マクフェイルとの決闘後。
数分間まで回りにいた客が押し寄せて来て握手やら応援やらで忙しかった。
「...俺今度からユリスみたく突っぱねようかな」
「お前さっき自分で言ったこと否定するなよ...」
ユリスに呆れられる。
解せぬ...。
「失礼、星導館学園の高原空さんかな?」
突然、黒スーツのリーマン風の男に声を掛けられた。
先ほどまで人に囲まれていたし、特段不思議ではなかったのだが、空にはその人に見覚えがあった。
「確か運営委員の...」
「よく覚えていたね、≪星武祭≫運営委員の柳澤と言います、まずはベスト四おめでとう」
ユリスは空気を読んで黙っててくれている。
「ありがとうございます」
「早速本題なんだが...少々事情があってね、君の過去を調べさせて貰った。君中等部二年で編入するまで≪万有天羅≫の所にいたのは本当かい?」
「なっ...!」
ユリスも思わず声を上げる。
「よく調べましたね、そんなこと」
流石は統合企業財体、奴らが本気になったらプライベートなぞ無いも同然だ。
「十才で≪万有天羅≫に保護され、そこで今の名前『
「なっ!今の話は本当なのか!高原!」
「ほんと、よく調べてますね...。事実ですよ」
「なぁっ...!?」
ユリスはあり得ないと言った風だ。
「まさか!転校が≪星武憲章≫違反だからここから追放だとでも言う気か!?」
ユリスが今度は柳澤さんに食って掛かる。
どうでもいいけど説明セリフありがとう。
「いや、彼が≪万有天羅≫の元にいたのは事実だが、黄龍に在籍してなかったのもまた事実。一応、外からの転入という形になっているから違反ではないね」
「それで?どうしました?」
ユリスを制して続きを促す。
「高原さん、本名は覚えていますか?」
「あっ...!」
ユリスも気が付いたのだろう。
先程この柳澤も言った、≪万有天羅≫に命名された、と。
つまりは高原空は本名ではない。
「そこですか...覚えていますよ」
「教えて貰えますか?」
目を見ればこの人が悪ふざけで聞いている訳じゃないのはわかる。
「はぁ...わかりましたお答えします。ユリスも聞いてていいが黙っといてくれよ?」
「あ、あぁ...」
一呼吸。
「俺の本名は...神月 霜です」
太陽が雲に隠れ、冷たい風が吹き抜けた。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「神月...?どこかで...」
「ではもう一つ、と言うよりも確認ですが...」
思った以上に真剣な眼差し。
「黄龍の序列三位≪万華鏡≫神月 舞華の弟、という事で相違ないですか?」
「≪万華鏡≫!そうか...それでか...」
「はぁー...ほんっとよく調べたな。そんなに暇なら就職したいくらいだ」
「いえ、残念ながら逆ですよ」
「逆?」
意味わからん。
「本人であれば話して言いということなので言いますが、神月舞華さんが優勝し願ったことは、弟...つまりあなたの捜索でした」
「ちょっと待て...それだとこいつが失踪していたみたいな言い方ではないか」
すると柳澤はかぶりを降った。
「みたいな、ではありません。実際に彼は六年前から行方不明だったんです」
「えっ...」
「全く...余計なことまで...俺の捜索ってことは報告するのか?」
「ええ、それが仕事ですから」
「...まぁいいか、他には何か?」
「いえ、以上です」
「そうですか、お疲れ様です」
「ええ、それでは」
柳澤さんは帰って行ったが一人俺の隣に頬を膨らませた人が残っている。
「どういうことだ?高原...いや神月」
「高原でいい。今はそう名乗ってるつもりだ」
ジュース...はもうなくなっていたな。
「これで俺の所在について姉さんに連絡が行っただろう...姉さんの事だ、学校まで会いに来るはずだ。その時に話せる限り一通り事情を話すつもりだ。その時は同席していい」
「今話すつもりはないと?」
「ああ...悪いな」
「いや、お前がそういうのならその時まで待とう」
俺自身、こいつと友人になれて良かったと少し思った。
▽△▽△▽△▽△▽△
それから翌日。
クラスメイトに序列九位おめでとうと言われようやく気が付いた。
序列九位なんて実感も沸いてないからな。
ついでにまたもGが沸いていたから氷付けにしてやった。
授業後。
たまたま帰りがユリスと重なったため、能力について少し話し合っている。
と、校門に近づいたときそこがザワついていることに気が付いた。
「なんだ?」
「どっかのお姫様が火遊びでもしたんじゃないか?」
「ふんっ」
「痛った!」
足踏まれた...痛い。
「ほら、見に行くぞ!」
「お前...自分が見世物じゃないと言う割には見る方には回るんだな...」
「...ッ!」
だが群衆の後ろに着いた時には誰がいるのかわかった。
ユリスと人をかき分けて進む。
そしてその先にいたのはーーー、
「久し振りね、霜くん」
≪万華鏡≫神月 舞華だった。
「うん、久し振り」
空が少し笑って見せたが舞華はすこし笑顔を曇らせた。
それに気づかず空は端末を操作し始める。
『はい、どうしました?』
「あぁ、エンフィールドか?客だ、許可証とどっか部屋を用意しといてくれ」
『...わかりました、そのまま生徒会室までどうぞ』
それだけで通信は切れた。
「ってな訳なんだ、ちょっと来て貰える?あとユリスも」
二人とも頷いて着いてくる。
校舎に入って結構歩いてそこに着いた。
コンコン
ノックをするとすぐに扉が開いた。
「これは...あらあら、また随分珍しいお客さんを連れて来ましたね」
「おー、邪魔するぞ」
「失礼する」
「失礼します」
俺、ユリス、姉さんの順に入る。
「まずはお座り下さい」
エンフィールドにすすめられ俺と姉さんが向かいに座る。
ついでにユリスは律儀に立っている。
「まずは、初めまして≪万華鏡≫当校の生徒会長をやっております、クローディア・エンフィールドと申します」
「初めまして≪先見の盟主≫それと≪華焔の魔女≫も、黄龍第七学園序列三位神月 舞華です」
「噂にあった空のお姉さんですか」
「そんな噂立ってねぇよ...影星か」
「えぇ、何やら運営委員が我が校の生徒探ってるとのことでしたので少々」
影星とは星導館の運営母体である銀河の所有する要は特殊部隊のようなものだ。
「...席を外しましょうか?」
エンフィールドが気をきかせてくれる。
「いえ、構いませんよ。...霜くんにはまずベスト四おめでとうって言うのが正しいのかしら?」
「そんなこと言ったら姉さんだって優勝おめでとうだよ」
「ありがとう。でも驚いたわ、霜く...空が≪魔術師≫だったなんて」
「霜でいいよ。で、能力だったね。実はあの氷は≪魔術師≫の能力じゃないんだ」
「「「え?」」」
これには一同驚きの声を隠せない。
「それと自分でも映像見て驚いたけど、リューネハイムとの試合、あの豹変と≪魔術師≫ではない能力...エンフィールドならわかるんじゃないか?」
「...っ!まさか純星煌式武装!?」
エンフィールドが驚いてるのは新鮮だな。
「だが待て、そもそもお前は煌式武装でさえ使ってないだろう」
「ま、それも含めて昔話といこうか」
いつの間にかエンフィールドが用意していた紅茶を一口飲む。
「六年前、俺は一般人に剣を向けたことがあってね、まぁそいつは星脈世代だったし正当防衛も認められたんだが、当時うちの当主だった母に怒られてな。嫌になって家出したんだ」
「当時物凄く探したけど見つからなかったのよ?」
「そりゃそうだ...国外にいたからな」
「国外!?」
舞華姉の本性が見え隠れする。
「正確には連れてかれた、だ。家出してちょっとした公園で膝抱えていたら後ろから口を押さえられて誘拐された。そのまま外国までひとっ飛びだ」
「随分と計画的ですね」
「まぁな、よくわからんまま連れてかれた先はどこかの研究所だった。同い年くらいの子供が何人も収用されていたよ。そして一度だけ俺が顔を見た研究主任だと言う女は...ヒルダ・ジェーン・ローランズだ」
「...っ!≪大博士≫...だと...っ!?」
そしてある意味ではユリスが一番因縁のある相手だ。
何せーーー、
「オーフェリアをあんな風にした奴の研究所...まさかお前...」
≪孤毒の魔女≫オーフェリア・ランドルーフェンを一般人から≪魔女≫に
「≪孤毒の魔女≫の物とは別物の研究だったがな...その研究は、≪魔術師≫または≪魔女≫を作ること」
「...何か違うのか?」
「≪孤毒の魔女≫に行ったのは≪星脈世代≫にする実験だ。何故か飛躍し≪魔女≫にまでなったがな。対して俺のは能力者に、だ。実験方法も違うみたいだ」
「そうか...いや、話を折ってすまない」
「関係がなくもないからいい。ーーーそして俺がされたのは、≪ウルム=マナダイト≫の注入だ。...知っての通り≪純星煌式武装≫ひいては≪ウルム=マナダイト≫には能力者にも似た能力がある。それを体に定着させることで能力者を作り出そうとしていたらしい」
「それで実験は...?」
舞華姉が恐る恐る聞いてくる。
「
「そんな...」
「その後、研究所は事故により壊滅、俺は逃げ出し≪万有天羅≫に保護された、という訳だ」
「そんなことが...」
「大丈夫ですか?」
ほぼ放心している姉に声を掛けるエンフィールド。
「お前も...大丈夫か?」
そして俺を心配してくれるユリス。
「ああ」
「だが何故お前は会いに行かなかった?昨日の様子では≪万華鏡≫が姉だと分かっていたのだろう?」
それはーーー、
「会いたくなかったからじゃない?」
そう圧し殺したように言ったのは...舞華姉だった。
「そんな訳...」
「だって今も、校門で顔合わせた時も、霜くん作り笑いしてたでしょ」
「なっ...そうなのか?」
「流石は姉さん...でも一つ訂正。会いたくなかった訳じゃない、会いたいという気持ちさえ湧かなかったんだ」
「んなっ...!家族だろう!姉だろう!お前...そこまで見下げた奴だったのか...?」
それはユリスの願いのようにも聞こえた。
「違う...とも言い切れんかもしれんがな。だがその前に一つ忘れている」
「何だと?」
「エンフィールドもそれに悩まされてるはずだ」
「...っ!代償...」
そう、≪純星煌式武装≫は使用者に対し、代償が伴う。
「俺に注入された≪ウルム=マナダイト≫...個体名≪弦月冷装≫こいつの能力は氷の操作、代償は...感情」
「っ...」
舞華姉の嗚咽だろうか。
「普段は完全に感情がなくなり、戦闘中ノリ過ぎると今度は感情が押さえれなくなる...≪戦律の魔女≫との戦闘は随分楽しかったみたいだな」
「ま、待て待て!お前昨日教室で笑っていたじゃないか!」
「悪いな、作り笑いだ。会話の流れとかで、こうした方がいいってのは掴めるから無理やり感情を作ってるだけだ」
「そ...んな...」
まぁ無理もない。
ユリスにとっては裏切られたような感覚になるはずだからな。
だがーーー、
「...辛かったのではないか?」
後ろから頭を抱かれた。
「え...?」
「正直に言うとな、私も突っぱねて来た人の中には本気で私に向き合おうとしてきたやつも居たのではと後から後悔していた。お前の気持ちがわかる...とまで言うのは流石に業腹かもしれんがどうせお前のことだろう、私がお前が裏切った、と思ったとでも考えていたのではないか?」
「...」
図星だ。
「だがお前も言っただろう友人は相談に乗る、と。それとお前にこんな言葉を返そう...『そんなもの気にする奴は友人とは呼べんだろう』とな」
それは昨日、俺がユリスに言った言葉だった。
「お前のことだ、相手の気分を害さないためにやっていたのだろう。ならばそれを私は責めることはできん。逆に礼を言うべきだろうな」
こんな時でも冗談を言ってくれるクラスメイトが嬉しかった。
「だからいいんだ。私は気にしてない」
こんなことしても許してくれる友人が嬉しかった。
「例え感情が無くとも、お前はお前...私の友人だ」
こんな俺でも、認めてくれるユリスが嬉しかったのだ。
この日、俺は感情を無くして初めて、涙を流した。
††††††††††
「す、すまなかった...」
顔を真っ赤にしたユリス。
感情がない俺は残念ながら顔が赤くなることはない。
いや一応恥ずかしいとは思っているのだが。
「いや、ありがとう」
「ねー...私蚊帳の外だったんだけどー」
舞華姉...化けの皮が剥がれてるよ。
「えぇ、私もでしたね」
エンフィールドも不満を漏らす。
「悪かったって」
「おほん!それは良いとして...霜くん、ちょーーっと外に出てて貰えるかな?」
「ぬお?いいけど...」
「ごめんねー」
ってことで外で待たされること数分。
『入ってきていいよー』
入った俺が見たものは、ほんの少し顔の赤いエンフィールドと、さっきより顔が真っ赤なユリスだった。
「..........」
「...何があったの?」
「女の子同士のお話です」
「あっはい」
こういう時は引き下がるべし、過去の経験からそうわかっている。
「あー...こほん、それはそうと空?≪王竜星武祭≫で優勝したら何を願うつもりだったのか聞いてもよろしいでしょうか?」
まだほんのり頬の赤いエンフィールド。
「おー...てったって面白くないぞ?」
「面白くなくても構いません」
「俺が願おうとしたのは、≪弦月冷装≫の排出だよ」
「...っ!」
「そしてこれが成功して感情が戻れば...」
「俺から家族に顔を見せようと思っていたんだ」
※霜は『そう』と読みます。
空「後書きコーナー!今回のゲストは?」
エンフィールド「どうも、星導館学園生徒会長を務めています、クローディア・エンフィールドと申します、以後お見知りおきを」
空「ってなわけでエンフィールドだ」
エンフィールド「ところで空?」
空「んお?何だ?」
エンフィールド「何時になったらクローディアと読んでくれますか?」
空「えー...いいじゃん別に呼び方ぐらい」
エンフィールド「では別にクローディアでも構いませんよね?」
空「だがなエンフーーー」
エンフィー「クローディアです」
空「しかしだーーー」
エン「ク・ロ・オ・ディ・ア」
そ「ーーー」
「クローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローディアクローーーーーーー」
空「わかった、クローディア」
クローディア「はい♪」
空「で?何の話するんだっけ?」
クローディア「あれでしょう、読みを振ってないことが多いって話です」
空「そーなんだよね、ルビ振るの面倒くさいんだよね」
クローディア「そのせいで霜の読み方も今出たとこですしね」
空「まぁ要望があったら話の最初に出た言葉にくらいはルビ振りますので」
クローディア「それといつからかはわかりませんが、一週間以上投稿がなければ、来年の春までないと思って下さい」
空「それではそろそろお暇させて頂きましょう」
クローディア「ではまた次回~」