魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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82話 半年過ぎて7

 たまーに、だが。

 俺は思うことがある。海上隔離施設(ここ)は、犯罪者を隔離しているにしては随分と来客の自由が許されている、と。

なぜか、と問われるならば。

 

「どうしたの、潤。ケーキは好きだったわよね?」

 

 隔離されているはずの俺に、こうしてギンガがケーキを一口取って差し出(あ ー ん)しているのだから。

 

「……甘いものは好きだけど、甘い展開は苦手なんだよ」

「あら。いつもはぐいぐい来るくせに、攻められるのは弱いのね」

 

 いいこと知っちゃった、とギンガは意地の悪そうな笑みを浮かべた。子供っぽい、と思ったが口には出さない。こいつはそんな感想を伝えると拗ねるからだ。

 

「家族なんだから、少しは弱点も知っておかなきゃね」

 

 にこりと笑って言われた言葉に一瞬考え、俺はああ、と声を漏らす。

 

「……そっか。お前、俺の義妹になるんだよな」

「正確にはもう『なってる』だけどね。あなたはもう『ジュン・ナカジマ』なのよ」

 

 俺に向けていたフォークを自分の口へ運び、もぐもぐと答える。

 ナカジマ、ねぇ。『斉藤』には毛程の未練は無いが、だからといって想い人の姓を名乗るのは、どうも。俺は複雑な現状に顔をしかめた。ちなみに俺とギンガは同い年だが、俺のほうが誕生日が早いので『義兄』と『義妹』という関係になる。

 

(義妹で恋仲か。なんか、阿呆が騒ぎそうな仲になっちまったなぁ)

 

 なんというか、やはり、複雑だ。複雑としか言いようが無い。

 そんな俺に構わず、ギンガはフォークを動かし続ける。唇に付いたクリームを舐め取る()を見て、少々肉欲的な感情に襲われるが、おくびにも出さない。

 表情を操り、表情を読み取る『偵察課』の経験は活きるもんだなと思う。

 が、ギンガはそんな俺の無表情に気付くものがあったらしく、ケーキを頬張っていた幸せから一変し、むっとした表情になる。

 

「潤。あなた、また『何か』考えてるでしょ」

「おいおい……なんだよ、急に」

 

 俺は下心を見破られたかと内心で不安を覚えるが、やはりそれも表情には出さない。

 ギンガは皿とフォークを置き、じっと俺を見つめた。

 

「急に、じゃないわ。あなたって無表情を装う時はいつも何か考えてるのよ。気付いたのは最近だけど――潤は隠し事、下手よね」

 

 先の考えを見通してたかのように「下手」と言われてしまった。偵察課の経験も糞もない。

 

「そりゃ、随分と俺の事を見てくれてるんだな。嬉しい限りだよ、ギンガ?」

 

 俺の溜め息混じりの褒め言葉に、ギンガは満足そうに笑う。僅かに頬が赤くなっているので、照れもあるだろう。少なくとも、機嫌はもう直ったようだ。 

 

「認めたわね。じゃあ観念して――」

 

 どうせこれからは隠し事は無し、とか言ってくるんだろ……と楽観していた俺は、

 

「――今、何を考えてたのか言ってみなさい」

 

 そんな尋問に声すら漏らさずに固まった。

 辛うじて口を動かし、

 

「なん、で……そんなことを聞く?」

「え? なんとなく気になったから。いつも隠し事してるから、何を考えてるのかな、って」

 

 俺は思いがけない危機に焦りを覚える。隠し事を言ってみろ、とこいつは言った。

 しかし、俺が先ほど感じていたものは――

 

(クリーム舐めた舌見て欲情してた、なんて言える訳ねぇだろ……)

 

 変態じゃあるまいし。

 まるでエロ本を隠している思春期の少年のような焦燥を感じながら、俺は振り払うように手を動かす。

 

「別に。隔離施設のつまらなさに辟易してただけだよ」

「あら……私の授業はそんなに退屈だった?」

 

 じろりとギンガが鋭い目で見てきたので、俺は自分の浅慮に溜息を吐いてしまう。こうして話している15分前には、ギンガが講師として俺に『授業』を請け負ってくれていたのだ。

 戦闘機人達の後に時間があったので、という理由だが、施設の職員は快く了承してくれた。「現役の捜査官に話を聞ける機会は多くないですからね」とのことだ。実際は幾らでも聞いたことがあるのだが、俺達の仲を職員に説明する気は無いので黙って頷いておいた。

 

「お前じゃなくてここ(・・)がだよ。さっきの授業はお前を眺めてたから退屈はしてなかった」

「じゃああなたが見惚れてた私が、さっきどんなありがたい話をしてあげたか覚えてる?」

「いいや、さっぱり」

 

 頭を叩かれた。

 

「いってぇ!」

「潤に足りてないのは倫理ね、きっと」

「人の頭叩くやつに倫理を説かれたくは無い!」

「格闘家にその反論は無意味よ」

 

 関係無くねぇか、という反論を飲み込み、溜息にして吐き出す。

 

「あーあ……昔はからかえばあっさり顔を真っ赤にして縮こまってたくせに。もう俺に飽きちまったのか?」

「同じような口説き文句を言われ続ければ、さすがに慣れるわよ」

「ま、顔は赤いまんまだけどな」

「うるさいっ!」

 

 俺がにやにやとからかうと、ギンガは吼えるように詰め寄ってくる。

 第一印象はクールに感じたが、ギンガは案外直情的な女だ。スバルと姉妹というのがよくわかる。もちろん普段は大人びた言動をするし、余裕のある振る舞いだってする。戦いだって、数手先を読んで打ち込んでくるので俺はまだ勝ったことがない。

 でも、やはり年頃の少女だ。俺は笑みがこぼれてくるのを感じる。

 顔が近い、と詰め寄ってきたギンガの額を押し戻しつつ、

 

「ともかく、少しは訓練がしたいんだよ。こんなところに缶詰じゃ鈍って仕方ねぇ」

「イメージトレーニングはしてる? 魔法無し、動き無しでもできることはあるわよ」

身体が(・・・)鈍ってるんだよ、精神じゃなく。筋力も落ちてるし、スバルとさえ打ち合えねぇな、これじゃ」

「いつも吹っ飛ばされてたじゃない」

「そりゃあいつが馬鹿力だからだ」

「いーえ、腰が入ってないからよ」

 

 そう思うのはお前も馬鹿力だからだ、と文句を言うが、ギンガは言い訳としか取ってくれない。

 だが実際のところ、ナックルと魔力の差が顕著だ。俺の手甲(フランメ)は柔軟で動かしやすいが、あれはリンドヴルムの依代(よりしろ)といった意味合いが強い。もちろん手甲としての性能は十分過ぎるほどあるのだが、リボルバーナックルのような重量や機構は無い。

 だからといって、俺がリボルバーナックルを装備したら肩が抜けると思うが。

 

「そもそも言ってるだろ。俺はスピード型のインファイターだ。ラッシュを掛けて削るタイプなんだよ」

「そういわれると、私達とは正反対よね」

「ああ、そうだとも。まあ、身体強化と『炎熱』の使い方もわかってきたんだし、そろそろ火力も上げていくさ」

「火力って――あの時(・・・)みたいな無茶はやめてよ。映像を見ただけで、私は気絶しそうになったんだから」

 

 『あの時』。それは、間違いなく一騎との戦いだろう。手足で炎を爆発させるような、我武者羅な身体強化。

 それは暴発寸前――いや、実際に暴発を利用したような動きだった。あの映像を見たとき、ギンガは俺が『自分の腕をもぐ(・・)かのようだ』と感じたらしい。

 俺を叱りに来たときは怒りが上回っていたようだが、裏にはそんな恐怖を隠していた、ということか。

 

「わかってるよ。あの後一週間くらい身体がまともに動かなかったんだ。流石にあれは勘弁だよ」

「……お願いよ?」

 

 ギンガは顔を俺に向けてくる。その緑がかった瞳は真剣で、僅かに震えている。

 それだけで、ギンガが今どんな気持ちなのかがわかった。偵察課の訓練なんて必要ない。こいつが何を考えて、どう感じているのか。それは、瞳を見るだけで手に取るようにわかる。

 俺はギンガの頭に手を乗せ、撫でるようにして僅かに抱き寄せる。

 

「ああ、大丈夫だ。もう二度とお前を不安がらせるようなことはしない。だから、安心して俺を見ていてくれ」

「……ええ。信じてる」

 

 ギンガは小さく呟き、俺の胸元に額を押し付けてくる。話している時の言動や、訓練で打ち合った時の強さは俺とは比べ物にならないギンガだが、やはり年相応の少女で、その身体は俺よりずっと小さい。

 愛しさがこみあげてくる。どうしようもないほどの感情の奔流を堪えながら、俺はうなじの辺りへ手を回し、抱き寄せた。

 自分の心臓が、嫌というほど脈打つ。どくどくと音が鳴るたびに、ギンガの額を押し上げるかのように鼓動する。間違いなく、この鼓動はこいつに伝わっているはずだ。

 数分ほどそうしていただろうか。ギンガがゆっくりと身体を戻した。顔は真っ赤だが、表情は綻んでいる。

 満足そうだな、と俺は内心で笑う。

 

「そうそう。そういう可愛い反応を男は望んでるんだよ」

「もう……女は最後までロマンチックでいられる男を望んでるのっ!」

 

 ギンガは怒ったように俺の鼻先に指を突きつけてきた。

 

「潤はいつもそう! どうせ格好つけるなら最後まで格好つければいいのに、最後には自分で恥ずかしくなって茶化すんだから!」

「い、いや、そんなつもりはっ」

「嘘っ! だってあなた顔真っ赤じゃない!」

「えっ、マジ!?」

「マジよ!」

 

 膨れっ面でギンガは肯定する。俺は思わず右手で顔を覆う。

 

「うぁ……かっこわり」

「だから、さっきまで格好良かったの。そういうところ、本当に子供なんだから」

 

 ギンガは呆れたように座りなおし、髪を手で後ろに流す。

 俺はこれ幸いと目を閉じて呼吸を繰り返し、鼓動を落ち着かせて顔の熱を取りながら、なあ、と話を振り、

 

「なあ、レイナはどうしてる?」

「いつも通り、元気にしてるわよ。今頃ヴィヴィオと一緒に走り込んでるんじゃないかしら」

「……そうか」

 

 元気なら、それでいい。ここ最近顔を見れていないので心配だった。俺は安心して、口許が緩むのを感じた。

 そんな俺の様子を見たのか、ギンガがくすりと笑ったのが聞こえてくる。

 

「潤」

 

 名前を呼ばれ、俺は手をどかしてギンガの方を向いた。

 目の前に、フォークに刺さったケーキが差し出されている。ギンガはその体勢のまま、はやく、と口を動かした。

 俺は何も言えず、されるがままにゆっくりとケーキが口の中に差し入れられ、口を閉じた。フォークが抜き取られ、どう、とギンガが聞いてくる。

 

「ああ……美味い、よ」

「そう……じゃあほら、もう一口。あーん」

「あ……あー、ん……」

 

 

~~~~~

 

 

 ぴくっ、と私は何かを感じて立ち止まった。その感覚のまま、顔を海がある方に向ける。

 そんな私を不思議に思ったのか、一緒に走っていたヴィヴィオがその場で駆け足をしたまま首をかしげた。

 

「レイナ、どうしたの?」

「……うーん」

 

 この感覚をなんと言ったものかと、私はヴィヴィオと同じように首をかしげた。

 

「……虫の知らせ、かな」

「ほぇ? 虫?」

「なんとなく。お兄ちゃんが元気そうだな、って」

「潤さんのこと? レイナ、いつも会いに行ってるじゃんか」

「もう三日も行ってないよ」

「ええっ」

 

 それは大変、とヴィヴィオが驚く。同じ兄を持つ身としてか、ヴィヴィオはよく私の焦心に同調してくれる。

 

「大変だよね、お兄ちゃんが遠いと」

「うん……ヴィヴィオは、一騎さんと仲良くできてる?」

「うん! 休みの日にはなのはママと一緒にお買い物に連れ出してくれるし、お菓子作ったりしてくれるよ。たまにお風呂で頭洗ったりしてくれるの!」

「お風呂……」

 

 お兄ちゃんと、一緒にお風呂。

 うらやましい。

 

「お兄ちゃんが帰ってこられるようになったら、私も一緒にお風呂入ってもらおうかな」

「うんうん! あとは、魔法や格闘技も上手になって、驚かせちゃおう!」

 

 ヴィヴィオが虚空に向かって、ジャージに包まれた脚を蹴り上げる。

 

「うん……」

 

 私の格闘技、か。私は一騎さんにお兄ちゃんの映像を見せてもらって、その見様見真似でやってるだけだ。

 ギンガ義姉さんは仕事が忙しくて見てもらう時間が無いし、かといってお兄ちゃんの居る場所で訓練なんてしてもらえない。

 たまに一騎さんがヴィヴィオと一緒に見てくれたりもするけど、曰く「ぼくは空戦魔導師の教官であって、ストライクアーツのコーチじゃないからな」ということで、やっぱり限界がある。

 結局のところ、私は見様見真似から抜け出せない。魔力運用も身体強化も自分なりに練習しているけど――最低限の基礎しか学んでいないこの身では、何をしても大きな効果は得られないかもしれない。

 

「でも……そうだね、がんばろう」

 

 ヴィヴィオの動きに合わせて、私も足を肩幅に開いて、右手をすっと前に伸ばす。

 身体強化を僅かに掛けて、拳を打ち出し、回転して蹴りを打つ。

 確か、動きを利用しての打撃。そう思い出しながらヴィヴィオと並んで格闘の練習を始めて、十分ほど経っただろうか。

 

「なんだその動きは。そんなんじゃ体壊すぞ」

 

 そんな風に、声を掛けられた。私とヴィヴィオは顔を見合わせてから、声のした方を見た。

 あっ、と私は声をあげた。

 

「ノーヴェ義姉さん」

「え、っと……」

 

 ヴィヴィオはどう反応したものかとおどおどしている。

 ノーヴェ義姉さんは構わず歩いてきて、

 

「足を蹴り上げるときはちゃんと上半身を捻る。腕は蹴り脚とは反対の上半身を庇えるように畳む」

 

 言葉と一緒に、実際に動いて見本を見せてくれる。

 

「これだけでも知ってりゃかなり違う。やってみろ」

 

 そう言われ、私達は流されるままに頷いた。

 

 

~~~~~

 

 

 その後ヴィヴィオと分かれて、ノーヴェ義姉さんと一緒に家への道を歩く。

 

「あの……義姉さん、ありがとう」

「あん? 別に……気まぐれだよ。素人丸出しなのがよくわかったし、ほっといて怪我されたら気分悪いしな」

 

 ノーヴェ義姉さんはそう言って鼻を鳴らした。ぶっきらぼう、と表現できそうなその顔。

 

「それでもありがとうね。私達、基礎しか習ってないからどうしても上手くいかなくて。義姉さんのおかげで、今日は上手くできたんだよ」

「……そうかよ」

 

 でも、その顔は少し赤らんでいる。義父さんが言っていた通りで、私が感じた通りだ。

 ノーヴェ義姉さんは一見怖そうに見えるけど、それは緊張しているようなものだ、って。どう接すればいいかわからないだけなんだと思う。

 だから私は、にこりと笑った。むすっとした顔の義姉さんに向かって。

 

「……なんだよ、その顔は」

「ねえ、義姉さん。お願いがあるんだ。時間がある時でいいから――」

 

 私はぎゅっと拳を握り、

 

「私とヴィヴィオに格闘技を教えてくれないかな」

 

 その言葉に、ノーヴェ義姉さんはすぐには答えなかった。

 少し歩きながら、ふう、と息を吐き、

 

「たまにならな」

 

 そう、答えてくれた。

 ありがと、と私は答え――そういえば、と続けて、

 

「ところで、今日はどこかに行ってたの?」

「ああ……ちょっと、な。バイトを探しに」

「アルバイト?」

 

 そうだよ、と呟いてがりがりと頭を掻き、

 

どうしたらいいか(・・・・・・・)ってスバルに聞いたんだ。最初はのんびり暮らしてみなよ、とか抜かしてたがな。何もしないのは申し訳……つまんねぇから、って言ったら、『じゃあ、アルバイトとかしてみる?』って答えたんだ、あいつは」

「なにか良いところ見付かった?」

「ああ。スバルの紹介で小さな飲食店(ファミレス)の店長とやらに会わされた」

 

 飲食店、と私はウェイトレスの人を想像して、

 

「なんか、レストランとかって、大変そうなイメージがあるけど」

「ああ、そこは始めたばっかなんだってさ。まだ客も多くは来ないだろうし、慣らしには良いだろう、って言ってくれた」

「いい人そうだった?」

スバル(あいつ)と同い年くらいの優男だった」

 

 へえ、と私は相槌をうつ。スバルさんにそんな知り合いがいるとは知らなかった。そのお店は最近始めたって話だし、何か別の仕事で知り合ったのかな。

 

「そこに決まったの?」

「びっくりするくらい簡単に受け入れてくれたよ。あたし達がこんな(・・・)だってことも気にせずに」

「そうなんだ。じゃあ、やっぱりいい人だね」

「ちょっと胡散臭そうだったけどな」

 

 そんな言い方に、私はくすくすと笑った。

 

「お店の名前は?」

「えっと、確か――『QUARTZ(クォーツ)』だったかな」

 

 知ってる名前だ、と思ったけれど、店名だし、人の名前とは関係無いだろうな、とも思った。ミッド語では『水晶』とかを意味する言葉だし、珍しい単語じゃない。

 

「どのあたり? 今度皆で行こう、って義父さんたちに伝えとくね」

「いや、来んなよ!」

「えー? なんで?」

「いや、恥ずかし――邪魔だろうが」

「貴重なお客なんでしょ」

「店長がどう思うかはあたしには関係ねぇ」

 

 随分な言い草だなぁ、と私は笑う。

 でも、こうして話してくれるのが嬉しいとも思う。私はもう少しからかってみたくなったのを堪える。怒らせたいわけじゃないし。

 

「頑張ってね。ノーヴェ義姉さん」

「……ああ」

 

 

~~~~~

 

 

「ただいまー」

 

 私の言葉のあとに、小さくただいま、と呟いたノーヴェ義姉さんが可愛く思えた。

 

「お、レイナ、ノーヴェ。おかえり」

「義父さん、ただいま」

「レイナ、お帰りっスー!」

 

 そういって後ろから抱き着いてきたのはウェンディ義姉さんだ。

 

「わっ! ウェンディ義姉さん……いま汗かいちゃってるから、離れて」

「えー。折角可愛い妹が帰ってきたから、遊ぼうと思ったのにー」

「シャワー浴びたあとなら幾らでも遊んであげるから。ね?」

「はーい、っス」

「「……どっちが妹かわかんねぇな」」

 

 ウェンディ義姉さんが口を尖らすのを見て、義父さんとノーヴェ義姉さんは苦笑した。それを見て、私も同じ表情を浮かべた。

 同じ言葉を呟いた義父さん達が、ちょっと可笑かった。

 そこで、私はギンガ義姉さんの姿が無いことに気付いた。

 

「あれ、義父さん。ギンガ義姉さんは?」

「今日は施設に行ってそのまま休みの予定だったし、まだ戻ってないんじゃないか」

「お兄ちゃんのところ?」

「ああ」

 

 むう、と私は唸った。

 

「ギンガ義姉さん、ずるい」

「ちょっとくらい許してやれよ。あいつも久しぶりに会いに行ったんだし、お前は明日連れてってやるから」

 

 義父さんが笑うのを見て、私は頬を膨らませながらも、仕方ない、と頷いた。

 

「あれ、ギンガって兄貴(・・)のところに行ってるんスか?」

 

 間違いなく、と頷いて答えると、ウェンディ義姉さんがふーむ、とわざとらしく腕を組んだ。

 

「そういえばあたし、兄貴に会った事ないんスよね。ティアナやスバルとは事件中でも面識あったんスけど」

「そうなの?」

「見事に戦闘で会わなかったっス。ノーヴェは?」

「あたしも無い。映像でなら見たことあるけどな」

 

 それを聞いて私は少し考えた後、義父さんに声を掛ける。

 

「ねえ義父さん。明日、義姉さん達も連れて行っちゃダメかな?」

「構わねぇぞ」

「ありがと……ねえ、二人とも」

 

 私と義父さんの会話に首をかしげていた義姉さん達に目を向けて、

 

「明日、お兄ちゃんに会いに行ってみない?」

 

 そう聞いた。

 

「あたしは賛成っスよ。他のみんなにも会いに行きたいし。ノーヴェもいいっスよね?」

「……兄貴に、か?」

 

 二つ返事のウェンディ義姉さんに比べて、ノーヴェ義姉さんは気乗りしない様子だ。

 

「気が進まない?」

「ん……いや、やっぱ行くよ。挨拶くらいしとかなきゃな。ウェンディの言うとおり、チンク姉達にも、少しは話をしときたいし」

「そっか、よかった。じゃあ、明日は早めに起きてね」

「えっ、早起きっスか!?」

「そうだよ、遠いんだから」

「レイナが優し~く起こしてくれれば、あたしもきっと早起きできるかも……なんて」

「ノーヴェ義姉さんならちゃんと起こして(・・・・)くれるんじゃない?」

 

 それは嫌っス、とウェンディ義姉さんは身震いする真似をした。

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