『あー、高町以下元訓練校生全員、すぐに課長室まで来てくれ』
とても短い艦内放送に、ぼくらは首をかしげながら移動を開始する。
高町以下、と言うのだから、ぼくら訓練校チームということだろう。
「説教か?」
「また降格は勘弁願いたいぜぃ」
「あれはマリク達の責任だろ。何だってオレまで連帯責任なんだよ」
「だってねぇ、こんな素晴らしい設備があるんだから、ゲームに出てくる機体を再現したくなるじゃないか」
「そのまま宇宙に放り出してやればよかったか」
「いくら宇宙戦仕様だからってさすがに単体で飛ばされるのは勘弁」
簡単に言えば、ぼくと潤とティルクが三人で任務に出ている間、こいつらがバカなことをしでかし、全員が二士に降格させられたというわけだ。
「本当にバカだな、お前ら」
「うふふ」
「本当にキモイなお前は」
「着いたぞ。もう黙れよ」
ぼくは課長室の扉を開く。
そこに居たのはフォレスタ二佐と、
「――八神二佐」
ぼくは今度は最初から敬語を使うことができた。
はやてさんは笑って頷く。
「では、フォレスタ二佐」
「ああ。好きに話してくれ。っと、八神佐はお座りいただいて構わんぞ」
フォレスタ二佐の言葉にはやてさんは頷き、ソファに座る。
その状態でゆっくりとぼくらを見回し、頭を軽く下げる。
「はじめまして。八神はやてです」
「「「「「「「「大ファンです」」」」」」」」
そう詰め寄ったバカ共全員を潤とティルクが殴り、後ろに放り投げる。
「じゃあ、詳しい説明を聞いていいですか?」
「……ええの? あの子ら放っといて」
はやてさんは一瞬で山と積み上げられた阿呆達に目を白黒させていたが、ぼくは気にもせず頷いた。
「ほんならまず、ここに来た理由から――」
~~~~~
簡単に言えば、こういうことだ。
はやてさんが二ヶ月後、つまり四月に、レリック専門の対策部隊を設立する。
レリックの特性上、様々な施設で研究されている可能性も高い。
だから、それに対してエキスパートである『強行偵察課』に協力を仰ぎたい、というわけだ。
「が、部隊の保有戦力上限とかそういうめんどくせぇ事情諸々で、どんだけ切り詰めても下っ端三人しか送れねぇ、ってのが現状らしい」
フォレスタ二佐はそこで一息吐き、
「ランクも階級も高いアンソニー達先輩連中は持っていけねぇ。だからお前らの出番だ。というわけで、三人選べ」
そう締め括る。
「三人、ですか」
「高町、お前が行け。八神が作る部隊には、お前の知り合いも多いらしいからな」
「はい」
姉さんやフェイトさん、はやてさんやその家族もいるとなれば、確かにぼくが適任だろう。
「んじゃ、あと二人選べ……といっても、誰を選んでもあんま変わらないがな」
ぼくはその言葉に違和感を覚えたが、とりあえず頷き、みんなを見る。
ぼくの視線に気付いたクォーツがわかっている、と言わんばかりに頷き、マリクが腕を組んで自信ありげに立っている。
その横でナグリーとリブレンドが腕を組み合わせ、ウィルスとヴィンズが拳を合わせ、ライアとレイドがこちらに親指を立てた。
ぼくは頷く。
みんながニヤリと笑う。
「じゃあ、潤とティルクを連れていきます」
瞬間、後ろから悲鳴や怒号が聞こえてきたが、ぼくは無視してフォレスタ二佐に頷く。
「んじゃ、そういうことで。八神、うちの若きエースを頼む」
「了解しました、ケレット二佐」
「
「恐縮です。その時がくれば、ぜひお願いしますね」
はやてさんは敬礼をし、部屋から出る。
寸前、ぼくに向かって手を振ってきたので、ぼくも同じように振り返した。
~~~~~
「人でなし」
「姉御のバカたれ」
「妥当な判断だろ。相棒の俺。切り込み隊長のアローン。オールラウンダーの一騎」
「ああ。
そんな二人に、ぼくも頷く。
「というわけだ。諦めろ」
「姉御の『姉』へのデレが見れると思ったのになぁ」
「でも、課長は『誰を選んでもかわらん』って言ってたよな。なんだいあれは?」
「さあ?」
部隊設立は四月とはいえ、本局から移動するには時間がかかる。
もちろん、ミッド行きは他の世界に比べてかかる時間は短いが、それでもやはり数日はかかる。
つまり、時間に余裕をもって行動するのは常識だということで、ぼくらは三月も終わる頃には出発することにした。
「準備はいいか?」
「ああ。既に終わっている」
「つっても、デバイスと制服くらいしか持っていくもんが無いんだがね」
まあ、もし足りないものがあったとしても、向こうで買えばいいだろう。
「潤、バイクはどうする?」
「持ってくよ。口座をすっからかんにして買ったもんだからな」
「あの時は、ことある毎にぼくの部屋に転がり込んできてたな」
「まあ、そう言うな。感謝してんだぜ」
そう言いながら、潤は大型の黒いバイクを持って来る。
「六課には車はあるのか?」
「ジープがある。もしもの時には出してもらうよ、ティルク」
「最近車に乗っていないから、事故るかもしれないな」
「冗談を言うなら、真顔で言わない方がいいと思うぜ」
「真剣だ」
「マジかよ」
ぼくは時間を確認する。
次の船が出るまで、あと三十分ほどだ。
「じゃあ、行くとしよう」
~~~~~
空港で荷物を検査されたり、デバイスをチェックされたり、IDカードを認証したりと、やたら面倒な検査を通り抜けてようやく船に乗り、座れたことに大きく息をつく。
「まったく、無駄なことばかり手間をかけてるな」
「本当にな。いくらやろうが、IDは偽装できるし、センサーに掛からないように細工だって、いくらでもできる」
「一番気に入らんのはデバイスをチェックされることだ。ありゃなんのためにあるんだ?」
潤の言葉に、ティルクが肩を竦める。
「さぁな。デバイスは容量も多いし、処理能力も高い。
「それだったら俺らはアウトだな。この許可証がなきゃ、即御用だ」
「ハッキングとかピッキングとか、仕事上必要な技術だし、それについてあれこれ言われる筋合いは無いんだがな」
「局が教えてくれた技術で捕まるなんて御免だな」
その時、少しだけ、体が慣性に従って動き、椅子に背中が沈み込む。
どうやら、船が出たようだ。
これからミッドまで、のんびり過ごさせてもらうとしよう。
阿呆達はしばらくお休み