「二佐はどこ行ってたんですか?」
「昔の知り合いのとこだ」
「二佐の知り合いって、なんか黒いイメージしかないっすね。腹黒的な意味でも、仕事的な意味でも」
「はっは」
潤の言葉に、二佐は笑うだけだった。
少し苛ついている様にも見える。
「なあ、高町」
「はい?
「お前、8年前の事故に関して、どんだけ知ってる?」
「っ――」
8年前の『事故』。
それがなにを表すのか、ぼくは即座に気が付いた。
ぼくのトラウマであり、罪を抱える切っ掛けとなったもの。
『ぼく』が終わり、ぼくが始まった原因。
「姉さんが墜ちた『事故』」
「ああ。お前の姉も墜ちた事故だよ。あの件に大して、お前は何を知ってる?」
「何を、って。機械兵器――おそらくガジェット――の襲撃を受けた、くらいしか」
「ま、そうだな。実質、それ以外には無い」
「ならなんで、んな事聞くんですか? 相棒が気にしてることくらい、
潤が顔をしかめて二佐に言う。
「いや、俺が言いたいのはな。あの事故でどれほどの被害が出たか、ってことだ」
「被害……? だから、姉さんが」
「あー、それ以外だ。確かに高町姉が墜ちたのは大きいが、その他はどうだ?」
「……いえ、ぼくは、ちょっと」
「斎藤は?」
「一騎に聞くまで、その事故の事すら知りませんでしたね」
「そうか」
二佐はそう頷くと、黙りこんだ。
「どうしたんですか、急にそんなことを聞いて」
「あの事故で被害を負ったのは高町姉だけじゃない。とりあえず、それだけは知っとけ」
~~~~~
「お、帰ってきた帰ってきた」
「お疲れ様です、フォレスタ二佐」
「『弟』と斎藤もだ。用件は済んだか?」
アンソニーの問いに、ぼくは頷いた。
「やっと定期検診が終わりました。病院通いも今日で終わりです」
「そうか」
話題を振ってきたわりには、あまり興味無さそうな反応。
昔からアンソニーはぼくにたいして必要以上によそよそしかったが、最近はそれに増して違和感のある反応だ。
「先程、高町一尉が探していたぞ。訓練場にいるだろうから、会いに行ったらどうだ」
「姉さんが――わかりました。ありがとうございます、アンソニー」
ぼくは頭を下げると、訓練場の方へ走り出す。
~~~~~
一騎が走り去っていくのを、全員で見送る。
「いいのか、アンソニー」
「なにがだ」
「話があるんだろう、あいつと」
「今すぐ話さなければならんわけでも無い。私の問題は私で片をつける。口を出すな、ハーヴェイ。アレクセイも、『弟』におかしなことを吹き込むなよ」
「善処する」
「あーあー、なんで俺の
そんなやり取りを聞いていたが、内容を問い詰めるわけにもいかず、俺は四人から離れてギンガを探す。
そして、訓練場前でギンガがスバルと話しているのを見付ける。
「よう、二人とも」
「あ、潤さん。お帰りなさい!」
「どうだった、レイナは」
「体調は万全だ。な、レイナ」
「うん」
レイナは頷いて、二人に駆け寄ると、ナカジマ姉妹は二人でレイナをあやし始めた。
ギンガは姉であるからともかく、スバルも思っていたよりも面倒見がよく、最近はレイナの遊び相手をしてもらうことが増えている。
人と接する機会が増えるのはレイナにとっても良いことだ。そう思いながら、俺はみんなを誘って訓練場に向かい――
「「「「「「「「ぬがぁあああぁぁあぁああ!!」」」」」」」」
――響いてきた叫びに四人して肩を震わせた。
~~~~~
「だあぁぁあぁああ、くそったれ!!」
「歯が立たん! 立つわけねえってーの!」
「なにが楽しくて戦闘訓練なんか!」
「ああ!? 高町教導官に訓練つけてもらえんだぞ! 寧ろ感謝してしかるべき!」
「いやいやいやだからって! なんで姉御もいるんだよ!」
「教導官お一人ならともかく、エースの姉弟に訓練つけて貰うほど実力なんてねぇんだよ!」
「なんでオレらまで……真面目に事務仕事してただけなのに……」
「諦めろウィルス。オレ達は『阿呆』という一括りに収まっている。つまり」
「この阿呆共が何かをやらかしたら、オレらにまで被害が及ぶ――」
「そういうことだ」
ぼくはそんな阿呆達の阿鼻叫喚をひとしきり眺めてから空に飛び上がり、姉さんを見る。
「一騎、コンビネーション、やるよ!」
「了解、姉さん!」
ぼくと姉さんはエクシードモードのレイジングハートとイノセントハートを揃えて構える。
純粋な魔力砲撃をチャージし、同時に頷く。
「エクセリオン……」
「……ブラストォ!!」
《《Excellion Blast》》
デバイス二機も共鳴するように光ると、声を揃えて復唱する。
そして、撃ち出されるのは桜色と紅色の魔力と雷が入り交じった、単純な直射砲撃。
だが、射砲撃が得意なぼくと姉さんが併せて撃ち出したそれは、はやてさんのラグナロク以上の巨大さと破壊力を持っている。
「防げぇぇぇぇぇぇ!!」
「リブレンド、ウィルス、レイド! オレ達は複合シールド展開! 前に出て踏ん張るぞ!!」
「ナグリー、ヴィンズ、ライアは高速機動準備! 相棒を回収して散開!」
マリクとクォーツが指示を出して陸と空でメンバーを分け、素早く行動に移った。
前に出た陸士の四人は巨大なシールドを張る。それは四人の魔力光が組み合わさって出来た強固なシールド。術式をそれぞれが組み合わせ、改良した盾。多重盾とはまた違う系統の、彼等オリジナルのシールド魔法だ。
だが、そんな強固な盾も、ぼくらの砲撃の前には数秒でヒビが入り、砕け散る。
盾が砕ける瞬間、空士の四人はそれぞれのコンビパートナーの腕を掴み、四方に高速機動で脱出する。
強行偵察課のメンバーは総じて実力はAA+クラスであり、魔法技術も高い。つまり高速機動のスピードも速く、シールドが砕けてから地面に到達する前には、既に砲撃の範囲から脱出している。
「うん、良い判断」
「でも、逃げられないさ」
ぼくらは同時にデバイスを握り込む。
「なんだこの馬鹿魔力!?」
「いくら砲撃がでかかろうが、オレ達のスピードなら避けられる!」
飛行していた四人のうち、クォーツとライアはかろうじて範囲の外へ出たが、ヴィンズとナグリーは僅かに遅れたようで、砲撃の余波に吹き飛ばされるが、ふらつきながらも体勢を整えた。
「よし、避け――」
「オーケー、射程範囲内だ」
そして、ぼくは姉さんに砲撃の維持を任せ、カートリッジを使用した高速機動で砲撃の目の前へ移動している。
「姉御なにやってんの!?」
「自殺!?」
「わざわざ自分の砲撃の前に移動……っ、やばい! みんな逃げ――」
「もう遅い」
ぼくは目の前に迫っている砲撃に対し、斬撃を飛ばす。そして、切り裂いた砲撃を強化したシールドで受けた。もちろん、真っ正面から受けるわけではなく、僅かに傾けて。
シールドにぶつかった砲撃は、四方八方にはじけて乱れ飛ぶ。
「うぉえ!?」
「砲撃を砕いてばらまいた――」
「まさか、んなバカな――」
「しかも、威力はほとんど落ちてな――」
弾かれた砲撃は連中の方へばらまかれるようにシールドの角度を調整してある。
もちろん、ほとんどは外れるが、数がある分、どれかは当たる。
しかも、威力は多少減衰しているとはいえ、抜群の破壊力がある。
「全力回避ィー!」
「無理だー!!」
「ぎゃあああっ!」
「あ、すまんレイド。持ってるの忘れてた、って気絶してら。やれや――」
「あ、避けられな――」
「ヴィンズ消し飛んだーー!?」
「ブレイズルミナス! これなら!」
「おい、なんかヒビ入っt」
あっというまに八人を全滅させることができた。
~~~~~
「なにやってんだ、あいつら」
「……さあ?」
MOVIE 1stを見て思い付いたネタ技。もう使わないです。