「起きろ、そろそろ着くぞ」
身体を揺さぶられる感覚に、ぼくは目を開く。
そして、乾いた喉に僅かな苛立ちを感じながら、声を絞り出す。
「……何時間寝てた?」
「5、6時間ってとこか。お疲れなのかい?」
潤が飲んでいた水の入ったペットボトルを渡してきたので、ぼくは軽く頷きながら残りを飲み干す。
近くにあったゴミ箱に放り投げ、ホールインワンしたことに満足しながら、ぼくは窓の外を見る。
蒼く、大きな丸い世界。
第一管理世界ミッドチルダ。
「地球は蒼かった」という言葉があるが、ミッドだって蒼いし、生き物が住んでいる世界はほとんど蒼いだろう。
「『しかし神は居なかった』か。神は見えるものじゃない、我らの内にあり、絶えず見守ってくださるのだ」
潤がいきなり訳のわからないことを言い出した。
「どうした?」
「地球の偉人の言葉を聞いて、班長(アンソニー)が言ってたのさ。いまいち意味が汲み取れんかったがね」
「解釈はそれぞれだしな」
「ああ。だが、少なくともこの次元世界に神はいないと思うがな」
「夢のない男共だこと……っと、着陸するぜ」
宇宙空間から次元を潜り、ミッドの次元港に到着する。
最初に次元航行船に乗ったときは、大気圏突入を仕出かすのかと思ったこともあったが、次元移動なんて便利なものがあるのでそんな危険な事をする船はもう残っていない。
「さて、降りようか」
~~~~~
自分のスーツケースが運ばれてきたのを見て、素早く回収する。
別に誰かに盗られることを心配しているわけではないが、あまりのんびりしていると他の客にも迷惑だろう。
「見つけた、と。いつか自分のケースが自分で飛んできたりしないもんかね」
「それはさすがに無理だと思うぞ。バイクはまだか?」
「ああ、今取ってくる」
持っててくれ、とぼくにケースを渡すと、走っていく。
そこで、ティルクが壁のモニターを見ていることに気付いた。
「どうした?」
「いや、地上本部の広告だ。局員の募集だと」
「ふーん。人手不足もここまで来たか」
「ま、本局勤めの俺らは偉そうなこと言えんがね」
そうだな、とぼくは同調し、
「行こう。六課の隊舎は、中央区の湾岸地区だったか」
~~~~~
「ここだな」
ぼくらは隊舎を見上げる。
少しばかり、古い建物だ。広さは十分にありそうだが。
「バイク置いてくるわ」
潤が駐機場へ向かってバイクを走らせていく。
ぼくはティルクを見る。
「待っててやれ」
その言葉に、ぼくは頷いた。
~~~~~
部隊長室の扉を開き、敬礼をして入る。
一人のものにしては広い部屋だ。それに、部屋にあるのが部隊長の机と、その横におもちゃのような小さな机だけというのが、更に広く見せている。
そして、部隊長の席に座っていたはやてさんが立ち上がり、敬礼を返してくる。
「強行偵察課より三名、到着しました。只今より機動六課へ出向となります、高町一騎空曹です」
「斎藤潤陸曹であります」
「ティルク・アローン空曹長であります」
ぼくらは同時に敬礼をし、よろしくお願いします、と声を揃えて言う。
そして、出向の手続きを素早く済ませると、ぼくはようやく一息つく。
「じゃあ、説明させてもらうな」
敬語では無くなったはやてさんがモニターを出す。
「六課には4つの分隊に分かれて活動することになる。司令部のロングアーチと、フォワード分隊としてのスターズとライトニング。そして、『リーコン』」
「つまり、ぼくらの分隊だね」
「そう。三人にはリーコンに入ってもらう。分隊長はティルク・アローン空曹長が勤める。まあ、名前は大仰やけど、やることはいつもと変わらへん」
「施設への強行偵察」
「そう。でも、きっちりとデスクワークもあるし、施設なんてそんなぽんぽん見付かるわけでもない」
「課では、ぽんぽん見付かってましたがね」
潤が頭の後ろで手を組んで言う。
「でも、それは
「では、普段は隊舎で待機、ということでしょうか?」
「他のみんなを手伝ってくれるもよし、訓練するもよし。あんまり仕事は無いかな」
ぼくは頭を掻いた。
「ぼくらが来た意味はあるの?」
「むしろ、三人は交替部隊を主として動いてもらう。フォワードが
「ま、『課』の時よりは楽な仕事だな」
潤が言い、ティルクも頷く。
「気は抜かないようにしないとな」
「ほな、六課活動開始まで、隊舎でも見て回ったりして、ゆっくり過ごしてな」
~~~~~
駐機場、広かったぜ、という潤の言葉に誘われ、ぼくらはまず駐機場を見ることにした。
奥の方では潤のバイクが停まっており、その横にはジープが数機停まっている。
「あれは自由に使っていいのか?」
「六課が所有してるものだな。許可が降りれば、使っても構わないそうだ」
「緊急時だけか」
「むしろ、緊急時は許可無く使っても良さそうだがね」
「まあ、使ったら使ったで、後で許可をとればいいかもな」
そこまで言って振り向くと、(ぼくよりは)背の高い女性が歩いてきているのが見えた。
長髪をポニーテールに纏め、切れ長の鋭い目付き。
「シグナムさん」
「久しぶりだな、一騎。随分成長したようだ」
「はい、お久しぶりです。そちらは、お変わりないようで」
「ああ。何も変わっていないさ」
笑って言ったその言葉をどういう意味で言ったのかは、ぼくにはわからなかった。
そして、シグナムさんは潤とティルクに目を向ける。
「ティルク・アローン空曹長であります」
「斎藤潤。陸曹です」
「シグナム二等空尉だ」
訓練校での仲間です、というぼくの説明を聞きながら、シグナムさんは二人を見上げる形になりながら見比べ、ティルクに視線を固めた。
「騎士か?」
「はい」
少しばかり、ひやりとした。
「ふむ……悪くはないが、荒削りだ」
「……?」
ティルクはじっくりと見られ、居心地が悪そうに冷や汗を流す。
「一騎、たまには相手をしてやれ」
「わかりました」
そこで、シグナムさんは思い出したように、
「そういえば、お前達は交替部隊だったな」
「はい、フォワード分隊の交替担当です。あ、そういえばシグナムさんも」
「ああ。私も交替部隊の隊長として動く。よろしく頼むぞ」
「了解しました」
ぼくが敬礼をすると、シグナムさんは頷く。
「ティルク、といったか」
「はっ!」
「今度、手合わせをしてやろう」
やっぱりか、とぼくは心の中で呟いた。
~~~~~
「まあ、気にしなくていい」
「さっきの、シグナム二尉のことか?」
「あの人も騎士なんだよ。古代ベルカの」
「古代を使うのか?」
「あの人は少し特別でね。といっても、『古代ベルカ』はそこまで特別希少、って訳じゃないけど。使う人は他に何人もいるし」
「……そういえば、斎藤はさっきから黙ってるが、どうかしたのか?」
「いんや、ああいう武人は少し苦手でね。話が向かなくてほっとしてた」
「まったく、お前という奴は」
ティルクが呆れたように溜め息をつく。
「まあ、嫌でも話すことはあるさ……さて、今日は休ませてもらうとしよう。疲れが溜まっているしな」
ぼくらは寮へ移動した。
キャラ紹介を考えている最中です。
やはり増やしすぎたかもしれん。