魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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訓練校のとある休日、な話です。



8話 訓練校5

「姉御、なんだか面倒なことになってんぞ」

 

 クォーツが見せてきたモニターには、『大規模空港火災にて八神一尉、研修生に協力を強制』と書かれている。

 

「これは?」

「僕ら、昨日の空港火災の消火やら何やらに協力したじゃないか。それが、なぜだかわからんけど『八神一尉が強制した』とかいうことに」

「……これ、どこのページだ?」

「首都航空隊でっせ」

「アホらしい。大方、仕事を取られたから逆ギレしてるだけだろう。はやてさんだって、こんなガセにどうこうされるほど脆くない」

「まあ、僕もそう思うんだがね。一応、伝えておこうと」

「ああ、ありがとう」

 

 クォーツはモニターを閉じると、饅頭をぼくに差し出してくる。

 

「なんだい、これ」

「マリクが命を懸けて守った饅頭。なんと、普通のとまったく変わらない味がする」

 

 なんだそりゃ、とぼくはひとつつまんでみる。

 

「ん……確かに、普通の饅頭だな」

「でしょう。なのにあいつ、『オレの愛と勇気のお陰で美味さ倍増!』とかほざいてるんで」

 

 クォーツはそのまま背を向け、歩いていった。

 ぼくは何も言わず、残りの一口を口に放り込んだ。

 

 

~~~~~

 

 

『心配せんでも大丈夫や』

「あ、やっぱり?」

『昨日の事は証言してくれる人もたくさんおるからな。もう問題なんて、あってないようなもんやよ』

「それなら安心だ。ごめん、無駄に時間取らせて」

『ええよ。一騎と話すのもだいぶ久しぶりやからな。なのはちゃんやフェイトちゃんにべったりで、はやてお姉ちゃんは寂しかったんで』

「あはは……」

 

 思わず苦笑すると、はやてさんはなにも言わずにモニターを閉じた。

 冗談ではなく、わりと本気だったのかもしれない。

 今度からは、はやてさんとも定期的に連絡を取ることにしよう。

 

「大変だね、お前も」

「ん、やっと上がったか」

「ああ。まったく、広いバスルームだよ。2,30分なら余裕で入ってられるな」

「それで、大変とは?」

「いやね。三人も姉みたいな人が居るとなると、相手も大変なんじゃないかと」

「別に、そんなことはないよ。お前だって、人と話すことが面倒臭い、なんて思ったことは無いだろ。それと同じだ」

「へえ、そんなもんかね」

「さあ、夜の点呼の時間だ。さっさと並んでおくぞ」

 

 

~~~~~

 

 

「姉御、朝飯ご一緒するぜ」

「どっか行け」

「斎藤の兄貴ぃ、姉御が冷たい」

「その姉御ってのやめたらどうだ」

「なにを馬鹿な。姉御は姉御だろう。そんなこともわからないなんて、兄貴は馬鹿だなぁ」

「殴るぞ」

「ナグリー、呼ばれてるぞ」

「なんだよマリク、朝からうるさいな。また姉御と兄貴に喧嘩を売ってるのか?」

「オレがいつ喧嘩を売った?これはオレの愛情の証である」

 

 ぼくは寝起きでぼんやりする頭になんとか栄養を送り込もうとスープを口に運ぶ。

 

「おはよう、高町」

「ああ、ティルク。おはよう」

「調子が悪いのか?隈ができているが」

「ああ。思春期真っ盛りな少年の夜は長いんだよ」

「……まあ、なにかあったら相談してくれ。遠慮せずにな」

 

 笑って言ったぼくとは対称に、真面目な顔でティルクは言うと、席に座ってパンをかじり、スープを啜る。

 ぼくもパンをスープで流し込むと、席を立つ。

 ごちそうさま、と食器を返すと食堂から出て、訓練場に向かう。

 

 

~~~~~

 

 

 訓練場に移動し、ぼくは大きな欠伸をする。

 

「ん、姉御。疲れてる?」

「ちょっとな。昨日の訓練で、やたらとぼくに勝とうと模擬戦を連続で申し込んでくる、マリクとか言う奴がいてな」

「なんだか親近感の湧く奴だなあ。まあ、姉御に勝つんなら、真っ向からじゃなく精神的に磨耗させいでぇっ!?」

「よく飽きないな、マリクも」

「ヴィンズ、姉御がグレた」

「うるせえよエロゲ脳。お前が悪い」

「なにぃ、オレに味方はいないのか」

「阿呆仲間なら腐るほどいるだろ」

「じゃあクォーツと姉御を堕とす方法を話し合ってくる」

 

 マリクが不思議な踊りをしながら歩いていくのを見て、ぼくは溜め息をついた。

 

「姉御、マリクの部屋を漁ったんですが、奴は男の娘が好きらしい」

「あいつ、病気か……」

「ちなみにクォーツはなんでもいけるそうです。たとえ男でも」

「バイなのか」

「ちなみにオレも男の娘が好きです」

「二度と近寄るな」

 

 ヴィンズは比較的まともだと思っていたが、とんだ見当違いだったらしい。

 

「いつまでも駄弁ってないで、訓練始めるぞ」

 

 いつのまにか来ていたらしい、教官が呆れたように言った。

 

 

~~~~~

 

 

 訓練が昨日より厳しくなっていくことを楽しく感じながら、ぼくはシャワーを浴びる。

 思わず口から息が漏れ、濡れた髪が体に張り付く。

 

「……ん?」

 

 なにか違和感を感じたが、眠たかったのもあり、さっさと体と頭を洗い、髪を乾かしてベッドに潜り込んだ。

 

 

~~~~~

 

 

「姉御の入浴シーンだよ~。昨日撮ったばかりの一番新鮮な姉御の裸体を、なんと格安のこのおねだ」

 

 ぼくはそう言ってデータを売り捌いているマリクを殴り倒すと、記録用の簡易デバイスを叩き折る。

 

「あ"あ"っ! 苦心一時間の最高傑作がぁ!!」

「すんません姉御。マリクにはよく言っときますんで、ご勘弁を」

「いででででででで」

「この才能を他にいかせないのか、こいつは」

「ええ、こいつは自分の興味の無いことはまるっきりダメな奴でして」

「痛い痛い。ギブギブ。ウィルス、オレ死ぬ」

 

 そうマリクの頭を鷲掴みにして床に連続で叩きつけながら、自分も頭を下げるウィルス。

 ぼくは溜め息をついてその場を去り、

 

「ちなみにバックアップはここにある」←マリク

「ほほう、一つもらおうか」←ウィルス

 

 方向転換して二人に飛び蹴りをかました。

 

 

~~~~~

 

 

「高町、少し剣の相手をしてくれないか」

「ぼくと真面目に話してくれるのはティルクだけだ」

「……やっぱり、悩み事でもあるのか?」

 

 ティルクが眉をひそめながら聞いてくる。

 なんでもない、と答えると、ぼくは貸し出しが可能な剣型の簡易アームドを一つ手に取る。

 ティルクは自分が持ち込んでいる腕輪をかざし、セットアップ、と唱える。

 ぼくと同じタイプの、白いロングコートの胸元にプレートが着いたバリアジャケットを纏い、剣と盾のセットが左腕に装備される。

 盾には剣が収納できるスペースが設けられているらしく、盾から伸びている剣の柄を握ると、払うように引き抜く。

 ぼくはバリアジャケットのみを展開し、剣を構える。

 

「それじゃ、クリーンヒットを先に入れた方が勝ち。ジャケットを抜かないようにな」

「ああ、それで頼む」

 

 ティルクが真剣な表情になり、盾を構え、剣先を下げるようにして構える。

 ぼくも右手で剣を握り、足を少し拡げて腰を落とす。

 

「おおおっ!!」

 

 ティルクが動く。

 鋭い角度とスピードで降り下ろされるそれを、僅かに身体をずらして掠るようにして避け、剣を左に切り払う。

 ティルクはそれを盾で防ぐと、シールドバッシュで弾くように振るおうとするが、ぼくはあえて盾を押さえつけるように力を込める。

 少しの間拮抗するが、ティルクは素早く身体を引き、剣を突き出してくる。

 それをぼくは左手で剣の面を打って逸らし、その勢いのまま回転して剣を叩きつける。

 

「はあああっ!!」

「ちっ!」

 

 ティルクが舌打ちをし、強引に剣を払う。

 純粋な力ではティルクに負けるぼくは大きく吹き飛ばされ、なんとか空中で体勢を立て直し、地面を滑りながらようやく止まる。

 ぼくは剣を大きく振りかぶると、全力でティルクに向かって飛ぶ。

 ティルクはぼくの動作を見て、盾を前に出す。

 

「穿空牙!!」

「ぐっ!」

 

 僅かに怯んだ隙を逃さず、突き、払い、もう一度切り込む。

 その一撃で盾を弾き、振り下ろされる剣。

 それを蹴りで防ぐと、ぼくは飛行魔法で地面と平行に移動して回り込み、

 

「紫電一閃!!」

 

 無防備な背中に斬撃を見舞った。

 

 

~~~~~

 

 

「姉御とティルク! 天才格のご存知この二人が繰り広げる、人外的な剣技の打ち合いを、驚きの高画質でお送りする! このBDが、なんとこのお値段!」

「訓練校の敷地内で、金銭を用いる取り引きをしているとはな、マリク研修生?」

「おや、教官。お一ついかが?」

「なんだ、この饅頭は」

「オレの愛と勇気がたっぷりと詰まったものです。土産物としては飛び抜けた美味さ。そうですね、一つ10ポケでいいですよ」

「人の話を聞けばかもん。いいから少し来い。少し話をしよう」

「いやだいやだぁ! 教官みたいなオッサンに掘られるなんていやだぁ! オレの処女と童貞は姉御の為に取ってるんだぁ!」

「なあ、高町」

「やっていいですよ」

「姉御おおおおおお!?」

 

 ぼくは大袈裟に耳を塞ぐ素振りをして、マリクから顔を逸らした。

 まったく、質の悪い冗談だ。本気なのかもしれないが、深く考えることはしないようにしよう。

 さて。

 

「BD貰っていこう、っと」

 

 自分の動きを確認するためにも、映像を見るのは大事だ。改善点もたくさんみつかることだろう。

 ぼくはそう考え、積み重なっていたディスクをひとつ貰っていくことにした。

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