数少ない読者様をこれ以上減らされちゃかなわん。
あと今回は短いです。
前話の終わりから展開が飛んでますがわざとです。細かい設定を考えて無いから先延ばs( ry。
50話 Original Episode
「こうして見ると、隊舎が壊されたなんて信じられねぇな」
俺はそう呟いて六課隊舎を見上げる。
すっかり傷もよくなり、リハビリも終えた俺は、ようやくかったるい病院を退院し、六課へ戻ってくることができた。
「さて、休暇の終わりを部隊長に報告しに行きますかね」
~~~~~
報告を終えて部隊長室を出ると、廊下をアローンが歩いてくるのが見えた。
よう、と言って俺は軽く片手を挙げた。
「久し振り」
「その様子だと、もう万全のようだな」
「ああ、快調だよ……ところで、一騎は?」
「あいつは今、本部でメディカルチェックを受けている」
「チェック――なんでだ? あいつも怪我してたのか?」
「いいや、事件中に拉致されて、リンカーコアにちょっとな」
やはり、JS事件のことか。
事件のことは聞いている。
記録映像には目を通したし、入院中にも看護師や見舞い客に様々なことを聞かせてもらった。
被害状況とか、どんな魔導師がどんな活躍をした、だとか。事件のことはニュースにもなっていて、医療院のテレビモニターにも、何度も『機動六課』の活躍が放送され続けていた。
とりわけ、エースの活躍。部隊長と執務官。そして、あの『姉弟』のことが。
事件の最中、俺はずっと意識を失っていた。
六課を守るため、と言えば聞こえはいいが、なんのことはない、力不足で敵に敵わなかっただけだ。
俺は実力が足りずに敵に負け、しかもそれが原因で、最後の大舞台に出ることもできなかった。
それを考えると、なんとも言えないもどかしさが胸の中で渦巻いた。
~~~~~
どうですか、とぼくは科学主任の男性に聞いた。
彼はモニターを眺めながら、
「――リンカーコアは正常に稼働しています。レリックの反応も確かにありますが、コアに悪い影響は出ていません。今のところ、問題は無いと思われます」
「そうですか」
少しばかり安心する。ぼく自身がなんとも感じていなくても、機材で調べれば異常が出るかもしれない、という不安があったのだが、杞憂だったようだ。
「もう少しの間、定期検査を続けてみましょう。しばらくなにも無ければ、それで」
「わかりました」
「では、次は『電気』を見せていただきます」
「はい」
ぼくは魔力弾を生成する。
特別な術式を施していないそれには、しかし赤い雷がまとわっていて、バチバチと電流を走らせる。
「リンカーコアの反応は、一般的な『変換資質』とまったく同じ――変換資質は後天的に会得できる、というのは、本当だったんですね」
「『リンカーコアは器官だ』と彼は言ってました。凄まじい速度で成長し、変質する器官。幼い頃から魔力を消費していれば、潜在魔力量が増えていくように。電気を浴びせ続ければ、リンカーコアは『電気を生み出すようになる』と」
「……その理論は、昔からあったにはあったのですが――人間の器官の中でも、かなり敏感なコアに電流を流すなんて、リスクが大きすぎる。だから、そんなことを考える人は居ても、実践する人はいなかったのですが」
「つまりぼくは、机上の空論の体験者。さらに、その成功者、というわけですね」
ぼくが笑っていった言葉に、男性は複雑そうな顔をした。
「でも、電気ってのはかなり便利です。この力をくれた事だけは、スカリエッティに感謝してます」
「……とにかく、もし異常があったらすぐに来るように。」
ぼくは頷き、デバイスルームの設備を貸してくれませんか、と訪ねる。
どうぞ、と軽く返事が返ってきたので、ぼくは礼を言って診療室を出た。
~~~~~
ぼくはヘッドマウントディスプレイ『リベレーター』を展開すると、機材のガラスケースの中に入れる。
表示されたモニターのキーを叩き、微調整用の画面に移行する。
「――反応誤差0.23。さすがナグリーといったところか。ここまで誤差が短いなんてな」
あいつは、ぼくのクセも知っているし、ぼくの情報処理能力の限界も知っている。だから、イノセントハートの整備・強化も任せることが出来るし、新装備も初っぱなから実戦に使えるレベルで作られている。
だが、それでも僅かなズレは生じる。それをぼくは自分で調整するが、実際の開発より、まったくと言っていいほど手間は掛からない。
優秀な同僚の能力に感謝しつつ、誤差を調整する。
プログラミングも慣れたものだ。かれこれ10年はデバイスを弄っているのだから、当然とも言えるが。
「よし、終わり。次は――この刀だ」
リベレーターを取りだし、今度は刀の実体剣を展開すると、整備台の上に掲げる。
鞘を払い、黒い刀身をひとしきり眺めると、鞘と並べて台に置く。
「登録デバイス名称――無し。名前は無いんだな、この刀」
この刀はスカリエッティからのプレゼントだ。渡された経緯は、イノセントハートが手元に無かったから、という簡単なものだが、この刀の性能は思った以上に高い。
「名前は後でいいや。さて、弄るとするか」
この刀は、デバイスというより、完全な武器と言っていいだろう。性能の全てが威力特化につぎ込まれ、刀の攻撃力を上げることに全てを注ぎ込んでいる。
フレームの強度もかなり高い。姉さんの
武器としては凄まじい出来映えだ。日本の刀鍛冶とはまったく製法も材料も違うが、これはこれで一つの完成形だ。
「天才科学者はやることが違うな」
呟き、ぼくは刀の機能を
「けど、ぼくが使わなきゃなんないのはデバイスだ。こんな凶器を、局員のぼくが使っちゃ良くないな」
ぼくもデバイスマイスターの端くれだ。こんな高性能な武器の機能を完全消去するのには少なからず逡巡があったが、犯罪者の提供物をいつまでも使うわけにはいかない、と自分を無理矢理納得させた。
なにより、自分が調整し直して、これよりももっと強いデバイスを作ってみたい、という欲求があった。
「さて、と。基本形はこのままでいいか。変なギミックも要らないだろう。中身を一から作り直すか」
フレームの頑丈さはかなり頼もしい。これならティルクの剣鋸と打ち合わせても折れないだろう。
魔力の浸透性とそれに比例して攻撃力の上昇、という機能を組み込む。魔力斬撃が主なぼくとしては、この機能がなければ話にならない。
形態変化はこの刀には要らない。それはイノセントハートにやってもらうことにする。
ぼくはひたすら、キーを打ち続けた。威力を高め、敵性攻撃魔法への対処も視野に入れる。
刀の調整に満足すると、次は鞘を手に取る。
なんのへんてつもない鞘だ。だが木製ではなく完全な金属製で、指先で回すと、刀ほどでは無いが少しばかり重さを感じる。
「金属の鞘、か。まあ頑丈だし、上手く使えるか」
ぼくは鞘を左手に持つと、右手に刀を掴み、軽く振るって刀を鞘に納める。
「黒い刀身……じゃあこいつの銘は――」
~~~~~
剣鋸を斎藤のガントレットにむけて斬りつけると、鋸が連続的に回転し、その表面で激しく火花を散らす。
斎藤は剣鋸の側面を殴って軌道を逸らし、俺の盾を蹴りながら大きく後ろに跳んだ。
「おいおい、どうしたアローン。鈍ったか?」
「お前が言えた台詞か」
「俺だから言える台詞さ」
確かに、退院したばかりの斎藤と打ち合って互角なんて、俺が鈍ったと思われても仕方がない。
俺は盾を待機状態に戻し、剣鋸を手の中で回すと、両手で柄を握って構える。
「ま、鈍ったなら鈍ったで構わねえよ。練習相手になってもらうだけだ」
「ほざけ。一撃のもとに斬り伏せるのが剣士の神髄だ。次は斬る」
「やれるもんなら、ってな」
斎藤が炎を纏って拳を構え、俺の剣鋸がゆっくりと回転を始めた。
「行くぞ!」
「来いやぁ!」
~~~~~
そんな白熱した空気を帰ってきて早々浴びたぼくは、その熱気に当てられ、身体が疼いて仕方がなかった。
ああそれと。阿呆達の視点で物語を語る「『弟』を支えた仲間達」という外伝作品を書き始めました。
よろしければそちらもどうぞ。