魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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7話 訓練校4

「ここで指揮をしているのは……はやてさんか」

 

 ぼくはサーチャーで確認し、みんなの方を向いて言う。

 

「いいか、ぼくが通信するから、そこで出される彼女の指示に従え。『夜天の主』は広域殲滅だけじゃなく、指揮能力にも長けているからな」

「「「「「了解!」」」」」

 

 全員の返事にぼくは頷き、未だに燃え続けている空港を睨みながら、モニターを出し、敬礼をする。

 

「八神一等陸尉! こちら『陸空総合訓練校』の高町研修生です! 微力ながら救助・消火活動に協力いたします!」

 

 モニターの向こうで、はやてさんはぼくが出てきたことに驚いたようだが、すぐに表情を引き締め、

 

『人手が足りなかったところです! 協力、感謝します!』

「こちらは現在、空戦研修生30名、陸戦研修生20名が動けます! 指示を!」

『飛べる人は空から救助隊の支援を、他は要救助者の搬送をお願いします!』

「了解しました!」

 

 本当は、訓練中の研修生は非常事態に出動することは無いのだが、人手が足りないのだから文句は言われないだろう。

 モニターを閉じ、ぼくは同じクラスの班に向き直り、

 

「ということだ。飛べる奴はぼくに、飛べない奴は斎藤に続いて救助に当たれ! フィールド防御を最優先で維持しろよ」

「わかった。そっちも気を付けろよ。じゃあ、陸は四人の五チームに別れろ! それぞれのチームで援護をするぞ!」

 

 ぼくは斎藤がしっかりと指揮できていることを確認し、飛べる30人を見て、

 

「こっちは四人で7チームを作れ。二人余る計算だが、そこはぼくとティルクがやる!」

「オーライ! 気を付けろよ、姉御!」

「やかましい、さっさとやれ。怪我だけはするなよ」

「見たか、今のツンデレ!」

「いや、あれはクーデレだろう」

「なあクォーツ、どう思う?」

「我輩は、あれは純粋に心配をしているが故の注意が、ついぶっきらぼうになってしまったと考える。つまり、クーデレと判断する」

 

 その言葉を最後に、みんな真剣な表情になり、別れて飛んでいった。

 ぼくは隣の男に向き直り、

 

「行くぞ、ティルク!」

「ああ、高町!」

 

 

~~~~~

 

 

「空港火災、か。酷い状況だ。いったい誰がこんなこと……」

 

 また一人、救助を終えると、ティルクが呟いた。

 

「見た限りじゃ、判断はできないな。消火も救助も、人手不足で間に合ってない」

 

 ぼくたちは、現役の陸士部隊との集団演習に来ていた。空港で火災が発生したと聞き、救助活動に参加するために来たのだ。

 今ここに居合わせているのは、本当に偶然としか言えない。

 

「俺たちが居なければ、もっと救助は遅れているだろうな」

「そもそも、こういうのは空がちゃんとしてなきゃダメなんだよ。首都の航空魔導師部隊はいったいなにをやってるんだ」

 

 緊急出動は、どれだけ遅くても全力で飛行すれば15分以内には着くはずだ。

 すでに火災が発生してから20分は経過している。

 

「とにかく、ぼくらだけでもやらなくちゃならない。もし火災を発生させた元凶を見付けられたら、もっといいんだがな……よし、サーチ完了。このフロアに生命反応は無い」

「了解、他は?」

「クォーツの班が手こずっているな。あそこは中央ホールだ。かなりの広さがあるから、厳しいだろうな」

 

 そこで、はやてさんの声が広域通信に乗せて聞こえてくる。

 

『全員、指定フロアから待避してください! 消化活動を行います!』

 

 ぼくらは頷き、窓から脱出する。

 飛行魔法で空に待避すると、遠くの空で光が瞬き、建物が凍り付き始める。

 確か、『アーテム・デス・アイセス』だったか。

 対象を凍らせる、はやてさんの術だ。

 

「冷たっ」

「雪が降ってきたな」

 

 ぼくは首筋に降ってきた氷に声をあげてしまう。

 制御に失敗したんだろうか。

 ぼくは広域殲滅はあまり使えない(魔力量の関係で厳しいため)ので、よくわからないが。

 

「他の連中は?」

「ああ……救助を終えたらしい。氷結の余波が向こうにも届いたのかもな」

「なら、もう全てのフロアの救助は完了したわけだな」

「ああ、すぐに消火も終わる。もう安心して大丈夫かな」

「一騎!」

 

 思わず名前を呼ばれ、振り返ると、

 

「姉さん!」

「やっぱり! はやてちゃんから聞いたんだよ。一騎が救助に参加してる、って」

「うん。訓練校の演習で陸士部隊に来てたんだ。その最中にこの事故のことを聞いて、研修生ながらでしゃばりに来た、ってわけ」

「そのでしゃばりの御陰で、怪我をした人はいても、亡くなった人はいなかったみたい。お手柄だね」

「うん。けど、みんなもうまく動いてくれたから、っていうのが一番だよ」

「そう――あ、きみもありがとうね。一騎、無茶ばかりしたでしょ」

 

 そして、隣のティルクが黙っていることに気付き、そちらを向くと、固まっていた。

 

「ティルク、どうした?」

「あ、い、いや。かの『エース・オブ・エース』と話すことができるとは思わなかったもので」

「いいよ、そんなにかしこまらなくても。私も、きみと変わらない普通の魔導師だよ」

「高町教導官は、皆の憧れです。当然、自分も魔導師として尊敬しています」

「あはは。ちょっと、照れるかな」

 

 そこで、ぼくの横にモニターが7つ出現する。

 それには、ナグリーにクォーツ、ウィルスなど、別れた7班それぞれの班長が映っていた。

 

『こちらクォーツ。姉御、中央ホールの消火完了だ!』

『ナグリー。西玄関も終わった。ここで閉じ込められてた人は居たが、幸運にも怪我人はいないみたいだ』

『リブレンドだ。こちら土産物コーナー。饅頭やせんべいは燃えちまったな。合流したチームの阿呆(マリク)が饅頭を守ろうとして火傷を負ったが、民間人に怪我はない』

『東エントランスホールのウィルス。ここは跡形もなく崩壊しちまいました。幸い、避難は最優先で済んだから、ここも軽傷者はあれど、死者は0です』

『こちら連絡通路のレイド。狭いから煙が濃くてな。数人、中毒を起こしかけてた。その人たちは、さっき医療隊から大丈夫だ、と連絡が来たから安心していい』

『こちら貨物倉庫担当のヴィンズ。ここが一番被害が大きいように思う。もう少し調査を進めてみる』

『ライアだ。こちら飲食コーナー。お焦げが食欲をそそる真っ黒な肉の丸焼きがいくつも出来てる。まあ、この中に人間はいないようだ。運がよかったな』

 

 ぼくはそれぞれの報告を聞いて安堵の溜め息をつく。

 確かに、民間人に死者は居ないようだ。

 

「じゃあ、みんな医療隊のところで落ち合おう。マリクについては、今医療隊の面倒を増やすことも申し訳ないから、ぼくが治療する。ヴィンズ、なにか見つけた?」

『ああ、1つだけ内側から爆発したような包みらしきものがある。画像を送る』

 

 モニタの端にクリップが表示されるので、それをタップし、開く。

 確かに、原形が残っていないほどに粉微塵になったものが写っている。

 

『まわりに怪しい人影は無し。まあ、当たり前だけどな』

「わかった、ヴィンズ、もういい。医療隊の場所で落ち合おう。画像と一緒に、陸士部隊の人たちに報告しておくよ」

『ああ、姉御。んじゃ、あとでな』

 

 ぼくはモニターを閉じると、姉さんに向き直る。

 やけににこにこしている姉さんに、なにさ、と聞くと、

 

「一騎にもお友達ができたんだな、って思って」

「いや、まあ……とにかく、ぼくらはもう行くよ」

「うん、お疲れさま」

「姉さんも。またね」

 

 ぼくはティルクに頷き掛け、移動を開始した。

 

 

~~~~~

 

 

「お、無事だったみたいだな」

 

 みんなが集まっているところに着地すると、斎藤が声を掛けてくる。

 

「なんとかな。そっちも無事なようでなによりだ」

「俺は問題ない。炎には慣れてるからな。それより大変だったんだぜ。四人家族を助けたんだが、親父がパニクって泣き叫びながら関係無い方に逃げ出すわ、それを見た娘さんが泣くわ、それにつられて赤ん坊も泣くわ。おまけに母親は気絶しちまって」

 

 泣きたいのは俺だ、という言葉に、斎藤と一緒の班だったメンバーも頷いた。

 

「失礼、ちょっといいか?」

 

 その、低い声に振り向くと、白髪の混じった頭の、陸士部隊の制服を着た、落ち着いた印象を受ける男性が立っていた。

 ぼくらは一斉に敬礼をする。

 男性はそれに敬礼を返し、

 

「108部隊のゲンヤ・ナカジマだ。協力、感謝する。お陰で救助活動がはかどった」

「いえ、当然のことです」

 

 斎藤が間髪入れずに答える。

 

「自分達も研修生とはいえ、局員の端くれですから」

「確かにな。だが、腕前は一般の魔導師と比べても遜色無い。将来が楽しみだ」

「ありがとうございます!」

 

 ナカジマ氏はもう一度、

 

「後日、改めて礼に伺う。協力、本当に感謝する」

 

 それだけ言うと、自分の隊があるであろう方向に戻っていった。

 

「ナイスミドル、といったところか」

「その言い回し、なかなかに古いぞ。まあ、同意はするが。そういえばマリク、火傷は大丈夫か?」

「背中が燃えるように痛い」

「見せろ、治療してやる」

「やったぜ! 姉御のデレがようやくぅいだあああああああ!!」

 

 ぼくは火傷の痕を殴り、治療魔法を当てる。

 そんなぼくにナグリーがもたれかかってきて、

 

「姉御、働いたら腹へった! なんか食いに行こーぜぃ」

「アホか。ぼくらは演習の途中だったんだぞ。戻るに決まってるだろうが」

「うわーい、クソッタレが!」

「うわ、こっち来るなゴミクズ!」

「テメエ、張り倒す!」

「斎藤の兄貴ぃ、助けてぇ!」

「お前らうっせえよ。高町、さっさと戻ろうぜ」

「クォーツ、助けて」

「さわるな変態」

「お前に言われたくねーよ!」




弟は『姉御』、斎藤は『兄貴』と呼ばれてます。
見た目とカリスマ的な意味で。
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