魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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52話 Original Episode 2

 翌日、朝食を終えたぼくが携帯端末(リベレーター)を操作したあとにポケットに入れ、イノセントハートを首に掛けて準備をしていると、潤が両手に持ったダンベルを上げ下げしながら声をかけてきた。

 

「なんだ、どっか行くのか、相棒?」

「定期検診のために地上本部へ」

「地上本部?」

 

 そこで潤が思い出したように頷き、

 

「お前のコアか」

「そう。もう少し定期検診が必要なんだってさ。面倒くさいことこの上ないが、サボってもし不具合があったら困るからな」

「なるほどねぇ」

 

 そこで潤が、

 

「あ、そうだ。お前の検診受け持ってるのって、どんな人だ?」

 

 そう言ってきた。

 ぼくは質問の意味が掴めずに首をかしげ、

 

「どんな人、ってのは?」

「信用できるか?」

「恐らくはな。まだよくわからんが……なんの話だ? 要点を言え」

「レイナを診て貰いたい」

 

 ぼくは少し驚き、聞き返す。

 

「なにかあったのか?」

「いや。ただ、レイナは人造魔導師だ。そういう意味でのガタ(・・)とか、健康状態とか。今までに検査したことがなかったから、気になるんだよ」

「だが――」

 

 大丈夫なのか。

 そう、ぼくは聞いた。

 

「なんとかするさ」

 

 潤はそう応え、ぼくは頷いた。

 

 

~~~~~

 

 

「送ってくれてありがとうございます、フォレスタ二佐」

「帰りも頼んます」

「構わんさ。俺も本部にはちょいと用があったからな」

 

 終わったら連絡くれ、とフォレスタ二佐は車を走らせた。

 ぼくは潤を見ると、彼はレイナと手を繋いで頷いた。

 

「話したのか?」

「病院で検査する、ってな」

 

 まあ、誤魔化し方としては適当か。

 ぼくはこの前と同じルートで、科学主任の男性のもとへ行った。

 

「ああ、高町空曹。どうぞこちらへ」

 

 前と変わらず、少し柔らかい笑みを浮かべてぼくを促す。

 そして、ぼくの後ろに立っていた潤とレイナを見て、おや、と声を出した。

 

「彼はぼくの同僚、斎藤陸曹です。隣の少女は彼の『妹』。彼女が少し魔力の運用を練習したので、その結果――リンカーコアの成長具合や、不具合が無いか検査して貰いたいんです。お忙しいところ申し訳ありませんが、お願いできないでしょうか」

 

 とりあえず、即興で考えた話だが、嘘は無い。

 男性はいいですよ、と快く頷いてくれた。

 ぼくはひとまず安心するが、念のため警戒しておけ、と潤に視線を向けた。

 

 

~~~~~

 

 

「リンカーコアには変化無し。……もう、定期検診は終わりにしましょうか、高町空曹」

「本当ですか?」

「ええ、1ヶ月経っても変化が無いとなれば、もう充分でしょう」

 

 やっと面倒な検査から解放される。

 ぼくは笑顔を浮かべ、男性に礼を言った。

 

「では、そちらのお嬢さんと変わってください」

 

 ぼくは横になっていた台から起き出て、レイナに寝るように言う。

 レイナは特に気にした様子もなく、台に寝転がる。

 それを確認すると、ガラスケースが台を覆った。それを見ても、レイナの表情に不安は無い。

 大したもんだ、とぼくは男性の隣まで歩いていく。

 潤は反対隣に立っている。

 

「では、始めます」

 

 男性はモニターをいじり始めた。

 次々とモニターが表示され、様々なパラメーターが映し出されている。

 

「リンカーコア容量86%。回復速度79%、それによる変化値は約5、6ずつ上昇中……」

 

 パーセンテージは一般局員を50%とした時の値、変化値はおそらく回復にあたってのリンカーコアの容量増大値か。

 

「成長度や魔力量はかなり高いですね。とても5、6歳の少女とは思えな――?」

 

 そう判断していると、突然男性の指が止まった。

 ちらりと男性を見ると、モニターを見ながら眉を寄せている。

 ぼくと潤は油断なく男性の挙動に気を配る。

 数秒後、男性はモニターを閉じ、レイナの寝ている台のガラスケースを開いた。

 

「かなりリンカーコアの値が大きいですね。良い魔導師になれますよ」

 

 そう言ったこの人物の顔には最初と同じく、笑みが浮かんでいる。

 潤に目配せすると、相棒は頷いてレイナを連れてきた。

 

「ありがとうございます。それでは」

「気を付けてお帰りください」

 

 

~~~~~

 

 

「バレた、かね」

 

 どうだろうな、とぼくは呟いた。

 そんな呟きにレイナが首をかしげて、

 

「どうしたの、お兄ちゃん」

「いんや、なんでもない。このまま街で遊んで帰ろうと思ったんだが、ギンガとスバルから呼び出しがかかってね」

 

 潤がモニターを弄りながらそう誤魔化した。

 まあ、メールが来ていて、スパーリングの相手をしてほしい、と呼ばれているのは本当のようだ。

 

「それじゃあ、六課に戻るか?」

「ああ。そうするよ」

 

 ぼくは頷き、フォレスタ二佐に連絡を取る。

 

 

~~~~~

 

 

「よう中将。どうだ、生き恥さらした気分は」

「……フォレスタか。呼び出した覚えは無い。出ていけ」

 

 未だに地上本部のトップに座っているレジアス中将に対し、俺は意地の悪い笑みを作ってやる。

 

「命の恩人に、随分な態度だな。強行偵察課があの戦闘機人を捕まえてなけりゃ、あんたは殺されてたんだぜ、中将?」

「『強行偵察課』、か。随分と勝手なことをしてくれたものだな。お前達が公開意見陳述会で仕出かしたこと、忘れたとは言わせんぞ」

「非人道的な違法研究、資金の横流し、賄賂、非合法な取引、犯罪者との繋がりその他諸々。それを調べ上げ、必要であれば脅し、潰すのが強行偵察課(おれたち)の仕事だ」

 

 そんなことより、と俺は続ける。

 

「お前、ゼストと話したんだろ」

 

 明らかに、レジアスの肩が動いた。

 

「記録に残ってた敵の『空戦魔導師』は間違いなくゼストだった。死人が生き返ったとは驚きだが、未練でもあったんだろうな」

 

 レジアスは厳しい表情をしている。

 俺は側まで歩き、肩を軽々しく叩く。

 

「精々自分の罪と向き合ったこったろ。昔は真面目君だったお前が捻くれた頑固親父になって、今まで重ねてきた罪と、な」

「…………」

 

 まあ、そんなことはどうでもいい、と俺は続ける。

 俺は仕事上顔が広く、ゼストとレジアスの二人とは、少し付き合いがあった。この二人の因縁云々には興味があったが、そんなことを聞く気にはならない。

 

「聞きたいことがある」

「……なんだ?」

「八年前の『事故』。あれにお前は関わってたか?」

 

 レジアスは俺に目を向けた。

 

「……八年前?」

「そう。捜査任務中の空戦魔導師達が『未確認兵器』に襲撃を受け、沢山の犠牲者を出した、あの痛ましい『事故』だよ」

「それは……知らん」

「本当か? あの事故について、強行偵察課の最先任(・・・)がえらく気にしててな。今回のJS事件にも関わりのあったお前だ。そう簡単に信用できるとでも――」

「本当だ。その事故については――なにも知らない」

 

 俺はレジアスの目を見つめた。

 レジアスは、目を逸らさない。

 頭から爪先まで見ても、おかしな部分は無い。

 本当のようだ。

 

「そうか。聞きたいのはそれと――」

 

 ――お前はいつまでそこ(・・)に座ってるつもりだ?

 

「――っ」

「さっさと降りた方が身のためだぜ。『レジアス・ゲイズ中将』」

 

 俺は最後、そう威圧をすると、高町から連絡が来ていることに気付き、「時間だ」といって踵を返す。

 レジアスは俺が部屋を出ていくのを、ただ呆然と見ていた。

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