魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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今回は少し短めです。

完全にティルクが主人公なこの頃です。
確かに潤も含めて3人が主人公ですが、一応メインは一騎です。


39話 StrikerS21

 翌朝、俺は朝食を済ませ、身だしなみを整えると、制服に着替えて玄関に向かう。

 

「気を付けてな」

「無理しないでね。昨日までは入院してたのに」

「昨日一日、十分に休ませてもらった。体調は万全だ」

「……いってらっしゃい」

「ああ。レイナ、俺の部屋を好きに使っていいからな。親父達も、レイナを頼む」

「任せろ」

「ええ、わかってるわ」

 

 お袋がレイナを抱えるようにして頭を撫でる。

 照れ臭そうな顔をしているレイナに笑いながら、俺は靴を履き終え、玄関扉を開ける。

 

「ハンカチ持ったか」

「ああ」

「チリカミは」

「いらん」

「デバイスは忘れてないだろうな」

「忘れるわけ無いだろう」

「あと――」

「じゃあ、行ってくる」

 

 

~~~~~

 

 

 親父は俺をなんだと思ってるんだろうか、とジープを運転しながら溜め息を吐く。無愛想なくせに過保護とは、俺が言うのもなんだが不器用な親父だ。

 目的地は六課跡。完全に崩れてしまった建物を六課隊舎、と呼ぶのは、気分があまりよくない。

 

「さて、と」

 

 ジープを邪魔にならない場所に停め、キーを抜いてポケットにしまう。

 そして、六課の隊舎を見て顔をしかめる。

 確かに、全壊している。あの、少し古かったがスペースは十分にあり、心地よい空間だった場所は、もう面影もなかった。

 

「ティルクさん」

「ん……ランスター。来ていたのか」

「はい。まだ終わってない場所も多いですし。あまり時間を掛けていられません」

「こういう捜査はあまり得意じゃないが、文句も言ってられないな」

「『強行偵察課』って、現場検証とかされないんですか?」

「違法研究施設を『強行偵察』するのが主だからな」

 

 俺達が歩いていくと、ちょうど建物の前、いくつもの爆発跡が残っている海沿いの通路に目が留まる。

 ここは確か、斎藤達が戦っていた場所だ。

 斎藤とザフィーラ、シャマル医務官がここで必死に防衛していたそうだ。

 だが敵わず、こんな有り様になってしまった。

 俺はその爆発跡の傍に膝を着き、瓦礫を手で弄ぶ。

 

「斎藤達は、ずっとここを守っていたんだな」

「……はい」

「俺があの騎士に一方的に殴られていた時も、か」

 

 瓦礫を握りしめると、少しヒビが入る。

 

「高町のことも忘れ、斎藤の助けにもなれず。俺は、なにもできなかったんだな」

「そんなこと――」

「ガジェットを減らしただけだ。分不相応とは言わないが、やはり俺の実力など知れたものだな」

 

 俺は立ち上がると、時間を取らせてしまったことを謝る。

 

「すまないな。それで、どこを調べるんだったか」

「あ、はい。まずは――」

 

 

~~~~~

 

 

 教えられた場所を手分けして見て回るが、たいしたものは無いように思える。

 俺の見落としがあるのかもしれないが、他にも局員はたくさん居るので問題は無いだろう。

 そして、通信音が鳴っているのに気付き、モニターを出して通話ボタンをタップする。

 

『ティルク、少し来られる?』

「アテンザ技官。どうされました」

『イノセントハートの解析が終わったの』

「了解。すぐに向かいます」

 

 伝えられた座標は、六課の隊舎跡だった。

 疑問に思っていると、空に上がってこい、とのことらしいので、飛行許可を申請して飛ぶ。

 そして、次元航行艦が目の前に出現した。

 スクィードよりは大きい。L級かそこらはあるな、と考えていると、この船はアースラだ、と思い出す。

 高町一尉達が昔世話になったと聞いている。

 乗船するように言われたので、開いたハッチに飛行して入っていく。

 

 

~~~~~

 

 

 途中で転送されてきたランスターと合流しながらデバイスルームに向かう。

 

「それで、イノセントハートは?」

「この中。調べてみたけど、デバイス自体に異常は無いみたい。映像データは今解析が終わったの」

 

 モニターに映るのは、砲撃型の女に杖を突きつけている高町の姿。

 

「やはり、戦闘機人の確保に向かっていたのか――だが、拉致されたとはわからないのでは?」

「それはもうしばらく後。飛ばすね」

 

 早送り。その中でも、高町がどんな状況だったのかはわかった。

 そして高町が意識を失って倒れると、戦闘機人の女が出てきて、高町を担いでいく。

 イノセントハートは高町が意識を失った際に手から離れ、そのまま置いていかれた。

 

「案外あっさり捕まるものだな」

「ティルクさん……」

 

 俺が漏らした感想にランスターが頭を抱えた。

 

「で、こいつらはなぜ高町を?」

「『ドクターと顔見知り』らしいね。ティルク、心当たりは?」

「あいつが無いのに、俺があるわけありません」

「だよね……」

《俺には心当たりがあります》

 

 イノセントハートが話し出す。

 

《俺がマスターに渡された際に居た、あの元局員のデバイスマイスター。あの男の雰囲気は、どこかジェイル・スカリエッティに似ていたように思えます》

「男……? 高町達から聞いたが、ただの男だったと聞いたぞ」

《確かに、そうでした。ですが、こんな科学技術が発達した世界です。姿を変えることなんていくらでもできます》

「だが、理由がない。スカリエッティが高町にデバイスを渡したとして、奴になんの得がある?」

《――よくも悪くも、ジェイル・スカリエッティは科学者として純粋です。彼にも、科学者としての性があったのではないかと》

「損得では無いということか」

《俺に興味があったようですし。今までどうやっても開かなかった箱が、目の前の人間の助けで開く、となれば、一芝居打って開かせることも考えるでしょう》

「なるほどな。スカリエッティの行動は、どこか安定していない。自分のやりたいことをやる、といった雰囲気があったな――一番面倒な手合いだ」

「経験があるんですか?」

「何度も、な」

 

 俺がうんざりして溜め息を吐くと、ランスターは複雑そうな顔をした。

 

 

~~~~~

 

 

 地上に戻り、歩きながらランスターと話す。

 

「ともかく、高町は連中に持っていかれた。なら、こちらとしても対応を考えなくてはならないな」

「対応、ですか」

「ああ。さらわれて何も無し、というのはありえない。まあ、ありがちなのは尋問か人体実験か。バラバラにされてなければいいがな」

「……なのはさんには聞かせられないです」

「俺だってあの人の前で言う気は無いが、最悪のパターンも考えておかなくては――っと、そういえば高町一尉は?」

「今日は休まれてます。フェイト隊長が進言して、休ませたようです」

高町一尉(あの人)は、休むと余計気にするタイプに思えるが――まあ、俺が口を挟むことではないか」

 

 さて、と俺は一呼吸置き、

 

「話を戻そう。それで、対応だが」

「理想的なのは、無傷で救助できることですね」

「スカリエッティの隠れ場所がわかれば、俺の得意な『強行偵察』ができるんだがな」

「それは――現在も捜索中だそうです」

「ままならないものだな」

 

 俺は溜め息を吐く。

 

「それで、先程言っていた最悪のパターンって……」

「考えられるのは、死体になってることか。見つけたら死んでいた、なんて、考えたくもないが」

「…………」

「あとは、やはり洗脳だな。高町はあれで中々一般の魔導師よりはよっぽど強い。そんなのが敵に回ると考えてみろ。ただでさえ戦闘機人とガジェットで手一杯なんだ。面倒事を増やしたくはない」

「……ティルクさんって、一騎さんのこと嫌いなんですか? なんだか言い回しが――」

「もとからこんなものだ――といっても、俺はあいつなら死なんと思っている。尋問されようが、人体実験されようが、な」

 

 俺は呆けているランスターに笑い掛け、

 

「あいつだってわかっている筈だ。自分の力量をな。自信過剰な所はあるが、引き際をわきまえているし、生き残る(すべ)も知っている。自分が不利なら相手の機嫌を取ることもするし、状況が状況なら敵に服従することもあるだろう」

 

 だが。

 

「あいつなら絶対に戻ってくる。自他共に認めるシスコンで、高町一尉の為ならなんでもするあいつだ。例え死んだって、高町一尉が泣いたら生き返るんじゃないか」

「――一騎さんが聞いたら、なんて言うでしょうか」

「『別にいいだろ』辺りだな。シスコンと言われることを否定しない、いや、寧ろ望んでいるように思えるしな」

 

 そう、あいつはシスコンという言葉にとても敏感だ。

 それを言われると一瞬顔をしかめ(・・・・・)、笑って肯定するような奴だ。

 

「高町一尉が生きている限りあいつも生きている。高町一尉が笑っている限りあいつも笑っている。そんなやつなんだ」

 

 なぜ俺はこんなにも、あいつのことを語っているんだろうか。

 少しだけ疑問に思ったが、すぐにわかった。

 

――俺も、不安なんだ。

 

 自分でも、あいつのことが心配なんだ。だから、まるで自分に言い聞かせるように、大丈夫だ、と言っている。

 

「高町なら……大丈夫だ」

 

 そう、俺は頑なに信じていた。

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