。それだけの勢いの拳がザ・魔雲天の脳天に突き落された。その力はザ・魔雲天の頭部を粉砕させ、胴体部を貫き、なお力を失わせずリングをも貫き大地を穿った。すると五重塔第一階の床が崩れ、大地の底へと飲み込まれていく。これにはシェーンコップも驚き、何とか逃げようとするが、第一階の全ての床が崩れているので到底逃げれるものではなかった。その崩壊はシェーンコップだけでなく、ザ・魔雲天、ユリアン・ミンツ、司会と解説、そして多くの観客たちを巻き込み、全てを飲み込んでいった。

 もはやこれまでか。シェーンコップは落ち行く我が身を不甲斐なく思い、胸元から取り出した短冊へと俳句を詠もうとしていたが、その時一気に視界が開かれる。そこはとてつもなく広い空間だった。なんと果てが全く見えない。そしてその空洞の下には大きな島とそれを囲む海が見えた。シェーンコップは今、その島に向かい降下していた。見える限り、その島には森があり、谷があり、川が流れ、湿地帯もあれば砂漠地帯もある。そして集落のような家々が各所に見られた。それに近代的な航空基地や砲台もあるではないか。

 ふと周りを見れば、そこには五重塔第一階にいた者たちも同じように降下している。すぐ近くにはユリアン・ミンツの姿も見える。シェーンコップはスカートの中のショーツを脱ぎ、子種袋を両手と両足で掴み、広げることによりムササビの如く風に乗ってユリアン・ミンツの側へと移動する。そしてユリアン・ミンツを背中に乗せると、とりあえず島の端に見える航空基地へと降下することにした。

 航空基地の滑走路に降り立ったシェーンコップは近くにあったコンテナを開けるとそこに近代的な銃と鎧、そして弾丸を見つけた。鎧をすばやく着込み、銃を手に取り、一緒にあった弾を懐へと入れると、側のコンテナで同じように物資を漁っていた青山テ○マ似の少女の頭部へと狙いを定め、一気に撃ち抜いた。哀れ少女はこちらに気づくことなく頭部をザクロのように弾けさせて絶命する。見ればユリアン・ミンツも軽機関銃を周りの人々へと乱射している。それを受けて、それらの人々も漸く状況を理解したのか、それぞれ落ちている武器を手に取り、一気に乱戦へと発展した。

 シェーンコップは一種のパニック状態になっている群衆の中、冷静に一人ずつ狙いを定め、確実にヘッドショットを決めていく。彼が手に入れたのは高精度で威力の高いスナイパーライフルだったようだ。鎧を着込んだ相手だろうが2発も当てればノックアウトだ。たまにこちらへと撃ち返して来る奴もいたが、シェーンコップは狙いを定めさせないように左右へと体を動かしながら応戦する。これはレレレ撃ちと呼ばれるベテランの技法であるが、彼にとっては誰に教わることもなく自然と体が会得していた。なぜならこれもカラテであるからだ。カラテとはすなわち武器を選ばない万能の武術であるのだから。

 やがてシェーンコップとユリアン・ミンツ以外に動くものがいなくなった航空基地。そんな死体とおびただしい血で彩られたそこで、二人は死体から物資を集めつつ、現状について考えていた。

 

 

「一体ここはなんなのだ。地下にこれほどの空間があるなど、士官学校では習わなかったぞ」

 

 

 まさに混乱の極み。二人共これからどうすれば良いのか途方に暮れていた。だが、そんな二人へと声がかかる。

 

 

「ようこそ、真のIS国家代表選手選抜試験へ。ここは"王者の渓谷"だ。地球空洞説というものを聞いたことがあるだろう。ここはかつてコーディネーターの赤服共が訓練として使っていた地下島だ。プラントが消滅した今は我々が管理して試験会場として活用している。つまりここで生き延びたものが五重塔第二階へ向かう権利を得るのだ」

 

 

 航空基地監視棟の屋上に立っていたその人物、ザ・魔雲天が逆行に照らされながら宣言する。

 

 

「お前ら二人とそして私の3人がこの航空基地で生き残った。この3人は分隊(スクワッド)となる。そして共に協力しあい、他の全ての分隊(スクワッド)を殲滅したとき、チャンピオンとして第一階試験の合格となるのだ」

 

 

 その言葉にシェーンコップは不敵に嗤い、ユリアン・ミンツもまた暗い笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 キラ・ヤマトが参戦するまで後4時間34分。

 まさに急展開。波乱に満ちた第一階試験が幕を開けたのだった。

 


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