魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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63話 Original Episode 13

 とりあえず、事件は一応の解決となった。

 ぼくは潤を引き渡し、その後の裁判にフォレスタ二佐と共に参加した。

 

「結果、執行猶予は取れなかったが、三年間の隔離施設行きになったよ。主任の行っていた実験、その被害に遭った家族を守るための行動であり、未成年ってこともあるし、『刑罰』よりも『更正』をしてもらえることになった」

 

 そして、一通りの報告を済ませた後、ぼくが帰ってきたことを知ったらしいフォワードメンバー(とレイナとギンガ)に捕まり、説明をしている。

 

「俺はまーた呼び出しだよ。本当に、なんで『強行偵察課(うち)』の連中は問題ばっか起こすのかねぇ」

 

 ぼくの後ろを、フォレスタ二佐が愚痴りながら通り過ぎていった。

 

「課長が問題児だからでしょ」

 

 ぼくの言葉に二佐は苦笑いを浮かべた。

 ぼくがそれを見送ると、まずスバルが口を開いた。

 

「なんで潤さんはあんなことしたんですか?」

「えーっと、簡単に言ったら、レイナが実験を受けさせられてて、それを止めるために技術主任を殺害した」

「実験って?」

 

 ぼくがレイナの頭に手を乗せながら言うと、エリオが眉をひそめて聞いてくる。

 

「リンカーコアの実験だ。ぼくがスカリエッティに『電気』の変換資質を後天的に植え付けられたことは知ってるな。コアに直接電流を流されて。それをあの男は、レイナに『炎熱』で試した」

 

 一応、ぼくの事はみんな知っている。姉さん達は心配してくれたが、アンソニー達は興味本意の質問が大半だった。

 

「その結果が――」

 

 と、ぼくがレイナを見ると、彼女は頷いて右手を前に差し出す。

 すると、その手が炎に包まれた。

 全員が驚きの声をあげる。

 

「――レイナに『後天的な』変換資質が与えられた。潤が聞いたらどう思うか、ぼくは今から心配で仕方がない」

 

 ぼくは肩を竦めたが、みんなは反応を返さない。

 一応冗談のつもりだったのだが、今はそれどころではないようだった。

 

「レイナ、その炎を出してても大丈夫?」

「うん」

 

 レイナは頷くが、ギンガは少し不安そうだ。

 ぼくはレイナの炎に触れながら説明する。

 

「あちっ……普通の変換資質と同じだよ。先天的か後天的かの違いだけで、能力としての変化は無い。意図せずとも炎が出てくるってだけで、魔法も普段と変わらずに使えるはずだ」

 

 ぼくは危うく火傷しかけた右手を振っていると、キャロが慌てて治療魔法を掛けてくれた。面目無い、とぼくが言うと、くすくすと笑われた。

 笑われたことに少しむっとしながら、ぼくは右手をさすりながら椅子に座る。

 

「とにかく、問題ないよ。レイナは潤と同じ『炎熱』に寧ろ喜んでるくらいだし――当然あれ自体(・・・・)は嫌だったろうけど――、リンカーコアの『歪み』もちゃんと治ってる。一応やることはやってもらえたようだ」

『高町。斎藤のデバイスを受け取って来たから、デバイスルームに来てくれ』

 

 ぼくの隣にモニターが出現し、そこに映っているティルクが右手に持っている腕輪を見せながらそう言った。

 一瞬、ぼくの後ろに目が動いた。視線を追うとスバルとならんで座っているティアナが居たのだが、その意味はわからなかった。

 

「了解。すぐに行くよ」

 

 

~~~~~

 

 

「『魂』?」

 

 ティルクが素っ頓狂な声をあげた。

 

「お前は現実主義者だと思っていたが」

 

 ぼくは首もとを掻いて、頷く。

 

「そう表現するのが一番正しいんだよ。この『ケーニッヒ・フランメ』の中には、あの蛇――『リンドヴルム』とやらの記憶というか、形質というか……なんか、そんな感じのものが眠ってるんだ。それが潤の『炎熱』に反応して、眠りが覚めたというか……そんな感じだ」

 

 ぼくの要領を得ない説明にティルクは腕を組んだ。

 

「わからん」

「ぼくだってわかんないよ」

 

 荒々しくキーを叩き、そう吐き捨てる。

 

「なんで潤の『炎熱』に反応したのか、ってこともわからん。『炎熱』だったらなんでもいいのかもしれないし、ちょっとシグナムさんでも呼んでみようかな」

 

 

 ――五分後

 

 

「ダメだ、フェイトさんと模擬戦してた」

「よし、参加してくる」

 

 言うやいなや、ティルクは猛然と訓練所の方へ走り出した。

 「ああ、馬鹿だ」と思いながら、ぼくはフランメを待機状態に戻し、デバイスルームを出る。

 

 

~~~~~

 

 

 事後処理も大体終わったし、どうしようか。そう考えながら歩いていると、中庭で一人の男が座り込んでいるのに気付いた。

 

「アンソニーだ」

 

 彼は芝生の真ん中に胡座を組んで座っていて、静かに目を閉じている。

 寝てるのか、と思ったが、魔力の流れがアンソニーを中心に巡っていたので、瞑想しているんだな、とあたりをつける。

 そして、気配を消して慎重に近付いていく。

 そして、一メートルほどの距離まで近付いた途端、青い魔力弾がぼくに襲いかかった。

 驚くと同時、イノセントハートがソニックムーブを発動し、身体を逸らしてそれを避けた。

 ぼくは息を吐き、

 

「なんですか、急に」

「お前こそ、急に現れるな。驚いた」

「いや、ゆっくり近付いてたんですけど」

 

 そうだったのか、とアンソニーは目を開いてぼくを見た。

 

「それで、何の用だ」

「いえ、特に。姿を見たもので」

「ふむ……」

 

 あっけらかんと言うぼくにアンソニーは呆れた様子も無く、自分の隣の芝生を軽く叩いた。

 座れと言うことだろうか。ぼくは隣に腰を下ろした。

 するとアンソニーはまた目を閉じて、瞑想を始めた。ぼくもそれにならい、目を閉じて呼吸を整えていく。

 周囲の魔力素を集め、リンカーコアに還元していく。コアで呼吸するように、静かに。

 じんわりとした感覚が胸の奥から全身に伝わり、柔らかい心地好さが身体中に広がっていく。

 

「どうだ、最近は」

「またその台詞ですか」

 

 ぼくは目を閉じたまま応える。

 

「やっぱり、溜め込むのはよくないんでしょうね。後悔だとか、そういうの。アンソニーに話してから、割りと楽になりましたよ」

「そうか。それはなによりだ」

 

 苦笑するような声色に、ぼくの頬も緩む。

 

「あいつの事は残念だったな」

「潤ですか。まあ、自業自得です。ぼくにも責任はありますが、今さらどうしようも無いですし」

「――あの技術主任だがな。経歴を調べていたら、元違法研究者だったということがわかった」

 

 それを聞いて、ぼくはアンソニーを見ようとするが、そのまま続けろと言われ、もう一度魔力運用に戻る。

 

「十数年前に逮捕され、刑罰を受けた後、管理局への技術提供を条件に解放された。確かに、あの主任のおかげで管理局の技術はかなり進歩した。近代ベルカの基礎構築や、カートリッジシステムの負荷軽減にも、おおいに貢献したらしい」

「技術は素晴らしかった、と」

「科学者としても純粋だったそうだ。だからこそ、管理局への技術提供も受け入れたし、今回のような事態も引き起こしてしまったのだろうな」

 

 アンソニーは一呼吸置き、

 

「今回の件で、局はこれ以上『犯罪者への条件付き解放』をとりやめるべきだ、という意見が出ている」

「それって――」

「犯罪を犯した者への情状酌量など必要ない。犯罪者は犯罪者なのだから、それこそ自由を与えるべきではない、ということだ」

「馬鹿な。いくらなんでも!」

 

 ぼくはゆりかごの中で世間話をしたディエチを思い出した。

 彼女は確かに犯罪を犯した。けれど、戦闘機人として産み出され、善悪の判断もつかず、戦うことしか教えられなかった彼女に、どうすればよかったというんだろう。

 産み出された者からすれば、たとえスカリエッティのような者でも父親みたいなものだ。言うことに疑問を抱いても、反抗することはないだろう。

 ぼくはそう言ったが、アンソニーは静かに唸り、

 

「ある意味では、この意見は正しいだろう」

 

 その言葉にぼくは苛立ち、アンソニーを睨んだ。

 が、アンソニーは険しい顔をしていて、

 

「だが、こんな意見は許されるものではない――全てを極端に律することが法だとは、正義だとは思えない」

「法と正義の守護者たる管理局が、傲慢に正義を規定し、押し通すことは許されない、と?」

「私は納得がいかないだけだ」

 

 アンソニーは立ち上がると、ここからでも見える地上本部の塔に視線を向けた。

 

「だから、私達が動く。この意見に反対する者は――理由はどうであれ――大勢いる」

「なにより、そんな意見が通ったら潤が戻ってこれなくなる」

 

 ぼくは笑い、

 

「姉さん達にも話してみます。ぼくらも協力しますよ」

「そうか。それならすぐに片付くだろうな」

 

 アンソニーも静かに笑うと、拳を握り締めた。

 

「姉が――オーレリアが目覚めるまでに、少しでも世界を良くしていく。私はこれからそのために動いていくつもりだ。一局員として、出来る限りのことをな」

 

 そういうアンソニーの表情は、見たことがないほどに清々しく、いきいきとしていた。

 少しだけ、羨ましく思った。

 

「ぼくはそんな大層な想いはありません。ぼくが動くのはいつだってぼくのため、姉さんのためだ。いくらアンソニーでも、姉さんと敵対するようなら、容赦なく叩き潰しますよ」

「面白い。久し振りにお前と試合うのも悪くないか」

「いいですよ。ぼくの全力全開。アンソニーに見せてやる」

 

 

~~~~~

 

 

《いやぁ、えらくギリギリで勝ちでしたね》

「……本当にギリギリだった。あと少しで――いや、実質ぼくは負けてたよ」

 

 ぼくはふらふらになりながら寮を歩いている。

 自惚れていた気は無いけれど、まだまだぼくは未熟であり、今回勝てたのは偶然に近い。

 もっと精進しないとな、と呟いきながら、自分の部屋のベッドに倒れ込んだ。

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