いやー...大学ナメてました。忙しいです。
不定期ではありますが、一応小説のことは覚えてますし、ほんの僅かずつ書いてはいます。
ので、待ってくれるという物好きな方は、首を長ーくしてお待ち下さい。
僅かに暗さの残るフィールドで鮮やかな青と薄い蒼の二色の光が踊り回る。
時に接し、時に離れ、時にすれ違う。
弧を描き、疾く走り、残像を創る。
振り向き、構えたまま向き合う天霧と空。
空は飄々としているが天霧は息を切らし、肩が上下している。
「んー、やっぱ封印状態じゃいなすのか精一杯か」
構えを解き、手に持っていた氷の剣も崩壊させながら空が言う。
「いや...空が...容赦なさすぎ...なのも...あると...思うけどね...」
息を整えながらも反論してくる。
そもそも空は近接が出来ることを隠している上、それなりの使い手なので相手取れるのが天霧くらいなのだ。
だからこそやれるときに練習しておかないと、という事でほとんど手加減はしていない。
「手加減してたら練習になんないじゃねえか」
「えぇ...」
空の横暴さに流石の天霧も呆れ顔。
「まぁいいじゃん、お前の練習にもなるんだし」
言いながら構えを解き、天霧に水の入ったペットボトルを投げ渡す。
ちゃぷんと音を立てて水が宙を舞う。
「まぁそうだけ、どっ!?」
素直にキャップを外し、水を飲もうとした天霧の声が裏返る。
見れば天霧の手にするペットボトルの水が凍っていた。
「空ーー!!」
「あっはっはっはっは!!」
声を上げながら凍ったペットボトルを投げて来る天霧。
空が天霧に渡した水を能力で凍らせるという嫌がらせをしていた。
「まぁまぁ」
そう言ってペットボトルの水を溶かす。
最初から凍ってるものを溶かすことは出来ないが、自身の能力で凍らせたものは溶かせるのだ。
「全く...」
呆れた様に息を吐きながらペットボトルに口を付ける天霧。
...いや、やらないよ?
ピピッ
と、そんなことをしていると来客の知らせが入る。
ウィンドウを開いて確認してみれば、お転婆王女ユリスだった。
「大丈夫か?」
これは一緒にいる天霧に向けた問いだ。
俺の名で演習場を借りてるとは言え、流石に確認しないわけにもいかない。
「ああ、うん、大丈夫」
快く許しが出たのでロックを解除する。
軽い摩擦音と共に開いた扉から入ってきたのは薔薇色の髪を靡かせた女性。
ユリス・アレクシア・フォン・リースフェルト。
リーゼルタニア王国の王女であり、《華焔の魔女》の二つ名を持つ我が星導館学園の序列五位。
そして空のみに心を開く少女であった。
「天霧か、失礼する」
空に対する時と流石に違うが、礼儀としてなのかもしれないが、ユリスが一言入れていた事に子供の成長を喜ぶ近所の人になった気分だった。
「...空、お前は何を涙ぐんでるんだ?」
おっと、そんな事をしていたら見咎められてしまった。
ここで正直に言うとちょっと不機嫌になってしまうので余計なことは言わない。
と、ユリスは一度辺りを見回した。
「所で...、天霧はお前のお眼鏡に叶ったのか?」
いくら人に無関心なお姫様とて特待生である天霧の実力は気になったのだろう。
無いなら無いで気にしないような気もするが、別に隠すこともない―――いや、あるにはあるがそこを言わなければいいので、自分の思ったことを言う。
「それなりに強いぞ」
それを聞いた瞬間、ユリスの顔が獲物を見つけた猛獣のようになった気がした。
「ほぅ...空にそこまで言わせるか。どんなもんだ?」
天霧との手合わせを思い出す。
封印の事は流石にユリスには伝えられない。
別に封印状態とて弱い訳じゃないが、強いわけではない。
そこを上手く伝えるには...
「そうだな、
まぁはぐらかすしかないよね。
だが嘘は言ってない。実際封印状態ならそんなもんだしね。
だた、解除した状態なら恐らく天霧が勝つだろうけど。
「成程...それはこの先楽しみだな」
ユリスの表情に背筋に寒気を感じたが、気にしないでおく。
「それで?本題は?」
そう切り出した途端、端から見てもわかるぐらいにユリスの体が跳ねた。
そして空と綾斗と自分の手元の間で視線を往復させる。
「えーっと...僕、そろそろ上がるね...?」
それは、察してくれたのか、ただただ逃げたかったのか。
何か言う前にそそくさと出ていってしまった綾斗の背中を呆然と見ていると、広い空間に溶けてしまいそうなほど小さな声が届いた。
「わ、私と一緒に鳳凰星武祭に出て欲しい...」
うん、一応聞こえた。
が、これは難聴系主人公を目指して聞こえなかった風にすべきなのか?
それともちゃんと察して答えてやるべきなのか?
これが恥ずかしいと言うことは自分に感情がなくたって分かるが、もしかしたら本人はちゃんと言いたかったかもしれないし、でもユリスの性格的には一回目でちゃんと聞いていた方がい――――――
「私と一緒に鳳凰星武祭に出てくれ!」
今度は鼓膜が破れそうなレベルの声が飛んできた。
いや、うん、ごめん。
まぁでも確かに出るとは言っていたし、逆にペアがいるって話は聞いたことがなかった。
自分で言うのも何だが、アスタリスクにいる学生では俺が一番仲良いのもわかってる。
俺が勝ちたいことも知っていただろうから十分考えられる提案だ。
まぁそれ以前に答えは決まっている。
「俺で良ければ」
これ一択だ。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「そ、その本当にいいのか?私で...」
ものすごい心配げなお姫様。
これもユリスの性格からしたらまぁ順当な反応だろう。
「まぁ、情のない話、この話が受けるのが一番勝率が高いからな」
「だが、私の上にはお前を抜いて3人もいるだろう。その者と組んだ方が勝率は高いのではないか?」
うん、これが可愛さの欠片もないやつだったら面倒なだけなんだが、ちょっと不安げな美少女ってだけで見ていたくなるんだから不思議だな。
「まぁ相性の話もあるが、情を入れた話、ユリスが一番気楽でいいからな」
「っ...」
途端、顔を真っ赤にしてそっぽを向くお姫様。
小声で礼を言っているのが良い具合にアクセントになっている。
「さ、早速だが登録に行ってくる。訓練は明日からでいいな?」
先の綾斗同様さっさと出ていこうとするユリス。
今日空は天霧と手合わせしてたためそれで良かったが、一応言っておきたいことがあった。
「あー、待ってくれ。訓練は明日からでいいが、全て放課後にしてくれ。朝はいつも天霧との予定が入ってるし、これは外せない」
流石にユリス相手に近接の訓練はしようがないので、こればっかりは外せなかったのだ。
「...了解した」
ユリスがこれを察したのかはわからないが、快諾してくれたので朝練は更に過酷になることだろう。
(その頃天霧)
「あれ、何か寒気が...」
一人未来に来るであろう地獄をどこか感じ取っていた。
▽△▽△▽△▽△▽△
「はぁ...はぁ...」
翌日放課後。
予定通り演習場には空とユリスの姿があった。
どちらとも目立った怪我などは無いが、しかし明確に二人の状態には差があった。
膝に手を置き、鮮やかな薔薇色の髪を揺らすお姫様。
対して、足元に白い冷気を漂わせた空。
どちらが勝っているかは一目瞭然だった。
「お前...ここまで...強かったのか...」
ユリスがここまで息を切らしているのは、空に走り回されたからだ。
と言うのも、ユリスにはあまり防御技が多くなく、≪大紅の心焔盾≫さえ削り切れれば後は逃げる他なくなる。
対して空は一度氷を設置してしまえば、放っておいても氷は維持され、その間にも攻撃することができる。
また空の氷の温度は零度以下ならほぼ星辰力の消費が変わらず調節することができる。
よって状況にもよるが、防御であればほぼ絶対零度の氷を使っている。
しかし恐らくだがユリスの温度調節は星辰力の消費がシビアだろう。
空の氷を溶かすにしろ壊すにしろユリスは一定以上の技を求められる。
つまりは能力の差であり、相性でもあったのだ。
最終的にユリスが負けないためには逃げ回る他なくなり、こうして今息を切らしているわけだ。
「んー...お前を否定するわけじゃあないが、素直過ぎるな」
手元に残っていた冷気を振り払いながら評価する空。
聞いたユリスは僅かに顔をしかめる。
「...どういうことだ?」
自尊心を傷つけられたのだろうか。
ただ空の方が強いことを認めているためあまり表に出さないようにしている感じだ。
「ユリスの技にな、妨害系統がないんだよ」
「妨害...」
そう。基本的にユリスの技は攻撃が大半を占めており、僅かに防御もあるが、妨害に関してはほぼないに等しい。
正確にはあるのだろうが、空に、ほぼ誰にでも使えるような妨害技がなかった。
「別に攻めている訳じゃない。お前の性格からしてもあまり妨害は好まないだろう。それに妨害が無くてもまだ強くなれる余地もある。だが、俺との差の主な要因はそれだと思われるという話だ」
ユリスは俯き、その表情を知ることはできない。
ただ普段から感情を作っている空からしたら見えているも同然だ。
だからこそ、
「...参考までに妨害技にどのようなものがあるか、教えて欲しい」
これはユリスらしいし、彼女の良いところなのだ。
「俺の≪ヨトゥンヘイム≫が良い例だな。人は寒くなると動きが鈍くなるのを利用したものだ。空気中に小さな氷の結晶...要は雪だな、それを生成して気温を下げてる。こうするだけで敵の接近をある程度抑制できるし、接近してきても普段通りを封じることができる」
「なる...ほど...」
ユリスはもう頭をフル回転させているようで、返事もおざなりだ。
だがこれもまたユリスの良いところだと思っている。
††††††††††
時は遡り、サイラスの一件の片付いた翌日。
星導館学園の敷地の一角に、二人の男子生徒の姿があった。
一人は高校生とは思えないほどの体格を有した大男。
一人は比較的細い印象のある少し髪の長い男子生徒。
その相反する二人は少し広めな更地に向かい合っていた。
そして数秒後、特徴的な電子音声が鳴ると弾かれる様に大男が飛び出した。
だがその目の前に急に氷の壁が現れる。
しかし大男は足を止めることなく、持っていた斧型煌式武装を振り抜き、氷の壁を一刀両断した。
次に大男の両脇に氷が現れるも、姿勢を低くし加速して氷のプレスを避けた。
大男が距離を詰める度に様々な氷が襲うが、その悉くを攻略してくる。
そしてついに大男の間合いに入った瞬間、男子生徒の振り抜いた氷の腕と斧型煌式武装が正面からぶつかり、火花を散らす。
暫くそのまま硬直していたが、氷の巨腕に皹が走り砕け散る。
斧を振り切った大男は左からの大振りを、腕を再度生成した男子生徒は裏拳の形で振り抜く。
しかし今度はそれらが拮抗することはなく、一瞬で氷が散った。
それが顔面に飛んできた大男はつい顔を庇い――――――
「俺がお前の決闘を受け続けていたのは、お前のクセを見抜くためだ」
そんなことを言って去る男子生徒。
それを見届け、腰を下ろし、自嘲気味に笑うレスター。
「お前は最初から俺を評価していてくれていたんだな...高原」
アスタリスクが出ない...(´・ω・`)