魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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35話 StrikerS17

 襲撃どうこう以前に数人の逮捕者が出た公開意見陳述会だが、それ以外は騒ぎが起きず――ふざけた人が偵察課以外に居ないから起きる筈もなく――そろそろ終わりを迎えようとしていた。

 

「報告、行ってくるわね」

「ああ、頼む――ようやく終わりか。さっさと六課に帰りたいもんだ」

「気を抜くなよ。こういうのは、終わる直前の一番油断した時を狙ってくるんだ」

「わかってるよ、分隊長」

「本当にわかって――ッ」

 

 ティルクの表情が変わった。おそらくぼくも同じだろう。

 僅かだが、魔力の反応が探知された。

 

「イノセントハート」

《索敵中》

「急げ。セットアップするぞ」

 

 ぼくはバリアジャケットを展開する。

 ティルクは既に騎士甲冑を纏っており、腰の鞘から剣鋸を抜いている。

 そして、召喚魔方陣が地上本部を囲むように出現する。

 そこから出てくるのは、もはやお馴染みの、見慣れると愛らしささえ感じられるフォルム。

 付近の魔導師が逃げ出したのを見て、ぼくは溜め息を吐いた。どれだけ数を揃えようと、地上部隊の魔導師はこの程度か。やはり数ではなく、練度を重視するべきだ。

 

「ガジェットだぞ。大量の」

「俺がやる」

 

 言うや否やティルクは飛び出し、ガジェットの隙間を縫うよう飛行して次々と剣を振るい、切り裂いていく。

 

「下がるな! 俺達で抑えるんだ!」

 

 ティルクが声を張り上げたのを聞いてか、または自分が狙われる可能性が減ったからか、魔導師達は少しずつ加勢していく。

 だが、AMFに阻まれ、大した打撃にはなっていないようだ。

 

「さて、と。どうだ、イノセントハート」

《現状把握完了。地上本部の障壁出力低下。内部との通信不能。最悪のパターンですね。どうやらすでに潜入されているようです》

「そうか。でも、姉さん達なら自分でなんとでもできるだろう。そして問題は――」

《砲撃のチャージを確認》

「――これだよ!」

 

 ぼくはイノセントハートをバスターモードに切り替え、砲撃のチャージをする。

 砲撃手の座標を見て、地上本部を庇うように滞空し、イノセントハートを構えた。

 

《来ます》

「ディバインバスター・マルチバースト!」

 

 敵の砲撃を視認した瞬間、ぼくは同じく砲撃を撃つ。ぼくが撃った砲撃は分散し、相手のものと同じ弾道を描くと、それぞれを相殺し、撃ち抜いていく。

 

《対象との距離は400メートル弱》

「ソニックムーブ!」

 

 ぼくは高速で砲撃手の元へ飛んだ。

 全力の高速機動で飛行したおかげで、10秒足らずで砲撃手の姿を視認できる。

 やはり、あの大砲を持った女だ。

 ぼくは女の真後ろに着地し、イノセントハートを突き付ける。

 

「威力はまあまあ。精度も割りと良い。だがチャージに時間が掛かるな。だから捕捉されて防がれる」

「……それをわざわざ忠告しに来たの?」

「いいや、お前を拘束しに来たんだよ」

 

 ぼくがそう言った瞬間、女の姿が消えた。

 驚きながらも、すぐに幻術パターンを打ち消す視覚情報を右目部分に投影するが、効果は無い。

 やはり、戦闘機人は魔法を使わないらしい。対魔法のパターンじゃ、意味が無いようだ。

 

『エース・オブ・エースの弟、だよね』

 

 どこからともなく、今の女の声が聞こえる。

 近くには居るはずだが、どの方向から聞こえてくるか、まったくわからない。頭の中に直接響いてくるような声だ。

 

「へえ、ぼくも有名になったな。敵さんにも覚えてもらえるなんて」

『ドクターは君にも興味があるようだった。よければ一緒に来て欲しいんだけど』

「興味? あいにく、ぼくはお前等のドクターとやらなんかと面識は無いんだが」

『ある筈だ、って言ってた。彼は忘れているだろうが、って』

「なに――?」

 

 ぼくがスカリエッティと会ったことがある。この女は今そう言った。

 ぼくはあんな男に会ったことは無い。断言してもいい。

 

「人違いじゃないか」

『とりあえず、この状況は私にとってかなりまずいんだけど』

「なんだ、わかってるのか。見くびってたよ」

 

 ぼくは一瞬で自分を囲むようにしてスフィアを展開し、全方位に向かって撃ち出した。

 

「くっ――!」

「そこか」

 

 イノセントハートをブレードフォームにし、被弾した音が聞こえた場所に向かって斬りかかる。

 だが、すぐに姿は消え、また見失ってしまう。

 なにかおかしい。姿の消え方が妙だ。タイミングと言うのか、それがずれているような気がする。

 数秒考え、ぼくは思い当たる。

 

「バックアップがいるわけか。お前はただの砲撃手で、姿を消す能力は無い。だったら後ろの仲間と協力すれば時間稼ぎにもなるし、ぼくの焦りを誘うこともできる」

『……すごいね。そこまでわかるんだ』

「鍛えてるからな」

『ドクター達は、君が一番面倒な存在だ、って言ってた。この万能な魔導師がなにをするかわからない、ってね。だから、もし誰かがこの魔導師と交戦したら、できるだけ足止めしておけと言われてるんだ』

「過大評価どうも。ぼくとしては、さっさと蹴りをつけたいんだ。他の援護に回らなきゃいけないしな」

『じゃあ、終わらせてあ・げ・る』

 

 そんな、神経を逆撫でするような声が聞こえると同時に、目の前の光景が変わった。

 

「え――?」

 

 雪景色。

 血を流して倒れている少女。

 それを見て泣き叫んでいる少女。

 

「あ――ぁぁあ――」

 

 姉さんが、墜ちた映像。

 

 それがぼくの目の前で再現された。

 

「――あああぁぁあぁあああぁぁあぁああぁぁああああ!!」

《マスター! 幻術です、落ちついて!》

「ふざ、けんなぁ!! この野郎ぉ!」

《マス――》

 

 

~~~~~

 

 

「あ~あ、ったく。八神部隊長も中々わからんこと言うよな」

「――お兄ちゃん、怒ってる?」

「いんや、考え事さ。心配せず、ヴィヴィオと遊んでな」

「うん、わかった」

 

 また、レイナはヴィヴィオとの話に戻る。

 俺は頭の後ろで手を組んでソファに寝転がり、欠伸をする。

 

「寛いでいるな」

「そりゃそうでしょう、旦那。警備任務はただでさえ退屈だけど、待機はもっと退屈だ」

 

 声を掛けてきたザフィーラの旦那にそう返す。

 

「旦那、か。お前もそう呼ぶのだな」

「これがしっくり来ますしね」

 

 最初はかなり驚いたが、今では世間話もできるほど、旦那と交流は深い。数回、人間形態の旦那と手合わせをしたこともある。

 

「向こうでは主はやて達が任務についている。我々も気を抜けないぞ」

「わーってますよ。けど、もうすぐ向こうも終わるだろうし、こっちはこっちでのんびり――」

 

 そして、目の前に出現する『ALERT』。

 それを見ると俺は跳ね起き、ロングアーチに通信する。

 

「どうした?」

『襲撃です! ガジェット反応多数!』

『未確認の戦闘機人も捕捉!』

『リーコン3、迎撃行けるか!?』

「もちろんだ! レイナ、ヴィヴィオと一緒に寮母さんと避難しろ。旦那、レイナを頼みます!」

 

 旦那は頷くと、背中にレイナを乗せ、しっかりと掴まらせる。

 

「私もすぐに援護に向かう。少しの間耐えてくれ」

「ええ。旦那こそ、レイナを落とさないでくださいよ」

「これでも、背に人を乗せたことはなんどもある。主はやてにも昔は乗っていただいた」

「そりゃ、頼もしい――ブレイブ、フランメ! セットアップ!」

 

 俺はバリアジャケットを纏い、ヘッドギアと肩まであるガントレットを装備すると、窓から飛び出した。

 そして、その光景に愕然とする。

 

「――ははっ」

 

 乾いた笑いが出てくる。

 ガジェットがざっと数えても百機以上。戦闘機人が二人。その全てが、俺に向かって視線を注いでいる。

 ――上等だ。俺はゆっくりと右手をかざす。

 

「全部、纏めて相手してやるよ!!」

 

 拳を握り、俺は爆発させるような勢いで全身に炎を纏った。

 

 

~~~~~

 

 

 前線が少し落ち着いた時を見計らい、俺は地下に潜る。

 高町が居ないことには気付いていたが、あいつのことだから上手くやっているはずだ。そう信じ、隊長達と合流を果たすため、俺は狭い通路をなんとか飛行し、念話を飛ばす。

 

「――高町一尉、聞こえますか。テスタロッサ執務官?」

 

 相手方は忙しいのか、それとも妨害か。通信には応じない。

 直接会うしかないな、と呟き、スピードを上げた。

 数分してホールに着き、フォワードと隊長達が集まっているのが見えて、俺はその近くに滑りながら降り立つ。

 

「ティルクさん! 無事だったんですね」

「ああ、今のところは。高町一尉、地上はガジェットが多数出現。数は減らして来たので、今は地上の魔導師だけで持ちこたえていますが、時間の問題かと」

「そう……一騎は?」

「え……来ていないのですか?」

 

 俺は驚いて聞き返す。

 それにテスタロッサ執務官も驚いたように、

 

「ティルクと一緒に行動してると思ったんだけど」

「襲撃時から現在まで、あいつとは合流していません」

 

 高町一尉が目を向けると、頷いたランスターが通信を繋ごうと耳元に手を当てた。

 

「――ダメです、私たちも一騎さんと繋がりません!」

「くそ! 斎藤、聞こえるか!」

 

 俺は応援要請のために斎藤に通信を繋げた。

 こちらはすぐに繋がったが、聞こえてきたのは息も絶え絶えな斎藤の呻きだった。

 

『聞こえてるよ……』

「っ――どうした、お前!?」

六課(こっち)にも、お客さんが来ててね……相手して――』

『来るぞ、凌げ!』

『了解だ、旦那!』

 

 その声と同時に、斎藤とザフィーラの雄叫びが聞こえる。

 

「六課にも襲撃が!?」

「一騎は不明、潤は六課で交戦中、か」

「ギンガとも通信が繋がらない」

「分散しよう! スターズはギンガの安否確認と襲撃戦力の排除」

「ライトニングは六課に戻る。リーコンは――」

「俺は地上の援護に戻ります。高町の捜索も合わせて」

「お願い――」

 

 そういう高町一尉に頷き、俺は来た道を戻る。

 

「次々と後手に回っているな――急がなければ」

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