魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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71話 Original Episode 21

 幼い頃のティルクは、物語の騎士に憧れていた。

 言ってしまえば平凡な子供だった男が、強行偵察課に入り、後ろ暗い任務をこなしていたという状況は、後悔や罪悪を溜め込んでいてもおかしくはなかっただろう。

 抑圧された感情は、無意識のうちにティルクを自己嫌悪に陥れていた。一人歩きした噂に人殺しと罵られた彼は、それでも心のどこかで『騎士』を目指していたのだろう。

 だからこそ、殺し屋と騎士の狭間でティルクは揺れていた。仲間のうちでは彼は騎士だったが、敵や無関係な人間にとっては、ティルクはただの殺し屋だった。

 

「それがあいつを苦しめていた。あいつの中では、ぼくらとは比べ物にならない罪悪があったんだろう」

「……あいつ、そんなの抱えてたのかよ。平気な顔してやがったくせにな」

 

 潤はうんざりしたように手を振った。

 更正施設に来たぼくは、まず潤に事を喋った。今は共に戦うことはできなくとも、同じチームの隊長の変化は伝えるべきであると考えたからだ。

 

「お前はそんなの無さそうだな」

「お互い様だろ、相棒。俺にとってはレイナ、お前にとっちゃ、自分の姉以外はどうでもいいんだろ」

「まあ姉さんを優先するのは否定しないし、見ず知らずの人間に情をかける気はないよ」

 

 その言い草に潤は目を細めて恨めしそうにぼくを見た。

 

「お前は見知った俺に対しても、手加減無しにボコボコにしやがったじゃねえか」

「なんで犯罪者のお前相手に手加減しなくちゃなんないんだ」

 

 ああそうだったな、と息を吐き、

 

「んで、用はそれだけか。俺ァこれから更正プログラム(おべんきょう)なんだが」

「ああ、お前に用事はもう無いよ」

「『俺に』だぁ? 俺以外には用事があんのか」

 

 ぼくは少々口ごもる。ただの気まぐれなのだが、なんとなく、それを言うのは憚られた。

 

「まあ、な」

 

 そんなぼくの不自然さを相棒は見逃さない。床に胡座をかいていた姿勢から腕の勢いで前に転がるようにして立ち上がり、格子の隙間から何を考えているかわからない目でぼくを見てくる。

 

「誰に会いに行くんだ?」

「JS事件の知り合いだ」

海上隔離施設(ここ)に?」

「海上隔離施設に、だ」

「ってことは敵さんじゃねえの?」

「まあ、そうだったけど」

「…………」

 

 ははぁん、と潤は声に出し、ニヤリと笑う。

 ぼくは嫌な予感を感じ、帰るために踵を返す。潤の手がのびてきて、ぼくの腕をつかむ。

 

「まあ待て相棒。ちょいと踏み込んだ話をだな」

「黙れ。訳のわからん事をいうな」

「そうかそうか。ようやくお前のシスコンも治って違う女に興味が湧いてきたか。善きかなよきかナァアっ!?」

 

 潤の延びている腕の手首をつかんで格子に引っ掛け、肘の反対側に力を込めると、腕が折れかねない痛みに潤が奇妙な悲鳴をあげた。

 

「下世話な野郎だな。くだらんこと考えるくらいなら一日でも早くシャバに出てこいよ」

「うっわ、古い言い回しだな」

 

 尚も憎まれ口を叩く潤を睨んで黙らせると、じゃあなと手を振ってぼくは潤の居る施設を出た。

 

 

~~~~~

 

 

 まあ、潤が心配するのは当然の事だ。ぼくが会うのは敵だった人物であり、事件中一時的に敵側に着いていたぼくが会いに行く、と言ったのだ。

 もしかしたら取引があったり、ぼくが洗脳されていたり、もしくは脅されている可能性だってある。それを考え、潤がぼくを引き止めようとするのは当然の選択である。

 

(……顔を見に行くだけだ)

 

 ぼくは右手に持っているケーキの箱を見つめ、首許を掻く。

 店員の人に適当に見繕って貰ったケーキではあるが、これは手土産であるし、これから会いに行くのは知り合いの女である。

 ケーキを買っていくように言ったのは姉さんだし、ぼくは言われるままにこうして買っただけなのだが、なんらかの詮索を受けてもおかしくはなかった。

 

「海上隔離施設に手土産の持ち込みがOKなんて、誰が許可したんだよ」

 

 ぼくは独り言を呟きつつ、何故だか気が重くなってくるのを感じ、思わず歩く足を止めて壁にしなだれかかる。

 

「……単に知り合いだし、多少なりとも世話になった。礼も含めて顔を見に行くのはおかしい事じゃない」

 

 そもそもぼくが行こうと考えたのは事件の事後処理をしている時にナンバーズの記録が出てきた時に思い出して彼女が更正施設に入ったというから興味が湧いたからであって多少喋れば息抜きにもなるだろうしならずとも姉さんに買えと言われたケーキを渡すことで言い訳はできるうえ良くも悪くも口実になるし場合によっては出すもの出してすぐに帰ることもできるだからぼくがここに来ることは何もおかしなことではないし誰に咎められるわけでもないしかもここで帰ったらわざわざ取った海上飛行許可が無駄になるのだから胸を張っていくべきだそうあるべきなのだ。

 

「はあ……」

 

 ぼくは溜め息を吐き、壁を押しやるようにして直立すると、微妙な緊張を覚えながら歩き出したのだった。

 

 

~~~~~

 

 

 ナンバーズの更正組は潤と違って、同じ区画に全員が収容されている。部屋は更正プログラムを受ける際に使用する教室や、個人の部屋、広くはないがロビーと、自然を模した大部屋がある。

 潤の入っている部屋は見方によっては独房といっても良いほど何も無い部屋であり、部屋の区切りも個別にわかれている。会いにいくにも、なんら気にすることはなかった。

 つまり何が言いたいかというと、ぼくは自分の浅はかさに後悔していた。

 

「…………」

 

 ぼくは表情を変えずに、目だけで辺りを見回す。

 大部屋に居る全員の視線は、ぶれることなくぼくを向いている。7対の瞳は全てぼくに向けられ、唐突な訪問者を不思議そうに見ている。

 中には怪訝そうな表情をしている者もいる。まあ、事件中にぼくと顔を合わせたものは少ない。戦闘したことも無い。

 しかし、ぼくが一時的にスカリエッティに与していたことは全員が知っているだろうし、むしろ知っているからこそ、中途半端な立場のぼくがここに現れたことが疑問なのだろう。時間ができたからと一人で来るのではなく、どうせならエリオ達とかが行くときに一緒に連れていって貰えばよかった。

 そこまで考えて、ぼくは現状を打破する方法を考えられていないことに気付く。

 いっそここでデバイスを展開すれば、魔力反応を検知して警報が鳴り、警備員が来てこの場からぼくを摘まみ出してくれるだろう。自棄になってそんなことを考えていると、横から声を掛けられた。

 

「君、どうして……」

 

 ある意味では目的だった彼女が動いたことで、ぼくは行動に移す切っ掛けを得られた。

 未だにまとわりつく視線を振り払うように、声を掛けてくれた彼女――ディエチに向き直り、曖昧に笑う。

 そして、なんとなく解けた緊張のままに口を開く。

 

「暇ができたから、ディエチに会いに来たんだよ」

 

 そんなぼくの言葉を聞いて、ディエチは呆けたようにぼくの言葉を反芻する。

 

「わ、わたしに……?」

「そうだよ。元気そうでよかった」

 

 これ差し入れ、とケーキを差し出そうとすると――ディエチが顔を赤くしていた。

 何事かと考えると、ぼくは自分の喋った言葉を思い返し、気付く。

 「会いに来た」なんて言葉、捉え方によっては誤解を招く発言だ。本心とはいえ、言い方ってものがある。

 そんな口説き文句みたいな、気取った言葉をストレートにぶつけられたディエチは顔を赤くしてぼくから目をそらし、他の皆は驚愕と興味が半々の表情――中にはとてもいい笑顔――でぼくらを見ている。

 

「ええ、っと! ケーキ買ってきたんだ! 全員分あるから、好きなのとってくれよ」

 

 ぼくはいっそ大袈裟すぎるほどに歩きだし、手元の餌で釣ろうとするが――

 

「……えっ、と」

 

 寧ろ罠に踏み込んだような状況になった。

 

 

~~~~~

 

 

「変わった形の剣だな」

 

 新しい剣ができた、と技術班に呼ばれたところ、台の上に置かれた剣は見たことの無い形をしていた。

 柄は、柄頭から伸びた金属が手を覆うような、丸みを帯びた作りをしている。その独特の柄から伸びる刀身は鞘に収まっているが、鞘の上からでもその形が通常の剣とは違うことがわかる。

 その刀身は、半ばから先は刃の方向へ僅かに湾曲している。

 

「これはファルカタ、っていう剣だ。直剣とは扱いが違うかもしれないが、曲刀は直剣よりも断ち斬る力に優れている。ティルクがあの時振ってた剣術を見て、この形こそがもっとも活かせると考えたんだが、どうだろう」

 

 そう説明を受けながら、剣を鞘から抜く。

 軽く手の中で回し、二、三度振るう。

 

「……確かに、少し癖があるな。だが、この程度ならすぐに慣れるし、振り心地も悪くない。良い剣だ」

「ありがとよぅ」

 

 俺の言葉に、なんとも嬉しそうにベレンズは笑う。ファルカタを鞘に納めると、腕輪の形をした待機状態となった。

 

「いつもすまないな」

「なに、これが仕事だからな。資金は潤沢に使えるし、オレらは楽しんで作ってるさ。申し訳なく思うくらいなら、全力で振るってやってくれ」

 

 口振りは軽いが、真剣な光を目に宿し、ニヤリと笑う。俺は頷いて腕輪を掲げるように手をあげ、同じように笑い返すとデバイスルームを出た。

 

 

~~~~~

 

 

「はあ……」

 

 ある意味では状況を打破できた。しかし、それはある意味では悪化しているとも言える。

 ケーキを撒き餌として注意を引き付けた形ではある。適当に話してある程度打ち解けることにも成功した。しかし連中はおかしな気の使い方をしたようで、ぼくとディエチを木陰に座らせ、離れた場所で固まって、ケーキを食べながら興味深そうにこちらをニヤニヤと見ている。

 

(帰りたい……)

 

 ぼくはこの日、人生で初めての『アウェイ』というものを体感していた。小学校で姉さん達と居た時や、任務で敵に囲まれた時ですら、こんな気持ちになることはなかったのに。

 連中の企みによってぼくの隣に座らされたディエチも、先程に比べると落ち着いているようではある。自分の分のショートケーキを口に運びつつ、しかしどこか気まずそうに視線をさ迷わせている。

 ぼくはなんとか話題を捻りだし、奇妙な緊張によって掠れかけた声で口にする。

 

「どうだ、ここは」

「ん……まあ、施設の人は良くしてくれてるよ」

「更正プログラムとか、問題ないか?」

「うん……大丈夫」

 

 そこでディエチがぼくに顔を向ける。

 

「そっちはどう?」

「ん……そうだな。事件の事後処理は終わった。こうして時間を取れるくらいには、暇もできてきた」

「……なんであんなこと言ったの?」

 

 少し怒ったような、拗ねたような表情で、ディエチはそう聞いてきた。

 からかったの、と続けて聞かれたが、それについてはすぐに否定した。

 

「からかってなんか無い。ここには本当に、顔を見に来たというか、気になったというか……とにかく、会いに来たのは本当だよ」

「……わたしに?」

 

 ぼくは曖昧に、しかし誤魔化し無く頷く。他に知り合いは居ないのだから。

 

「ただ、言い方とかはあったよな。悪かったよ、ディエチ」

「ううん、大丈夫。わたしも話したいことあったから」

「話?」

「……あの子、助けてあげたんだよね」

 

 あの子、とはヴィヴィオの事だろう。

 

「ああ。今はもう六課の隊舎で、元気に暮らしてるよ。ちょっと前に、ヴィヴィオと姉さんが一緒に魔法学院の見学にいったんだ。春から通うことになる」

「そっか、よかった」

 

 そう呟いたディエチの表情はとても優しく、ホッとしたような、嬉しそうなものだった。

 そんな表情を真っ向から向けられたぼくはどこか落ち着かなくなり、話題を変える。

 

「そういえば、更正施設に暫く居た後は、保護責任者の元で過ごすらしいけど……引き受けてくれる人は見つかったのか?」

「ううん……まだ」

 

 まあ、事件からまだ二ヶ月しか経っていない。ルーテシアは母親がそうらしいが、やはりまだ決まってはいないようだ。

 

「まあ、わたしはこの姉妹の中でも二番目に重罪だし、出るのはまだまだ先になりそうだけどね」

「なに? テロリズム幇助と、せいぜいが設備破壊くらいじゃないのか」

「地上本部でわたしが撃った砲撃、あったじゃんか。あれ、麻痺性のガス籠めてたんだよね。だから、危険物散布もプラスだよ」

「それはぼくが撃ち落としたろ? あの時のぼくの砲撃は密度を薄めて幅を広げてるから、ガス程度なら消し飛ばしているはずだ」

「そうだね。被害はきみのおかげで出てない。でも、調査でガスの反応が見つかったし、撃ったわたし自身も記録に映ってる。未遂、ってことにされたよ」

「……そうか」

「そういう意味では、君に感謝した方がいいのかな、わたしは」

「……さあ、どうだろう。もっと早くキミを見付けて仕留めていれば、そんな取って付けたような罪状は無かっただろうけどな」

 

 ぼくの言葉に、ディエチは驚いたようだった。

 

「君が気負うことじゃないでしょ。なんでそんなこと言うのさ」

「まあ、そう言われたらそうだけどさ。なんとなく思っただけだよ」

「もし君の言う通りになったとしても、大して変わらなかったと思うよ。せいぜい一年短くなるかならないかでしょ」

「……まあ、今になってはどうしようもない。せいぜい良い人に引き取ってもらうしかないな」

 

 身元引受人に関しては、未成年のぼくにはどうしようもない。そこまで考えると、空になった皿を置きながら「そういえば」とディエチが切り出し、

 

「最初に一人、請け負ってもいいって人が居たんだけど……施設の人がご遠慮願います、って追い返しちゃった」

「ふうん……そんなことがあるのか。誰なんだ、その人って」

「えっと、確か……フォレスタ、って名前だったかな」

 

 ――偵察課の課長(あのひと)か。

 

「確かに。処理は完璧にできるだろうが、信頼して任せることはできないな、あの人は」

「知ってる人?」

「ぼくらの元上司だよ。役人としての腕は立つんだけど、人間としては信用できない人だ」

「じゃあ、そんな人の元部下である君も、信用できなかったりするのかな」

 

 抱えた膝に頬を乗せるようにして、流し目でそう言った。

 ぼくは口ごもった。

 

「……そう、だな。ぼくは嘘つきだよ。誰も彼もに嘘をついて、実の姉と戦うくらいにはね」

 

 ぼくの自嘲じみた発言に、ディエチはくすりと笑った。

 

「でも、君はどこか真っ直ぐな感じがする。なんて言うか、表面で嘘をついてても、内面は正直っていうか」

「なんでそんなことわかるんだよ」

「だって今の君、目が泳いでるもん」

 

 そう指摘され、ぼくは驚いてディエチを見る。嘘つきを見抜き、嘘つきを隠すための訓練を受けていたぼくが、言ってしまえば素人のディエチに見抜かれるほどの表情の変化を出してしまっていたというのか。

 

「ゆりかごの時の君は、仮面みたいに同じ表情してた。薄ら笑い、って言うのかな。正直、わたし達よりも人間味が無くて怖かったよ、きみ」

「……そりゃ、悪かった」

「でも、今は年相応な感じ。照れたり慌てたりする普通の男の子だね」

 

 先程までの緊張はどこへやら、ニコりと笑ってそう言う。

 ぼくはその言葉にむっとして、

 

「キミなぁ。ぼくより年下だろ」

「そうだろうね。でもわたし妹が多いから」

「あはは……なるほど、お姉ちゃんなわけか」

「そうだよ。今のきみは、わたしの妹達と同じくらいわかりやすいな」

「あいつらと同じくらい、だって?」

 

 飽きもせず離れたところでぼくらを見ている6人を見る。ケーキは既に無くなっているのに、未だにひそひそと楽しげに話している。

 

「ぼくってあんな感じか?」

「あれよりは大人びてるけどね」

 

 ディエチはそう言って笑った。

 

 

~~~~~

 

 

 最初の帰りたかった気持ちはなりを潜め、ぼくはディエチと話を続けた。

 ディエチ本人もゆりかごの時とは違って、表情が豊かになっているように見える。

 そして話せば話すほど、彼女(ディエチ)が本当に普通の少女だというのがよくわかる。

 ぼくは自分でも驚くほど、ディエチと話していた。単なる会話が、なんとなく楽しく感じる。ディエチ本人もけして無口というわけではなく、ぼくの発言に様々な表情や言葉で返してくれる。

 こんなに会話が楽しいと思ったことはなかった。罪悪感から避けていた姉さん達との会話や、必要以上に話すことはなかったクォーツ達やフォワード達とも違う、単純な世間話。それがぼくには新鮮で、自然と笑顔になる。

 と、そこで入口の扉が開き、職員の女性が入ってくる。部屋の中を見渡し、ぼくの方へ近付いてくる。

 

「申し訳ありません、高町空曹。面会時間は終わりです」

「ああ、はい。わかりました」

 

 ぼくは立ち上がると、軽く服装を整え、ディエチに向き直る。

 

「それじゃ、ぼくはこれで」

「うん……あ、ケーキおいしかったよ。ありがと」

「そうか、よかった。また買ってくるよ」

 

 ぼくは自然にそう返し、職員の後に続いて歩き出す。

 

「……また、ね」

 

 そんな呟きが背中から聞こえ、ぼくは振り向くと、ディエチが小さく手を振っていた。

 ぼくも手をあげて応えると、部屋を出て扉を閉める。

 心なしか気楽になった気分のまま歩いていると、職員の女性が歩きながら口を開いた。

 

「高町空曹、今後は面会時間を守っていただきます」

「はい? あ、まさか」

 

 ぼくは腕に表示した小型のモニターで時間を確認する。

 ぼくがこの部屋に来てから、20分は経っている。

 

「……申し訳ありません、注意不足でした」

「いえ、それについては問題ありません。むしろ、お礼を言わせてください」

 

 なんのことですか、とぼくが聞くと、ディエチのことです、と返ってくる。

 

「彼女はナンバーズの中でも罪が重い方です。ここにいる皆は、罪を認め償うために隔離施設(ここ)に来ることを承諾した子達です。しかし……あの中ではチンクが無期限監視と一番罪が重いのですが、チンクが前向きであるのに対し、ディエチは少々抱え込みすぎています」

 

 そこで一呼吸つき、

 

「もちろん、まったく罪悪感を感じないよりはよっぽど良いです。ですが、彼女達のように生い立ちに問題を抱えている場合、ネガティブな精神状態では社会復帰までに掛かる時間が長引いたり、更正プログラム自体の受講に意欲を示しづらくなる事があります」

 

 確かに、とぼくは同意する。今までに様々な犯罪者を見てきたが、あまりの罪悪に、逮捕する前に自害した人間も居たほどだ。

 ディエチはそんなことをするほどではないだろうが、罪を自覚している以上『この先自分が自由になることは無いだろう』といった考え方をしていてもおかしくない。

 

「ですから、彼女は他の娘達と比べて……なんというか、塞ぎ込んでいるような感じだったのです」

 

 施設の出口を開けてくれつつ、女性はぼくに向き直った。

 

「けれど、今日の彼女は楽しそうでした。普段は笑顔を浮かべることはほとんど無いのですが、貴方と話していた時のディエチは終始楽しそうに笑っていました」

「そう、ですか?」

「はい、一目瞭然です。彼女が冗談を言うのなんて、私は初めて見ましたしね。ですから、面会を引き上げさせるのを躊躇ってしまって」

 

 そう言われると、なんともむず痒くなる。そんなぼくの内心を知ってか知らずか、女性は笑顔を浮かべ、

 

「是非またいらして、彼女と話してあげてください。きっと彼女も喜びます」

「――わかりました。必ずまた来ます」

 

 ぼくは頷いてそう答えた。




最近なのはイノセントのディエチにかまけてばかりなので、大人ディエチの口調が曖昧
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