学戦都市アスタリスク ≪因果を曲げる者≫   作:まぐなす

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短いです。
と言うよりも更新頻度とネタギレ気味のため次からも短いはずです。



1-6,鳳凰星武祭本戦第二回戦

『鳳凰星武祭本戦第二回戦!先程の星導館新旧1位ペアは最後に少し謎が残ることになりましたが、そんなものを気にしてる暇はない!またも今年は調子がいい星導館学園!去年のダークホースにして序列4位≪氷狼≫高原 空&≪華焔の魔女≫ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトォォ!!』

 

案外責められることなく片付いたシルヴィの件から凡そ2週間。

俺たちは鳳凰星武祭本戦へと駒は進めていた。

 

『対するはレヴォルフ序列15位≪迅速≫アルナ・オルナと序列24位ゴルオリ・マジル!高い身体能力を誇るオルナ選手と、豊富な星辰力が生み出す凄まじい弾幕のマジル選手の組み合わせがどれ程星導館ペアに食らい付けるかが焦点になりそうです!』

 

 

「レヴォルフがここまでちゃんと鳳凰星武祭に出てるの意外だな」

 

ふと個の力が強いレヴォルフが鳳凰星武祭で普通に戦うことに関して少し気になった。

 

「...あんなやつらでも叶えたい願いぐらいあるだろう。どんなしょうもない願いでもな」

 

「あぁ、そいや願いなんてものがあったな。俺もそれが目的だったはずなのに忘れてた」

 

「...え?空、お前それ本気で言ってるのか?」

 

ユリスにしては珍しく本気で間の抜けた声が出る。

 

「あー、何だ?最近になって去年のオーフェリア戦あいつが油断してたからって気付いたら何か悔しくなってな。戦うのが主旨になって来てたんだよな」

 

「お前そんな.........って、え?」

 

「お?」

 

急に言葉を止めた隣を見る

 

「空...それは感情なんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

『バトル...スタート!!』

 

 

「ハッハァッ!!!」

 

「ッ!?氷壁よ!」

 

開始の合図とほぼ同時にオルナが突っ込んできたのに対応するため応急で出した氷の壁だが、一瞬にして割られた。

フィールドに降りた時点で戦闘用に意識を切り替えていたのだが、一瞬オルナを目で追えなかった。

 

「空!...チッ」

 

ユリスを見ればマジルからの銃弾が襲っていた。

 

「ヒョウッ!」

 

横へ意識を持っていかれた一瞬に間合いまで詰められていたが、今回は余裕を持って後ろへ大きく間を取る。

 

「カハッ!!」

 

が、着地前に追撃の膝を受け壁まで飛ばされる。

幸いインパクトの瞬間にズラしたため校章は無事だが、イイのを食らってしまった。

 

『おおっとぉ!これは意外な展開だ!高原選手が一方的に殴られている!』

 

『去年もそうですが高原選手の強さは自分のペースの安定性です。そんな強みの点からオルナ選手の速攻は素晴らしい判断だと思います』

 

「なぁんだ?意外とよえーじゃねぇか≪氷狼≫よぉぉ!」

 

随分好き勝手言ってくれる。

これに関してはあいつが速いだけだろうに。

 

突っ込んできたアイツを左に走って避ける。

また先と同じようにまた飛び込んでくるだろう。

それがわかっていれば対処は難しいものじゃない。

 

「ギ....ッ」

 

三歩と行かず星辰力を十分以上に流した足で回し蹴りをすればクリーンヒット。

距離を離すことに成功した。

 

「≪白城壁≫」

 

ユリスと並び目の前にちゃんとした技の形で氷の壁を生成する。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ、全て焼き切ってやった」

 

マジルの弾幕は相当に濃いものだっただろうが、全てを対処せしめたらしい。

そういうところは氷にはない強さだから少し羨ましい。

 

「こっちは正面から見ると結構速く感じる」

 

「あぁそれだが...恐らくあいつ魔術師だぞ」

 

「どういうことだ?そんなの聞いたことかなかったが」

 

事前情報もよく確認したが、奴は単に走るのが得意なだけだとなっていた。

 

「いや...原因は知らん。隠されてるのかただ気付いてないだけなのか、他に理由があったのか...どちらにせよ、先の突撃の時に万応素が反応していたから魔術師なのは確実のはずだ」

 

「...まぁそれがわかったところで、って話だがな」

 

ユリスと違い俺は万応素に対する感受性はほとんどない。

だから奴が魔術師だとわかったとして、何一つ変化はなかった。

 

「...あぁ、いや、対処が絞られたか」

 

「ああ、あれが能力ならお前の≪ヨトゥンヘイム≫も意味がない」

 

≪ヨトゥンヘイム≫は去年の王竜星武祭でオーフェリア相手に使った技だ。

主な効果は戦場の氷への最適化だが、副効果として範囲内の物体の運動能力を下げる効果がある。

と難しい言葉を使っているが、要は凍えて動きにくくなるだけだ。

本来ならこの技で相手の動きを鈍くしてユリスに一撃を見舞ってもらうのが良かったのだが、オルナが能力で移動しているのなら、≪ヨトゥンヘイム≫の運動能力低下は効果がない。

 

「しーかたなし。第一段階解禁と行きましょうかね」

 

「お前ならもう少し行けるかと思ったが...まぁ本戦まで来れたのなら持った方か」

 

「前回はお相手さんが未知に対応してたからな。今回はこっちの番ってわけだ」

 

情報とは力だ。

いくら強い奴でも弱点の情報が漏れていたらソコを突かれてすぐに負けてしまう。

逆に弱い奴でも強みの情報を知られていなければ、最初の一発は確実に決まる。

前回の王竜星武祭はこちらの情報が何一つとして漏れていなかったからだ。

対して今回は俺の情報は随分漏出済み。

苦戦もする。

 

「作戦会議は終わったかぁー?」

 

「ああ、待たせたな」

 

そう言って≪白城壁≫を解いた瞬間――――――オルナが飛び込んできた。

しかしそうなることは予想出来ていたため、次の対処は決めている。

 

 

両手の握り拳を地面に当て―――

 

 

「―――≪氷手(こおりて)≫」

 

 

突如爆発的に発生した白い冷気は空の直前まで迫っていたオルナの顔を打ち僅かにその勢いを弱め、空は両手に付いた氷でその体を殴り飛ばした。

 

『なんと!勢いに反し吹き飛ばされたのは攻勢だったオルナ選手!そしてそれを行った高原選手の腕には氷のガントレット!』

 

『去年の王竜星武祭の準決勝、リューネハイム選手との戦いから高原選手は接近戦の心得があるのではと密かに囁かれて来ましたが...事実だったようですね』

 

『そう言えばそうだ!?去年の戦いでかの戦律の魔女を接近戦で追い詰めていたァ!』

 

「マッジかよっ!?そんなのアリか!?」

 

「実況解説の言うとおり記録映像ちゃんと確認すれば可能性は考えられたはずだよ」

 

全てで校章を狙い拳を振るう。

一度攻勢に出れればコイツ相手は容易い。

というのもほぼどんな動物も後ろに走るのは苦手なものだ。

ましてや正面の敵に対処しながらとなれば大きく距離を取ることも難しい。

 

「ゴルオリィィぃ!援護寄こせぇぇぇえええ!」

 

「オーケー!!」

 

と、煮えを切らしたのかペアに援護を求めるオルナ。

そしてのペアは見事にオーダーをこなしてみせるだろう。

証拠に後方のマジルの構えるマシンガン型の煌式武装からは既に百に迫る弾丸が発射されていた。

 

やはり優秀だ―――――――――――――――うちのペアは。

 

「≪呑竜の咬焔花≫ッ!!」

 

空の後方から飛んできた炎の竜はゴルオリと空の間に滞空し、その身で空に降り掛かるはずだった弾幕を受け切って見せた。

 

そして空はオルナがユリスの竜に僅かに気を取られたのを見逃さなかった。

 

「神月流居合術―――『勁打』」

 

神月流の居合術とは《居合わせた》時に使う術であり、それは抜刀術に限らず無手での戦い方もそこに含まれる。

そして『勁打』とは特定の型がある技ではなく、ある技そのものを指す。

その技とは――――――発勁。

 

 

 

つまりこの攻撃は

 

「チッ...――――――ガッ!?」

 

防御を通り抜ける。

 

辛うじて校章の前に出てきた腕へ当てればそれは体へと衝撃が突き抜け、僅かにオルナの動きが鈍る。

 

そこを逃さずお腹へアッパーカット。

捻りも込められた拳は見事にオルナのお腹へ突き刺さりその体を吹き飛ばした。

 

 

―――『アルナ・オルナ、意識消失。ゴルオリ・マジル、校章破損』

 

同時にユリスの≪呑竜の咬焔花≫がゴルオリへ接近、至近距離の爆発でその校章を破壊した。

 

『試合終了ー!始め劣勢に見えた星導館ペアが勝利を掴みました!』

 

『この戦い、目立ってこそいませんでしたがリースフェルト選手の尽力も随分ありましたね』

 

『と言うと!?』

 

『マジル選手の段幕を高原選手の邪魔になることなく全て捌ききっていたので、高原選手はオルナ選手に集中出来たと言うことです』

 

『なるほど!まさに縁の下の力持ちだったわけで――――――

 

 

 

 

†††††

 

 

 

 

「....分かっていたのか?空。アイツがアレを克服できると」

 

先日、星導館新旧一位ペアの本戦第二回戦が終了した。

一回戦で最大の弱点(タイムリミット)が露見した天霧だったが、二回戦の戦闘中にそれを克服。見事黄龍の性悪ペアに逆転勝利をした。

 

――――――所なのだが、隣のお嬢様は今大会最大のライバルの弱点が無くなったときに無反応であったペアにご立腹のようだ。

 

「まぁな。封印を姉にされたって聞いた時点ですぐに分かった。そもそも封印なんてのはいつまででも掛けてられるものでもない。となれば力を制御出来るようになった時点で外すべきものだ。なら、どこかでは克服出来るはずだよ」

 

「....それもそうか」

 

渋々だが納得してくれたようだ。

 

「さて、準決勝の次の相手はどちらになるかね」

 

視線の先のウィンドウはパペットと対峙する星導館ペアを撮していた。

 




そう言えばフローラ誘拐事件は起きません。

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