シルヴィア・リューネハイム
この世界では知らない人はいないであろう有名人。
クインヴェール女学院序列一位にして生徒会長。
≪魔女≫にして、世界トップの歌姫。
ーーーそして、≪王竜星武祭≫準決勝で俺を負かした張本人。
そんな著名人が何故か俺の病室に来ている
「...よしエンフィールド、パン=ドラで俺を吹き飛ばせ」
ーーーのは夢か幻に違いないだろう。
「現実をちゃんと見て下さい。本物ですから」
少し呆れ顔のエンフィールド。
いや、これを現実だと認める方が辛いだろう。
「えーーっと...出直そうか?」
いや申し訳ない、ちょっと現実逃避したくなっただけです。
「いや、大丈夫だ」
そう言う高原だが視線の先は窓の外にある。
「ほんとに大丈夫?」
大丈夫じゃないですマジで。
「あらあら、高原君も素直じゃありませんね」
エンフィールドはコロコロ笑う。
「...何だ」
「気まずい上恥ずかしくて顔が見れないと言えばいいのに、と思いまして」
「え...?」
すとぉぉぉぉぉっぷ!
何?何でこの人こんな的確に心読んでくるの?
「クローディア?どういうこと?」
「大方、あんな姿見せたことで恥ずかしくて、その上負けたから少し気まずいって感じでしょう」
この全てお見通しですよ感よ。
「あーー...ごめんね?」
「そこは素直に謝らないでくれ...」
俺は顔を隠す他なかった。
「もう大丈夫だ」
それから数分間だけ待って貰った。
その間にエンフィールドは帰っていったから今は病室に歌姫と二人っきり。
さっきとは別の意味で顔見れなくなりそうだよな。
「それで?話って?」
そこまで言って少し前にも似たようなことを言われた記憶があったが、思い出すのが面倒になったから無視した。
「私が打倒≪孤毒の魔女≫を掲げてるのは知ってるかな?」
そう、このシルヴィア・リューネハイムは三年前の≪王竜星武祭≫でオーフェリア・ランドルーフェンと当たり、負けたのだ。
それ以降メディアに対し打倒≪孤毒の魔女≫を宣言し、そして今回の≪王竜星武祭≫がやってきた。
だが結果は知っての通りシルヴィアと当たる前に俺が倒してしまったのだ。
「そうだったな、それで?」
「試合的にはオーフェリアに勝った人に勝ったんだから、ある意味打倒できたって言う人もいるかもしれないけど、私としては満足いかないんだよね」
「まぁ、そうだろうな」
俺だって同じ立場だったらそうなるはずだ。
「だけどやっぱりオーフェリアだって強くなってた。このまま私が戦って勝てるって言える自信がちょっとないんだよね」
「だからアドバイスくれない?試合見てたから取った戦法はわかるんだけど、どうしてその作戦にしたかっていう過程が知りたいから」
「なーるほど...」
確かに情報収集も有効な手だ。
「ま、断る理由もないからいいか」
「ほんと!?ありがとう!」
手を取って喜んでくれる。
うーん...見る人が見たら誤解しそうだ。
「んじゃまぁ早速だが、瘴気って言ったら空気とか気体ってよりも微粒子の集まりってイメージなのは何となくわかる?」
「あー、確かに。ちゃんとした気体ってよりも、なんか成分が溶け出してるみたいなイメージだね」
「そ、そうやって考えると不思議なのは、わざわざ腕の形を取っているとこだ」
「でも能力はイメージがあった方が強力になるよ?」
「腕にする必要はないだろ...ってよりも瘴気なら形を持たせるより、ただただ放出した方が強いだろ。壁作っても回り込ませることもできるし」
「そう言われてみれば...確かにそうだね」
「まぁそっちに意識を持ってって、色ないやつから意識を外そうとしたのかもしれないがな...まぁとにかく瘴気にわざわざ形を持たせてくれるなら対処法は出てくる」
「え?形あっても強いのは変わらなくない?」
「そうではあるんだが...能力ってのは星辰力関係を除けば普通の物理法則に則ってると言うのはわかる?」
「学校でも習うからね」
「んじゃ普通にぶつけ合いになったとき、押し合いに使う要素は?」
「え?星辰力とスピードと...あ!質量!」
「そ、星辰力に関しては≪孤毒の魔女≫に大きなアドバンテージがあるがスピードは工夫次第でどうにでもなる。だったら行う攻撃は全て質量を持たせてやればいい」
「まさかそんな方法が...」
「まぁ後は大技バンバン使って最後に小細工で校章を狙うってとこだ。そもそも≪孤毒の魔女≫の意識消失を狙うよりは校章狙った方が楽だからな」
「もし意識消失を狙うなら?」
「≪氷晶霧石≫で呼吸できなくするか、他の能力ってなら気圧上げてやったりだな」
「ひょうしょうむせき...?ああ!ダイヤモンドダスト!」
「そもそも窒息までいかなくとも能力使えないように集中力を乱せばいいんだ。いきなり呼吸できなくなった戸惑うしな」
「って考えると、さっきの気圧の話強すぎない?」
「まぁ能力は使い方次第だが...俺の場合氷の密室作ってやれば、例え気圧上げられても大丈夫だからな」
「あー...すごいね、よく考えてる」
「自分がされて嫌なことを探るのが一番早いと思ってるんでね、されたくないことを普段から探してるくらいだ」
「自分のされたくないこと...ね、うん!ありがと!」
「こんなんで役に立ったのならいくらでも」
と、歌姫様は紙切れを一枚渡してきた。
「これ私のプライベートアドレス。また今度お礼したいから空いてる日連絡してね」
「...これおいそれと渡していいものじゃないだろ」
「いいのいいの。あ...」
するとリューネハイムは少し真剣な表情になる。
「も一つ質問いいかな?」
「なにかな?」
「ニーナとアレキs...じゃなかった、高原くん試合中豹変したけど...あれどうしたの?なんか純星煌式武装が暴走した時みたいだったんだけど...」
「......君のような勘のいいガキは嫌いだよ」
「え...?」
「冗談だが...まぁそういう風に思ったのならそういうことなのだろうな」
「どういう...」
「悪いがこれ以上は言えない。このことは俺と俺の師匠しか知らんからな。まぁ一部例外を除くが」
「そう...ごめんね?」
「今のは話せなかった俺が謝るところだろうに」
と、リューネハイムは腰を上げた。
「私そろそろ行くね?」
「ああそうだ、リューネハイム」
「何?」
「準優勝、おめでとう」
少しだけ目を見開いた。
「ありがとう!」
そして病室を出てーーー、
「それと今度から私のことはシルヴィって呼んでね♪」
ーーーーーーー行った。
それ愛称だろ....?
だが不思議と悪い気はしなかった。
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
数日後、学校が再開する日。
登校途中様々な目線を向けられたり、祝福の言葉を貰ったり、決闘申請してきたり...。
まぁ最後のは氷付けにしてやったんだが。
教室に入れば、それはほぼ全て称賛の言葉に変わった。
意外なことにあのお転婆姫様からもおめでとうと言われ、存外嬉しかった。
尚、視界の隅をウロチョロするのがいたからそいつも氷付けにしてやった。
そして授業終了後。
「あぁ、高原。この後いいか?」
「お?構わんが?」
話し掛けてきたのはお転婆王女ユリスだ。
「「「「えっ...?」」」」
クラス全員がこっちを向く。
「お、おい聞いたか今...」
「ああ、お姫様が高原を誘ったぞ」
「まさか...デキてるのか?あの二人」
「いや待て、あのお姫様本物か?」
「確かにな、そこも疑問だな」
「わ、私を何だと思っている!私とて人に接することはある!それに、で、でき、デキてるって言うがお前らだって人を何かに誘うことくらいあるだろ!」
「それでもなぁ...あのお姫様だぜ?」
「ちょっとねー...」
「そ、それにこいつは今回の功労者だろう!少しは労ってやろうと思っただけだ!」
「うーん...でもなんかなぁ...なぁ?」
「そうだよね、なんかなぁ...って感じ」
「ーー!もういい!行くぞ高原!」
「ってうお!待て待て!引っ張るな!」
そのまま俺は王女に引っ張られ教室を後にした。
△▽△▽△▽△▽△▽
お姫様に連れられて出たのはいいものの、どこに行こうか迷っているようだった。
そのため俺は某ハンバーガー店を指定。
そして今は飲み物と軽食を食べている。
「んで?何でこんなとこまで連れてきたの?何?俺誘拐されたの?」
「流石にそれは想像力が過ぎるだろう...ていうか忘れたのか?」
リースフェルトのジト目...悪くないな。
「...何だったっけ?」
「準決勝の日に言っただろう!話があると!」
「あー...言ってたねぇ...」
一口ジュースを飲む。
「それで?話って?」
「なんか気に食わんが...まぁいい、聞きたいのはオーフェリアに勝った時の戦術についてだ」
「またか...」
オーフェリア、オーフェリアって、どんだけ皆オーフェリア倒したいんだよ...。
「また...?」
「ああ、リューネハイムにも聞かれた」
訝しむような目を向けてくる。
「リューネハイム...?まさか≪戦律の魔女≫か?」
「ああ、直接勝ちたいんだってよ」
「そういえばそんな事も言っていたな」
「で、まぁ俺としても教えるのはやぶさかではないんだが...」
「何かあるのか?」
「ちょっと何人にも言うってのは気が引けるかな?」
肩を竦めて見せる。
「それと、そんな関係でもないだろ」
「どういうことだ?」
視線の温度が下がった気がした。
「今まで押し退けてた奴に聞くってのはちょいと虫が良すぎないか?」
「そ...それはだな...」
お姫様はたじろぐ。
「ま、いいけどな」
「...え?い、いいのーーー」
「但し条件がある」
「...言ってみろ」
命令形なのがちょっと気にくわないが
「性格を治せとまでは言わん。皆でなくともいい。だがせめて俺とはもうちょい仲良くしてくれ」
「ほぅ...残念だ、お前はああゆう奴らとは違うと思ってたんだがな」
お姫様の言うああゆう奴らとは、リースフェルトが王女であるため近づいた奴らのことを言っているのだろう。
「一緒にすんな、そもそも俺はお前の国の事情は知っているつもりだ。お前に近付いてもそんな点では無意味だってこともな」
そう、こいつの国リーゼルタニア王国は今や統合企業財体の傀儡となっているのだ。
そのため下心を持ってこいつに接触してもなんの意味もない。
「では何故私と仲良くしたいと?」
一口ジュースを飲む。
「俺個人とお前のためだな」
「ほう...私のためと?私がいらないと言っているのにか?」
万応素がリースフェルトに引き込まれ始める。
「ああ、お前は真っ直ぐ過ぎる。それが悪いとは言わん。時には意見を貫き通す真っ直ぐさも必要だろうが、お前は真っ直ぐ過ぎる。その上お堅い。そんなんじゃひょんなことで簡単に壊れちまうぞ」
「...ご忠告感謝する、だが私は壊れん...いや壊れてなどおれんのだ。...少し昔話をしよう」
そしてリースフェルトは話してくれた。
本国にありリースフェルトの母が出資した孤児院の話。
そこでオーフェリアと会った話。
借金でオーフェリアが連れ去られた話。
そして、オーフェリアに負けた話。
「こんな有り様だ。ここで序列五位だの≪華焔の魔女≫だの呼ばれている私も、国の子供を守るので精一杯なのだ...壊れてはおれんし、友人ができたとしても付き合ってはいられないのだ...」
「だからこそだろう。だからこそ友人がいれば、気休めでも相談には乗るだろうし、助けてくれるかもしれない...まぁ人にも寄るかもしれんがな」
「だが私は王女である!そもそも人付き合いなどちゃんとせねばいかん上、金目当てで誘拐でも起きるやもしれんのだぞ!」
「王族?誘拐?馬鹿馬鹿しい。んなもん否定のための言い訳にすぎん。それ以前にそんなもの気にする奴は友人とは呼べんだろう」
「だ...だが...」
「だから言ったろ?俺とだけでもいい、と。お試しとしてでいい、さっきも言ったが王族として俺はお前に価値は見出だしてない」
「だが誘拐だの何だのは...!」
「おいおい、俺はこれでも≪王竜星武祭≫ベスト四だぞ?誰が誘拐されるって?」
「う...うぅ...」
「....」(ジーーーーーー)
「うぅぅ...」
「.......」(ジーーーーーーーーーーー)
「わかったわかった!私の敗けだ!...お前を友人として認めよう!」
「そりゃどうも」
「そ、それと私のことは...その、ユリスと読んでくれ。近しい者にはそう呼ばせてる...」
「了解、ユリス。んで話を戻すが...」
「話?」
こりゃ忘れてんな。
「≪孤毒の魔女≫の対策だよ」
「あ!そうだった!」
「んな訳でーーー」
そしてリューネハイム(シルヴィなんて呼べるわけないんだよなぁ)に話したことと全く同じ事を話した。
「大いに助かったぞ高原!ありがとう!」
「お、おう...」
こいつ礼とかちゃんと言えるんだな。
「ふん!昼間っから盛ってるなあ?ユリス」
声のした方を向くと到底学生とは思えない筋肉ダルマがいた。
確か名前は...
「レスターか、また性懲りもなくやってきたのか」
ああ、レスター・マクフェイルか。
確かうちの九位で≪轟遠の烈斧≫が二つ名の。
ユリスに負けて以降突っ掛かり続けてるって噂だったな...。
「俺の実力はあんなもんじゃーーー」
「待った待った」
食って掛かろうとするマクフェイルを制止する俺。
「何だテメェ...って≪氷狼≫だとっ!?」
「ベスト四祝してもらってるんだ、邪魔しないでくれ」
「知らねぇよそんなもん!テメェこの街のルールを知らねぇ訳じゃねぇだろ?」
周りの客が距離を置き始める。
「そりゃもちろん」
「へっ...なら話は早ぇ。高原空に決闘を申請する!」
マクフェイルは校章に手を置くとそう宣言した。
「高原、受けなくていいぞ。そもそもレスターの狙いは私なんだからな」
ユリスはカバーしてくれる。
「さっきも言っただろ?そんなのは承知済みだ。...我高原空、決闘申請を受諾する」
おお!っと周りから歓声が生まれる。
そしてレスターは大型の斧型煌式武装を取り出した。
三秒後ーーー、
『Start of the duel!』
「オォォォォ!!」
マクフェイルは斧を振り上げそのまま突撃して来る。
「≪氷柱剣山≫」
俺の目の前で斧を振り下ろす途中のマクフェイルに、地面から生えた氷の柱が直撃する。
「ぐおぉぉぉっ!」
そのまま数メートル吹っ飛ぶ。
「≪白十字架≫」
着弾したマクフェイルの体を氷が包む。
因みにクラスで
「な、何だ!?」
驚きの声を上げるがもう遅い。
いくら≪星脈世代≫とて、隙間なく氷に飲み込まれれば筋肉も強張るため、抜け出すことはほぼ不可能だ。
「≪氷雷針≫」
氷のエストックでその校章を貫いた。
『校章破損。End of the duel』
おおー!と周りから先に勝る歓声が上がった。
「な...んだと...」
俺はマクフェイルに近づき氷を溶かし始める。
「勿体ないな...それだけの筋肉、相当な鍛練の賜物だろうに、それをその短気がドブに捨ててる」
と、氷が溶けきる前にマクフェイルは自力で残りの氷を壊した。
「うるせぇ!テメェも絶対この仮に返すからな!」
そのまま去っていった。
「悪かったな、迷惑かけて」
再度椅子に腰掛け、残りのジュースを飲み干す。
「それは私のセリフだろうに...全く、本当にいい友人を持ったものだ」
この時の俺は忘れていた。
これで俺が序列九位になったと言うことに。
空「さぁさぁやって来ました後書きのお時間です、今日のゲストはー?」
ユリス「ユリス・アレクシア・フォン・リースフェルトだ。よろしく」
空「はいお転婆王女ユリスさんです」
ユリス「なっ、何だお転婆王女とは!」
空「だってそうだろー?来る人来る人に突っ掛かっていつの間にか序列五位になってるんだから」
ユリス「ちっ...お前がうちの国民だったら不敬罪で牢屋にぶちこんでやったものを」
空「残念ながら俺、作者でもあるので不可能です」
ユリス「そんなバカな!」
空「逆に言えば姫様を登場させないってこともできるんですよ」
ユリス「そんな理不尽な!」
空「さぁ、認めた方が楽になりますよ?」
ユリス「わた、わ、わたしは...」
空「さぁ、さぁ、さぁ」
ユリス「...私は実はーーーっておい、私これ見覚えあるぞ」
空「あ、ばれた。気になる方は『無敗の最弱のその影は』第二話学園訪問の後書き『第二回!激白!≪製作秘話≫のコーナー!』をご覧下さい」
ユリス「何を宣伝しているのだ...これはアスタリスクを見に来ている人のものだぞ。バハムートを求めてはないだろう。それと私はお転婆ではない、リーシャと違ってな」
リーシャ「なんだとー!」
空「収集がつかなくなってきたので今回はここまで!それでは皆さん次回もよろしく!」