「クォーツ・ディレンド!」
「同じくマリク・ケルビン!」
「僕ら二人はコンビです。コールサインはランスロット」
「ナグリー・べレンズ!」
「リブレンド・ツェリアロウ!」
「同じくコンビ。この二人はトリスタン」
「ウィルス・ストリートと」
「ヴィンズ・バリアント!」
「こいつらは――確か、パーシヴァルだったな」
「ライア・ゼルヴィッズ!」
「レイド・ビルギンズ!」
「んでこいつらはモードレッドです。覚えやすくていいね。ちなみにみんな歳は16。姉御達より年下なんですよ」
「いつの間にコールサインなんて決めたっけ」
「オレが前決めた」
「えー。オレ、アルトリウスがよかったんだけど」
「ダメに決まってんだろ」
「オレガラハッドに変えて良い?」
「駄目に決まってんだろ」
戻ると、フォワードに群がっている阿呆達を見掛けた。
「よろしくね」
「一騎さんの同僚、だったっけ」
「おうよ、ガンナーのお嬢さん。気安く呼び捨てにしてくれたまえ」
「階級も年も一緒だしねぇ」
「少年達は下なのか」
「はい、僕たちは三士です」
「「「よろしく少年」」」
「少年逃げろおおおおおおお!」
「変態の魔の手が伸びている!」
なにをやってるんだ、とぼくは割り込む。
「姉御! いたいけな少年に変態の魔の手が!」
「フェイトさん呼んできた」
「――ちょっと来てくれますか」
「「「……はい」」」
フェイトさんの威圧に怖々と頷き、クォーツとマリクとヴィンズが連れていかれる。
「というわけだ。迷惑を掛けるために来たが、よろしく!」
「フォレスタ二佐が言ってたけど、お前らは帰ってもいいらしいぞ」
「えっ」
~~~~~
フォワード達と仲良くやってくれるのはありがたいのだが、悪影響がでないか心配だ。
「よう、カズキ。元気かい?」
「――ハーヴェイ、アレクセイ」
「久しぶりだな」
頷き返し、ぼくは視線をその後ろへ動かす。
「アンソニーも、お久し振りです。お変わり無いようで」
「ああ。お前もな、『弟』」
相変わらずな呼び方に苦笑する。
「ここには姉もいるんですけど、もしかして姉さんのことを――」
「安心しな。彼女にはしっかりファミリーネームに階級を付けてるようだぜ。アンソニーも『姉』も一尉だしな」
「安心しました」
「というか、言っただろう――いや、言ってなかったかもしれないが――、アンソニーは別に高町一尉を嫌っているわけではないと。だろう、アンソニー」
「……まあ、お前につっかかったのは事実だがな」
アンソニーは顔を逸らしながら言う。
アンソニーは、やけにぼくに対してよそよそしい。
偵察課配属初日のアレを気にしているのかと言えばそうではないし、かといって他に心当たりは無い。
やはりアンソニー本人になんらかの考えがあるんだろう。となれば、ぼくがむやみに介入できる問題でもないので、ひとまずは触れないことにする。
「姉さんには会いましたか?」
「いや、まだだ――といっても、改めて話をしようとも思わん。私と高町一尉の接点は無いからな」
「一度戦った間柄だろうに」
「それで私が負けた。それだけだ。それに、敗者である私がいつまでも気にしていたら、ただの負け惜しみのようなものだ」
「だが、フォレスタ二佐の指示とはいえ、共同戦線を張る仲だ。挨拶はしておいた方がいい」
「同じ空戦砲撃魔導師だしな」
それでもアンソニーは渋った。
~~~~~
「病院?」
「そう。キャロが報告してくれた女の子をそこに預けてて。様子を見に行こうと思うの」
「ぼくもいっていいかな、姉さん。ティルクもそこに入院してるはずだし」
「そのつもりで声掛けたんだよ」
よろこんでついていくことにした。
ティルクは召喚師の虫に右胸部を刺され、応急処置の後病院へ搬送された。
潤もつれていこうかと一瞬考えたが、今はレイナの相手をしているんだろうし、残していくことにした。
聖王教会に顔馴染みもあるシグナムさんが居た方がいい、ということでシグナムさんに声を掛ける。
~~~~~
「申し訳ありません!」
病院に着くと、シスターシャッハが開口一番にそう言った。
車の中で突然通信が入り、シグナムさんが応対したところ、どうやら検査の合間に例の少女が姿を消したらしい。
状況はどうなってますか、と姉さんが聞くと、特別病棟とその周辺の封鎖と避難を完了しています。今のところ、飛行や転移、侵入者の反応はありません、とシスターは応える。
ああ、それから、とシスターは続け、
「ティルク・アローン空曹長にも、捜索を協力していただいています」
「――怪我人に捜索を頼んだんですか」
ぼくは眉をひそめて聞いた。
今まで黙っていたぼくがいきなり割り込んできたことにシスターは驚いたようだが、すぐに頷き、
「本人の申し出によるものです。止めたのですが、『協力する』の一点張りで……仕方なく」
「……あの生真面目が」
ぼくは頭を抱えて小さく呟き、シスターに謝罪すると、姉さんに目を向ける。
「では、手分けして探しましょう。シグナム副隊長、高町空曹」
ぼくらは頷いた。
~~~~~
小さな子供はどこへ行くかわからない。報告にあった少女がどのくらいの年齢かは知らないが、少なくとも完璧に自我が発達しているとは思えない。
危険な場所に行っている可能性もあるので、ぼくはとりあえず屋上へ向かう。
「――高町、なぜここに?」
その声に振り向くと、病院着のティルクが立っていた。
薄いシャツの隙間から包帯を覗かせていて、それには僅かに血が滲んでいるが、本人の表情には我慢しているようなものは無い。もとから頑丈だし、怪我も大したことはないんだろう。
「例の女の子を探してるんだ。見なかったか?」
「いや、見ていない。病院の中は粗方探したが、いなかった。やはり、外に出ているんだと思うが――ん?」
ティルクが屋上の柵へ駆け寄り、手を掛けて下を、中庭の方を覗きこむ。
ぼくも隣で見ると、中庭で姉さんが立っている。そしてその前には金髪の、探していた少女が立っていて――その間にシスターシャッハが戦闘体勢で割り込んだ。
「なっ――」
ぼくが驚いていると、ティルクがすぐに柵を越えて飛び降りる。
「ティルク――ああ、くそっ」
ぼくも悪態をつきながら、飛び降り、落下中にセットアップをする。
ぼくより早く飛び降りたティルクは既に剣を振りかぶり、剣の鋸状の刃が回り始める。
「止まれ!」
ティルクがシスターに剣を叩き付けようと振り下ろすと、シスターは凄まじい反応速度でトンファー状の双剣を頭の上で交差させ、受け止める。
鋸が双剣の刃にぶつかり、火花を散らしているそれを振り抜き、ティルクは空中で一回転しながら少女とシスターの間に着地する。
咄嗟の判断か騎士としての反射か、シスターは奇襲を仕掛けてきたティルクに斬りかかる。
ティルクも地を蹴り、右脇に構えた鋸を左へ切り払う。
それを流し、シスターは双剣を大きく振りかぶり、跳躍するように脚を僅かに屈める。
ティルクの剣も金色の光を纏う。
「烈風一迅!」
「でああああああっ!!」
「――ちょっと、待て!」
そこで着地したぼくが間に割って入り、逆手に持ったブレードフォームのイノセントハートでティルクの鋸を、左腕に張ったプロテクションでシスターのトンファーを受け止める。
「二人とも落ち着け! ここは病院だぞ!」
両方に対して声を張り上げる。
それに二人が反論しようとするのと同じタイミングで、
「やめなさい、ティルク。シスターシャッハも抑えてください。その子が怯えています」
姉さんが目を細めて言った。
それを聞くとようやくティルクの鋸が回転を止めたようで、イノセントハートから伝わる衝撃が消える。
シスターも自分の行動を恥じたようで、申し訳ありません、と構えを解いた。
そして、姉さんはぼくに頷き掛けると、剣戟の音に怯え、両耳を塞いで震えている少女に向かって歩き出す。
ぼくはそれを見てから、ティルクに向き直る。
「お前、その一人で飛び出すクセなんとかならないか」
「考えるより先に身体が動く――というより、お前達がフォローしてくれるとわかってるから、俺は飛び出せるんだ」
「信頼してくれるのはありがたいけどね。それみたいに、いつでもフォローに行ける訳じゃない」
それ、とティルクの包帯を指さしながら言うと、ティルクは肩をすくめる。
「その時はその時だ。自己責任でなんとかするさ」
「ったく、そういえばお前も突撃思考だったな」
ぼくが頭を抱えると、お前もだろう、とティルクは不満気に返してきた。
そして、ヴィヴィオという名前らしい少女を、六課に連れ帰ることになった。
「迷惑をかけました。申し訳ありません、シスターシャッハ。では――」
「貴方はまだ入院です」
「えっ、いや、俺は――」
~~~~~
「へえ、アローンはまだ入院か」
「ちゃっかりぼくらと一緒に帰ろうとしてたら、シスターシャッハに捕まってた」
「あいつ、結構ボケやらかすよな」
「生真面目ゆえにな。あれも一種の天然だよ」
ぼくらが会話しながら歩いていると、姉さんから通信が入る。
『潤、レイナちゃん連れてきてくれるかな』
モニターの中で困った顔をした姉さんがそう言った。
せっかく出したのに出番の少なかったレイナさん。
次回はフルで出番の予定です。というか、ここからViVidに向けて出番を増やすつもりでしたので(虚勢)