「暇である」
「うむ」
「この時期だし、オレらも盆休みを貰いたいな」
「お前は盆休みの意味を調べておけ」
「お前がな。時期はそろそろだぞ」
「おけ、ちょっとググるわ」
「そもそも暇なのに休みを貰うっておかしいだろ――ん?」
「あそぼー」
「おやお嬢さん。いいぜ、ナニして遊ぶ?」
「兄貴に連絡しろ」
「まってぇ!!」
「悪影響が出たらオレらが兄貴に怒られる。さ、レイナ嬢向こうで遊ぼう。なにをする?」
「ゾイドバーサス」
「だから誰なんだよこの子にこんなもん与えた奴!! この子めちゃくちゃ強ぇんだぞ!」
「悪影響は既に手遅れなレベル」
「兄に逢いたいと嘆く少女を助けるためには、仕方がなかった」
「というかモルガにやられるヴィンズが弱い」
「なんでディアブロタイガーαを使って避けられねぇんだよ」
「仕方ないだろ! あのミサイル追尾して来るんだから」
「言い訳はいいからⅢを買って来い。飛行ゾイドが使えるらしいぞ」
「マジ? 買ってくるわ」
「んなことより、暇ならちょっと手伝ってくれないか。どうもアニメの兵器は機構がはっきりわからなくて」
「何がわからんの」
「やっぱコアだな。一つでも野生のを鹵獲して解析できれば、局の設備なら量産も不可能じゃないだろう」
「しゃあないな。手伝ってやるから昼飯奢れよ」
「お前なんか役に立たん」
「さすが茄子だ。ナグリーにあっさり切り捨てられる程に使い物にならない阿呆」
「表出ろやピンキスト」
「表、宇宙空間なんだが。ボケナスは頭もまるで茄子だな」
「プロピンキストは頭の中までまっピンクなのかねぇ、あ?」
「もはや日本語が機能していない。こいつらバカだな」
「お前が言うのかい」
「文句あんのかよ」
「無いと思うのか」
「ああ」
「バカタレ」
「んじゃ、ちょいとあの観測指定世界に行ってくる。なに、15分で戻るさ」
「オレも行くよ。狙うはライオン型だろ?」
「ああ。んじゃ、出発だ、リブレンド!」
「いってら」
「なあ、ところで観測指定世界に生息する固有生物の狩猟は犯罪じゃないのか?」
「持って帰ってくるわけでもなし。大丈夫だろ。さーて、なにして遊ぼうかな」
「仕事をしろ」
「あ、アレクセイ先輩。いや、仕事があるならやるんすけどね。今のところ発見されてる施設は全部潰したんで。無いんすよ、仕事」
「順調なようで結構だ後輩諸君。まあ、休むのもいいが、さっさと準備しとけよ」
「へ? 準備ってなんですか、ハーヴェイさん」
「なんだ、聞いてないのか。アンソニー、説明してやれるか」
「すぐにフォレスタ二佐が来る。私より、あの人から説明してもらった方が早いだろう――」
「ああ。俺から説明する」
「うお、課長」
「課長、準備ってなんすか」
「いや、大したことはねぇ。移動は
「……?」
「ただいまー」
「グオオオオオオオオオッ!」
「この馬鹿持って帰って来やがった!」
「「ぎゃああああああああ!!」」
「ああ、ウィルス! ヴィンズー!!」
「おい、盆休みの時期違うじゃねえか」
~~~~~
「お目覚めかい。随分と腕が落ちたもんだな」
「……お前、もっと掛ける言葉があるんじゃないか?」
「年下四人に
散々な物言いの潤に呆れながら、ぼくは起き上がる。
「確かに、腕は落ちたかもな」
「というより、戦い方を忘れているんじゃないか。安定していなかったようだが」
「潜入が主の任務ばかりやってたからね。そりゃガチンコのスキルは鈍るさ」
「それだけが原因かね」
「さあな。向こうが強いのは確かだよ」
ぼくは視線をフォワード達に移す。
丁度みんなが目を覚ましたところのようで、姉さんがみんなと話し始める。
~~~~~
『フォワード達、休みなんて羨ましいね』
モニターの中で潤がぼやきながら訓練用のガジェットを殴り飛ばす。
「ぼくらも、毎日がオフシフトみたいなもんだけどな」
「しかもほとんど出動も無い。休みは十分だろう」
ティルクが頷き、モニターの潤に向かって言う。
『気分の問題だよ――エクスプロージョン!』
潤が炎熱砲撃を撃つ。
「
『ああ。心なしか、距離も延びた気がすんぜ』
「大したものだ」
ティルクが溜め息混じりに呟く。
「そういえば、ティルクは『魔法』をあまり使えないもんな」
「ああ。飛行・斬撃。それだけだ――シグナム二尉の言葉を借りれば、『届く距離まで近付いて斬る』だけ。それが俺のスタイルだな」
「それはそれでいいだろ。全部中途半端なぼくよりよっぽど安定してる」
「まあ、それはそうなんだが、その剣の技術が、俺には無いんだ。俺は――もっと強くなりたい」
ティルクが顔を伏せる。
ティルクはかなり強いはずだ。なのに、納得できていないのだろうか。
もしかしたら、シグナムさんに対抗意識を燃やしているのかもしれない。
『終わりぃ!』
潤が最後のガジェットを潰し、クリアタイムと評価が映る。
「お疲れさん。じゃあ、次はティルクやるか?」
「ああ、そうさせてもら――」
『三人とも、今どこにいる!?』
急に出現したモニターには、慌てたような表情のはやてさんも、厳しい表情の姉さんが映っていた。
「――八神二佐。高町一尉も。自分達は訓練所ですが、どうかされましたか?」
『事前通達の無い次元航行艦がこっちに向かってきてるらしいの。念のため、警戒しておいて』
「了解、姉さん」
~~~~~
「見えたぞ。各自セットアップ」
ティルクの指示に、ぼくらはデバイスを握り、展開する。
ぼくはフィールド防護の出力を下げ、ブレードフォームに切り替える。
場所が場所だし、できるだけ射撃は控えるようにしよう。
彼方に見える航行艦は、少しずつ近付いてきている。
「……なんか見たことある形だな」
「気のせいだ――そこの艦、止まれ!」
ティルクが叫ぶと、艦は減速し、少しの距離を移動して止まった。
「こちらの誘導に従って着艦し、認証を完了するまで艦内で待機しろ」
それを伝えると、航行艦は動きだし、ゆっくりと着陸点に向かって移動を開始する。
「……なあ、やっぱりあれって」
ぼくは肩を竦めた。
「同型艦なだけかもしれない。警戒しておけよ」
「怪しい動きはないか?」
ぼくらの後ろに、騎士甲冑を纏ったシグナムさんとヴィータさん、手甲を嵌めた狼形態のザフィーラが来ていた。
「今のところは指示に従っています」
「ならいいんだけどな」
ヴィータさんはグラーフアイゼンを肩に担ぎながら吐き捨てる。
「だが、いつ仕掛けてくるかわからん。油断はするな」
「了解」
ザフィーラの言葉に、ティルクが頷いた。
その瞬間、航行艦から数人が飛び出してきたので、ぼくらは一斉に構える。
飛び出した全員が空中で光に包まれ――出現したのは、巨大なライオンのような機械兵器の群だった。
それぞれカラーリングと武装が違うのが見てとれる。
「局の新兵器か!?」
「そんなものを、わざわざここに持ってくる理由が無い。どこの阿呆だ?」
――うちの阿呆かもしれない。ぼくは溜め息を堪える。
「あんなもんが暴れたら手がつけられねぇ。今のうちに!」
「ああ、いくぞザフィーラ!」
「心得た」
白いライオンが一瞬、戸惑ったような動きを見せ、がむしゃらに突進してくる。
「足を潰す!」
ヴィータさんがカートリッジをロードし、ギガントフォームに切り替え、前足を横薙ぎに殴り付ける。
「はあああ!」
シグナムさんがレヴァンティンを首元に叩きつけると、前足のダメージもあってか、躓くようにして倒れる。
そこに鋼の軛が打ち込まれ、穴だらけにする。
「飛龍――」
「ギガント――」
二人が同時に振りかぶり、
「――一閃!」
「――シュラーク!」
それを同時に叩き込まれ、白いライオンは沈黙した。
シグナムさんとヴィータさんがぼくらの隣に降りてくる。
「お見事」
「他愛無い」
「見かけ倒しだったな」
疲れた様子も無い二人と無言で頷くザフィーラを見てから、ライオンに目を戻す。
「結局、あれはなんだ?」
「……心当たりはあります。あんなのを作れるのは、ナグリー――ぼくの同僚しか」
そこまで言うと、ライオンの頭部が外れ、中から喚き声が聞こえてくる。
「うわあああああああ!! オレのライガーゼロがああああああああ!!」
「だからイクスにしろと言ったのに」
「ばかめ。通はイエーガーなのだよ。この素晴らしい機動性。そこの剣ばっか搭載したオレンジとは違う」
「シュナイダー舐めんなゴラ。ファイブレードストーム喰らわすぞ」
「パンツァーはロマン」
「フェニックスが良い。翼はかっこいい」
「ファルコンが最強なんだぞお前ら」
「オレはお前ら二機を認めんぞ」
「
「というか、あっさりやられすぎじゃないの、リブレンド。タイプゼロが泣くぞ」
「だって! 下手に攻撃したらそれこそ逮捕されるじゃないか!」
「じゃあなんでこんなことしでかしたんだよ」
「
「もっと他の方法あったろうに」
「お遊びもほどほどにしとけよ」
そのいつも通りのやりとりにあきれながら、ぼくはとうとう溜め息を吐いた。
そこで、潤に向かって走る小さな影が視界に入る。
「お兄ちゃん!」
「うぉっ、と。レイナ、久しぶりだな」
「うん!」
潤に飛び付くレイナが、満面の笑みで答える。
そういえば、会いたがっていたんだったか。前にクォーツからメールが来ていたことを思い出す。
「お兄ちゃん、ゾイドやろーよ」
「――あ、ああ。いいぜ」
誰だゾイドバーサスなんて買い与えた奴、と潤が小さく呟き、歩いていく。
「食らえやああぁぁあぁあ!」
「遅いな。所詮はシュナイダー。イエーガーの機動性には遠く及ばん」
「ふははははは! 悔しくば貴様らも飛ぶんだな!」
「
「バーニング・ビッグバン!」
「エレクトロンドライバーで援護する」
「当たらん当たらん! ミサイルが止まって見えるぜ!」
「ああそうかい」
「ぎゃああああああああ!!」
「さっすがファルコン! フェニックスなんて目じゃないぜ!」
ぼくは呆れながらティルクに目を向ける。
「スクィードだったみたいだな」
「ああ。なにしに来たんだろな」
「お手伝いさ」
呟きに対する答えは、戦闘行動真っ最中のあいつらからではなく、横から聞こえてきた。
「よう、久しぶりだな」
アンソニーとハーヴェイとアレクセイを連れて、フォレスタ二佐が軽く手をあげた。