魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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60話 Original Episode 10

「応答しろ、リーコン1――ティルク、どうした?」

 

 つい先程から、ティルクとの通信が途切れている。

 

《魔力反応はあります。生きてますが……意識を失っているのかと》

「ティルクが負けた……?」

《現在反応が4つ……おそらくフォワードが交戦中と思われます》

 

 目の前にモニターが表示され、そこには六つの光点が激しく動き回っているのが映されている。

 一つが潤だとするなら、この4つはフォワードのものなんだろう。

 だが、もう一つはなんだろうか。反応だけで見ると、危険度はAAA+程か。

 かなりの速さで動き回り、三つの光点――おそらくフォワードの後衛――を牽制しているようだ。

 潤には協力者がいるのだろうか。

 

「どうやら、今の潤はかなり危険な状態だな。協力者らしい反応もあるし、フォワードでも手こずってる。急ぐぞ」

 

 ぼくはフィールド防御出力を高めて身体を保護すると、スピードを上げた。

 

 

~~~~~

 

 

 ローラーで変則的な機動をするスバルを追い、次々と場所を移動しながらお互いを攻撃する。

 

「「うおおおおおおおお!!」」

 

 拳がかち合うと同時、俺は押し負ける。

 単純な力の差が段違いだ。俺の得意な身体強化をフルに使っても、スバルの威力には僅かに届かない。

 だが、普段とは違う。

 押し負けてはいるが、打ち合えている。

 普段なら完全に押しきられているが、耐えられている。

 この距離を維持できれば――一対一(タイマン)なら勝機はある。

 後ろでは、リンドヴルムがランスターとルシエを攻撃し、モンディアルはそっちの援護で手一杯だ。

 

――行ける。

 

「なんで――こんなことしたんですか!」

「さっき分隊長にも言われたがな――言ったって信じねぇだろうが!」

「そんなこと!」

 

 俺はその場で身体を回転させる様に跳び、空中で加速をつけた回し蹴りを叩き込む。

 それをスバルは両腕でガードするが、俺が爪先の炎を爆散させると、衝撃に声をあげて後ろに飛ばされ、大きく地面を滑って止まった。

 

「レイナのためだ」

 

 俺の言葉に、スバルは目を見張った。

 

「レイナが危険だった。だからあの男を殺した。だから俺は逃げている。それだけだ」

 

 そう言うと、俺は足の裏で炎を爆発させると同時に地面を蹴り、一気に加速する。

 その加速のまま、膝蹴りを繰り出す。

 今度は完全に見切ったスバルはそれを防ぐと、左手で俺の右手首を掴みながら口を開く。

 

「なら、理由を説明するべきでしょう!」

「分かってもらえるとは思えんな! 人殺してんだぞ、俺は!」

「だったら尚更!」

「うるせぇよ生真面目が! 理屈だけで通ると思うな!」

「なら潤さんも、我が儘が通ると思わないでください!」

 

 その状態でスバルが右腕を振りかぶると、ナックルがカートリッジをロードし、スピナーが回り始める。

 

「やば――ッ!」

 

 即座に退こうとしても、俺の右腕は掴まれている。

 

「リボルバー……」

「くそ――がッ!」

「キャノン!」

 

 それが繰り出される瞬間、俺は左手でスバルのナックルを掴み、思いきり引いた。

 足払いも食らわして背負い投げをやろうとしたが、スバルが身をよじって身体をずらしたせいで失敗し、ただ俺がスバルを仰向けに押し倒した形になった。

 だが俺はすぐに左腕に力を入れ、スバルもそれに右腕を突き出すようにして抵抗し、力比べの形になる。

 

「――うっ!」

「おおっ――!」

 

 普段なら押し負けるのは俺だが、この体勢なら話は別だ。

 下から押し上げるのと、上から押し付けるのだったら、後者の方が強いに決まっている。体重を掛けられるのも大きい。

 俺の左手とスバルの右拳は拮抗し、僅かにでもずれたらお互いの顔面に拳が叩き込まれるだろう。

 この間に僅かにでも体力を削る、と俺が考えた瞬間、スバルは俺の予想外な行動に出た。

 

「こん……のッ!」

 

 スバルの額が俺の顔面を打ち据えた。

 

「が――っ」

 

 頭突き。この状態でそんな反撃を食らわされるとは思っておらず、俺が仰け反ると、スバルは即座に俺の左手を振り払い、自由になったナックルで思いきり俺の胸を殴り付けた。

 その衝撃を無防備な状態で受け、俺は大きく吹き飛んで仰向けに倒れた。

 

「くそ、が!」

「終わりです――投降してください」

 

 俺は跳ね起きようとするが、スバルは完全に体勢を立て直し、俺に向けて拳を構えている。

 あの構えは近距離砲撃。左手の先に魔力スフィアが構築されている。

 いつでも撃てる。だからスバルは俺に降伏勧告を出した。

 

「だから生真面目だって言ってんだ」

「え――?」

「スバル! 後ろ!」

 

 聞こえてくるのはランスターの叫び。

 つい今まで三人を抑えていたリンドヴルムが、俺の援護に回るために、スバルに対して猛スピードで突進している。

 

「嘘!?」

 

 巨大な炎の竜が突っ込んでくる。その光景に、スバルは一瞬で硬直した。

 リンドヴルムが大きく吼えた。

 スバルに向けて、大口を開けながらリンドヴルムが迫っていく。

 死にはしない。怪我もしないだろう。だが、リンドヴルムの攻撃を食らえば、間違いなく戦闘続行は不可能だ。

 じゃあなスバル、と俺は呟き――

 

「紫電――」

 

 そこで、上から一つの人影が、高速で回転しながら急降下してくる。

 その位置は、ちょうどリンドヴルムの頭部だ。

 

「一閃!」

 

 そいつは回転する勢いのまま、左手に握った赤い雷を纏った刀をリンドヴルムの首に向けて振り抜いた。

 

――ォオオォオオォオォッ!

 

 首筋を半ばまで切り裂かれたリンドヴルムは、悲鳴をあげてのたうつ。

 質量を持つほどに凝縮された炎は、リンドヴルムの身体そのものと言っていい。斬られれば、痛みのような不快感があるはずだ。

 そして、その斬った張本人は。

 

「すまない、遅くなった」

 

 刀を振り抜いた体勢のまま膝をつき、地面に着地した衝撃を吸収しきると、刀を手の中で回して立ち上がる。

 俺の黒いバリアジャケットとは真逆の、真っ白なジャケット。黒いインナーには金のプレートが装着され、縁や袖を赤いラインで彩ったロングコートを羽織っている。

 左手にはまだ赤い雷がスパークを散らしている黒い刀。右手には、まるで槍のような形をした、赤い長杖。

 栗色の短髪に、姉とは違う切れ長の鋭い目付き。

 

「リーコン2、高町一騎。参戦する!」

 

 俺の相棒は、俺に刀を突き付けてそう言い放った。

 

 

~~~~~

 

 

 なんとも驚きだ。潤の協力者が竜だったとは。

 ぼくが切り裂いた首もとは少しずつ炎が戻って回復しつつあり、この羽の生えた蛇は苛立ったように唸っている。

 だが、今の不意打ちで確実に弱っているのがわかった。

 後ろを向くと、仰向けに倒れている潤と、それに向けて拳を構えているスバル。

 そして、ティアナ逹三人もぼくらのもとへ駆け寄ってくる。

 

「形勢逆転だ。わかるか、犯罪者」

「上等――」

 

 潤が炎を纏って跳ね起き、駆け出そうとした瞬間、その首筋に巨大な剣鋸が突き付けられ、激しく刃を回転させた。

 

「もう一度言う。投降しろ」

「ティルク。無事だったか」

「さっきまでは、な」

 

 騎士鎧の各部をへこませているティルクはそう言って笑った。

 だが、突き付けている剣鋸は僅かにもぶれない。

 

「四面楚歌、ってやつか」

「籠の中の鳥だ」

「残念だったな。俺は鳥だが、蛇は抜け出してんだぜ」

 

 潤がそう言った瞬間、後ろで蛇が吼えた。

 ぼくは刀を逆手に持ち替えて左腰の鞘に納刀し、即座に振り向いてカートリッジをロードし、シールドを張る。

 シールドに、凄まじい勢いで尻尾が叩き付けられた。

 その衝撃に驚いたぼくは左手に力を込め、シールドの維持に集中する。

 その隙に、潤は迫る剣鋸を身体を逸らすようにしてギリギリで避けると、バク転の要領で一気に距離を取った。

 

「潤さん!」

「まだ抵抗するか。いいかげんにしてほしいな」

「構わないさ。強制逮捕を続行すッ――」

 

 そこでもう一度尻尾がシールドを叩き、ぼくは言葉を中断し、睨み付ける。

 

「うるさいんだよ、蛇畜生」

 

 次に来るのは頭突き。だが何度も続けられるわけにはいかない。

 その頭がシールドにぶつかる瞬間、ぼくはバリアバーストを発動させる。

 巨大なシールドの爆発は、蛇を大きく吹き飛ばすほどの衝撃を生んだ。奴は放物線を描いて地面に叩き付けられ、唸りながら身体を起こす。

 

「さて、役割分担と行こうか。フォワードは――」

「一騎さん逹は、潤さんをお願いします。あの竜は、私たちが」

 

 ティアナの言葉に、ぼくは驚いて聞き返す。

 

「大丈夫か? あの蛇、かなり強いぞ」

「はい。やれます」

「……わかった。不利になったら援護する。無理はするな」

 

 フォワードの四人は頷き、蛇に向かって駆け出した。

 それを見届けると、ぼくは歩き出し、ティルクの隣に立って潤を睨み付ける。

 

「悪い、ティルク。少し離れててくれ」

「なに?」

「あの馬鹿に灸を据える。相棒として、あいつを矯正しなきゃな」

「だが、斎藤自身も普段とはかなり違う。身体強化を身体の限界を越えて行使しているし、戦法も僅かに変わって――」

「問題ないさ。ぼくは『万能型』だぞ」

 

 ぼくは携帯端末型デバイスである、リベレーターを取り出す。

 

「どんな相手だろうと、どんな戦いだろうと、勝つ。自分自身を(・・・・・)使いこなす。そのためにぼくは今まで訓練してきたんだ。やれるさ」

「……わかった。頼む」

 

 ティルクが数歩、後ろに下がった。

 ぼくは笑うと、リベレーターをセットアップする。

 

《戦闘モード起動》

 

 ヘッドセットが装着され、そこから両目を覆うようにバイザーが展開される。

 テストパターンが表示され、『ALL GREEN』を最後に、オーグメント・リアリティとして情報が投影される。

 

「さて」

 

 右手に握ったエクシードモードのイノセントハートを掲げ、右に振り払う。

 

「イノセントハート」

 

 ぼくは左手で、先程納めた刀に手を掛け、身体を捻って引き抜く。

 

「『玄月(ゲンゲツ)』」

 

 イノセントハートのコアが光り、玄月に赤い電流が走る。

 リベレーターのバイザーが、音を立てると、視界が一気にクリアになる。

 

「けっ、やけに仰々しいな、相棒」

「名乗りを上げるのは戦の作法だからな。それじゃあ――」

 

 ぼくは両手のデバイスを握り締めて構えると、大きく息を吸う。

 

「――推して参る!!」




一騎がハイテンションなのは仕様です。
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