魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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55話 Original Episode 5

「やはり、歪みがあります」

 

 科学主任のおっさんが出したモニターには、リンカーコアの拡大図らしきものが映っている。

 確かに、指されたところには凹みの様なものがある。

 

「このへこんでるところですか?」

「はい。リンカーコアの変形など、本来はあり得ないんですよ。いえ、あり得ないというよりは、前例が無い。普通に育った(・・・・・・)子供ならば」

 

 その台詞に、俺はおっさんの目を睨むようにして見る。

 

「どういうことですか?」

「――失礼ですが、この子に大して無茶苦茶なトレーニングをさせられていませんか?」

「無いですね。俺が教えたのは身体強化だけで、それすらもかなり軽めのものですし」

「では、この子の生まれについては?」

 

 俺は表情をわざと困惑したものに変え、おっさんに対して少し不安げにたずねる。

 

「生まれ、とは?」

「ご存じ無い?」

「……はい。『現地で保護した娘』なんで」

「そうですか――斎藤陸曹、少しよろしいですか」

 

 俺の嘘を信用したのか、おっさんは補助していた女性技官にレイナを任せると、俺を部屋の外へ連れ出す。

 

「落ち着いて聞いてほしいのですが――あの子は『人造魔導師』である確率が高いです」

 

 とっくに知ってる。だが俺は、あえて初めて知った、という驚いた表情を作った。

 

「人造、魔導師……」

「はい。ご存知とは思いますが、人間を培養し、外科的な処置を行うことで、魔力運用技術やその他能力を底上げする、という技術です。当然、人の行いとして許されるものではない」

「じゃあ、レイナの『歪み』は――」

「半ば強制な『処置』のせいでしょう。リンカーコアに手を加えたせいで、ほんの僅かに歪んでしまっている。普通の検査では気付かない程、とても小さなものですが」

 

 そこまでは知らなかった。しかし、歪みが本当にあるのなら、それを放置していて大丈夫なのか、と俺が尋ねると、

 

「わかりません」

「わからないって……」

「なにしろ、前例が無いのです。ですから――彼女をもう少し詳しく調べたい」

 

 俺は顔を俯かせて考えた。

 レイナのリンカーコアを放っておけば、異常が出るかもしれない。そんなことにはさせたくない。

 だが、この男を完全に信用することは出来ない。こいつは既にレイナが人造魔導師であると知っている。レイナを頼んだとして、果たしてどこまで任せていいものか。

 いや、考えすぎか? ここはミッドチルダの地上本部。下手なことは出来ないだろうし、するメリットも無い筈だ。

 レイナには念話を教えてある。距離はまだ確かめていないが、もし何かあれば自分で助けを呼ぶこともできる筈だ。

 

「どのくらい掛かりますか」

「数時間はかかるかと」

「……では、お願いします」

 

 

~~~~~

 

 

 ぼくは車の助手席に座りながら、クラナガンの町並みを眺めている。

 海鳴市よりも大きいだろうな。そうぼんやりと考えつつ、運転席でハンドルを握っているアンソニーを見る。

 視線は真っ直ぐ前を見ていて、普段のように、落ち着いた雰囲気を出している。

 けれど、少しだけ違和感がある。どこかそう(・・)取り繕っているようにも見える。

 

「なあ、一騎」

「はい?」

「最近はどうだ?」

「最近、ですか」

 

 いきなりなんの話だろう。

 とりあえず、思ったことを言う。

 

「まあ、楽しくやってます」

「ほう」

「憑き物が落ちたっていうのか、言いたいことを全部言い切ったんで。今はもうスッキリして、姉さん達と過ごせてます」

「言い切った、とはなんだ?」

「えっと……ぼくが今まで、姉さんに遠慮してた鬱憤を晴らした、というか。そんな感じです」

「それで、全部終わったのか?」

 

 その言葉に、ぼくは固まった。

 姉さん個人に抱えていた想いは解決した。

 けれど。

 

「……終わったものもあります」

「……そうか」

 

 ぼくはまだ、心の中に抱え込んでいるものがある。

 これは、これだけはどうしても解決できない。なぜならそれは、ぼくがずっと苛んできた罪だからだ。

 いや、罪なんて言うほど大層なものではないだろう。

 けれど、どうしてもぼくの脳裏からは、あの光景(・・)がこびりついて離れない。

 

「一騎、ここで私は、お前に対して辛いことを思い出させる。その事を先に謝っておく」

 

 思わずアンソニーを見る。既に車は駐車スペースに止まっていることに、いま気付いた。

 ここは、と辺りを見回し、今ぼくらがどこに居るのかわかった。

 

「医療センター……?」

「ああ、そうだ」

 

 アンソニーは車を降りた。

 

「お前に話したいことが――聞きたいことがある」

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