魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

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フォーオナーの発売が間近に迫り、ニンテンドースイッチとゼルダを予約できてほくほくになりながらタイタンフォール2とソフィーのアトリエをローテしてる作者です。
また、FGOでスマホが常にバッテリーピンチになって続きが全然書けずにいた阿呆でもあります。
ViVid Strike!を見ながら「俺もこんなに良い話が書けたらなぁ」と繰り返す毎日です。


90話 ViVid4

 合宿において、メインとなるイベントは二日目にある。

 大人も子供関係無く組み分けられたチーム戦。二つのチームに別れてぶつかり合い、最後にメンバーが残っていた方が勝利というものだ。

 ちなみにチーム分けを考えたのはノーヴェなのだが、ぼく達をどのように組分けたものか、酷く頭を悩ませたらしい。

 というのも、高町一騎(ぼく)はあらゆる戦況に対応できるオールラウンダーであり、しかも両方のチームで頭を張っているなのはとフェイト(あの二人)とも関係が深い。姉さんの方は言わずもがな、フェイトさんともぼくは合わせられる。正直、どちらと組ませても厄介なのだろう。

 しかし二チームである以上どちらかに組み分けねばならない。その結果、『姉弟を組ませるよりはマシだろう』という理由により、ぼくはフェイトさんが居るチームに配置された。

 

 次に面倒なのが、ジュンとレイナの兄妹だ。ジュンはぼくと訓練校からのコンビであり、組ませるのはご法度だ。

 こういったチーム戦では、所謂『コンビ』を同じチームにするべきではない。その二人で連係されれば、崩すのが厳しくなりすぎるからだ。下手をすれば一方的な試合になってしまう。それは避けるべきだ。

 そういうわけで、ジュンはぼくと違うチームに当てられた。そしてレイナは(似たような理由で)ジュンとは分けることになった。

 

 そしてティルクだ。発言も少なく、派手な魔法戦も行わないので、集団戦ではあまり目立つタイプではないが、こいつが一番の曲者だ。剣を振るえば斬れぬ物無し。そんなマンガのような話を実際にやってのける騎士となると、チームの戦力バランスが取れなくなってしまうのではないか、という不安がある。

 最終的にはジュンと同じく、向こうのチームに入れられた。

 

 つまり、懸念されていたぼくら四人は、ぼくとレイナ(レッドチーム)ジュンとティルク(ブルーチーム)となったわけだ。

 それにしてもノーヴェはかなり悩んだようで、半分本気で「一騎さん達三人でもう一個チームでもいいですか」と聞いてきたほどだった。

 

 まあともかく、セットアップを済ませたぼくらは作戦会議の最中だ。

 人数はしっかり割り振られているので、同ポジション同士一対一で抑えれば問題ない。

 そう、()()は問題ない。

 問題は加減を知らない生真面目騎士と、頭に血が上ると何をするかわからない熱血野郎だ。

 

「レイナはジュンの相手を頼む。ぼくはティルクを()()()抑える」

「わかりました!」

 

 そう答え、レイナはガントレット(ケーニギン)を打ち合わせる。

 ジュンの動きに確実についていけるのはレイナとぼくだが、あいつはフロントアタッカーの中では致命的なほど火力が低いので、他のメンバーでもまだ対処のしようがある。強敵ではあるが、まだなんとかなるレベルだ。

 

 しかしティルクは別だ。あいつと真っ向から戦えるのは、おそらくぼくだけだ。こちらのフロントアタッカーはノーヴェとアインハルトとレイナだが、どの子もティルク相手は荷が重すぎる。

 正直、レイナをヴィヴィオにぶつけることも考えたが、アインハルトが思ったよりやる気満々な様子なので任せることになった。

 

 さて、と。玄月を鞘から抜いて左手に構え、イノセントハートをエクシードモードで右手に握る。リベレーターをバイザーとして起動し、準備万端。

 

『一騎、頑張ってね』

「もちろん。しっかりぼくの活躍を見といてくれよ」

 

 非戦闘員(+もしもの時の救護要員)として待機しているディエチが、メガーヌさんの隣で手を振っていた。

 ぼくも玄月を掲げて応えると、それぞれのポジションに対応したライフポイントが設定され、試合が開始される。

 ぼくのライフはガードウイング相当の2800。ティルクはおそらくフロントアタッカーなので3000か。

 

《sonic move》

 

 開幕速攻。ゴングが鳴ると同時に高速機動を発動。ノーヴェとスバルの魔力道が戦場に張り巡らされるよりも速く、音を置き去りにして飛行する。

 移動を始めたばかりのティルクを見付けると、微塵も加速を緩めずに突貫する。

 

「らぁっ!」

「っ!? 貴様――ッ!」

 

 流石と言うべきか、ティルクは高速機動中のぼくの斬撃を察知し、盾で防御した。

 構わず連撃。盾の上から斬りつけ、イノセントハートから砲撃。押し切られるように吹き飛ばされるティルクに玄月の切っ先を向けたまま、素早く戦況を確認する。

 ぼくの開幕特攻でティルクを乱戦から離すことが出来た。レイナもジュンに真上から奇襲をかけたようで、大きな爆発が起こっている。作戦通り。ぼくはこのまま可能な限りティルクの相手をしていればいい。

 視線を戻すと、ティルクは剣を杖にして立ち上がるところだった。

 

「随分な挨拶だな。戦いの作法も知らんのか」

「こちとら騎士道精神なんて無いからね」

 

 こちらを見上げるティルクの表情は実に好戦的なものだった。

 

「お前と試合うのも久し振りだな。折角の機会ではあるが、俺は()()()()()()()()()()()()()()。さっさと済まさせてもらう」

「大した言い分だな。ぼくに勝てた事なんて無いだろう?」

「昔はな。だが、今はっ!」

 

 ティルクが地面に突き刺したままの片手半剣の柄を握り締めると、まるで破裂したかのように地面が弾け飛ぶ。

 爆発の中心にあったのは当然、ティルクの剣だ。その刀身を覆うように、金色の魔力が激しく流動している。

 ティルクが得意とする魔力斬撃。その究極の形。あの剣は危険だ。触れただけで全てを()()()()

 それを握り締めたティルクは、跳び上がるような飛行で接近してきた。ぼくは即座に杖を構える。ブラスターシステムを発動し、ブラスタービットを二基展開。操作をイノセントハートに譲渡し、杖とビットから直射弾による弾幕を張る。

 大量の直射弾がティルクに殺到し――一瞬()()()。目の錯覚かと思ったが、なんと直射弾はティルクの身体を()()()()()霧散した。

 

「なっ――」

「温い」

 

 ティルクが静かに告げた。ぼくはもう一度弾を撃ち出す。バイザーが高精度でティルクの行動をスキャンする。

 ヒュッ、と僅かな空を斬る音。ティルクの腕が振るわれ、魔力を纏った刃が直射弾を切断する。

 ただ斬っただけ――いや、まさか――

 

(――馬鹿な!)

 

 ティルクは直射弾を斬った。だが、単純に弾を斬り払ったのではない。

 魔力弾を弾たらしめている、魔力の結合を斬り離したのだ。

 魔導師(ぼくら)の使う魔力弾とは、術式を用いて魔力弾として()()()()()魔力の塊だ。その結合を斬り離してしまえば、術式は消え、魔力弾は魔力弾としての形を保てなくなる。

 つまり、ただ纏まっているだけで、空気中に漂っている魔力素と同じになる。触れたとしてもなんの害も無い。

 

 ティルクがやっているのは、つまりはそういうことだった。

 

(理屈はわからんでもないが、どういう神経してるんだこいつは!)

 

 そうやって解析し、理解している間にティルクは距離を詰めてくる。

 ぼくが左手の玄月を防御をするように構えると同時、ティルクの片手半剣が鋭く振り抜かれる。

 すさまじい衝撃に玄月を腕ごと弾かれた。ぼくがそれを認識した頃には、既に切り返しの斬撃が迫っている。咄嗟に顔を逸らすが、バイザーを剣が両断し、破壊された。

 

「なっ――」

「その()()()は厄介なのでな。悪く思うな」

 

 言葉を言い終わる前に、再度の斬撃が迫っていた。

 

(一瞬で三連撃――はやすぎる!)

 

 動揺していたぼくを救ったのはイノセントハートだった。ビットから砲撃を撃ちだす。ティルクは油断なく盾でそれを防ぎ、ぼくは即座にその盾を蹴りつけながら反転。背を向けて逃亡した。

 

「逃がさん!」

 

 正確には、逃亡した()()()()()。馬鹿正直にぼくを追い掛けてくるティルクに対し、ブラスタービットが後方に魔力弾をばらまく。

 ティルクは細かく機動を変えてそれを避ける。教導隊のぼくですら感嘆の息を漏らすほどに見事な回避機動だが、やはり僅かでも減速してしまう。それを確認し、ぼくは空中に展開したラウンドシールドを蹴りつけて方向転換し、玄月とブレードフォームのイノセントハートの二刀流によってティルクを迎え撃つ。

 ティルクの片手半剣を、ぼくは二刀を以て対応する。凄まじい威力の一撃が相手なら、高速の二撃で打ち払えばいい。

 二刀流は二本の剣によって、攻撃の手数を増やすことも、柔軟に防御を固めることもできる。ぼくは今回後者を以て対応した。

 再度の片手半剣の斬撃を、両手の二刀を交差して受け止め、ブラスタービットを使って背後から魔力弾を食らわせる。

 ティルクのライフが100減った。

 

「小癪な――!」

「これが万能型(ぼく)の戦い方だ!」

 

 互いに剣を振るった。昔以上にぼくの二刀は練度を増している。全力で集中すれば、今のティルクにもなんとか対抗できる。

 

「「はあぁっ!」」

 

 ガガガガッ、と剣戟。その隙間を縫うように、イノセントハートがビットから魔力弾。その直撃を食らったティルクは顔をしかめた。ティルクのライフがさらに300減り、2600になった。

 

「さあ、どこまで持ちこたえられるかな!」

「騎士を――侮るな!」

 

 ぼくの挑発に、ティルクは笑みと共に吼えた。

 

 

~~~~~

 

 

 実際、期待していた。望んでいた。

 ジュン()と戦うことを。練習(スパー)ではなく、真っ向からの真剣勝負で戦えることを。

 私は一騎さんに言われた通り、ゴングと同時に疾走した。一騎さんがかき消えるように高速で飛行したのと同時に、私は全身に炎を纏って駆け出した。

 助走を充分につけると全力で地面を蹴りつけて爆発を起こし、その爆風に乗って跳躍する。

 ポニーテールに結んだ髪がなびくのを感じながら、私は空高く跳び上がった。

 

「見付けた――っ」

 

 同じ武装(ガントレット)。同じ防護服(ジャケット)。同じ(くろ)。ガントレット以外真っ黒なあの人は空から見たらよく目立つ。私は自由落下に身を任せ、兄に向けて速度を高めていく。

 

「せぇー……のっ!」

 

 圧縮した炎を纏った拳を、全身全霊で振るう。

 お兄ちゃんは寸前で気付くが避けることも出来ず、加速の乗った拳と炎の爆発をマトモに食らうことになった。

 私は成果を確かめるよりも早く身体を反転させ、バック宙で距離をとる。

 煙が晴れる。ひび割れたヘッドギアと、ボロボロのジャケットで片膝をついた状態のお兄ちゃんが、咳き込みながら手の甲で口許を拭っていた。

 そのライフは、2000減って残り1000。行動不能まで削りきれなかった。私は臍を噛む。

 

「やってくれたな……愛しの妹に開幕グーパン食らうとは思わなかったぜ」

 

 砂利が口に入ったのか、顔をしかめてぺっ、と唾を吐き出す。

 私はにこりと笑って言ってやる。

 

「油断してるからじゃないの?」

「ははっ、言ってくれるな」

 

 しっかりと足を踏みしめ、お兄ちゃんは立ち上がる。右手を掲げ、

 

「おおぁっ!」

  

 拳を握ると同時に炎を纏う。

 

「俺に喧嘩を売ったんだ。当然覚悟は出来てるよな?」

「お兄ちゃんこそ、妹に殴り倒される心の準備はいい?」

「抜かせ」

 

 お兄ちゃんは鼻で笑った。

 

「初撃で削りきれなかったのを後悔するんだな」

 

 言うと同時、一瞬で距離を詰めて右足で蹴りを打ってくる。

 私は一歩踏み込んで打点をずらして左腕で防ぐと、足の位置を反転させる勢いで左肘を打ち込み、さらに腕を伸ばして裏拳、右の正拳を繰り出す。

 お兄ちゃんは先程までの笑いを消し、怖いくらい真剣な表情で私の攻撃を見ていた。紙一重。その言葉通り、擦る事すらなく完璧に避けた。

 私が「しまった」と思う間もなく、お兄ちゃんの掌が、拳を振り抜いた私の胸に押し当てられていた。

 

「シィッ!」

 

 鋭く息を吐き出し、掌打。踏み込みから伝わる力が、寸分のロス無く打ち込まれた。

 

「あがッ――」

 

 凄まじい衝撃に息が詰まる。絞られるように息が吐き出され、打たれた胸をかばって、反射的に身体がくの字に折れ曲がる。視界の隅でライフが300減ったのが見えた。

 私の視界の中で、真っ直ぐ打ち出されていたお兄ちゃんの手が、しっかりと握られ真上(こちら)を向いた。

 その拳は当然、私の無防備な顎に向けて跳ね上げられ――

 

「ぐぅッ!」

 

 顎を打ち抜かれた私は、あっさりと両膝を着いた。ライフが500減る。残り2200。

 アッパーを打ち抜いた体勢のままお兄ちゃんが呟いた。

 

「防護システム様々だな。本気で妹を殴るのは気が引けるが、怪我をしない分いくらかはマシだ」

 

 仮想の脳震盪を味わった私は、がくがくと力の入らない手足を動かそうと懸命にもがく。

 

「にしても、クリーンヒット二発で800か。相変わらずダメージ出ねぇな。まったく、自分の低火力がうらめしい――」

 

 追撃で炎熱砲を撃とうとしたお兄ちゃんは、私の背後から撃ち込まれた茜色の魔力弾をステップで避けた。

 

「レイナ、立て直して!」

「ぐ……っ」

 

 ティアナさんの援護射撃だ。助かった。あのまま撃たれていたらかなりのダメージだったろう。

 私はなんとか四つん這いになり、深呼吸をする。初戦仮想のダメージだ。気力で無視することは可能だし、後で回復魔法を掛けて貰えるまでの辛抱だ。

 気力を振り絞って立ち上がり、お兄ちゃんに向けて拳を構える。

 

「大した胆力だ。流石は俺の妹」

 

 私は口許に散った唾液を襟で拭うと、もう一度にこりと笑う。

 

「ちょっと油断しちゃったかな」

「ったく、敵を侮ると足元をすくわれるって教えて……ねぇな」

「言われてないね」

「まあ、これを教訓に覚えとくんだな」

()()()()()()()()()

 

 ドゴッ、と足を踏み締める。地面のコンクリートを砕きながら、私は鋭くお兄ちゃんを睨め付けた。

 そんな私を見て、お兄ちゃんはぞくっとするような好戦的な笑みを浮かべた。

 

「いいねぇ――俺はそういう表情のお前も好きだぜ」

 

 軽口は変わらない。でも、お兄ちゃんのそれは決して侮りからのものじゃない。

 あくまで自分のまま。ありのままで戦うためのルーティーンみたいなもの。

 私は首を鳴らした。大きく息を吐き、手の平に拳を打ち付ける。

 

「今度こそ、仕留めてみせる!」

「やってみろ。俺の残りライフはたったの1000。俺みたいな三下の、これっぽっちのライフすら削れないようじゃ、この先誰にも勝てやしねぇぞ?」

 

 そのわかりやすい挑発に、私は笑みを消して拳を握った。

 

 

~~~~~

 

 

 剣を振るう。

 鋭く、素早く、全霊で。

 それ以外俺に出来ることはない。

 たとえ相手が、皆が認める万能の魔導師(エース・オブ・エースの弟)であろうとも。

 

「洒落臭い……」

 

 背後に回り込んでくるビットの射撃をかわしながら蹴り飛ばす。このビットは頑丈な作りであるうえ、シールドまで張る事が出来る図抜けた設計だ。剣で両断しようとしても、シールドで防がれた一瞬の間に回避される。

 

「厳しいな――」

 

 ビット程度ならどうにでもなる。だが――

 

「エクセリオンバスター!」

「こいつがッ!」

 

 ビットに気を取られた隙に撃ち込まれる高速砲。避けられない。盾を構えて受け止めた。

 

「ブレイク――ッ」

 

 シュート、と続けられた一騎(たかまち)の言葉と共に、駄目押しと言わんばかりに一回り強力な砲撃が撃ち出された。

 

(盾がもたない――!)

 

 ビシ、とヒビが入る。金属製の盾が軋み、ヒビを広げていく。盾だけでなく、保持している左腕も限界が近い。

 

「ぐ、おおぉ……っ!」

 

 砲撃は何とか耐えきったが、盾は粉砕された。砕けた盾を投げ捨て、片手半剣を両手で握って構える。

 一騎(たかまち)は盾を捨てた俺に対して、油断無く両手で握った杖を構えている。

 ――両手で?

 

玄月(あれ)は何処に――ッ!?)

 

 背後で風を切る音が聞こえた。反射的に振り返り、剣を振るう。剣に感触があった。打ち払ったのは――奴の手から消えていた玄月だった。

 

「なぜ背後から――」

 

 迎撃された玄月は回転しながら落下し――なんと、素早く跳ね上がると俺に向けて迫ってきた。

 

「くぅっ――!?」

 

 刀身を水平に構えて防ぐ。所有者も居ないのに斬りかかってくる面妖な刀に手間取っていると、正確無比な砲撃が防御の隙間に捩じ込まれる。

 先程の砲撃を受けてからライフが減りっぱなしだ。すでに1000まで減少している。多少のダメージ覚悟で突進してもビットからの魔力弾で速度を削られ、本命の砲撃で押し切られる。一騎(やつ)は最初の一合以来、俺に距離を詰めさせない。

 厄介だ。面倒だ。中々に苛つく。だが、この俺をここまで押し止める事が出来るのは紛れもなくあいつの実力だ。苛立つが、思わず口許が緩む。大した奴だ、と。

 だが、笑ってばかりも居られない。距離を空けられたからといって、何も出来ずに削られる俺ではない。

 

 俺は昔とは違う。魔力弾一つも撃てない俺だが、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だが、この場で使うのは無理だ。こんな状況で使えばただ避けられるだけだ。

 玄月が回転しながら迫る。砲撃が俺を狙う。このままでは終わると危惧した瞬間、数えきれない量の桜色の誘導弾が一騎(たかまち)に殺到した。

 

「こ、この魔力弾は――っ!」 

 

 奴の顔にわかりやすい動揺が走った。恐怖に引き攣った声をあげながら魔力翼を羽ばたかせ、回避機動を開始する。玄月が高町の左手に戻っていく。

 その時、あの刀の柄に魔力の糸が繋がっているのが見えた。アレが仕掛け(タネ)か。小癪な真似をする。

 

「ティルク! すぐに離脱して回復!」

「助かりました!」

 

 高町一尉の声に答えつつ、俺は剣を腰の鞘に納めて反転し、全速で後退した。

 

 

~~~~~

 

 

 なんとか全ての誘導弾を対処した頃には、既にティルクは消えていた。

 

「逃がしたかっ」

 

 かなりライフは削った。しばらく戦線に復帰はしないだろうが、それでもここで仕留めておきたかった。

 ぼくは苛立ち紛れに誘導弾を撃ってきた姉さんを睨む。かなりの距離があるが、向こうはぼくが見ていることに気付いている。

 そして、ぼくにも姉さんが不敵に笑ったのが見えた。普段はにこにこと穏やかに笑うあの人が、唯一(ぼく)にだけ見せる挑発的な笑み。

 ぼくの握る玄月の柄がギシッと音を立てた。

 

「ティアナ。すまん、ティルクを逃したから警戒を頼む」

『わかりました! 一騎さんは今から――』

「――敵のセンターガードを潰す」

 

 答えると同時、大きく息を吐き出しながらソニックムーブを発動。

 大きく旋回し、姉さんの背後へ回り込んで二刀を振りかぶる。

 

「おおぁっ!」

 

 雄叫びと共に振るった二刀は姉さんの肩口に食い込み、切り裂いた。

 肩から背に掛けての、()()()()()()()()()()を。

 

「でたらめなっ!」 

 

 ぼくは激情のままに吐き捨てた。死角からの攻撃を紙一重で避けた。恐ろしい空間把握と反応速度だ。

 そして剣を振り抜いた姿勢のぼくの喉元に、レイジングハートが突き付けられる。

 

「こら、一騎。そんな態度無いんじゃないの?」

 

 魔力がレイジングハートの穂先に集束され、

 

「私はお姉ちゃんだよ?」

 

 死刑宣告のような言葉と共に撃ち出された。

 ぼくはそれを聞き終わる前に砲撃を避けようと身体を逸らすが、左腕が巻き込まれた。ロングコートの袖が吹き飛び、玄月が弾き飛ばされる。HPが800飛んだ。残り2200。けど、左腕は動く。大した問題じゃない。

 ぼくはイノセントハートを両手で構え、ビットと同時に砲撃を放つ。

 姉さんもまったく同じ動きでレイジングハートを構えて砲撃。ぼくのビットからの砲撃をスフィアからの射撃で阻止し、杖から撃ち出した砲撃がぶつかり合う。

 

(真っ向からの撃ち合いじゃ勝てない!)

 

 ぼくの全力の砲撃も、姉さんの砲撃には敵わない。即座に砲撃を中断してシールドを張り、砲撃を受け流して周囲を確認。廃ビルに突き刺さった玄月を見付けたので回収に――

 

「ブラスター1!」

 

 行こうとした瞬間、姉さんの声が聞こえた。レイジングハートからもブラスタービットが二基出現する。

 

「イノセントハート!」

 

 レイジングハートとイノセントハートのビット同士が標的を定めたようで、空中を激しく交錯しながら互いを撃ち抜こうと飛び回る。

 まるで魔導師の空戦機動の如く凄まじい機動を描くブラスタービット。レイジングハートとイノセントハートが制御しているそれは、互いに『負けるものか』という気迫を感じられるほどに激しい。

 

「こっちも――」

「――負けてられないな!」

 

 姉さんとぼくは掛け声をあげると、愛機に負けぬよう戦意を滾らせた。




補足


〇チーム分け
 実際一騎達をどう分けるか悩みに悩みました。実際上手くやったらあの三人でも渡り合えるんじゃないか、とも思ったのですが、二チームから挟み撃ちを受けて即全滅する未来も見えたのでこうなりました。


〇一騎の戦法
 昔と比べて一段と何でも出来るようになった一騎の戦い方を上手く表現できれば良いなぁ、と思っています。
 実は左手に刀、右手に杖という戦い方になった切っ掛けはブラック★ロックシューターのアニメを見て「これだ!」と叫んだ結果です。


〇ティルクの魔力弾斬り
 Fate/strange Fakeを読んで「これだ!」と叫(ry


〇レイナの開幕爆裂ナックル
 レイナは一撃で仕留めるつもりで殴りました。ジュンのライフが三分の一残ったのは、火属性持ちなので爆発に耐性があったからです。
 また、ジュンは一騎やティルクと比べたら強くはありませんし怪我ばっかりしてますが、実力は上がってきています。昔はスバルに殴り倒されてましたが、実は今のジュンはスバルとノーヴェを同時に相手しても凌げるくらいには成長してます。ギンガお姉ちゃん(義妹)に鍛えられてるからね!
 ジュンとレイナは殴り愛を体現したような兄妹なので、お互いに殴りあって楽しんでます。変態やね。


〇一騎となのはのぶつかり合い
 昔からこの二人はあまり戦わないように動かしていたのですが、今回やむなくちょっとだけ戦闘しました。
 ファンネル同士が激しく動き回って互いに撃ち合ってる動きが好きです。

 少し敬遠している理由は、一騎(オリジナル主人公)となのは(原作主人公)の戦闘は二次創作として欠くことの出来ない重要なシーンだと思っているので、ちょっと出し惜しみしている感があります。今回の姉弟の戦闘も、次話すぐに横槍が入って中断される予定です。

 以前StrikerS編で書いたゆりかご内での二人の戦闘は、もはや戦闘と呼べるものではなかった(一騎は精神不安定、なのはは一度も攻撃せず)ので、いつか姉弟の全力戦闘を書きたいと思っています。たぶんそれを書いたとき、この長々と続いた『エース・オブ・エースの弟』という作品はやっと終わりを迎えると思います。


この更新ペースでは終わるまであと何年掛かるかわかりませんが、更新停止や作品の削除はしませんので、もしよかったら長い目でお付き合いください。
これからも『エース・オブ・エースの弟』をよろしくお願いします!
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