魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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6話 訓練校3

「お、お前……全力だったろ」

「ばれました?」

「当たり前だ。あの術、見たことあるぞ。テスタロッサ・ハラオウン執務官が幼少期に使っていた物だ」

「調べてるんですか?」

「今や『エース・オブ・エース』と並ぶ逸材だ。気にならない奴はいないだろう」

「たぶん、執務官なら削りきれたんでしょうけど。ぼくじゃまだ、足りないですね」

「それでも、二枚砕かれたぞ。俺も防御には自信があったんだがな」

 

 ぼくと教官は同時に溜め息を吐いた。

 結局、ぼくの魔力切れ(エンプティ)で負けてしまった。

 

「だが、あれだな。お前は、まだ強くなれるんじゃないか?」

「なれますかね」

「ああ。末恐ろしいが、俺なんかよりも強くなるだろう。エース・オブ・エースにも、追い付けるんじゃないか?」

「教官は、姉さ――高町教導官と?」

「ああ。局の戦技披露会でな。ラストの砲撃を相殺して、すんでの所で勝った。おそらく、人生で一番の血戦だったぞ」

 

 つまり、この教官は姉さんに勝ったのだ。

 その事実に驚くと同時に、この教官に勝つことができれば、姉さんにも追い付ける、ということか。

 もちろん、その日のコンディションや、ほんの僅かなミスなどでその結果になった、ということももちろんあるだろうが、あながち間違いじゃ無いはずだ。

 

「それじゃ、今日はこれで終わりだ。全員、ちゃんとダウンしとけよ!」

 

 ちなみにぼくが魔力切れで気絶している間にチーム戦は終わったらしい。

 空戦魔導師や騎士による集団戦を見逃したことを、ぼくはとても残念に思った。

 

 

~~~~~

 

 

「お前、本当に13か? 実は高町教導官本人じゃないだろうな」

「姉さんはもっと強いよ。それこそ、ぼくなんか比べ物にならないほどに」

 

 斎藤にそう返しながら、ぼくはポニーテールを縛っている紐を解く。

 纏まりがばらけ、背中に長い髪が流れ落ちる。

 それを見て、斎藤がほう、と声を出す。

 

「お前が髪を伸ばしてんのは、姉の影響かい?」

「姉さんとフェイトさんの影響だ」

 

 最初は子供心と、理想として目指していた(・・・・・・)ことからの興味から始まったが、今ではこれが当たり前になっている。

 

「ま、いいんじゃねえの。似合ってるぜ」

「ありがとよ。シャワー、先にいいかい?」

「言ったろ、レディファーストだ」

「紳士なことだ」

 

 斎藤のからかいに、ぼくは皮肉を返した。

 

 

~~~~~

 

 

「今日は合同訓練だな」

「へえ、そうなんだ」

 

 そう返すと、斎藤は呆れたような顔をして、

 

「朝礼で言ってたろが。居眠りこいてたのか?」

「そんなことはない。イメトレをしてたんだよ」

「マルチタスクが働いてないぜ、魔導師くん」

「マルチタスクを全て利用して、数種類のイメトレを同時にしてたんだよ」

 

 その中のどれかで話を聞いておけよ、と斎藤が呟く。

 

「じゃあ、ぼくらが組むわけだな」

「そういうことだ。頼むぜ、相方」

「相方、ね。よろしく頼むよ」

 

 

~~~~~

 

 

「というわけで、コンビと合流してください。今から合同訓練です」

 

 いつも通りに空戦機動と射砲撃の訓練を済ませると、陸を指導している方の教官が言う。

 

「よう、高町」

「ああ、斎藤」

 

 ぼくは声をかけてきた斎藤に振り返る。

 

「相変わらずの腕前だな」

「お前、ちゃんと訓練受けてるか? ぼくの方ばっかり見てんじゃないぞ」

「俺をなめてもらっちゃ困る。これでも、陸の方じゃ名は知れてんだぜ」

 

 斎藤がしゃくった方を見ると、回りの注目を浴びていることがわかる。

 

『おいおい、斎藤ってあんなひ弱そうなのとコンビだったのか?』

『斎藤? どんなやつなんだ?』

『ああ、恐ろしい高出力の身体強化魔法と、炎の変換資質を用いた拳法を使うらしい。それは、どの型にも当てはまらない、新しい拳法だと』

『それ、我流だろ』

『まあそうなんだがね』

『そう言った方がおもしろいだろ』

『こっちも聞きたいんだが、あっちのひ弱に見えるがなかなか整った顔立ちのアレは?』

『みんな大好き「エース・オブ・エース」の妹だ。姉に劣らない射砲撃の腕前だとか』

『あれ、弟って聞いたが?』

『え、男なん?』

『ああ、オレも弟と聞いている』

『あたりまえだろう。あんなにかわいい子が女の子な訳がない。女の子であることなど許されんのだ』

『マリク、てめえ変態か』

『なにをいまさら』

『……そんなに女顔か? アレ』

『まあ、そう見ようと思えば見えないこともないな』

 

 

 確かに、ぼくも斎藤も有名らしい。

 どうやらあのグループは阿呆の集まりのようだ。少し知った顔も混じっている。今後、関わることも考えておけば、楽しくなるだろう。

 

「ほらな、俺もお前も人気者さ」

「確かにな」

 

 

~~~~~

 

 

「障害物を回避しつつ、射撃スフィアをすべて破壊、フラッグの位置まで到達する。いいな?」

大丈夫だ(オーライ)

 

 確認を済ませたぼくが頷くと、陸教官がモニターを操作する。

 すると、地上には中型の射撃スフィアと、飛び越えられる程度の障害物が出現する。

 上空には射撃スフィアのみだが、数が尋常じゃない。

 

「制限時間は……そうだな、お前らなら一分あればいいか」

 

 空教官がタイムをセットする。

 

「GO」

 

 その言葉と同時に、斎藤が駆け出す。

 その反射神経と加速の早さに舌を巻きながら、ぼくは飛行魔法を発動して飛び、スフィアを破壊していく。

 

「高町! あとどれくらいだ!?」

「9秒で終わる!」

「了解!」

 

 斎藤は既にコースの六割をクリアしている。

 障害物を曲芸紛いの動きで飛び越え、その勢いを殺さずにスフィアに蹴りを叩き込む。

 そのまま回転し、裏拳と正拳でスフィアを次々と破壊し、コースを疾走する。

 やはり、腕はかなりのものだ。

 ぼくがスフィアを殲滅し、斎藤の援護をしつつ、同時にフラッグ地点に到達したのは、それからすぐだった。

 

「ターゲットオールクリア」

「経過タイム48秒。かなりのもんだな」

 

二人の教官が言うと、それぞれがぼくらに注意をする。

 

「高町。お前は少し誘導弾と砲撃に傾倒しがちだ。せっかく使えるんだから、直射弾を利用すりゃ、もう数秒は早く破壊できるぞ」

「わかりました」

「斎藤は全体的に良いのですが、障害物を越える動きを考えて。遊びでは無いのですから、必要最小限の動きで越えるようにしてください」

「努力しますよ」

 

 確かに、跳び越える時に一々回転などしていると、狙い撃ちにされるだろう。

 というか、ぼくならする。

 

「越えやすいんだよな、あれ」

「サーカスにでも入りたいのかい」

「俺は局員になりにここへ来たんだ」

「ここにいる全員そうだろうさ。遊びで来ている奴は一人もいないぞ」

 

 ぼくは訓練を続けているみんなを見ながら、

 

「全員、本気でやってるからな」

 

 局員、か。そう斎藤が呟き、ぼくはどうした、と聞いてみる。

 

「なあ、管理局ってのは、どうして出来たんだと思う?」

 

 斎藤がそう聞いてきたので、ぼくは肩を竦め、

 

「多数ある次元世界を、しっかりと管理、統治するため。放っておいたら、次元犯罪者がわんさか出てくるからな。局を作ることで、そういう連中が行動を起こそうと思わないように、という抑止力になる」

「ま、そう言われてるな。俺もそう聞いた」

 

 斎藤の呟きに、ぼくはハッ、と笑う。

 

「そういう建前だよ。実際は偉いさんが独裁政治を目指してるだけだ」

「おっと、きついこと言うね」

「まあな。別にぼくは、『犯罪の無い世界』だの『次元世界の平和の為に』なんていう欺瞞の為に局員になりたいわけじゃない」

「そりゃ、理由は人それぞれだな」

 

 そこで斎藤が、少し躊躇うようにして聞いてくる。

 

「高町は、どうなんだ?」

「言ったろ、ぼくは管理局の理念に従う気はない」

「いやそうじゃなくてな。従う気が無いなら、どうして局員になろうと思ったんだ、って聞きたいんだ」

 

 ぼくは質問の意味を理解した。

 

「姉さんのためだ」

「へえ、高町教導官のため?」

「ぼくは、姉さんの為に生きてるようなもんだ。生まれた時からずっと。姉さんが居なければ、ぼくが生きている意味が無くなるほどに」

「なんだ、やけに妄信的だな」

「赤ん坊の頃から今まで、ずっと姉さんに引っ付いてたんだ。シスコン、ってレベルじゃないかもな」

「まあ、あんな完璧な姉じゃ、それも仕方ないのかね」

 

 その言葉を聞いて、ぼくは顔をしかめてしまった。

 

「おや、なんか気に障ることでも言ったかい?」

「いや、なんでもないよ。そうだ、姉さんは完璧なんだよ」

 

 ぼくは笑いを浮かべ、そう絞り出すように言った。




阿呆の集まりはこれから出番が増えていきます。
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