「こちらリーコン2。配置に着きました」
『リーコン1、同じく』
『リーコン3もOKですぜ』
ティルクと潤の声も聞こえてきて、ぼくはシグナムさんに頷きかける。
『説明は聞いているな。ホテル・アグスタの警備だ』
「オークションで取引されるロストロギアの反応をレリックと誤認したガジェットが来るかもしれない、って感じでしたか」
『そうだ。明日からフォワードも来る。私たちは今夜から警備任務だ』
「了解しました」
シグナムさんはホテル内の警備が主だ。窓を通して外のぼくと目が合い、ぼくは頷いた。
「と、言うわけだ。聞いてたよな?」
『ああ。問題ない』
『久しぶりの徹夜か。仮眠とっとくんだったな』
潤が欠伸をしながら言うのを見て、ぼくは呆れる。
「寝たって構わないけどね。後で報告書全部書かせるぞ」
『冗談。真面目にやるさ』
~~~~~
「ん、メールか」
ぼくは回りを見、誰も居ないことを確認してからリベレーターを取り出す。
画面には『クォーツ・ディレンド』と表示されている。
『姉御、レイナが兄貴に会いたい、って寂しがってるんだけどどうしたらいい?』
『ぼくに聞かれても困る。潤に聞け』
ぼくはそう返信し、一息つく。
そういえば、みんなは今どうしているんだろうか。
こうした連絡が来るということは、大した問題は無いんだろうが。
~~~~~
「姉御から返信は!?」
「『潤に聞け』とだけ!」
「ダメだ役に立たん!」
「電話しろ! 兄貴に!」
「兄貴、出てくれよ……あぁ!? 何が『お掛けになった番号は~』だ!」
「寝てんのかね。時間も時間だし」
「姉御は任務中らしいぞ。兄貴もティルクもそこに居るはずだ」
「なんの任務だ?」
「確か、警備任務だとか」
「んじゃ、寝てんのかね」
「寝てんだろうな」
「そもそもなんでレイナは泣いてんだよぅ!」
「兄貴に会いたいんだろ! オレらじゃもう無理なんだよ!」
「もうほっとく? オレらも泣いちゃう?」
「やめろキモいから」
「ああもう、いいから誰かなんとかしてくれぇ!」
「うっせぇぞお前ら! さっきからなんなんだよ!!」
「すんません先輩!」
~~~~~
フォワード分隊が到着したようだ。
豪華な衣装を纏った姉さん達がアグスタに入っていくのと、フォワードメンバーが散らばったのを確認すると、ぼくはホテル外周の柱の上で待機する。
「さて、いつでも動けるようにしておくぞ」
《了解。姉上達の手は煩わせません》
イノセントハートが応えた。
~~~~~
さっそくガジェットの襲撃があったので、ぼくらは心置きなく暴れることにした。
「イノセントハート」
《yes master!》
バスターモードにしたイノセントハートを構え、砲撃を撃つ。
カートリッジによる強化をしているお陰で、あの球型の――砲撃を受け流してダメージを軽減させる――形状も意味をなさず、撃ち抜くことができた。
「さーて、出番だぜ!」
ブレイブとフランメを装備した潤が楽しそうに叫ぶ。
「ファウスト!」
潤の拳が炎に包まれる。
たんなる威力強化だが、それがデバイスによる特化仕様に変わると、かなりの威力増加が期待できる。
炎の拳で殴ると、ガジェットは一瞬で殴られた部分を熱で赤くしながら吹き飛び、木に叩き付けられる。
「へえ、すごいじゃないか」
「ああ、こりゃいい!」
潤が楽しそうに笑いながらガジェット――今度はⅢ型――にラッシュを掛ける。
「斎藤、あまり前に出すぎるなよ」
ティルクがそう言い、大きく剣を振ってガジェットを纏めて切り裂く。
「数はそんなに無いな。これならすぐに殲滅できるだろ」
「……と、思ってたか?」
「――ああ、思ってたよ」
ぼくら三人を囲う様に特徴的な魔法陣が展開され、そこからガジェットがぞろぞろと出てくる。
「転送魔法、か?」
「だな。どうやら敵は機械だけじゃない。魔導師もいるみたいだ」
「捜索してみる。少し任すぞ」
「ああ、気ぃ付けろよ隊長」
「わかっているさ」
ティルクが飛翔を開始し、高速で飛んでいく。
「潤、
「ああ」
そう応えると、潤は左手を付きだし、右手を腰だめに構える。
突き出した左手の先に渦巻くように、凝縮された炎が生成される。
その炎を右拳で打ち出す。
「エクスプロージョン!」
炎熱砲撃が螺旋状にうねりながら打ち出され、ガジェットを飲み込み、破壊する。
この炎熱砲は、フランメの炎熱仕様を最大限に利用し、炎を打ち出せるようにしたものだ。これにより、潤は近距離砲撃を撃つことができるようになった。
といっても、フランメは元々『なにか』を打ち出す事も設定されていたようだ。それが何かはわからないが。
まあ、まだ潤の練度は低く、これから改善していく必要があるだろう。
「快感!」
「後ろ、不注意だぞ」
拳を振り上げて叫ぶ潤の後ろに迫っていたガジェットを蹴り飛ばしながら言う。
その時、ぼくのとなりにモニターが出現する。
『高町! 敵の魔導師を取り逃した!』
「ああ、ティルク。追跡は?」
『申し訳ないが、俺は広域探査が苦手なんだ。シャマル医務官にも連絡したが、既に範囲外らしい』
「まあ、仕方がないだろ。相手方に魔導師が居た、と言うことがわかっただけで収穫だ」
それを聞くとティルクは頷き、合流する、とモニタを閉じた。
~~~~~
そして、ティルクが砕けた剣を見せてきたのは、ガジェットを殲滅し、ホテルでのオークションが終了した後だった。
「どうしたんだ?」
「魔導師……召喚師か。その召喚師の少女が、黒い虫のような生き物を召喚していたらしくてな。不意打ちを食らって、へし折られた」
見せてみろ、とぼくは受けとるが、すぐに首を振った。
「イってる。駄目だな」
「そうか」
ティルクは少し顔を伏せる。
ティルクにとっては、この剣は昔から何年も使っているものだ。人格非搭載型のアームドとはいえ、思い入れはあるだろう。
ぼくはそうわかりながらも、
「代わりを用意するよ。少しばかり時間はかかるけど」
と言った。
ティルクは顔を上げ、なにも言わずに頷いた。
そこで通信が入り、ぼくは耳元に手を当てて応える。
「はい、こちらリーコン2」
『現場検証だ。ちょいと手伝ってくれ』
「わかりました……ヴィータさん、なにかあったんですか? 声がえらく不機嫌ですけど」
『別に普通だよ。いいから、すぐに来いよ』
了解、と答える前に通信が切られる。やっぱり怒ってるんじゃないか、とぼくは溜め息をついた。
「ちょっと行ってくるよ」
~~~~~
現場検証を終えると、ぼくらはティルクが運転するジープで六課まで戻る。
なんだか雰囲気がおかしかったのは、やはりなにかがあったんだろう。
「考えても仕方がないさ。俺達がどうこうできる事でもない」
「それはそうだけど。ぼくらは六課の中ではかなり目立つ部分があるし、関われないんだよな」
「特に、フォワードメンバー達みたいな子供に悪影響を与えたらいかんしな」
潤が笑って言う。事実そうなので、ぼくも曖昧に頷く。
そして、話題を変えることにした。
「ティルクの剣をへし折ったのって、なんなんだ?」
「さっきも言ったが、虫のようなやつだ。人型で、黒かった」
「アローンに不意討ち、ね。随分と速かったみたいだな」
「ああ。油断していたとはいえ、あのスピードは反応できなかった」
「召喚師の方は?」
「黒いドレスのようなジャケットの少女だった。歳は……ライトニングの二人と同じくらいだ」
「ガジェットと手を組んでるってことか。まあ、つまりは敵さんだな」
潤の言葉に、ぼくは頷く。
「確信犯か、利用されているだけかはわからないが、警戒はしておいた方がいいだろうな」
ぼくはジュエルシード事件の記録を思い出しながらそう言った。