ぼくが魔法を使えることはわかった。
次は、ぼくが『なに』に向いているかをテストすることから始まった。
武器による『近接戦闘』か、魔力弾などによる『射砲撃』か。高速移動による『遊撃』か。
もしくは、補助魔法による『支援』か、仲間を守る『防御』か。
はっきり言おう。ぼくは全てに才能があった。
小学一年の身体能力なんて知れたものだが、これをやってみろ、という武器の振り方、呪文の後に生成され、コントロールもできた魔力弾、制御に失敗して盛大にすっころんだが使えた高速移動魔法。その転んだ傷に用いた、止血程度なら出来た治療魔法。衝撃は来たが、そこそこ大きな岩をぶつけても壊れないシールド。
大したこと無いように思えるが、まだ小学一年の子供が使うには十分なものだった。
そういうわけで、ぼくはその全てを学ぶことになった。
もし、なんらかの方法で魔法を学んでいたら、こんなことにはならなかったろう。
魔法の事をなにも知らなかったからこそ、色々な人から学んでも変な癖が付くこともなく、少しずつ、全ての面で成長していった。
が、これはぼくに教えてくれた人曰く、『なんでも出来るただの便利屋』らしい。
確かにそうだと思う。
なんでも出来る、といえば聞こえはいいが、言ってしまえば全てが中途半端なのだ。何かに特化した人の技術には敵わない。
現に、教えてくれた人達全てにおいて、ぼくはまったく敵わない。
万能型は、なんでも出来るが、何かに特化した人には敵わないのだ。
まあ、その人達が特別すごい、というのも理由の一つだろうが。
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そして、ちょっとした問題があったのは、小学二年も半分を過ぎた頃だ。
「デバイス?」
「そう。まだ自分の、持ってないよね? 私のを代用し続けるのも、よくないだろうし」
そう、姉さんに言われた。
確かに、今までのぼくは姉さんのインテリジェントデバイスを使わせてもらっていた。
AIを組み込まれているインテリジェントは、必要に応じて術者を補助する。
これだけ聞けばとても良いものに聞こえるが、補助とはつまり、デバイスに「手助け」をされているということだ。
しかも、それは姉さんのものであり、ぼくが使う事など、管理局に入ったら二度と無いだろう。
だから、姉さんはぼく専用のデバイスを作ろう、と言った訳だ。
「でも、ぼくはあまり詳しいことはわからないけど」
「だから、詳しい人に来てもらお、ね?」
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そして、アースラで会ったのは、メガネをかけた女性。マリエル・アテンザというらしい。
姉さんが頭を下げる。
「マリーさん」
「呼ばれたみたいだけど、どんな用件かな?」
「あ、私の弟です。この子のデバイスをお願いしたいと思って」
「どうも」
ぼくは姉さんの紹介に頭を下げた。
「きみが弟くん? お姉ちゃんから聞いてるよ」
「えっと」
朗らかすぎるマリーさんに戸惑っていると、姉さんが笑って、
「ちょっとだけ人見知りなんです」
「そういうわけじゃないよ。びっくりしただけ」
ぼくは少しむくれて反論する。
「それじゃ、弟くん。デバイスを作る参考にしたいから、ちょっとデータ取らせてもらっていい?」
「わかりました」
ぼくは頷き、マリーさんについていく。
「頑張ってね」
姉さんがそう、ぼくに言った。
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「う~ん……」
ぼくのデータを見たマリーさんの反応はこうだった。
見るなり、唸った。
「弟くん、どんなタイプがいい?」
「タイプ?」
「デバイスの種類。杖とか、剣とか」
ぼくは少し考え、
「ストレージの杖型。カートリッジも使えるタイプがいいです」
「じゃあ、ベースは一般のでいいかな。少しいじって、カートリッジを組み込めば……」
マリーさんがぶつぶつと呟き、モニターのキーを打ち込む。
「完成までは二、三日掛かるかな。それまでは」
「あの」
ぼくは思わず声を出していた。
「ん、どうかした?」
「ぼくにデバイスの作り方を教えてください」
「……興味あるの?」
「まあ、そうですね。覚えておいたら、自分で整備とかも出来るでしょう」
そんな子供の思い付きを、マリーさんは快く引き受けてくれた。
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「ストレージはインテリジェントに比べればまだ簡単だけど、難しくない訳じゃないからね」
「わかってるつもりです」
「まあ、元は出来てるし、機構追加くらいなら、子供でもできるかな。後で私がチェックするし」
「はい」
「ベースは一般の杖型ストレージ。全体的な性能強化に、待機状態とカートリッジシステムの追加。教えながらだと、少し時間がかかるかもね」
「それでも、ぼくが自分で使うものだから。やっておきたいですよ」
「弟くん、中々大人だね」
「まだガキですよ」
ぼくはマリーさんのモニターをのぞき込む。
デバイスのこと細かい設計図が書かれている。
一般局員用の簡易ストレージも、暴発や故障が起きない様に丁寧に設計されている。
「でも、これで既に完成されているようなものだからね。手を加えるとなると、ちょっと難しくなるね」
完成、ということは、既にこの形に最適化されているということだ。
そこに、処理能力の強化や、カートリッジシステムなどを組み込むとなると、変化した機体に合わせて調整し直さなくてはならなくなる。
「それじゃ、始めようか」
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「ふむ……展開速度0.89。術式反応誤差0.02。充分かな」
結局、マリーさんからOKを貰ったのは、それから一週間後だった。
いくらマイスターが付きっきりとはいえ、やはり素人を教えながらやるのは難しいらしく、予想以上に時間を使わせてしまった。
ぼくは深々と頭を下げる。
「ありがとうございました」
「うんうん、これならもう少ししたらすぐに一人前だね」
「精進します」
ぼくの言葉に、マリーさんは少し困ったような顔をして、
「あんまり気を張るのはよくないよ」
「気張る、ですか?」
「大人っぽく振る舞おうとしてるのかな? 弟くん、あんまりお姉ちゃんに心配かけちゃダメだよ」
「……どういうことですか?」
ぼくは姉さん達に迷惑を掛けないように、気を付けているだけだ。
なのに、心配かけているとはどういうことだろうか。
「『弟はとても大人びてます。でも、どこか私達との距離を感じるんです』って言ってたよ」
その言葉に、心臓が跳ねる。
迷惑を掛けないように、などと言ってぼくは、自分の問題は自分で解決するようにしていた。
同級生と喧嘩になろうと、クラスで問題を起こしても、ぼくは絶対に他の人には知られないように証拠を隠し続け、みんなの『物静かな弟』というイメージを崩さないように気を配ってきた。
でも、まさかそれが姉さんの悩みの種になるなんて事はまったく考えていなかった。
「少しは、迷惑を掛けてもいいんじゃない?」
「……そうですかね」
ぼくは昔から、少し大人びていると自覚している。
そうでもなければ、小学低学年のこの時期にこんなことは考えていないだろう。
それでもぼくは、姉さん達に迷惑をかけようとはせず、どこか距離をとっていた。
この弟、思考回路が小学生じゃねえ。
―追記―
指摘が多かったので説明を。
>>万能型は特化型に敵わない←じゃあ特化してる以外で戦えばいいじゃまいか。
結論から言えば、不可能です。
その理由は、
1:万能型の技能レベルは特化型より劣る(速さはフェイトに劣り、砲撃はなのはに劣る)
2:特化型はいわゆる『他の技能』で攻められる際の対策を確実にしている。
3:その『対策』を破る(互角に戦う)ためには『特化レベル』の技能が必要。
4:1により万能型には不可能。
ということです。