1ー1.進み往く時間
「霜、神月流とは?」
ーーー鎌倉より続き、かつてを残しながらも時代を取り入れ続けた古流武術の流派です。
「その技の及ぶ所は?」
ーーー無手に始まり、現存する武器全てに及ぶ。
「その初心にして極地とは?」
ーーー柔を成し剛を成せ、です。
「よろしい、今日は知っての通り外の道場を見に行きます。...理由はわかりますか?」
ーーー神月流は時代だけでなく他の流派をも取り入れる"いいとこどり"です。
「...良い所取りは所謂だから忘れてね?それでは今日見に行くのは何処かわかりますか?」
ーーーはい
ーーー天霧辰明流道場です。
▽△▽△▽△▽△▽△
「ふぁーーあ」
特に普段から代わり映えのしなかった春休みが開けた本日。
一つ大きめな欠伸をしていると、俺、高原空は目の前でオロオロしている少年に気が付いた。
後ろから見てもわかる。
細身の割に結構鍛えられた筋肉。
少し出す足も独特な摺り足のクセが見てとれる。
そして同時に星辰力の違和感にも気が付いた。
なんてアンバランスな強さだろうか。
それにしてもあそこまで目立つ人物を今まで覚えてないってことはあり得ない。
テンパってるとこを見ても恐らく高校からの新入生ーーー、
いや、星導館は小等部から大学部までエレスカレーター式だ。
それぞれ節目に入ってくる人もいるがそれを新入生とはあまり言わず、転入生と呼ぶ。
つまりは彼は転入生なのだろう。
「どうかしたのか?」
流石に見てるだけなのは微妙だったから声を掛けることにした。
「え、えっと...ハンカチが落ちてきたんだけど、どこから来たのか分からなくて...」
こいつ、俺を見ても何の反応もしない...。
自慢じゃないが俺は去年の≪王竜星武祭≫のお陰でアスタリスク内外問わず、有名人になったと自負している。
その上わざわざ高等部からアスタリスクに編入してくる奴だ。
普通は≪星武祭≫ぐらい見てないとおかしい。
だとするとこいつは自分の強い意思で来たわけではないと言うこと。
ならこいつはきっと、
「特待生か」
「え?良くわかったね」
まぁこいつに話しかける以前に...
「特待転入生が来るって噂はあったからな、お前に見覚えないしそうじゃないかと思ったんだ」
「へぇー、あ、俺は天霧綾斗、よろしく」
出してきた手を掴む。
「高原空、高等部一年だ。よろしく」
天霧、天霧...どこかで聞いた名前だな。
「それよりも、これ...どうしようか」
その手にあるのはさっき言っていたものであろうハンカチがあった。
んが、それには見覚えがあった。
「ちょっと見せて貰えるか?」
「え?いいけど」
渡されたそれを見ていくが...うん、あいつのだな。
「...ええい!全くこんな時に....」
天霧と顔を見合わせる。
声がしたのは俺たちの頭上。
正確には近くの建物の開いてる窓からだった。
この声には聞き覚えがある。
このハンカチの持ち主だ。
「知り合いのだ、後で届けておくよ」
「え?でも今あそこから声が...」
ヤバイこいつ犯罪者予備軍だ。
「...はぁ、あそこは
「え!?あっ...」
「天霧...お前そういう奴だったのか?知らなかったんですー!って言えば許して貰えるとか思ったりする...もしそうなら早く言ってくれよ、縁切らんと俺まで疑われる」
「ちょっ...そんなんじゃないって!本当に知らなかったんだから!」
少し顔が赤いのを見ると意外と純粋なのかもしれない。
「今の時代、知らないは罪になるんだぞ...?はぁ後でちゃんと調べておけよ」
「うん、ありがとう」
そして俺は端末を用意して数少なく登録してある一人に電話を掛ける。
すぐに上の方からドタバタ聞こえてきたと思ったら、電話に出た。
『な、何だ?空、こんな忙しい時に』
「まずはおはよう、ユリス」
お転婆王女ユリス。
『ああ、おはよう...ではなくてだな!』
「ハンカチだろ?今持ってるぞ、俺」
『本当か!?』
「窓から降ってきたんだと、今持ってるし教室で渡すがそれでいいか?」
『助かった!ありがとう』
「じゃ、また後でな」
『ああ』
そうして通信が終わった。
「待たせて悪かったな」
「いや、俺の持ち込んだ面倒だったからね、お礼を言うくらいだよ」
「別にい...あいや、んじゃ一つ頼み聞いてくれない?」
「いきなりだね...それで何をすればいいの?」
呆れる天霧。
どうでもいいがこいつ結構いいやつなのかもしれない。
「朝練付き合ってくれね?」
「朝練?構わないけど、何で俺なんだい?あまり剣には覚えがないんだけど...」
「おいおい...お前それ本気か?だったらこの世界皆ないレベルだろ」
「あったとしてもそこまでじゃないよ、少し道場に通ってただけだよ」
少し、少しねぇ...。
「少しじゃ摺り足くせにならないだろうに」
「あはは...、良く見てるね」
苦笑いする天霧。
掴み所のない奴。
「高原!俺と勝負しやがれ!」
と、野生のレスターが現れた。
こいつは俺がぶっ飛ばして以来こうやって決闘を挑んでくる。
その数十三回。
そのうち空の勝ち十三、負けゼロで空が勝ち続けてる。
一応、挑んでくるのは全部受けてやってる。
「決闘を申請する!」
「天霧、ちょっと離れててくれ」
「あ、うん、わかった、頑張ってね」
「おう...申請を受諾する」
と、すぐにギャラリーが集まってきた。
またマクフェイルと高原かよ...。
高原の勝ちだな。
などなどの声が聞こえてくる。
またとか言うなら見なければいいのに、飽きないねぇ。
『Start of the duel!』
「≪氷水龍≫」
地面が凍てつき、それがレスターへと襲い掛かるように動く。
そしてレスターの目の前で氷から龍が現れ、顎を向ける。
「うぉぉぉぉぉ!≪ブラストネメア≫!」
レスターが斧型煌式武装を振り抜く。
そして龍と拮抗、いや龍が断ち切られた。
「へっ!こんなん俺にはーーー」
「≪氷死針≫」
パキッ
『レスター・マクフェイル、校章破損』
突如流れた音声にレスターが固まる。
「俺の勝ちだ」
そう言って空が振り替えった瞬間。
「危ないッ!」
右から飛来した何かを天霧が掴み取る。
飛んで来た方を見ると人影が逃げていくところだった。
「≪氷雷針≫」
氷のエストックを飛ばすも、手応えがない。
「ちっ...助かった、天霧」
「どういたしまして、でも余計なお世話だったかもね」
右手で光の矢を握り潰す天霧。
「お?どうしてそう思った?」
「雰囲気とか、視線とか、完成に剣士のそれだもん」
やっぱこいつ犯罪者予備軍だろ。
「...俺隠してるつもりあるんだけど」
「うん、隠れてはいると思うよ?俺がちょっと敏感なだけだから」
やっぱこいつ色んな意味でやべーわ。
「そういえば高原って≪魔術師≫だったんだね」
「...はぁ」
「え?何その『こいつ何も知らないんだな』って感じのため息」
こいつ何も知らないんだな...。
そんなことをしていると奴が来た。
「よっ!お疲れさん!」
「来たな...パパラッチ」
夜吹英二郎ことパパラッチだ。
「んな反応すんなって、っておお?見ない顔だなー」
ゴミラッチが天霧を見つけた。
「初めまして天霧綾斗です、よろしく」
「おう、俺は夜吹英二郎ってんだ、よろしく」
「こいつが例の特待生な」
「ほほぅ!」
な、こうすればすぐ食い付く。
「なるほどなるほど?こいつがあのエンフィールド女史が無理矢理転入させたって噂の」
「ま、にしてはアスタリスクについて知らなさすぎだがな」
「それを言われると返す言葉もないよ...」
「へぇー、どんくらいだ?」
「さっきのこいつの発言をもう一度言ってやろう」
天霧の声真似をする。
「『そういえば高原って≪魔術師≫だったんだね』だとさ」
夜吹が呆れる目をする。
「天霧...流石にそれはないぜ」
「えっ...ごめん...高原ってそんな有名なの?」
「呆れて物も言えねぇぜ」
呆れて物も言えねぇぜ...。
「いいか?天霧、こいつは≪氷狼≫の二つ名を持つ前回≪王竜星武祭≫のベスト四だ」
「へぇ...えええ!?」
この反応よ。
「ついでにうちの序列四位だ」
そう、≪王竜星武祭≫の次の公式序列戦で、何故か格上の≪氷屑の魔術師≫ネストル・ファンドーリンに挑まれ無事勝利し、見事序列四位になった。
「四位!?つまり学校で四番目に...?」
「そ、強いってこと。まぁ我が情報網的には一位も目指せるんじゃねぇかとは思ってるんだがな」
「強いってのはわかってたんだけどそこまでだったんだ...」
うん、こーゆー時は小っ恥ずかしいってのが正解かな?
「あはは、そんなもんでもねぇよ」
「そんなもん所じゃないんだがねぇ...」
天霧を職員室に案内して俺たちは教室に向かった。
え?レスターはどうしたのかだって?
いつの間にかいなくなってたよ。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「おっす、ユリス」
「ああ、おはよう」
少し遅れてやって来たユリス。
「おはようさん、お姫様」
「ふんっ...」
夜吹の挨拶は無視。
「やっぱり高原だけかねぇ」
そう、ユリスが挨拶を返すのは俺だけなのだ。
てまぁ友人と認められてるって解釈すれば別にいいんだが、もう少しクラスメイトと交流を持って欲しいものだ。
「はいこれ、例のハンカチね」
「助かった!」
夜吹への対処とうって変わる態度。
「てめえらー、席着けー」
と、そこに担任の谷津崎先生が来た。
元レヴォルフのやべー奴で釘バットを持ち歩いている。
「喜べー、転入生だ」
んで入ってきたのは予想通り。
「えと、天霧綾斗です、よろしく」
「そーだなー席は...あぁ、デレ姫の隣が開いてるな」
「なっ!誰がで、デレ姫ですか!」
「だってそうだろー?最近高原にデレてるんだから」
的を得ているな。
「えっと...よろしく?」
「ふん、私は馴れ合うつもりはない」
天霧がユリスの隣に来るもツンケンする姫様。
「え...?でも...」
「姫様は高原にしか気を許してないんだよ。何があったか頑なに話してくれないけどな」
ここで登場我らが害虫。
「でもまぁユリスよ、ハンカチ拾ったのはそこの転入生なんだよ、礼くらいは言えって」
「む...そうだったのか、それは助かった礼を言うぞ、天霧」
「ははは...どういたしまして」
尚もでかい態度に苦笑いするほかない天霧。
「おらー、始めんぞー」
やるせない谷津崎教諭の声で授業は始まった。
††††††††††
翌朝。
「まさか、こんな時間からやってるとは...」
約束の朝練に付き合わせるために天霧を叩き起こした。
とは言うものの周りは真っ暗。
それもそのはず、現時刻は朝四時。
こんな時間ならこの時期じゃなくてもほぼ真っ暗だろう。
まあそんなのは些細な事だだ、重要な事じゃない。
それよりもあの天霧のアンバランスさの方が気になる...。
ってやっぱり天霧って聞いたことある気がするんだけどなー。
思い出せん。
「なぁ天霧、俺とどっかで会った覚えないか?」
ランニングしながら聞いてみる。
「高原と?うーん...ないと思うけどな」
がやはり望む答えは返って来ない。
俺の記憶違いだったのか...?
そもそも空は実験の影響で記憶も一部飛んでいるのだ。
覚えてなくてもおかしくはないのだが、当の本人はそのことに気がついていない。
春先の早朝、辺りが明るくなり始め靄がかかり、少し遠くを見通し難くなったところでランニングを止め、ストレッチを行う。
そもそも朝練に付き合えと言ったのは、実際に鍛練相手が欲しかったのもあるが、こいつについて見極めたかったのもあるのだ。
と言うことなのでーーー、
「よし、手合わせしよう」
やはりこれに限る。
「えぇ!?た、鍛練するだけなんじゃ...、あっ」
そこまで言って天霧も気がついたのだろう。
そう、ただ鍛練するだけならば相手はいらない。
相手がいるならば手合わせする方が効率的なのだ。
「謀ったな高原...」
睨まれるが素知らぬ顔をしておく。
「...はぁ」
覚悟を決めたようにーーー或いは、ただただ諦めたように煌式武装を起動させ、中段に構えた。
「≪
そのことを満足気に頷き、空は自身の能力で刀を作り右手一本で持つ。
そして右肩、右足を引き天霧に対して斜めの姿勢を取る。
「じゃあ...行くぞっ!」
声と同時に天霧に向かって駆ける。
彼我の距離は約三十メートル。普通であれば全力で走っても早くて五秒ぐらいだろう。
だが星脈世代では二秒ーーーいや空では、
(速いっ...!)
一瞬だ。
地面を擦るように下段から振り上げた剣は、しかし天霧にギリギリで受け流された。
煌式武装の上を滑った氷の刀は弧を描き、反対から天霧を切りつける。
これは天霧も予想できたようで余裕で受け止めーーーられなかった。
煌式武装に接触した瞬間氷の刀は半ばから折れ、前半分は天霧の顔面へ一直線に向かう。
天霧は上体を反らし、それを避ける。
無防備になった脚を払いにかかるが、その寸前にバク転で避けられ、バックステップで距離を取られた。
「ほん...っとやってくれるね、高原」
「手、抜いてる場合じゃあねえぞ?」
恨めしそうに見てくる天霧に言ってやる。
実際に手を抜いてるかは微妙なとこだが、やはりどこか身体的なスペックと動きが違う。
「この状態ではある意味本気だったんだけどね...仕方ない、か」
そうすると天霧は目を瞑った。
わざわざ本気を出してくれるみたいなので、一先ず待っておく。
「内なる剣を以て星牢を破獄し我が虎威を解放す!」
瞬間。
天霧の星辰力が爆発した。
本当にそう感じるほど急に星辰力が増加し溢れ出てきたので。
まるで何かに塞き止められていたかのように。
それはある意味空にも
「封印...」
つまり、誰か、もしくは自分で力を押さえ込んでいたと言うことだ。
「時間制限も反動もあるからあんまり使わないようにしてたんだけどね」
威圧感こそ変われど飽くまでも雰囲気、態度はそのままの天霧が肩を竦めて言う。
「ふむ...天霧、それ秘密にしておくから今から俺のすることも秘密にしといてくれない?」
空は一つ考えてそう口にする。
ここはアスタリスク、情報の重要性は世界でも有数だ。
ましてや生徒ともなれば、戦闘を優位に進めるためにもなるべく情報を隠しておきたいものだ。
「うーん...まぁ、確かにそれはありがたいかな」
それは流石に天霧も知っていたのだろう。
提案を受け入れてくれたようだ。
「じゃ、そういうことでっ!」
そういうと空は星辰力による逆風の中、天霧に向かい駆けていった。
††††††††††
天霧の秘密を知ってしまった戦闘の後。
教室で駄弁っていたらお姫様が登校してきた。
「おはよう、ユリス」
「ああ、おはよう」
今日も今日とて俺にしか挨拶を返さない。
挨拶ぐらいしてもいいと思うんだがねぇ...
「っ...」
「どした?」
ユリスが息を飲んだような気がして声を掛ける。
「ああ...っ........なんでもない」
この時もう少し声を掛けなかったことを後から後悔することになるのだ。
彼女が手にしていた紙を俺は気にすることはなかった。
授業後。
「ああ、ゆりーーー」
「悪い」
天霧の事を少しはぐらかして話してやろうとしたのだが、さっさと行ってしまった。
「ありゃりゃ?仲違いでもしたのか?」
夜吹が湧いて出てきたが、反応する気にならない。
「そういえば、どうしてリースフェルトさんは高原だけに気を許してるの?」
更にひょこり現れたのは何も知らないであろう天霧。
どうでもいいが天霧がこう出てきても嫌な感じはしない。
「それはな、天霧、あの二人はもう結ばれーーー」
「俺が、お前の身分気にするつもりはないから俺とだけでもいいから仲良くしてくれって頼み込んだん...だ......」
そこで一つの可能性に思い付く。
「あいつ...まさか」
いきなり視界がブラックアウトする。
そしてうなじ辺りに柔らかい感触。
「ふふっ、だーれだ?」
「悪いクローディア、今急いでる」
我らが腹黒生徒会長クローディア・エンフィールドだ。
誰か見なくてもこんなことするのは彼女くらいなものだ。
「...何かありましたか?」
だが俺の声で何となく事の重要性を理解したのだろう。
すぐにちゃんとした顔をすると真剣な声で聞いてきた。
「ユリスの様子がおかしい」
「ユリスが...?」
クローディアも少し考え込む。
「天霧、夜吹、悪いがユリス探して貰えないか?」
その間に二人に声を掛けておく。
「ふざけてる場合じゃなさそうだな」
珍しく夜吹も空気を読んでくれた。
天霧も頷いて、二人ともユリスの後を追いかけて行った。
「クローディア、昨日の俺の決闘の時横槍入れてきたやつは見つかったか?」
「あ、え、いえ、それはまだ捜査中ですけど」
「恐らくそいつだ」
最近のことを考えてもユリスに対し、俺の事で揺さぶるような奴は、そいつしかいないだろう。
「予想に過ぎないが、そいつがユリスを呼び出したんだろう。俺を使ってな」
そしてこのクローディアも馬鹿ではない。それだけですぐ察してくれた。
「それでは捜査を急がせて、ユリスの捜索も―――」
「いや、それでは遅い」
昨日俺を攻撃してきた奴に反撃した際、手応えがなかった。
正確には≪氷雷針≫自体は命中したが
そして奴がユリスを狙うなら耐火能力は特段気を使うと考えていいだろう。
そんなやつが近接戦を仕掛けでもしたらユリスでも勝てない。
悠長に捜索などしてる場合ではないのだ。
「ではどうしますか?」
心配そうな顔をしたクローディアが顔を覗き込んでくる。
少し考えてから、
「裏ワザを使う」
ユリスのためだ、腹を括るか。
「裏ワザ...?」
何のことだか、と言った風のクローディア。
それもそうだ。この事を知っているのは俺以外ではたった一人だけなのだ。
「約束してほしい、今から見る事を決して口外しないと」
これは俺からであるのと同時にもう一人からの要望でもあるのだ。
「...わかりました、クローディア・エンフィールドの名において、決して口外しないと誓いましょう」
いつものコロコロとした笑顔ではない、本気の顔だ。
そのことを確認し、空は懐から一枚の藍色の紙を取り出した。
その大きさ、形はまるで―――
「呪符?」
陰陽師...このアスタリスクでは星仙術士と呼ばれる人たちが使用する札だ。
空は目を瞑り、囁く。
「『揺らへ、揺らへ、幻幽なる殻、日を縛る鎖、割らへ、割らへ、法則の楔、真実の盾よ』」
瞬間、クローディアの持つ純星煌式武装≪パン=ドラ≫が小刻みに振動し始めた。
まるで、天敵に怯える動物のように―――――