魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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34話 StrikerS16

 公開意見陳述会。

 この大々的に行われる催し物の警備に、ぼくらは駆り出されることになる。

 ぼくら三人はロビーに集まり、その警備について説明を受けている。

 

「俺達はどうするんです?」

「ティルクと一騎は地上本部の警護。潤は六課で待機してもらう」

「待機、ですか? 俺が」

 

 潤が苛ついたように眉を寄せ、はやてさんに言う。

 

「もしもの時には援護出動を要請する。その時、潤みたいにバイクとか使える人の方が、速くてええんよ」

「そんな緊急(もしもの)時に、一々飛行許可を取るのも面倒だ。わかるだろ」

「空戦魔導師の理屈なんか知らねぇよ……ああくそ、わかりましたよ」

「すまないな」

「お前が謝んな」

 

 ぼくはそんな潤を見ながら、少し考えた。

 ぼくらが別れて行動することはほとんど無い。この間の出張任務はこの二人のやる気がなかったから行かなかったのだが、今回はあんなお遊びとは違う。

 公開意見陳述会は、管理局の偉いさんが集まって行う定例会議のようなものだ。公になるならないに関わらず、必ずと言っていいほど、テロや暗殺の標的になる。

 現に強行偵察課も警護にあてられた際、公開意見陳述会で地上本部のトップ等を殺そうと侵入してきた者達を捕らえたことがある。

 

「で、ぼくら二人はジープで本部まで行き、昨夜向かったフォワードと合流、警備にあたる、と」

「そうなる。なにか質問は?」

「敵が襲撃してきた際に行う優先事項は?」

「敵の数を減らし、指揮官、もしくは主力戦力の魔導師等の捕縛」

「姉さ――隊長達との通信妨害が張られた場合の対処法は?」

「緊急時の集合場所は指示してある。隊長達から聞いておいて」

「仮に、本部の防衛が困難と判断した場合は?」

「自身の身の安全を確保。これだけは絶対や」

 

 ぼくとティルクは目を合わせて確認していると、潤が手を挙げ、

 

「有事と判断した場合、自分は独断で出撃しても?」

「駄目や。指示があるまで待機」

「……了解」

 

 それきり潤は黙る。

 ティルクが頷いて確認を終えた、と合図をする。

 ぼくはそういえば、と気付き、

 

「ああ、それと。アンソニー一尉達は?」

「彼らは全員、『本局に戻ってやることがある』とか言っとった。あのS級次元航行艦(イカ)、無いやろ?」

「……確かに」

「肝心な時にいなくなってしもうたなぁ。まったく、困った人等や」

 

 ぼくはいたたまれなくなって目を逸らす。

 

「そういうわけで、ブリーフィングは終わり。リーコン分隊、出撃」

 

 

~~~~~

 

 

 なぜはやてさんが、ああも頑なに潤を残したのかが、少し気になった。

 ぼくはジープの助手席で考えていたが、やはりわからなくて頭を掻く。

 

「さて、これだと地上本部まではわりと時間が掛かるな……一応、飛んだ方が速いんだがな」

「許可を取るのが面倒、って自分で言ってたじゃないか」

「愚痴りたくもなる。どうも、安全運転が落ち着かなくて」

「もしかしてお前、スピード狂か」

「そういうわけじゃないがな。一般道をのんびりドライブするのは、これから任務だというのに、緊張感に欠けていると思わないか」

 

 ぼくは溜め息を吐いた。

 なんだか、ぼくら三人はどこか落ち着いていない。潤は苛ついているし、ティルクもどこかそわそわしているように思う。

 そしてこのぼくも、胸騒ぎを感じている。

 なんの気なしにペンダントのイノセントハートを握るが、彼は何も応えなかった。

 もともとが寡黙なこいつだ。バルディッシュ程では無いし、話したときはとても饒舌に話すこともあるが、やはり基本は黙ってサポートにまわってくれる。ナグリーに施された調整と機能追加も、完璧なものに仕上がっていて、なにも問題は無かった。

 その寡黙さが、いつもは心地好く、安心できるのだが、今はそれが少しだけ不安になった。

 

 

~~~~~

 

 

「緊急時は地下のロータリーホールに集合だそうだ」

「ロータリーホール……了解」

 

 姉さん達と通信していたティルクの言葉に、モニターの地図で位置を確認し、頷く。

 

「まあ、ぼくらがあっちに合流することは無いかもしれないがな」

「状況の把握は重要だし、隊長達の指示も仰げる。できるだけ合流した方がいいし、もしもの時には俺だけで向かうさ」

「了解。任せるよ」

 

 ぼくはモニターを出し、報道チャンネルを呼び出す。

 ちょうど、ニュースの欄には公開意見陳述会についてのトピックが表示されている。

 それをタップすると、陳述会の中継映像が流れ出す。

 

「仕事中にテレビを見るのか?」

「円滑に仕事を進めるための情報収集だ」

 

 ぼくは適当に言い、モニターに目を戻す。

 ちょうど陳述会が始まったところのようだ。

 

「一日あるんだよね。これ」

「ああ。本局も地上も、言いたいことは山積みだからな。それを公に喋れるのはこの時だけだ。時間も掛かるさ」

「で、それまでずっと警備か。まったく、十分に人はいるじゃないか。ぼくらまで駆り出さなくてもいいと思うんだが」

「……だが、数は居ても練度が足りん。実際、俺一人でも、この警備の半分は削れるだろうな」

「ぼくだって半分は余裕さ。後先考えなけりゃ、殲滅することだってできるかもしれないな」

「……物騒な話してるのね」

 

 後ろから声を掛けられて振り向くと、ギンガが立っていた。

 

「やあ、どうした? 潤なら居ないよ」

「な――潤は関係無いでしょ!」

「冗談だ。そんなに顔を真っ赤にしなくてもいい……で、なんだい? 警備しなくていいのかよ」

「警備してたら、不穏な話をしてる二人組を見つけたの」

「俺達か?」

「ええ。もしかして、本部を襲撃するのってティルク曹長達ですか?」

「まさか。ぼくらがやってもメリットが無い」

「メリットか。確かに無い――そうだ。メリットなんて無い。もしここを襲撃するにしても、そいつはどんな目的で襲ってくるんだろうな」

 

 ぼくはギンガと顔を見合わせる。

 

「身代金でも要求するんじゃないか」

「誰のだ」

「いや、わからん……自分でも馬鹿なこと言ったと思うよ」

「じゃあ、自らの力の誇示、かしらね」

「ほう?」

「自分の力を過信してる奴等が、管理局を陥落させて、自分の力を示すため、だとでも?」

「そう思っただけ。実際は違うでしょうね」

「まあ、そんな簡単なことじゃないだろうね。犯罪者の思考は、ぼくらとは完全に違うんだし」

「もしくは、『こいつを殺せば地上との交渉が楽になる』といった考えがあるかもしれない」

「だったら、狙われるのはやっぱり頑固親父かな」

「頑固、って……」

 

 ギンガの呆れた声を聞きながら、ぼくはモニターの中継に目を戻す。

 ちょうど、地上のトップであるレジアス中将(頑固親父)が演説をしている最中だ。

 そして、参加者の反応を写すため、カメラが参列者の顔を映していく。

 すると、見覚えのある顔を見つけた。

 

「フォレスタ二佐」

「なんだと?」

 

 ぼくが呟いた言葉に、ティルクがモニターを覗き込む。

 ぼくが指した所には、制服のボタンを外して気怠そうに座っている、フォレスタ二佐が映っていた。

 

「――まあ、当然か。『強行偵察課』は局に一つしかない。こういう場には出なくちゃならないんだろうな」

「一騎達が所属してた部署の上司、だっけ――」

「うん。フォレスタ・ケレット二等陸佐。合法非合法問わず、なんでもやりかねない恐ろしい人物だよ」

「フォレスタ……二佐……?」

「どうかした?」

「ううん、父さんが確か話してたような……」

 

 父さんというのは、ゲンヤ・ナカジマ三佐のことだろう。あの人が話していた、ということは、ゲンヤ三佐とフォレスタ二佐は面識がある、ということだろうか。

 

「まあ、別に話したことがあっても不思議じゃないだろ。二人ともいい歳だし」

「ケレット二佐が聞いたら怒るぞ」

「あの人ももう30半ばに差し掛かるだろ。十分だ」

「まあ、ケレット二佐自身も、かなり有名な人物だからな。十分に顔が広い(・・・・)

 

 モニターの中では、フォレスタ二佐がくしゃみをしていた。

 

 

~~~~~

 

 

『強行偵察課の要望は特に無い。確かにうちは人数も少ないが、それだけ練度は高いし、情報漏洩も無い。現状維持でかまわん』

 

 フォレスタ二佐はやる気の無さを隠そうともせず、そう発言した。

 

「すごい人ね」

「だろ」

「自慢の上司だ」

 

 一応ぼくらの言葉は皮肉でもなく本心なのだが、ギンガは微妙そうな顔をした。

 そして、その発言に対して、一人の男が反論する。

 

『だが、「強行偵察課」は管理局に無くてはならない部署だ。もっと活動の活発化を進めるためにも、人員の増加が必要だろう』

『いらんと言ったろう。活発化なんて必要無い』

『なぜだ。強行偵察課のそれが進めば、君自身もすぐに少将や中将になれるだろう』

『人殺しを増やす必要は無い』

 

 昇進をネタに話を振られても、そう切り捨てる。

 『人殺しを増やす必要は無い』。その言葉に思わずぼくらの肩が震え、ギンガが驚いた様子でぼくらを見たが、今は相手をしてられない。

 ぼくらはモニターに釘付けになり、一字一句聞き逃すまいと、フォレスタ二佐の言葉に耳を傾ける。

 

『強行偵察課の仕事はここにいる全員が知ってるはずだ。お前らや俺が出した命令に従って、うちの連中は任務を遂行する。障害を排除して(・・・・・・・)な。意味はわかるだろ』

 

 その言葉に、会場は静まり返る。

 

『ただでさえ、うちの若いのに殺し強いてんだ。これ以上人員を増やしてそれを味わう人間を増やしたくねぇし、あいつらにもこれ以上強いたくない――いや、もうやらせない(・・・・・・・)

 

 ぼくらは顔を見合わせる。

 今の言葉は、どういうことだろうか。

 

『決めた。そうだ、そうしたらよかったんだよな――』

 

 フォレスタ二佐は憑き物が落ちたように笑い、

 

『「強行偵察課」は、解体する』

「「はあっ!?」」

 

 思わず声が出た。

 解体だって? じゃあ、ぼくらはクビってことじゃないか。

 

「ど、どういうことだ!?」

「フォレスタ二佐、ふざけてんのか!?」

 

 思わずモニターに向かって怒鳴ってしまう。

 

『なにを言ってるんだ二佐!?』

『まあ、いつかはこうするつもりだったんだ』

『ふざけないでください! 強行偵察課にはまだやって貰わねばならない仕事が山程あるんですよ!』

『そうだ! お前達の仕事だ!』

『それを放棄されては――』

『黙れよ』

 

 フォレスタ二佐は目を細め、

 

『お前らの出す仕事(・・)は、どれほどの重要性だ? どれほどの死者を出す? どれほどの殺しを、うちの連中に強いる?』

 

 そう、睨むような目と共に、

 

『もううんざりだ』

 

 吐き捨てた。

 

『そんな勝手が許されると思ってるのか!!』

『黙れよペドフィル』

『なぁっ――!?』

 

 その言葉と男の反応に、思わずぼくらは吹き出し、ギンガは顔をしかめた。

 

『ぺ、ペドぉ!?』

『ち、違う!! 言いがかりだ!』

『おや、そうかい? ならこれを見て貰おう』

 

 フォレスタ二佐が出した巨大なモニターには、とても公言するに憚られる写真だった。

 ぼくらは愕然とし、隣でギンガは見てられない、と口許を手でおさえ、うずくまった。

 

『お、お、お前!!』

『違う! なにかの間違――』

『まだまだあるぜ……ハーヴェイ!』

『あいよ、二佐』

 

 聞き覚えのある声が響くと、その男の頭の上に次々とモニターが出現し、その全てが恐ろしく健全でない画像データばかりだった。

 フォレスタ二佐は通信用のモニターを出し、本局に居る強行偵察課のみんなに笑い掛けた。

 

『よし、アレクセイ!』

『本当にやるのか、二佐』

『ああ、じゃんじゃんやれ』

『了解』

 

 すると、今度は違う人の頭の上に写真が映り、ぼくは頭を抱えた。

 非常に。非っ常によろしくない絵面が映っていた。

 

『アンソニー、次』

『私もですか!?』

 

 モニターの向こうで、ぼくと同じように頭を抱えていたアンソニーが素っ頓狂な声をあげた。

 

『諦めな。もう手遅れだ』

『はぁ……』

 

 アンソニーは溜め息と共にキーを叩き、今度は先程敬語で罵倒した女の上にモニターが。

 それは見事な横領と賄賂の証拠写真であり、女性は顔を真っ青にした。

 

『いやぁぁぁぁぁぁぁ!?』

『あんた、やっぱり脅してやがったな! その地位も、奪い取ったもんだろう!』

『さ、うちの若きエース達』

 

 フォレスタ二佐がゆっくりと呟く。

 

やれ(・・)

『『『『『『『『イィィヤッホォォォォォォォォォ!!』』』』』』』』

 

 音割れを交えながら聞こえてきた歓声と、表示される大量の画像データにぼくは頭を抱えた。

 この膨大なデータは、全部本局の強行偵察課のサーバーに蓄えられているんだろうか。

 

「……放送事故だ」

「というか、この為だけに連中は本局へ数日掛けて戻ったのか……」

「……なんかもう、ひどい」

 

 地上本部にはフォレスタ二佐が一人だけ。他のみんなは、本局のサーバーのキーボードを好きなだけ叩いているのだろう。

 

「これが、貴方達が所属してる部署なの……」

「していた、だな。もう解体するらしいし。まあ、こんなことやらかしたのは初めてだけど」

「潤も?」

「安心しろ。奴もこんなふざけたことはせんさ」

「よかった……」

 

 心底ほっとしたように息を吐き出すギンガに、ぼくらは笑った。

 

 

~~~~~

 

 

 同じ頃、六課の隊舎で潤も大爆笑していたようだ。




……おかしいな、キャラが勝手にふざけ始めた。
強行偵察課の解体は、予定ではもっと後の筈だったんですが。

一応、次からはシリアスになる予定、です。
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