魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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スマホが壊れたと思ったら直りました。『Recovery complete. 』 心配させんな。

今回、急展開と無理矢理設定があるので笑って流してください。


UA50000突破いたしました。ありがとうございます。
これからも よろしくおねがいします。


40話 StrikerS22

「やあ、久しぶりじゃないか」

「……またお前か」

 

 目の前には、ぼくがいた。

 さっぱりとした短い髪。少しだけ無邪気さを感じさせる表情。

 毎度毎度、悪夢の中でぼくを責め続ける自称『罰』。

 

「また忘れてたろ。まったく、最近夢も見なくなって。自分の罪だとか納得できてないとか言っておきながら、随分と自分勝手だな」

「黙れ」

 

 ぼくは割り込むように、それだけを言う。

 

「黙れない。お前はなにもしなかったんだから」

「――また、その話か」

「お前が望んでるんだぞ。心の奥で罰せられたい、ってな。ある意味天性のマゾだな」

「いつまで続ける気だ」

「お前が認める(・・・)まで」

「なに――」

「お前が自分の罪を見付けて、悔いるまで。ぼくはお前を責め続けなくちゃならない」

「ぼくの罪だと?」

「やっぱり気付いてないのか。いや――わかってる筈だ。ぼくがわかってるんだからな」

「お前とぼくは違う」

「いいや、同じさ。なんせ、お前はぼくなんだ。ぼくはお前なんだよ」

「くだらん」

 

 ぼくはうんざりして吐き捨てる。

 すると、頭の痛みが襲ってくる。

 

「――ッ!!」

「強情な奴だな。それじゃ姉さん(・・・)が可哀想だろ。お前自身に都合良く利用されてるんだぞ」

「なん、だと――ふざけてるのか!」

「まさか。自分相手にふざけたってどうにもならないだろ――っと、そろそろ時間だな。またな、『ぼく』」

 

 『ぼく』がそう言った瞬間、ぼくは意識を失った。

 

 

~~~~~

 

 

 夢の中で眠ると夢から覚める。

 そんな言葉があるが、どうやら気絶しても同じ効果があるようだ。

 そんな事を考えながら、ぼくは目を閉じたまま自分の状態を把握する。

 両手に拘束具が嵌められ、天井にぶら下がる形になっているようだ。

 ゆっくりと目を開く。

 

「おや、お目覚めか。気分はどうだい?」

「……朝一番に見るのがお前の顔なんて、不愉快以外のなんでも無いね」

 

 ぼくはそう吐き捨てる。

 ジェイル・スカリエッティが、ぼくの目の前でニヤニヤ笑いを浮かべていた。

 

「久しぶりの再会だというのに、ずいぶんな言葉じゃないか」

「久しぶり――? ぼくはお前に会ったことなんて無いぞ」

「これでもかい?」

 

 と、スカリエッティは顔を手で覆うと、下ろす。

 するとスカリエッティの顔は、イノセントハートを貰ったときの元局員の男の顔に変わっていた。

 

「お前――!」

「思い出したようだね」

 

 スカリエッティは元の顔に戻る。

 

「私があげたデバイスは有効に使っているかい?」

「まるであんたが開発したような口振りだな――ああ、とても役に立っているさ。その点は感謝してるよ」

「それはよかった」

「聞きたいことは終わったか? そろそろ帰りたいんだが」

「話はこれからが本番さ」

 

 スカリエッティはモニターを出す。

 

「君は『エース・オブ・エースの弟』だ」

「――だからどうした」

「君は全てにおいて姉を第一に行動している。シスターコンプレックスと言ってもいいほどのものだ」

「お前には関係ない」

「だが、少し気になったのだよ――きみの行動の不自然さが」

 

 ぼくは目を細める。

 

「君は姉を一番に考えている筈だ。だが、君は極力姉と共に居ようとしていない」

「――はあ?」

「君はほとんどの時間を同僚と行動を共にし、姉との時間をあまりとっていないように見える。同じ部隊で働いているにも関わらず、だ」

「……姉さんは忙しいからな。邪魔をするわけにはいかない」

「本当にそうかい?」

「――何を聞きたい? 率直に言えよ」

「ならばそうさせてもらおう。きみはどこかで、姉を疎ましく思っていないかい?」

 

 ぼくは頬が引き攣るのを感じた。

 

「そんなわけないだろう」

「そうかい?」

「……当たり前だ」

「なら何故――」

 

――きみは今、笑っているんだい?

 

「な、に――?」

「きみは今、心底嬉しそうに微笑んでいたよ。自分でも気付かないほどの自然なものだったのかな?」

「笑っていた、だと――」

「ああ。まるで、自分の言いたいことを理解してくれた事を喜ぶ学者のように。とても満足そうな笑みだった」

 

 ぼくが、笑っていた。

 姉さんを疎ましく思っていると指摘されて。

 そんな馬鹿なことがある筈がない。

 だって、ぼくは――

 

「姉さんを――」

「疎んでいる」

「違う……!」

「心のどこかで憎んでいる」

「違う!」

 

 ぼくは身体を乗り出そうとするが、拘束具のせいでただ身じろぎをしただけだった。

 その反動で、自分の結った長髪が大きく揺れる。

 

「ぼくがどう思ってるかなんて、お前がわかる筈がないだろう! お前なんかに――!」

「君が一番わかっている筈だろう」

「――ッ!」

「ゆっくり考えてみるといい。時間はたっぷりとある」

 

 スカリエッティがそう言うと同時に、モニターのボタンに触れる。

 その瞬間、ぼくの視界が暗転していく。

 

 

~~~~~

 

 

「どうだった?」

「――くそったれ」

「そんな悪態をつけるんなら大丈夫だな」

 

 うつ伏せに倒れているぼくの目の前に、『ぼく』は座った。

 

「だから言っただろ。お前は物分かりが悪いな」

「うるさい!」

 

 怒鳴り、床に拳を叩き付ける。

 だが『ぼく』は驚いた様子もなく肩を竦め、

 

「昔からそうだったろ。『お前は』姉さんに対して、なんとも思ってないんだよ」

「…………」

あの(・・)病室でだってそうだ。姉さんは泣いてたのに、『お前は』つまらなそうに座ってた」

「違う!」

「思い出してみるか?」

「――やめろ」

「ま、好きにするといいさ。ぼくは(・・・)姉さんのこと好きだから、あまり姉さんが悲しむことはしたくないし」

 

 ぼくは意味がわからず、聞き返す。

 

「お前は、なんなんだ?」

「ぼくはぼく。昔のお前だよ。お前が『ほったらかしにしてる』ぼくだ」

「ぼくが……?」

「まあ、その話はいいさ。お前は(・・・)姉さんの事をなんとも思ってない。けれど、それでもお前は『ぼく』だ。少しは疎通ができてるんだろうな。ぼくが姉さんを好きだという気持ちが、お前にも伝染するかのように備わっている」

「――ぼくの姉さんが好きだという気持ちは、お前から伝わっているものだということか」

「そう。『ぼくの』姉さんに対する気持ちだ。『お前の』じゃない」

「なら、ぼくは空っぽだと?」

「いいや。お前にもお前の『想い』はある。『疎ましさ』もそうだ」

「疎ましさ――」

「姉さんへの好意はぼくのものだ。お前のじゃない。けど、大丈夫だよ」

 

 『ぼく』はゆっくりとぼくに手を伸ばす。

 

「ぼくを受け入れろ。そうすれば、ぼくとお前は同じになる。ぼくの想いはお前と同じに。お前は『気付く』前のように、姉さんを好きでいられる。姉さんのことだけを考えていればいいんだ」

 

 ぼくの気持ちはこいつの気持ち。

 ならば、ぼく自身の気持ちは。想いは――

 

「――ああ、そうか。わかったよ」

「ん?」

「悩んでいたことも、考えていたことも。今はもう、どうでもいい。お前の言葉で、少しだけ吹っ切れた――」

 

 ぼくはゆらりと立ち上がり、嗤う。

 

「――ぼくは姉さんと戦おう」

 

 ぼくの言葉に、『ぼく』は大きく目を見開く。

 

「何を言って――」

「ぼくは姉さんを疎ましく思ってた。ああ、そうさ。確かにぼくは『弟』だ――だからどうした? 弟ってだけで、ぼくはどれだけの過大評価を受けてきた?」

 

 ぼくは嗤いながら頭を掻き毟る。

 

「どこへ行っても、なにをしても! 全部、全部『弟』だ! もううんざりなんだよ!」

「お、おい――」

「弟だからなんだっていうんだよ!? いつもそうだ!! ぼくの評価は全部『弟』!!」

 

 唐突に発狂しだしたぼくに、『ぼく』は困惑しているようだ。

 

「ぼくへの言葉は、全部姉さんへの事だ! 『エース・オブ・エースは弟の教育もしっかりできている』。ふざけるな!!」

 

 ぼくは床を踏みつけた。

 

「そうさ、ぼくは全然シスコンなんかじゃ無い! 姉さんの事なんて好きじゃない! 全部、言い訳にしてただけだ!」

 

 ぼくはあの第97管理外(つまらない)世界から逃げたがっていただけだ。 そのために姉さんを利用していたんだ。

 姉さんが好きだと思い込んで。

 姉さんが好きだと言い聞かせて。

 

「だが、もういい。逆恨みだってわかってる。けど、止まれないんだよ……ぼくは姉さんを倒してやる」

 

 ぼくがそう宣言すると同時に、視界が暗くなる。

 

 

~~~~~

 

 

「どうだった?」

 

 ぼくはゆっくりと目を開ける。

 

「ほう、いい瞳だ」

「ぼくを、姉さんと戦わせて欲しい」

「ふむ?」

 

 スカリエッティは驚いたようだったが、すぐに笑いながら頷く。

 

「面白そうだね。いいだろう。だが、もちろん条件がある」

「ああ、わかってるさ。なにをすればいい?」

「私の実験に付き合ってもらう。もちろん、君にも得のあるものだ――ウーノ」

 

 スカリエッティが名前を呼ぶと、女性が入ってきて、ぼくの首筋にペン型注射器を刺し、ボタンを押す。

 その痛みに短く声をあげてしまう。

 スカリエッティがモニターのスイッチに触れると、ぼくの胸の中心に痛みが走る。

 

「――ッ!?」

「リンカーコアは器官だ。心臓や腎臓と同じ、ね。だが、リンカーコアの成長力は他の器官とは比べ物にならない速度で成長――進化する。幼い子供の頃に魔力を消費すれば、潜在魔力量が大きく延びるようにね」

「……それとこれと、どんな関係がある?」

「リンカーコアのその柔軟性を利用するんだよ。君の身体に注入したのは電流を流す小型デバイスだ。ナノマシンのようなものと思っていい」

「よくそんなもの作れたな」

「電流を一定時間リンカーコアに浴びせ、同じ時間コアを休ませて回復を促す。それを繰り返し続ければ、リンカーコアはその柔軟性と成長力によって進化し、『電気』の変換資質を後天的に修得できるのだよ」

「なんだと――!?」

 

 そんなことができるなんて、知らなかった。人体実験の現場は数多く見てきたが、身体を弄ることはあっても、リンカーコアを弄っていることはほとんどなかった。

 

「だが、普通に電流を流せば、心臓にまで電流が達し、活動が止まってしまう。だから、小型デバイスに指向性を持たせ、リンカーコアのみに電流を流す事に成功した。後は実証だけさ。さあ、少しの間、耐えてくれたまえよ」

 

 その瞬間、また胸の中心に激痛が走り、ぼくはひたすら声にならない叫びをあげた。

 

 

~~~~~

 

 

「成功だ!」

「……失敗したらお前を殺してやるつもりだった」

「さっそくなにか魔法を使ってみてくれ」

 

 スカリエッティはぼくの言葉が聞こえていない様子でぼくに言う。

 溜め息を吐きながら、ぼくはアクセルシューターをひとつ出す。

 普段通りにやったその魔力弾には、電流が流れていて、スパークの音を立てていた。

 

「……半信半疑だったが、すごいな。あんた、本当に天才なんだな」

「次だ。君にレリックを埋め込んでみる。人造魔導師ではない君に、だ」

「やっぱあんた、ぼくを殺す気だろ!」

「とんでもない。しっかりと調整はするさ。今の実験で、君のリンカーコアは一般的な魔導師と比べて頑丈になってきている。ならば、出力調整をしたレリックなら確実に受け入れることができる筈だ」

「本当か?」

「データが正しければね」

 

 

~~~~~

 

 

「………………」

「なにか反応を返してくれないか?」

「……やはりお前は殺した方がいい」

「意識も安定している。リンカーコアの波長も問題ない。なにより、潜在魔力量が大きく増えている。高エネルギー結晶体をリンカーコアに埋め込んだんだから、当然と言えば当然だが。気分はどうだい?」

「最高」

 

 ぼくは苛立ち紛れにスカリエッティへ魔力弾をぶつけようとし――色が変わっていることに気付いた。

 ぼくの魔力光は、水色だった筈だ。

 だが今出したこの電気を纏った魔力弾は、緋色に近い赤色に変わっていた。

 

「ほう、興味深い。魔力の色まで変わるとは……これは『受け入れられる』ようにした人造魔導師では見られなかった現象だ。『受け入れ難かった』生身の人間のリンカーコアが適応した結果か――」

 

 ぶつくさ言い始めたスカリエッティにうんざりして、ぼくは溜め息を吐いた。

 

 

~~~~~

 

 

「そういえば君はデバイスを持っていなかったな」

「あんたの所の娘さんにエスコートの仕方を教えてやれ。ここに連れてこられるときに落としたんだ」

「それは失礼。まあ、好都合と言ってはなんだが、これはお詫びだ」

 

 ぼくの前で床が開き、何かが出てくる。凝った演出だな、とぼくは感心した。

 そして、それを見て驚いた。

 

「刀?」

 

 二股に分かれた台座に乗せられている、黒い鞘と柄巻の日本刀。

 

「プレゼントだよ。きっと君に協力してもらえると考えて、以前から製作していたんだ」

 

 ぼくは左手で鞘を持ち、右手に柄を持ってゆっくりと引き抜く。

 まず目についたのは、黒。

 普通なら鋼色をしている刀身は、黒色に鈍く光っていた。

 

「色は個人的な趣味だ」

「ああそうかい」

 

 ゆっくりと振りかぶり、上段から片手で振り降ろす。

 非常に手に馴染むものだった。

 

「気に入った」

「それはよかった」

 

 ぼくは刀を鞘に納める。

 

「きっと君の姉はヴィヴィオを取り戻しに来る筈だ。だから君はゆりかごで――」

「――今なんて言った」

「君の姉はヴィヴィオを――」

「ヴィヴィオをさらったのかっ!」

 

 スカリエッティに詰め寄り、刀の柄頭を突きつける。

 

「そもそも、私の本当の目的はヴィヴィオだった。あの少女が居なければ、私の夢は成し得ない」

「ヴィヴィオに危害を加えていないだろうな」

「君が目覚める前にレリックを埋め込んだ」

 

 ぼくが刀を抜こうとすると、赤い糸がぼくの肢体を絡めとる。

 

「落ち着きたまえ。もう彼女は大丈夫だよ」

「信用できるか」

「私の実験に協力してくれた時のように、信用してくれるとありがたいね」

「――まあいい。どうせここで暴れたってどうにもならん」

 

 ぼくが構えを解くと、糸が消えた。

 

「作戦が始まれば、君はゆりかごでディエチと待機していればいい。彼女にもここの迎撃を頼んでいる」

「ディエチ?」

「君が剣を突き付けた娘だよ」

「ああ、あの砲撃型か」

「話して親交を深めるのも良いだろう」

「――機会があればな」

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