魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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時間を掛けて無駄に面倒臭い言い回しで延々だらだらとした説明回。

おそらく今までで一番読むのがめんどくさい話です。


30話 StrikerS12

 今まで見てきた人造魔導師は、ぼくら自身と関係が無かった――いってしまえば赤の他人だったわけで、いつだって見捨てることもできたし、生体ポッドで成長途中の個体に対する酸素供給を絶ったのも、一度や二度じゃない。

 もっとも、そのもがき死んでいく様を見届けることができるほど、ぼくらに覚悟は無かったが。

 関係があるにしろないにしろ、人の死に様という、ひどくグロテスクなそれを直視するには、ぼくらはまだ覚悟が足りなかった。強行偵察課に所属していながら、なんとも情けない話だ。

 だが、関係が無い人間ですらそうなのだから、もし死んだ者が友人や家族だった場合、どれほどのものになるのか想像がつかない――もっとも、ぼくはそれに限りなく近いものを味わったことがあるのだが。

 

 そして、人造魔導師の死に様は、ある意味で一番胸糞悪い。

 

 抗生物質の開発というお題目で産み出された後、薬物投与、人体改造を施され、生死のぎりぎりを彷徨っている者。

 空気感染する細菌兵器を身体に注入され、管理外世界を歩き回り、バイオハザードな事態を引き起こした者。

 強要されて使い魔を契約させられ、その使い魔を生物兵器として改造。そして精神リンクで繋がっているために使い魔の感情がダイレクトに伝わり崩壊(・・)した『所有者』だった者。

 まさに三者三様、といったところか。いまだに生々しく思い出せるのはこの三人だな、とぼくはモニターを指さしながらそう思った。

 

「この三人は一番酷い例です。実際はほとんどありません……が、やはりこういうことを考える人もいるんですよ」

 

 できるだけ淡々と、ぼくは説明を続ける。そして、昨日退院してきたティルクがぼくの説明に続く。

 

「これらの件に関わっていた職員達は現在も逃亡中。ですが、こいつらは基本的に管理外世界で活動しています。それも、今この瞬間でさえ局員が行方を捜索している程に」

「つまり、『このタイミング』に『ミッドチルダ』で人造魔導師を使用する研究に移ることはない、と」

「可能性はほとんどありません」

 

 はやてさんの言葉にティルクは頷いて言う。

 そして、ぼくはヴィヴィオの映ったモニターを出す。

 

「ですから、今回のヴィヴィオの製作者(・・・)は、恐らく違う人物でしょうね」

「けれど、特定は難しいでしょう。こういうことをする研究者は、掃いて捨てるほどいますから――」

「現状では打つ手無し、ってことだな」

 

 フォレスタ二佐が締め括る。

 ぼくらがうなずくと、フォレスタ二佐は面倒臭そうに溜め息を吐いた。

 

「八神二佐、どう思う?」

 

 そう、視線をはやてさんに移しながら問う。

 

「俺の意見は『キナ臭い』だ。どうもなにか引っ掛かる」

「同じく、です。もしかしたら、先の事件の襲撃者と関係があるのかもしれません」

「先の……ああ、あいつらか」

 

 はやてさんの言葉を聞き、ぼくは襲撃者のモニターをフォレスタ二佐の前に出した。それを見て、フォレスタ二佐は思い当たったように言った。

 まず、フォワード達からレリックの箱を奪った、アスファルトを通り抜けてきた水色の髪の女。

 メガネを掛けて白い外套を羽織った、薄ら笑いを浮かべている女。

 そして、馬鹿でかい大砲を持った、首元で一つに結った長髪の女。

 ぼくは大砲を持った女に少し気を取られながら、隊長達の意見を待つ。

 そして、しばらく経つとフォレスタ二佐が立ち上がり、

 

「やめだ。さっぱりわからん――にしても、わからなすぎる」

 

 フォレスタ二佐は目を細め、

 

「……やっぱ連中、突発的な行動でも無さそうだし、何か大掛かりなこと企んでるのかもしれないな」

「――大掛かり、ですか」

 

 はやてさんが確認するように呟く。

 

「ああ。本局に戻って、頭冷やして考えてくる。申し訳ないが偵察課(うち)の部下をちょいと面倒見ててくれ。すぐにもどる」

 

 二佐はそう言って緩めたネクタイを締め直し、部屋を出ていく。

 

「八神二佐、自分も失礼します」

 

 それに続いてティルクも出ていく。

 ぼくは大砲の女から目を離すと、すべてのモニターを消し、電気を付ける。

 

「……はやてさん、大丈夫?」

「――そう見える?」

「いいや、さっぱり」

「なんでわざわざ六課(うち)に来て部下を放っていくのか、さっぱりわからへん。本当に何も考えてないんかな」

「あの人はいつもああだよ。基本的な任務以外は一人で調べて一人で解決するタイプ。むしろ、今回のことではやてさんに意見を求めたことにぼくは驚いたな。普段はみんなに意見なんか聞かないし――信頼されてるんじゃないかな、はやてさんは」

「せやから、あんなおっさんに好かれても嬉しない!」

 

 その言い草に笑いながら、ぼくらは会議室を出た。

 

 

~~~~~

 

 

「……強さ、だぁ?」

「はい!」

 

 目の前で少し張り切っているような様子のナカジマに気圧されながら、俺は思わず抱いていたレイナに目を向ける。

 レイナはナカジマを見て、

 

「お兄ちゃんは強いよ」

「……その子って、潤さんの妹なんですか? 髪の色も同じですし」

「まあ、そんなところだ。で、なんだいきなり。強さなんて言い出して」

「えっと……個人での戦闘スキルとか知りたいな、って」

「俺は弱いぞ。見てわかるだろ」

「……いや、見た目すっごく強そうですけど」

 

 まあ、身長が180あり、わりと筋肉も付いている男とくれば、150半ば辺りのナカジマから見ればかなりのものになるだろう。

 だが、魔法戦では、体格差というのはわりと当てにならない。

 

「俺は細かく動いて敵の射撃を避けて接近し、手数で攻める戦闘スタイルだ。炎砲撃も一応は撃てるが、それだってガジェットくらいしか破壊できん。対人戦となると、身体強化で全力で動き回って隙を突いていくしかねえんだよ」

「でも、潤さんの強化した速さってかなりのものですよね。それって打撃の威力が高まるんじゃ無いんですか?」

「打撃の威力も、移動の速さも。お前の方が速いし強ぇよ。なんなら比べてみるか?」

「い、いえ、遠慮します。だって、潤さんって――ちょっと失礼ですけど――魔力資質はあまり高くありませんよね。でも、陸戦でA+を取ってる」

「お前らより一つ二つ年上だからな。ランク試験受けてりゃ、そりゃあ上がってくさ」

「でも、単独で受験してなんて、相応の技術が無かったら受かりませんよね。私とティア、コンビでやったのに、一回Bランク落ちてるんです」

「どうせ無茶やったんだろ」

 

 図星を突かれたように乾いた笑いで誤魔化すナカジマ。

 

「けど、お前の方が打撃の威力も強いし速さもあるのは事実だよ。見てりゃぁわかる。だがまあ、俺がお前に負けるかどうかは別だがな」

「勝てる、ってことですか?」

「ちょっとくらいは可能性があるかもしれんだろ」

「……そこは『勝てるに決まってる』とか言うところじゃないんですか」

 

 

~~~~~

 

 

「……強さ、か。それは、騎士としてのか?」

「はい!」

 

 リハビリ代わりに訓練場でガジェットを斬っていると、モンディアルがやってきた。

 そして、強さについて聞いてきたモンディアルの眼を見る。

 普段はほとんど話さない俺に対する緊張に、それを越える期待を秘めている瞳。

 俺は思わず目を逸らした。

 

「――なら、シグナム二尉やヴィータ三尉に聞いた方がいいだろう。俺はただ斬ることしかできん」

「けど、初日にシグナム副隊長と互角に戦ってましたよね」

「そして負けた」

「あ、いや」

「別に気にしてはいない。俺がまだまだ弱いからだ」

「副隊長と斬り結べるって、かなりの実力だと思うんですけど」

「そう思うのは勝手だ。だが負けたことは事実として残っているし、俺は六課での任務で色々とへま(・・)をしている」

「へま、ですか」

「ああ」

 

 俺は自分の右胸を指でとんとん、と叩く。

 それを見たモンディアルは少し不安気な表情をした。

 

「この怪我も俺のミスが原因だ。おそらく痕は残るだろう」

「……痛いですか」

 

 俺はそれがどういう意味で言ったのかを深読みしようとした。

 モンディアルの顔を見ると、頬に僅かな切り傷があるのを見付けた。

 

「そうだな。かなりの痛みはある。少なくともそれとは比べ物にならんな」

「……ですよね」

「一人で前に出過ぎたり、無茶をしない限りはそうそう怪我はしないさ――っと、話が逸れているな」

 

 強さ、か。俺はぼやいて頭を掻きながら、

 

「――俺は魔力斬撃だけでここまで上ってきた」

「魔力斬撃だけ、ですか?」

 

 驚いた様子のモンディアルに頷く。

 

「俺はそれしかできないんだ。飛行魔法はそれなりにスピードはあるが、特筆出来るところは無い。お前のように高速機動はできないし、変換資質による殲滅攻撃もできない。シグナム二尉のような連結刃に切り替えての攻撃も、ヴィータ三尉のようにトリッキーな戦い方もできない」

「――聞いてる限りじゃ、確かにそうですけど、僕らが見ている分では、ティルクさんはそれを補えるほどの技術がありますよね」

 

 俺は腕を組み、考え込む。

 

「技術、といっても良いのだろうか。俺は別に考えて戦っている訳じゃないんだ」

「どういうことですか?」

「言ってしまえば、全ては反射的なものなんだ。感覚に近い」

 

 俺は剣鋸を構え、向かってくるガジェットを切り裂く。

 そして振り向くと、モンディアルに向けて剣を向ける。

 

「やってみたほうがわかる。少し打ち合ってみようか」

 

 モンディアルは驚いた表情をしたが、幼いながらも騎士としての気概はあるのか、すぐにセットアップし、槍型のデバイスを構える。

 俺は盾を前に出すように、半身になって鋸を作動させ、振動を腕に感じながら、地面を蹴って一瞬で距離を詰める。

 剣を振り下ろし、斬り上げ、払い、シールドバッシュを使って牽制も交えつつ、ラッシュを掛けた。

 その全てをモンディアルは防ぎきり、それに驚く間も無く反撃に移ってくる。

 槍を突き出し、抉るような斬り上げ。そこから斬り下ろすと勢いのまま反転して柄を出し、槍と自身の身体自体を回転させ、舞うように穂先と柄を鋭く、連続で打ち込んでくる。

 それらを剣の腹で流し、盾で受け、避け、弾く。

 俺が剣を突き出すと、モンディアルは柄で払い、その勢いで回転して穂先を突き込む。

 それを斜めに構えた盾で右に受け流し、反転して斬り込むと、両手で握った槍の持ち手で防がれ、胴部分を凪ぎ払われる。

 寸前で高跳びをするように跳躍して避け、逆さまになりながら俺が剣を構えると、モンディアルも振りかぶる。

 全力の斬撃がぶつかり合い、互いに大きく吹き飛ばされ、地面を滑りながら止まると、俺達は同時に構えを解く。

 俺は剣を手の中で回して腰の鞘に納め、モンディアルは大きく息を吐き出す。

 

「今のって――」

「つまりはそういうことだ。俺もお前も、考えながら戦っている訳じゃなかっただろう」

「……あっ、確かに。無我夢中でした」

「『相手がこう打ち込んでくる攻撃をこう弾いてこう斬り込む』なんて考えていなかったろう。夢中で斬りあっていた。自分の身体が勝手に動いていると錯覚してしまうほどに、スムーズに動いた筈だ」

 

 モンディアルは槍を持っている手を見つめ、握り締めた。

 

「考えながら戦うのは司令塔(センター)の役目だ。俺達じゃない。自分の感覚を信じて、目の前の敵を倒すために全力を出す。俺はいつもそうやって戦っているんだ」

「――はい!」

 

 

~~~~~

 

 

「……ぼくに聞くのかい、それを」

「は、はい……いけなかったでしょうか」

「いや、そうじゃないよ。ただ、役には立たないと思うんだよ」

 

 ぼくは慌てて訂正する。

 

「自分より強い相手に勝つためには、自分が相手より強くなければならない……確かに、ぼくに聞いてくるのはわからなくはない」

 

 疑問顔を向けてくるティアナに、ぼくは続ける。

 

「そうだな……ぼくは知っての通り、姉さん達に鍛えられた。でも、それは言ってしまえば、『ぼく』の戦い方じゃないんだよ」

「どういうことですか?」

 

 一つずつ説明していこうか、とぼくは考え、

 

「ぼくは姉さんから射砲撃を学んだ。おかげでぼくは高い火力を手に入れた」

「確かに、砲撃はなのはさんと遜色ない威力で、『エース・オブ・エースの弟』の由来だ、という声も聞いたことがあります」

「フェイトさんからは高速機動とそれの運用技術を学んだ。おかげでぼくは高速で相手に接近し、鋭い一撃を当てられるようになった」

「エリオ達も、フェイト隊長と同じくらい速い、って驚いてました」

「はやてさんからは――近代準拠だけど――ベルカ式の基本運用を、シグナムさんからは剣を、ヴィータさんからは中近距離の切り換えや使い方を、シャマルさんからは転移魔法や治療魔法を、ザフィーラからは防御魔法を学んだ」

 

 ティアナは黙って聞いている。

 

「おかげでぼくは、近代ベルカもそれなりに使いこなすことができている。普段から、射砲撃や高速機動時はミッド式、近接戦闘の時はベルカ式で戦っているんだ」

「……すごい、ですね」

「ああ、すごいのかもしれない――」

 

 けど、とぼくは吐き捨てるように言う。

 

「――所詮はその程度なんだよ」

「え?」

「ぼくは姉さん達の教えに従っている。けど、それは姉さん達以上のものはできないんだ」

 

 よくわからないです、というティアナに、説明が難しいな、とぼくは笑う。

 

「えっと、教導ってさ。教導官の技術を教わるじゃないか」

「はい」

「その人が自分で身に付けたり、考えたりした最適だと思う戦闘技術を――ルーキーにも習得できるように改善して――教えてるわけだ。つまりそれは、技術は教われるけど、教えた以上のことは教習生には伝わらない。それを習った生徒が元から持っている技術でアレンジを加えて、自分のものにする」

「えっと……」

 

 それがどう関係するのか、という疑問を覚えただろう。

 

「でも、ぼくにはその『元から持っている技術』が無いんだよ。ぼくは、姉さん達によって『完成された』技術しか習っていないんだよ。つまり――」

「――『完成された技術』同士は、アレンジのしようが無い、ってことですか」

「そういうこと。ぼくは技術をアレンジできないから、教わった技術を使い分けている。だから、ぼくの戦い方も『強さ』も、教えてくれた隊長陣と同じ――いや、生徒であるから、実質隊長陣以下なんだよ」

「でも、それぞれの分野でそれなりに実力のあるオールラウンダーってことは、使い分ければどんな状況にも対応できるんでしょう? それは十分な才能、『強い』じゃないですか」

 

 少しだけ不満そうな表情でティアナは言う。

 前にあったごたごたは解決したとはいえ、やはりこういう事を言われれば、少しは思うところがあるんだろう。

 しかしまあ、これも説明しなきゃならないのか。めんどくさい。

 けど、聞かれている以上、答えなくてはならないだろう。

 

「まあ、そうだね。ほとんどの状況に対応できる。それは事実だ。でも、大抵は持て余してばかりだよ。使い分けている、なんて言ったけど、実際に出撃したら、一つの役割(ポジション)しか担当しないわけだし」

「え、そうなんですか?」

「臨機応変に、というのは聞こえはいいけど、言ってしまえばかなり忙しく、面倒なことなんだ。後方で射砲支援をしていたのに、急に前に出て戦え、なんて言われても困るでしょ」

「ああ、確かに……」

「それに、切り替えがどうこう以前に、人数が揃っていればその『臨機応変』が必要な状況になることすら無い。結局の所、ぼくはFAかCGかGWか。どれか一つだけの役割で戦っているんだ。しかも、それぞれの技能はAAランク相当。飛び抜けて強い、っていうわけでも無いしね」

「射砲撃、近接、遊撃。AAランク相当の全部を合わせて、今の『総合』Sランク、ってことですね」

「姉さんは『空戦』Sランクだから、これだけでも実力差はわかったろ。あとは、ちょっとした贔屓」

「贔屓?」

「言ったろ。『エース・オブ・エースの弟』。だから、ちょっと過大評価も含まれている。さらに、戦法とかで色々と誤魔化してるから『万能な魔導師』なんて思われてるけど、ぼくは実際そこまで強くないんだよ。ティアナ達みたいに、それぞれの技能特化型数人が連携を取って攻めてきたら、ぼくはパニクってあっさりと負けるんだよ」

 

 そこまで言い切り、大きく息を吐く。疲れた。こんなに説明させられたのは初めてだ。

 

「とまあ、そういうことなんだ。上手く説明できなかったけど、わかった?」

「はい! すみません、時間を取らせてしまって」

「気にしなくていいよ。役に立てなくてごめんね」

「いえ、そんなことはありません。とても参考になりました」

 

 なにがどう参考になったのかは知らないが、とりあえず頷いておいた。

 

「……自分が相手より強くなければならない、か」

 

 ぼそりと呟く。

 

「ぼくには――いや、ぼくだからこそ、相手より強くなるのは無理だろうな」




潤→「俺は弱いよ」
ティルク→趣旨がズレる
一騎→訳ワカメ
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