魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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23話 StrikerS5

「一騎さん、この部分任せていいですか?」

「ああ、わかった」

 

 ぼくは処理機能用のコンソールを手許に出し、構築にかかると、シャーリーはケースに浮かんでいる『剣』を眺めて息を吐く。

 製作にかかってから一週間ほどで、ようやく形をなしてきたところだ。

 ティルクからの要望は「剣の形にしてくれ」とだけなので、形さえ保っていれば幾らでも手を加えられる。

 

「それにしても、なんだかすごい形になってますね」

「剣の周りの『刃』を鋸状にして、魔力を流せば回るようにしている。いってしまえば、剣型のチェーンソーみたいな感じだな」

「かなり反動とかがキツくなっちゃいますけどね」

「ティルクなら使いこなせるさ」

 

 ぼくは笑い、コンソールを叩く。

 単純な剣としての威力を底上げし、限りなく少ない魔力で処理ができるように調整する。

 ティルクは空戦魔導師だから、空を飛ぶし、高速機動もする。戦闘中の魔力消費量は潤よりも多い。

 その分、潜在魔力量も潤よりは多いのだが、負担は少ないにこしたことはない。

 

「一騎さんの処理構築(プログラム)って、かなり変わってますよね」

「そうかな」

「ティルクさんが純粋なベルカ式、っていうのもありますけど、魔力放射を一切省いて、ここまで特化してるのなんて、見たことないですよ」

「ぼくだって見たこと無いさ。他のデバイスマイスターと話すこと自体、ぼくとしては稀だしな……っと、今日はここまでにしとくか」

 

 窓の外が暗くなっているのを見て、ぼくはキリの良いところで構築を中断する。

 

「おさき」

「はい、お疲れさまです」

 

 ぼくは頷き、デバイスルームを出た。

 

 

~~~~~

 

 

 出たところで、姉さんと鉢合わせた。

 

「姉さん、今日は終わり?」

「あ、一騎。そっちもみたいだね」

「うん。ティルクのデバイスももうすぐ完成だから。のんびりやるよ――姉さん、どうかした?」

 

 姉さんの表情が暗いことに気付き、ぼくは思わずそう聞いてしまう。

 姉さんは首を振り、

 

「ううん、スターズ(こっち)でちょっと問題があっただけだから」

「――そう、対処しきれないものだったら、ぼくも協力するよ」

 

 ぼくはそれだけ言うと、姉さんと並んで歩き出す。

 気付いたのは最近だが、やっと姉さんの身長に追い付いてきた。

 

「六課には慣れた?」

「慣れたというより、ぼくらで好きにやってる感覚が強いね。正直、メンバーが少ないだけで、強行偵察課と変わらないよ」

 

 実際、ぼくらがここに居る理由がわからない。

 『強行偵察課』の協力を得たいなら、ただ頼めばいいだけだ。フォレスタ二佐ならよろこんで協力してくれる筈だ――あの人の機嫌を損ねなければ、だが。

 あの人を怒らせたが最後、社会的地位と財産を全て失い、危険生物が棲む管理外世界に身一つで放り出される――らしい。

 情報源はハーヴェイなので、頭から信用はしないことにしているが。

 

「まあ、よっぽどの事が無い限り、ぼくらは勝手にやらせてもらうよ」

 

 そう言った瞬間、警報が鳴り響く。

 緊急出撃(スクランブル)だ。となりの姉さんの顔が引き締まる。

 ぼくは今回も待機だろう。

 

「気を付けて」

「うん」

 

 それだけ言うと、ぼくは走っていく姉さんを見送ると、デバイスルームに戻った。

 考えてみれば、今のように、ぼくらも何時出撃が掛かるかわからない。

 肝心なときに装備がない、では話にならないし、ティルクも納得がいかないだろう。製作を任されている以上、できる限り早くに仕上げるべきだ。

 そういうわけで、ぼくは急ピッチで作業を進めることにした。

 

 そして、1時間ほど経っただろうか。

 

「魔力変換システム……完了。これなら、明日には仕上がるかもな」

「一騎」

 

 デバイスルームの扉が開き、シグナムさんが入ってきた。

 

「どうしたんですか?」

「少し、いいか。お前には辛いことを思い出させるかも知れないが……」

「……どういうことかはわかりませんが、ご一緒します」

 

 そして、ぼくはこの発言を激しく後悔することになる。

 

 

~~~~~

 

 

 まずモニターに映ったのは、幼い頃の姉さんの映像。

 昔の朝食の風景。

 そこには父さん達が笑い、姉さんも笑い、ぼくも笑っている。

 ぼくはまず、昔の自分にある無邪気さを直視できなかった。今のぼくには無い、あの無邪気さを。

 昔のバカな自分が恥ずかしい訳じゃない。むしろ、今のくだらない自分の方が恥ずかしいくらいだ。

 それから続けて、姉さんとフェイトさんが出会ったジュエルシード事件。姉さん達が、今ここでフォワードメンバーに説明しているシグナムさん達と戦うことになった、闇の書事件が映る。

 映像のなかで姉さんは、負荷の強い集束砲撃に、反動の厳しいエクセリオンモードを使用している。

 

 いけない、と思った。

 

 この流れは、まずい。

 シグナムさんは今、姉さんの『無茶』を説明している。

 『フォワードのセンターが誤射をした。それからも姉さんに反発し、今日決定的なバカを仕出かした』。そんなことが発端で、今ここで姉さんは晒されている。

 ああ、だからってなんでそんなくだらないことで、姉さんの過去を掘り下げるんだ。注意なんて口頭ですればいいじゃないか。聞かないなら実力行使に出たって構わない。それでも通じなければ、放っておいて勝手にミスで死なせておけばいい。

 だから。これ以上は本当にまずいんだ。やめてくれ。

 そう言うわけにもいかず、ぼくは荒くなる呼吸を抑え、震え出す身体を腕で抱く。

 心臓が激しく脈打つ。

 

 そして、画面に包帯だらけの姉さんが写し出される。

 

 同時に、様々な映像がフラッシュバックする。

 

 ストレッチャーで運ばれていく姉さん。

 泣きじゃくっていた自分。

 隣で顔を蒼白にしたフェイトさん。

 

 そして、狭い病室に場面は切り替わる。

 

 そのベッドでは、姉さんが泣いていて――

 

 ぼくは小さな悲鳴をあげた。

 

 

~~~~~

 

 

 となりの一騎の様子がおかしいことには気づいていた。

 だから、一騎が細い悲鳴をあげ、膝から崩れ落ち、その身体が床に倒れ込む前に受け止めることができた。

 

「高町!?」

「おい、一騎!」

 

 身体を揺するが、一騎は掠れた声をあげただけで、気を失ってしまった。

 

「これが、一騎のトラウマだ」

 

 そう静かに呟いたシグナム二尉は、辛そうに顔をしかめていた。

 

「知っての通り、こいつはなのは隊長の弟だ。だからこそ、この一件では、本人に次いで心に傷を負っている。こいつは――」

 

 ――一騎は、姉が傷付くことを極端に恐れる。

 その言葉に、俺はハッとして、アローンが唇を噛んだ。

 

『ぼくは、姉さんの為に生きてるようなもんだ。生まれた時からずっと。姉さんが居なければ、ぼくが生きている意味が無くなるほどに』

『いや、なんでもないよ。そうだ、姉さんは完璧なんだよ』

 

 盲目的なまでの姉への想いはこれが原因だというのか。

 そして、この事件があったから、こいつはこんなこと(・・・・・)になったんだろうか。

 いまのこいつと、映像に映っていた昔のこいつ。

 その違いは明白で、そして、その理由も今わかった。それは仕方の無いことだったんだ。

 そうしなきゃ、こいつは立ち上がることができないほどに後悔(・・)していただろう。

 

「……とはいえ、こんなのってねぇよな」

 

 俺は小さく、青白い顔で気絶している一騎に呟いた。

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