読まなくても問題無いです
翌朝。目が覚めると、目の前に姉さんの寝顔が、腹の上にはヴィヴィオの身体があり、ぼくは悲鳴を堪えてとっさに転移魔法を使って部屋の外へ出た。
いったいなにがあったのか。ぼくは混乱する頭を整理しようとして――
「姉御と高町一尉(+ヴィヴィオ)の添い寝写真ゲット」
「よっしゃ。最近の姉御は隙だらけだからベストショットがぽんぽんと――」
――ライアとレイドの二人と目が合った。
「「退散!」」
「ちょっ、お前ら!」
ぼくがなにか行動を起こす前に二人は窓の外へ飛び降り、走り去っていった。
その行動の早さに唖然としながら、ぼくはとりあえず自分の部屋に戻る。
ぼくの寝床である二段ベッドの下側には、変わらずに姉さんとヴィヴィオが眠っている。
ぼくは小さく寝息を立てている姉さんの身体をゆする。
「姉さん起きろー」
反応がない。疲れてるんだろうか。そういえば普段と違って服がパジャマじゃな――
(……裸Yシャツ? いや、下着は履いてるみたいだけど)
なんでだ。ぼくは溜め息を吐くと、念のため自分の格好を確認する。
普段から部屋着に使っている、薄手のシャツと半ズボン。おかしなところはない。
ぼくの貞操は守られたか、と安堵の溜め息を吐き――何の気なしに姉さんの胸を触ってみた。
「んっ――」
正直、心臓が止まるかと思った。下心なんてこれっぽっちも無いとはいえ、今自分が行った行動はよろしくない。ぼくは頭を抱えて反省すると、普通に起こすことにした。
~~~~~
「で、なんであんたはこんなところに」
「たまには一騎と寝ようかな、って。ヴィヴィオも一緒に」
「うん!」
「じゃあその格好はなにさ」
「はやてちゃんが、『一騎はこういうのに目がないんよ』って――」
ぼくはモニターを出し、はやてさんの番号を打ち込んで呼び出しボタンを押す。
『はい、もしも――』
「はやてさん、待ってろ。今からあんたに男の怖さを教えてやるよ」
『シグナム助けてー! 一騎に襲われるー!』
『わかりました。今すぐに』
「くそ、ふざけやがって!」
これ以上いらんことをほざかれる前にぼくはバリアジャケットを纏って、玄月を片手に部屋を飛び出すと同時に抜き放ち――背後から迫ったレヴァンティンを受け止めた。
~~~~~
「おいおい、なんの騒ぎだ?」
廊下から聞こえてくる剣戟に、ハーヴェイが寝癖の立った頭のまま部屋を出ていった。
顔をタオルで拭きながら、アレクセイが洗面所から戻ってくる。
「アンソニー。どうしたんだ、この騒音」
「知らん」
「見てみろよ。カズキとシグナム二尉がチャンバラしてんぜ」
ハーヴェイが扉から顔を出しながら言った。
指さす先を見ると、確かに、一騎が黒い刀を片手に、シグナム二尉と鍔迫り合いをしている。
「なんだ、あれは」
「あれじゃね。ラジオ体操とかいう文化だよ」
「剣戟をラジオと言い張るか、お前は」
アレクセイがバリアジャケットを纏い、大盾を右手に装着する。
どうした、と聞くと、アレクセイはパイルの作動を確かめながら、
「止める」
「うへぇ、あれを?」
「ああ。寮内で暴れられては、な」
あの二人ならしっかりと配慮はしているだろうが、それとは別の問題だ。
「巻き込まれないようにしろよ」
「どうやって。これからあの間に入るというのに」
アレクセイは笑うと、一気に駆け出す。
お互いが剣を振りかぶった隙に、アレクセイはその間に滑り込み、シグナム二尉の剣を盾で受け、少し位置をずらすと一騎に向かってパイルを打ち出した。
一騎は流石の反応速度でシールドを張ってパイルを受け止め――先端から生じた爆発を零距離で受けた。
「ぐあぁっ!!」
「姉御吹っ飛んだー!」
「ぐへぁ」
「うおっ、リブレンド!?」
阿呆の一人が一騎に巻き込まれ、背中から壁に叩き付けられた。
そんなことよりも、私はアレクセイのパイルに気を取られていた。
なんだ、あの機構は。以前任務に行ったときは、あんなものは無かった筈だが。
「ナグリー」
「はい、アレクセイ先輩。どしたんすか」
「この機構、使いやすい。感謝する」
「いやぁ、ヒートパイルの実験に丁度よかったんで。カートリッジシステムの応用で作った炸薬を先端に装着し、パイルを打ち込んだ衝撃で起爆させる。実際のH.E.A.Tとは構造が違いますし、杭でぶち抜くっていうロマンも減りましたが、威力は上がりましたね」
「重量がほとんど変わらずに威力が上がったのは大きい。俺は性質上、攻撃手段がパイルしかないからな。魔力弾すら撃てん」
煙をあげているパイルを再装填しつつ言うアレクセイに、ハーヴェイが寝癖を弄りながら近寄った。
「そのかわり防御力が桁外れ、ってか。そろそろ防御だけでSクラスは行くんじゃねぇの。羨ましい」
「お前は紙装甲だしな」
「
「元からの適性だろうが」
「なんで言うかね、それを」
私が呟いた言葉に、ハーヴェイは文句を言った。
「誰か姉御の心配もしてやりゃいいのに」
「ほっとけ。高町一尉が来りゃ起きるさ」
「姉御ー。おーい?」
「うん、気絶してるな――」
「「……そんじゃ、さっそく」」
「あいつらは?」
「ほっとけ」
~~~~~
「月刊『楽しい魔改造』11月号。本日のメニューはこちら。アームキャノン!」
アンソニー一尉のものである。もちろん、本人の許可は得てあるので心配はいらんぞ、読者諸兄。
この前無断で持ち出したら射撃訓練の的にされたので、あれ以来、どの人相手でもデバイスは許可を得てから持ち出すことにしている。
「個人的に、アームキャノンというのは最も完成された武器だと思っています。某バウンティハンターやイレギュラーハンターも愛用してますね。では、何故アームキャノンが良いと思ったか。その理由を解説していきましょう」
モニターを出し、画像を出していく。
「まず、腕自体に装着すると言うことで、銃などと違い、不用意な姿勢で撃っても手首を痛めません。肘を痛めることはあるかもしれませんが、衝撃吸収による負荷は微々たるものです。
次に、取り回しがききやすい。杖の様に構えて相手に狙いを定めるタイプは場所も取りますし、狭い屋内では引っ掛かる事が稀にありますね。しかし、アームキャノンは腕1つ分の間合いさえあれば構えられるので、狭い屋内でも自由な取り回しが可能。汎用性も高く、装甲を固めれば盾の代わりとして敵の武器も受けられるし、
そこまで説明すると、アンソニー一尉のアームキャノンを掲げる。
「おまけに格好いい!! もう言うことなしですね、これは」
ではさっそく、とデバイス台にアームキャノンを置く。
「しかしオレ個人としては、『キャノン砲口から円錐状の魔力刃』というのは納得いかない仕様なんですよ。そりゃ大体の状況では使いやすいでしょうけど、チャンバラには向いてないし、ジャマダハル(もしくはパタ)みたいな使い方には限界があります。そもそも力比べをしたら間違いなく押し負けますね。先端だもの。力入らないもの」
――そこでオレは考えた!
「腕部分に銃剣型魔力刃を展開すればいい!」
______
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アームキャノン ←砲口
______/
↑横の部分。
「こうすれば腕を薙ぐように、イメージとしては手刀を振るうように斬れます。鍔迫り合いみたいな形になっても、腕を押し付ける形になるので力の伝達も十分。刀身の長さも伸ばせるようにすれば、立派なレーザーブレードのできあがり」
しかし。
「それだけじゃ面白くありませんよねぇ」
アームキャノンの欠点として、砲口が1つしかなく、火力として劣ることがままある。オレはそう思っている。
「なら砲口を増やせばいいんじゃね?」
_________
\
アームキャノン ←砲口
_________/
↑この辺に。
「アームキャノンを取り囲むようにして銃口をつけます。オートキャノンとしてね。そうすりゃ火力問題は解決です」
「あいつ、マジで言ってるのかよ」
「ほっとけ。物を作るときのあいつはいつもあんなんだ」
外野うるせぇ。
「ガトリングと違い、オートキャノンは全ての砲口から同時に銃弾を撃ち出します。オレは昔、ガトリングガンを初めて見たときは『この全部の銃口から弾が飛ぶんだ』と勘違いしましたが――どうやらこのオートキャノンは、その『勘違い』を実現した頭のおかしい重火器です。まったく」
「なんか怨みがこもってるな」
「そりゃガチタン連合に集中砲火されりゃ嫌にもなるだろ。あいつの通常出撃での断末魔知ってる?」
「なんだ?」
「『神よどうして……正義は重逆なのに』」
「ああ……」
ガチタン四機の対処法を誰か教えてくれ。弾切れになって蹴り殺すしかないんだよ。連中、いかれてやがる。
まあ、最近は見掛けなくなったけど。
「話がそれた。この多数の砲口は、弾幕を張るのはもちろん、砲撃を束ねて撃ち出すこともできます。高火力砲撃と高密度弾幕を自由に切り替えて戦うことができるわけです」
射撃型は基本的に直射弾と砲撃を使う。
姉御や高町一尉は誘導弾も使うけれど、誘導は経験もいるし、マルチタスクに慣れていなければ操作に気をとられることも多い。
使いこなせば強いが、その『こなす』までが大変な部類だ。
「これで火力の問題は解決。カートリッジユニットを増設し、魔力問題も(無理矢理)解決。その完成品がこちら」
ごてっ、という音と共に、アームキャノンを台に置いた。
「重量1.7倍。魔力消費は2.3倍だけどカートリッジ7:に本人3の割合。構築術式は公式ホームページ『ナグリー工房』にて無料配信中」
さてと、とオレは締めに入る。
「これほど充実した内容の月刊『楽しい魔改造』11月号。お値段980c。お求めはお近くの書店へ!」
因みに完成品を見せたらアンソニー班長は困惑していた。まあ、使ってみたら考えも変わるだろう。
と、思っていたが、オートキャノンはすぐに外させられた。魔力刃は気に入ったようだけど、オートキャノンは気に入らなかったようだ。
~~~~~
事務仕事をしていたら、突然画面に姉御のあられもない姿をおさめた写真が映り、盛大に咳き込んだ。
「な、な、なんだぁ!?」
「どうした、ウィルス――おわ、これ姉御か。なんとも扇情的な……ゴクリ」
「姉御か、これ。なんでこんなギリギリまでシャツがはだけて……いやいや、姉御は男なのに――これはなんとも、そそられる」
鍛えているとはいえ、姉御は小柄で、身体も細い。髪が短くなった(+普通に成長した)おかげで女と間違えられる事は無くなったけど、顔付きは昔と変わらず中性的な整った顔だ。
そんな姉御が。制服・Yシャツのボタンを全部外して。アンダーシャツも無く。鎖骨から腹部にかけてのスレンダーな身体が一番映えるような撮り方をされている。
思わず生唾を飲んでしまう。
そして、ヴィンズと頷き合った。
「保存」
「拡散」
「「任務了解」」
すぐさま作業に取り掛かる。
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突然送られてきたメールを開いて高町の写真が出てきたことに対し、思わず吹き出してしまった俺を誰が責められるだろうか。