魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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事件終結から一ヶ月近く経ってます。

あとお気に入り登録された数が500人を突破しました。
思わず声をあげてしまいました。これからもエース・オブ・エースの弟をよろしくお願いします。


46話 StrikerS28

 事件終了後、ぼくは裁判沙汰になった。

 当然といえば当然だ。ぼくは一時的にとはいえ、敵に協力していたところがしっかりと映像に残っていたのだから。

 そういうわけで、豪華なボディーガードに守られながら地上本部に護送されるぼくを、姉さん達は心配そうに見つめていた。

 

「無罪」

 

 そして、帰ってきたぼくはそうでかでかと書いた紙を姉さん、フェイトさん、はやてさんの前につきつけた。

 地上本部から、修繕された六課隊舎まで車で送ってくれたフォレスタ二佐が隣で笑っている。

 

「映像を解析すれば、ぼくが洗脳されていなかった、というのは証明できる。だから――」

「『スカリエッティに迎合した振りをして、機会を伺っていた』って?」

「それを押し通したっていうんか?」

「一騎――また無茶して」

「ぼくの知名度と上司の手腕だよ」

 

 それを聞き、三人がフォレスタ二佐に目を向ける。

 その視線を受けたフォレスタ二佐は肩を竦め、

 

「『エース・オブ・エースの弟』の優秀な判断力と、俺こと『フォレスタ・ケレット』の手腕(てまわし)。これが揃えば、無茶の一つや二つは簡単さ」

「……やっぱこの人信用できんわ」

 

 フォレスタ二佐の言葉に、はやてさんが小さく呟いた。

 二佐はそれに気付いているようだが、楽しそうに笑うだけだった。

 

「完璧な無罪だったぜ。まあ、下拵えは完璧だったしな」

「はあ――ともかく、高町空曹の弁護、感謝します。フォレスタ二佐」

「構わんさ、八神二佐。その代わり――」

 

 はやてさんと目を合わせて続ける。

 

「『元』強行偵察課の連中、もう少しだけ面倒見てくれませんかね」

 

 はやてさんはとても嫌そうな顔をした。

 

 

~~~~~

 

 

「『クビになった』って実家に戻って言ったらカーチャンにハローワークの冊子で張り倒された」

「お前のカーチャンすげぇな。うちの両親は泣き崩れたぞ」

「オレはトーチャンに殴り飛ばされて壁にめり込んだ。修繕費は当然オレ持ち」

「オレはジーチャンに三時間も説教されたよ」

「うちなんかバーチャンが倒れて入院したんだぜ」

「『親不孝者!』って空にかちあげられて十字砲火(クロスファイア)食らったわ」

「マウント取られて親兄弟にフルボッコされたオレに一言」

「オレは何も言われなかった。その代わり話しかけてもらえなくなった。泣きたい」

 

 元強行偵察課のギャグ要員は、そう食堂の一角で愚痴り始めた。

 ぼくは笑いながらそこに近付く。

 

「お前らな――『強行偵察課』は解体されるけど、局員じゃなくなる訳じゃないんだぞ」

「あ、姉御」

「――髪が無いな」

「あるっつの馬鹿が」

 

 失礼なことを抜かしたヴィンズを睨みながら、ぼくは短くなった髪を弄る。

 

「ま、最初は頭が軽くて違和感があったけどな。もう慣れた」

「ボーイッシュな姉御も素敵」

「やかましい――ともかく、来年の四月までは、お前らは六課勤務だ。自分でやること見つけてやれ、と八神部隊長が仰っている」

「それは大丈夫。もう八神部隊長をキレさせたりしないさ」

 

 クォーツの言葉にみんなが頷き、

 

「んじゃ、行こうぜナグリー」

「オーライ、リブレンド。そういや作ってみたい装備があったんだった」

 

 トリスタンの二人が席を立ち、デバイスルームの方へ歩いていく。

 

「んじゃ、オレ達も事務仕事済ませるか、ウィルス」

「わかったよ、ヴィンズ。ロングアーチのみんなが戻ってきたとはいえ、事件の事後処理はまだ残ってるしな」

 

 パーシヴァルのコンビも伸びをし、肩を回しながら席を立つ。

 

「オレらは戦闘訓練でもするか、レイド」

「フォワードに混じって訓練させてもらうか――うし、行くかライア」

 

 モードレッドの二人も気怠げに立ち上がると、雑談しながらこの場を後にした。

 そして、ぼくは残った二人――クォーツとマリクに目を向ける。

 

「お前らは?」

 

 クォーツが背もたれに身体を預けて天井を仰ぎ、マリクは目を細めて腕を組んだ。

 そして、クォーツが手で顔を覆いながら、

 

「……姉御。僕ら二人、局員辞めようと思う」

 

 そう言った。

 

「……理由を聞くべきか」

「オレとクォーツって、なんか、向いてないんだと思う」

「僕とマリクはそれなりに魔力資質もある。戦闘能力もそれなりだと自負してる。けど、何て言うか――これからも続けられる自信が無いんだ」

 

 クォーツはぼくに力無く笑い掛け、

 

「僕らは戦いに向いてない。かといって、事務仕事に落ち着く気も無い」

「だから、いっそのこと局員辞めて、これから自分の好きなことでもやってみよう、って――」

「――少し前から考えてたんだ」

 

 ぼくは腕を組み、ゆっくりと息を吐いた。

 

「それならそれでいいだろう。ぼくが口出しすることじゃない――お前らの両親がなんて言うかはわからんがな」

「それは大丈夫だよ……ありがとう」

「――そういや、ぼくはこれからどうするかはあまり考えてないな。でもたぶん、姉さんに着いてって戦技教導隊に行くと思う」

「あ、やっぱり?」

「――まあ、教えるのは得意じゃないから、技能訓練よりも、新型装備テストや訓練部隊の演習相手を任せて貰おうと思う。姉さんは『教導隊』らしい技能訓練が好きって言ってたけどな」

「確かに、訓練中の高町一尉はいきいきしてる気がする――あ、そういやサイン貰ってない!」

「うお、マジだ! クォーツ、お前は高町一尉のもらってこい! オレはテスタロッサ執務官の貰ってくる!」

「わかった! 姉御は八神部隊長の頼む!」

 

 二人は一瞬でそう言い切ると、同時に飛び出していった。

 ぼくは溜め息を吐いた。

 

「あの反応速度は、ぼくなんかよりもかなり速いのにな」

 

 そうひとりごとを呟きながら、ぼくは部隊長室に向かった。

 

 

~~~~~

 

 

「シグナム二尉、手合わせしていただき、感謝します」

 

 俺は剣鋸を腰の鞘に納め、頭を下げる。

 

「ああ、言ってくれれば、いつでも相手をしてやれる」

「是非」

 

 俺はそう言って訓練所の仮想樹木にもたれ掛かり、大きく息を吐く。

 

「お前も結構な物好きだよな。好きこのんでシグナムと打ち合うなんて」

「――俺はかなり気に入ってますよ、ヴィータ三尉。シグナム二尉との手合わせは、やはり学ぶことが多いです」

「純粋なベルカの騎士だからな。あたしもシグナムも、近代かぶれの若い奴には負けねぇよ――けど、お前の剣、シグナムと少し似てるよな」

「親父から習いました。親父は、ベルカの亜流を習っていたそうです」

 

 俺の言葉に、ヴィータ三尉は腕を組んで考え込み、

 

「その亜流って?」

「俺も詳しいことは知りませんが、親父が言うには――由緒ある、古代ベルカから受け継がれた剣術家の一人が道場を立ち上げ、そこで習った門下生が盾を持つようにアレンジした亜流を編み出し、その亜流を習った親父が、その元となった『由緒ある剣術』を調べて『亜流』をもう一度改良しなおした、とか言っていました」

「……ややこしいな」

「俺もいまいち意味がわかりませんでしたが――まあ、真正ベルカの剣術と根は同じ、ということらしいです。シグナム二尉と似ているのも、それが理由でしょう」

「それだけわかれば十分だな」

「でしょうね」

 

 俺が笑うと、ヴィータ三尉も笑い、

 

「お前、少し変わったな」

 

 そう言った。

 

「そうですか?」

「ああ。最初は規律に厳しそうなガッチガチの生真面目野郎だったろ。それが今となっちゃ、一個だけとはいえ、一応上司のあたしと気安く話せるようになってるじゃねぇか」

「気安く、ですか? すみません、もしそう感じられたのであれば、謝ります」

「いいんだよ。他じゃ困るだろうが、少なくとも六課(ここ)なら気安く話してくれて構わねぇ。こういう雰囲気のなかで、一人だけ固い対応してるのは、見てるこっちとしちゃ反応し辛いからな」

「……すみませんでした、ありがとうございます」

「いいって言ってんだろ」

 

 と、そこで高町がこちらに向かってきているのに気付き、俺は軽く手を上げる。

 高町も手を上げて応える。

 

「ティルクも訓練してたのか。ヴィータさんと?」

「いや、シグナム二尉に手合わせをして貰っていた」

「んじゃ、ヴィータさんは今()いてるんですか?」

「ああ、そうだけど」

「それじゃ――」

 

 高町が一瞬赤い魔力光に包まれ、それが消えると、バリアジャケットを纏い、左の腰に黒いカタナを差していた。イノセントハートはペンダントのままだ。

 高町は黒い刀身のカタナを引き抜いて、

「それじゃ、少し相手をしてもらってもいいですか、ヴィータさん」

 

 その言葉を聞いて、ヴィータ三尉は楽しそうに笑った。

 

一騎(おまえ)が模擬戦挑んでくるなんて、珍しいな」

「これからに備えて、鍛えていきたいんですよ」

「うし、わかった。本気でいくぞ」

「望むところですよ」

 

 二人は笑い合うと、ゆっくりと空に浮かび上がる。

 ヴィータ三尉も騎士甲冑を身に纏い、グラーフアイゼンを両手で構えた。

 高町もカタナを両手で握り、少し腰に引き付けるようにして構えた。

 そして、同時にぶつかり合い、激しい火花を散らせた。

 

 

~~~~~

 

 

「ラケーテン――」

「空牙!」

 

 ヴィータさんが突っ込んでくる前に、剣撃を衝撃波として飛ばして加速を防ぐ。

 その隙に接近し、連続で刀を振るう。

 袈裟懸け、逆袈裟、斬り上げの勢いで縦に回転し、間髪入れずにもう一度斬り上げ。

 二度目の斬り上げに反応が遅れたヴィータさんはグラーフアイゼンを大きく弾かれ、ぼくの斬り下ろしが左肩に直撃した。

 

「入っ――」

「――てねぇよ!」

 

 直撃したと思った斬り下ろしは、一点に魔力を展開して防ぐ集中防御によって止められていた。

 それに気付いたときには、既にヴィータさんは両手でグラーフアイゼンを構えていて、その振り上げがぼくの腹にめり込んだ。

 

()め!」

 

 いつのまにか来ていたらしいシグナムさんが声を張り上げた。

 ぼくは激痛を訴える腹を抑え、ヴィータさんはグラーフアイゼンを肩に担いだ。

 

「あたしの勝ちだな。隙を見せたお前の敗けだ」

「ああくそ、惜しかった。もう少しで勝てたかもしんないのに――」

「惜しくなんかねぇよ。まだまだあたしにゃ敵わねぇ、ってこった」

「嘘を吐け、ヴィータ。お前もかなり危なかったろうに」

「……シグナムは黙ってろ」

 

 ぼくは刀を鞘に納め、未だに痛みを主張する腹に回復魔法を掛けつつ、負けた悔しさを溜め息で吐き出した。

 

《俺を使わないからそんなことになるんですよ。そんなナマクラ刀を使わずに》

「別に、この刀はナマクラでもなんでもない。寧ろ、デバイスとしてのシステムを全て攻撃に当ててるから、威力だけならかなり高いんだよ」

《だからといって、やり方は幾らでもあるでしょう。俺も使ってくださいよ》

「もう少し調整が出来たら、な」

《急いでくださいよ》

「わかってる――ヴィータさん、手合わせ、ありがとうございました。次は勝ちます」

「絶対負けねぇ」

「勝ってやりますよ」

 

 ぼくはにやりと笑うと、震える携帯端末を取り出す。

 

「うわ、もう18時だ。結構時間食っちゃいましたね……あ、姉さんからだ。『みんなと晩ご飯一緒にどう?』だって」

「この文面だと、テスタロッサも一緒だろうな」

「すぐ行ってやれよ。最近なのはの機嫌が良いのは、お前が理由だろ」

「そうですかね。それじゃ、また明日にでもやりましょうね、ヴィータさん」

「次も負けねぇからな」

「次は勝ちますよ」




しばらくはだらだらと日常編が続きます。
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