魔法少女リリカルなのは エース・オブ・エースの弟   作:ロア

97 / 97
投稿が遅くなって申し訳ありません。就活中なのでまた更新遅くなると思います。


91話 ViVid5

 姉さんと撃ち合いながら思った。

 ジリ貧だ、と。

 

「「――シュート!」」

 

 互いに同じ数の魔力弾を生成し、相殺する。

 

「エクセリオン――」

「――バスター!」

 

 砲撃を撃てば、同程度の魔力砲撃がぶつかり合い、やはり相殺。そんなぼくらの周囲では、双方のブラスタービットが複数、空戦魔導師もかくやという空中戦を繰り広げている。

 決定打に欠ける――どころの話ではない。

 ぼくは姉さんに比べれば射砲撃の威力は僅かに落ちる。だが、魔力弾を迎撃することには問題ない程度には威力はある。それに不満は無い。現状、姉さんに射撃戦で優位に立たれていないのは充分すぎる状況だ。

 だが、ほとんどが一対一で戦っている現状、姉さんに対するぼくの優位性は無い。姉さんを抑えているお陰でこちらのセンターガードであるティアナは()()に専念できているが、ぼくへの援護を行う余裕は無い。

 ちらり、と目を向ける。そこにはビルの壁に突き立った愛刀(ゲンゲツ)

 

(あれさえあれば――)

 

 ぼくは大量のチェーンバインドを姉さんに向けて撃ち出す。その数10。不規則にうねりながら迫ってくる鎖に、姉さんは大回りに飛んで距離を取ることで対応する。

 正解だ。あれに僅かでも近寄れば即座に捕まる。下手に迎撃、もしくは紙一重で避けようとしたら拘束されていただろう。

 ぼくはもう一本の鎖を産み出し、玄月に向けて伸ばす。姉さんは予想はしていたようで、玄月に迫る鎖は容易く誘導弾に撃ち落とされる。

 

「イノセントハート!」

 

 だが、そんなことはぼくだって読めている。ぼくは右手で振りかぶったイノセントハートを、同じく玄月へ向け、投げ槍の如く投擲した。

 これには流石の姉さんも驚いたようだ。同時に「しまった」とも呟いた。イノセントハートは玄月の隣に突き刺さると、コアから伸ばした魔力で編まれた糸を操り、玄月をしっかりと()()()

 

「戻って、こい!」

 

 それを確認したぼくは、イノセントハートの石突へ繋げていた鎖を思いきり引いた。イノセントハートと、絡み付く糸に引っ張られて玄月が引き抜かれる。

 回転しながらぼくのもとへ飛んでくる玄月を左手で、イノセントハートを右手でキャッチし、手の中で回して位置を調整してから姉さんに向けて構えた。

 

「やるね、一騎。流石にそれは読めなかったかなっ!」

「最高の誉め言葉だよ。姉さんを出し抜けたなんてね!」

 

 ぼくは二つのデバイスを構え、突撃した。玄月の切っ先が、姉さんのレイジングハートで逸らされる。

 

「はあっ!」

 

 逸らされると同時、右手のイノセントハートを槍のごとく鋭く突き出す。姉さんは身体を上下反転させるようにして、突きをなんとか回避する。

 

(よし――っ!)

  

 今の動作を見て、いけると確信した。玄月を回収したぼくは、最大の難関を乗り越えたも同然だ。万全の状態となったぼくは玄月で斬り込み、合間に蹴りをねじ込み、イノセントハートの穂先を活かした刺突を繰り出す。それを姉さんは確実に防いでいるが、完全に攻勢に移ったぼくを前に攻めあぐねている。

 今のぼくの実力はかなりのものになってきている。近接戦闘が最強レベルのティルクを圧倒し、以前なら敵わなかった姉さんと互角に渡り合えている。

 そんなぼくらの周囲で、複数のブラスタービットが荒れ狂う。空中で細かな機動を繰り返し、互いを射抜こうと鎬を削りあっている。どれか一つでも破壊されれば状況は変わるだろうが、インテリジェントデバイスが操るそれは微塵の衰えも見せずに撃ち合いを続けている。

 

(この状態が続けば……)

 

 現状、ぼくと姉さんの一騎打ち。デバイスのAIによる補助は無い。リソースは互いにブラスタービットへ回されている。術者へ支援する余裕が無いからこそ、ビットはなおも唸りを上げて激しさを増す。

 当然ながら、ビットを動かすだけでも魔力は消費する。こうして鍔迫り合っている間にも、姉さんとぼくの魔力はかなりの勢いでデバイスに吸い取られ、消費されていく。

 それを考えれば、先程と状況は変わっていない。

 だが、玄月を持った今ならぼくの方が有利だ。魔力量はぼくの方が多く、マルチタスクもぼくの方が()()()()()。しかし、その僅かの差があれば、姉さんが生成した魔力弾を撃ち出すより先に、その弾をぼくの魔力弾が撃ち砕くことが可能だ。

 

 だからこそ確信した。いける、と。

 

 近接まで持ち込めればぼくに分がある。昔とは違い、今のぼくの斬撃を、姉さんは微笑みながら受け流すことはできない。一貫して無表情に近い真剣な顔のまま、ぼくの動きを見逃すまいと集中している。おそらくぼくも似たような表情を浮かべているのだろう。この時のぼくらは、周りに意識など払わず、ただ互い(てき)を見ていた。これほどの戦闘だというのに、始まってから未だ互いのライフが1ポイントも減っていないのは奇跡だろう。

 そういうわけで、そんなギリギリの状態のぼくはといえば、自分でも驚くことに完璧であった。姉さんの得意の射砲撃を徹底的に潰し、距離を詰め続ける。玄月で鋭く斬りつけ、僅かに距離が開けば槍のように構えたイノセントハートで突貫し、それによって距離が埋まれば玄月とイノセントハートによる連撃で攻め続ける。

 更に――

 

「それも読めてる!」

 

 姉さんが玄月を受け止めようとして小さく展開した魔力盾を、ぼくは寸前で身体を回転させ、玄月を逸らしてかわす。

 拘束盾(バインディングシールド)による搦め手も、過去に散々食らったぼくには通用しない。何を隠そう、姉さんの近接封じの必勝パターンと言われる《拘束盾で動きを止めて砲撃》は、ぼくが開発に協力した(ぎせいになった)のだ。今になってまでそれに引っ掛かるほど、ぼくは間抜けではない。

  

「うおおっ!」

 

 マルチタスクによって誘導弾を潰し、徹底してレイジングハートでガードさせることで砲撃を撃つ暇を与えず、尚もぼくは速度をあげながら連撃を続ける。そうすることで、ぼくは完全に姉さんを追い込んでいた。

 徹底的な近接戦闘。

 そう、ぼくがやっているのはそれだけだった。

 単純と言えばその通りだ。砲撃型魔導師への対処法としては常識だ。訓練校の教科書にだって遠回しな表現で載っている。戦闘を知らない一般人ですら容易く予想がつく。

 『撃つのが得意な相手なら撃たせなければいい』、と。

 ああ、まったくその通りだとも。万人が知り得る常套手段だ。それを思い付かない奴など阿呆でしかない。

 だが、しかし。

 

 ――高町なのは(かのじょ)を相手に、誰が常套手段(それ)を可能にできる?

 

 だからこそぼくは思った。()()()、と。ぼくは奇妙なまでに冷静だった。先ほどまでの激昂は無い。姉さんは次第に防御を崩すだろう。このまま続ければ確実にぼくは姉さんを打ち砕く。イノセントハートがしくじることは無い。レイジングハートの操るブラスタービットを落としはしないものの、逃すことも落とされることも無い。

 状況は変わらない。横槍が入るよりも先に、彼女を墜とす。

 そして予想通り、ぼくはとうとう姉さんの防御を抜いた。構えられていたレイジングハートを打ち払い、がら空きの胴体へ向けて玄月を構えた左腕を引き絞る。勝利を確信した。この突きを皮切りに、ぼくは姉さんを切り刻むだろう。2500のライフを削り切るのに5秒もいらない。

 唸りをあげながら玄月を突き込み、

 

「がはっ――」

 

 ぼくの左肩に()が突き立った。あまりの衝撃に左腕が跳ね上がり、玄月が手を離れて飛んでいく。凄まじい威力にライフが1500持っていかれた。残り700。

 

「なっ……」

 

 突然の出来事によるぼくの動揺を見逃さず、姉さんは即座にレイジングハートを構え、

  

「バスター!」

 

 砲撃でぼくのライフを消し飛ばした。ライフが0となったぼくは戦闘不能となり、ゆるやかに落下していく。

 

(なっ……)

 

 信じられない思いで左肩を見る。

 それはまぎれもなく《矢》だ。普通の物よりシャフト――しかも金属製――も矢羽(ヴェイン)も大きい。それらから考えるに、矢尻(ポイント)もかなりのものだろう。通常なら考えられないほど大型の金属の矢。それがぼくの肩へ突き刺さっている。

 それが放たれた元を見る。姉さんの背後。いや斜め後ろ。絶妙に開いた射線を撃ち抜いてきた、この矢を放ったもの。

 そこには。

 

 ()()()()()()()()()()()()が立っていた。

 

「くっ、そがぁぁ――っ!」

 

 

~~~~~

 

 

「仕留めきれなかったか」

 

 ふう、と息を吐き、苛立った叫びをあげながら墜ちていく一騎(たかまち)を見やる。

 ライフを消し飛ばすには足りなかったようだ。やはり肩ではダメージの通りが甘いのだろう。胴体に当てることができればあと300はいけただろう。もしくは限界まで引き絞っていれば全て持って行けた可能性もあるが、防御を抜いて負傷させる可能性もある。

 ともあれ、高町一尉のおかげで一騎(たかまち)は戦闘不能となった。充分に貢献はできただろう。今はこれで納得しておくしかないか。

 

『ティルク、ナイス援護! ありがとう!』

「いえ。誤射せずに済んで幸運でした。弓はまだ不慣れなもので」

『大丈夫、良い腕してるよ! 将来が楽しみ!』

 

 俺の誤射発言にも高町一尉は笑みを消さずにそう答え、センターガードとして支援しやすい位置へと飛行していった。

 この際だ、残りの矢も撃ってしまおう。息をつき、傍らに突き刺していた矢を一本引き抜き、つがえる。矢に魔力を籠めると、俺の魔力が変換され、矢尻が形成される。

 次の狙いはフロントで暴れているスバル(ナカジマ)だ。指で挟んだ矢と共に、弦をギリギリと引き絞る。

 

「――ふっ!」

 

 指を離す。凄まじい勢いで矢が射出される。その矢は狙い違わず飛んでいくも、途中で茜色の魔力弾によって迎撃され、彼方へとそれていく。

 それを視認するとほぼ同時に、俺に向けても狙撃弾が来ていることに気付く。左手に握ったままの弓で打ち払い、やれやれと首を振る。

 

「まあ、同じ位置から動かなければバレるのは当然か。いや、不意打ちの一矢で突き止めたあいつを流石と褒めるべきか」

 

 当然ながら、俺を狙撃してきたのはティアナだ。この距離でも彼女の表情がわかる。狙撃をかわされた事に動揺せず、変わらず俺に狙いを定めている。

 

「さて。かの《ランスターの弾丸》相手に、見習い弓兵が撃ち合うのは愚の骨頂だな」

 

 俺は弓を左手に握ったまま、腰から片手半剣を抜いて追撃の狙撃弾を斬り払う。

 僅かな隙も見逃さぬその姿勢。味方であれば頼もしいが、敵となれば気を抜けない相手だ。

 俺はバックステップでビルの死角になるように下りると、そんな俺を追うように襲い来るクロスファイア。見えていないだろうに、当ててこようとする。

 

「大したものだなっ!」

 

 思わず笑みがこぼれる。ここで誘導弾を迎撃して(きって)はならない。弾を砕けば術者に伝わり、俺の位置が特定されてしまう。

 だからこそ、俺はすみやかに離脱することを選ぶ。ひたすらビルの陰になるように下がり続け、充分な距離をとってから大回りに回り込み――

 

「ぐぉっ!?」

 

 軌道を変えた瞬間、俺の眼前に徹甲狙撃弾が迫っていた。咄嗟に顔を逸らすが、こめかみに食らう。

 

「ぐっ……」

 

 読まれていた? この俺が? だが、そうでなければ直撃を食らうはずもない。

 考えている間も視界が回る。衝撃で方向感覚を失い、上下が反転する。

 

(このままでは――っ!)

 

 両腕を拡げ、角度を調整。何とか平衡感覚を取り戻したが、眼前にはビルの壁。たまらず、剣を振りかぶった。

 

「おおおらぁっ!」 

 

 渾身の斬撃。ビルに斜めの線が入り、ずり落ちていく。その僅かな隙間に身体を反転させながら潜らせ、ビルの内部に無理矢理着地した。

 ビルの上部がゆっくりと落ちていく。その間に体勢を立て直す。あまりにも精確なヘッドショットでライフが2000持っていかれ、残り1000まで減少している。フル回復してもらったばかりだと言うのに、これではルーテシア(フルバック)に申し訳が立たん。

 

「やってくれたな……ティアナ」

 

 ビルが完全に横転する。そこから露になった外部の風景。

 その風景の中に悠然と立つ、クロスミラージュを携えたティアナ。かなりの距離がひらいていると言うのに、油断無くこの俺に銃口を向けている。 

 俺は剣の切っ先を遠く離れたティアナへ向けた。

 生憎だが、俺にとってこの程度の障害はどうということはない。離れているなら近付けば良いし、弾が飛んでくるなら斬り捨てれば良い。

 だが、それは彼女もわかっているはずだ。だから動けない。だから撃てない。

 撃たずに狙う行為(それ)が、なによりも俺に対する牽制になると知っているから。

 後の先を取ることができぬ剣士など、この手練れ達の中ではなんの役にも立たないからだ。

 

「だが――」

 

 思い直すとしよう。

 

「手段があるなら、やはりやるべきか」

 

 俺は弓を使いはじめて未熟ではあるが。

 

射貫(いぬ)くとしよう」

 

 狙撃において格上相手だからこそ、やる価値がある――っ!

 

「お相手願おうか、ティアナ・ランスターよ」

 

 俺は剣を床に突き立てると、空いた右手で弓に矢をつがえた。

 

 

~~~~~ 

 

 

 爆発。爆熱。爆裂。どう表現したものか。ともかく、そういったものが大量に発生している。端から見れば、戦争でもしてるのかと思われるかもしれない。

 その元凶である俺とレイナは、どれだけ時間が経とうと、真っ向から殴り合っている。

 

「「はぁっ!」」

 

 拳を繰り出した俺の右腕に絡み付くかのように身体を反転させ、レイナは足刀で俺の首筋を刈る。

 俺は大きく身体を仰け反らして避けるも、レイナは更に回転して踵を降り下ろす。

 

「こんのっ――」

 

 俺は左手でそれを掴んで受け止めると、身体のバネを使って跳ね起きるように前宙し、その勢いのままレイナを放り投げた。

 

「きゃっ――」

 

 短い悲鳴と共に吹き飛んで行くレイナは、放物線を描きながら川のど真ん中へ着水した。

 

「くっそ……きついな」

 

 今のではダメージは入っていないだろう。あの角度と速度で川に投げても衝撃はほとんど無い。

 2200だったレイナのライフを1000まで削ったのは良いものの、1000だった俺のライフはもう600まで減少している。

 

(一発もらったら終わるな……)

 

 大きく息を吐き、呼吸を整えながらレイナが沈んだ川面を見る。

 波紋が広がり、泡が浮かんでいるその真ん中。そこが凄まじい爆発を起こして川の水が爆散――いや、()()した。

 

「……ははっ」

 

 ああ、まったく。凄まじい水蒸気。流れてくる川のど真ん中が、ぽっかりと空いている。

 レイナという(ねつ)によって、周囲の水が全て蒸発している。それなりに広い川だというのに、あそこだけ川底が見えている。

 ジュウウウ、という水が弾ける音が鳴り響く。その中央でレイナは熱に長髪を揺らめかせながら、両の足でしっかりと立って俺を見据えている。

 

「まったく、まったく」

 

 末恐ろしいな、と呟いた。レイナが川底を蹴り、回転しながらの跳躍で俺へと肉薄する。

 跳躍の慣性と、回転の遠心力、そして魔力による爆発と加速。それらを余すことなく乗せた、振り降ろすような回し蹴り。

 流石にそんなものを迎え打つほど俺は馬鹿じゃないし、自惚れてもいない。あんな一撃を打てば隙だらけになることは必至。いくら妹に甘いとはいえ、それを見逃すような俺ではない。

 その場からステップで飛び退き、レイナの蹴りをかわす。レイナの蹴撃は地面を砕いた。衝撃に地面が割れ、土が粉状になって舞い上がる。チャンスだ。

 そして、油断なく構えていた俺の腹部に、レイナの爪先が突き刺さった。

 

「かっ――」

 

 あばらの下を精確に突いてきた。思わず身体が曲がる。腰が引け、くの字に身体が曲がる。

 そして腹に刺さっていた爪先が跳ね上がり、俺の顎を蹴りあげた。

 

「で――やぁっ!」

 

 気合いの入った掛け声。蹴りあげた足を地面に打ち付けるように踏みしめ、それを支点にもう一方の脚による後ろ回し蹴り。それは咄嗟に防ごうとした俺の腕ごと、脇腹を蹴り上げた。衝撃が余すことなく俺へと伝わる。腹にめり込むほどの強烈な蹴り。なまじ踏みとどまろうとした分、その全てが俺へと注ぎ込まれる。

 だが、終わりではなかった。

 

「――エクスプロージョン!」

  

 めり込んだ踵が、その言葉によって焔をあげる。爆発が起こる。

   

「がぁはっ!」

 

 俺はたまらず吹き飛ばされる。二度ほど地面を跳ねたのち、更に転がってなんとか俺は止まった。凄まじい三連撃。いや、四連撃か。三連続の足技に、止めの零距離爆破。滅茶苦茶な威力だった。当然ながら俺のライフは0。今のだけで2500分のダメージ。オーバーキルも良いところだ。

 なのに。

 あれだけの爆発を起こしたというのに、レイナはその反動を身体を回転させることによって受け流していた。周囲に深く足がめりこんだ跡があるが、あの場からわずかたりとも動いてはいない。

 そして、レイナは大きく息を吐きながら構えを解き、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。

 

「ごめんねお兄ちゃん。私の勝ちだよ」

 

 俺のとなりにしゃがみこむと、にこりと笑って言った。

 俺は行動不能となって動けないまま、口だけで問い掛けた。

 

「最後の――」

「ん?」

「最後のありゃ、なんだ?」

 

 川から跳ねてきた蹴撃。あの一撃は間違いなく、致命傷を負わせるためのものだったはずだ。避けられることをわかっていたとしても、微塵も勢いは緩んでいなかった。確実に隙ができたはずだ。

 なのに、レイナは間髪入れずに俺を蹴りつけた。あれは一体なんだったのか。

 そう言ってレイナを見た。

 レイナはくすっと笑った。

 

「そりゃ、あそこで大振りの攻撃をしたら避けられるのはわかってたよ? でも、避けられるかどうか、っていうのは問題じゃなかった」

「なに……?」

「だってあれ、()()()()だもん」

 

 どうだ、と言わんばかりの笑顔。

 踏みこみ。

 あの跳躍も、あの回転も、あの焔も。

 単純に地面に降り、蹴りの連撃を繰り出すために()()()()()()()ということか。

 俺も思わず笑った。それなら隙など出来るはずもない。踏み込みと同時に打撃が来るのは当然のことだ。

 

「大したもんだ」

「でしょ」

 

 俺はふう、と息を吐いた。

 身を翻し、颯爽と駆け抜ける自慢の妹を見送りながら。

 

 

~~~~~

 

 

「ぐっ!」

 

 最後の一矢を射ると同時、俺の左手に狙撃弾が直撃する。

 左手の指がいかれた。拳を握ることができず、弓を取り落としてしまう。

 

「戦況は不利……っ」

 

 ジュン(あいつ)がやられたとなれば、相手をしていたレイナもすぐにこちらへ向かってくるだろう。ただでさえ、他のメンバーがどのように動いているのか把握しきれていないのだ。これ以上の不確定要素はまずい。

 

「ティルク、いったん退いて!」

「了解!」

 

 高町一尉からの指示に、迷うことなく後退する。

 そうしながら、俺は呆れて頭を振った。元強行偵察課のエリートである俺達が、ここまで容易く倒されるとは。

 まあ、そのうちの一騎(ひとり)は俺が射落としたのだが。それでも真っ先に脱落したのは事実だ。情けない事この上ない。

 

「――おいおい」

 

 ああ、まったく。

 

「勘弁してくれないか」

 

 気付かぬうちに回り込まれていたらしい。

 退散しようと飛行していた俺の頭上から、話に聞く《覇王》の少女が急降下してきた。

 

「はあぁっ!」

 

 裂帛の気合い。回転しながらの踵落とし。

 

「うおおっ!」

 

 俺は右腕だけで剣を振るい、迎撃。なんとか防ぐことが出来たものの、地面に叩き落とされた。

 凄まじい衝撃だ。これほどの打撃を受けたのは久し振りだ。かなりの腕であることは疑いない。

 

「貴方を帰してはならないと、ティアナさんが」

 

 短く告げ、確りと地面を踏み締めて拳を構える。

 なるほど、ここで潰すつもりか。ティアナの作戦は徹底している。俺を逃せば驚異になるとわかっている。

 踏み込みの強い《覇王(かのじょ)》を選んだのは正解だ。この距離は既に彼女の間合いだろう。

 飛ぼうとすればその隙を打ち抜かれる。

 ふう、と呼吸をした。右手に握った剣の切っ先を向ける。

 

「ティルク・アローン。騎士だ」

 

 互いに名前などとうに知っているが、俺の名乗りを受け、彼女も口を開く。

 

「覇王流、アインハルト・ストラトスです」

 

 俺は剣を振り払うように構え直し、

 

「いざ――」

 

 アインハルトがぐっと脚に力を込め、

 

「――参ります!」

 

 

~~~~~

 

 

 お兄ちゃんを撃破した私に、ティアナさんはすぐにアインハルトさんの援護に向かって、と言ってきた。ティルクさんを倒すため、単身敵陣の真ん中へ突入させたらしい。

 普通のチーム戦ならティアナさんもそんなことはさせないだろうけど、相手が相手だ。なりふり構っていたら全滅させられる。

 

「すぐに行かないと――」

 

 全力で地面を疾走する。走ると言うより、爆発によって跳ぶような移動。自分で言うのなんだけど、この速度についてこれるのはギンガ姉さんを筆頭とした()()()()()()()()ぐらいのものだ。私にこの方法を教えてくれたお兄ちゃんですら、今では「レイナの方が速い」と太鼓判を押すほど。

 

「一閃必中っ!」

「ッ――ヴィヴィオ!?」

 

 そんな私を止めたのは、虹色の魔力砲だった。

 

「ディバインバスター!」

「エクスプロージョン!」

 

 私は即座にそれを炎熱砲で迎撃。私の炎とヴィヴィオの虹色がぶつかりあい、爆発を起こす。

 ここでヴィヴィオが私を狙ったのは、間違いなく足止めのため。ティルクさんがやられる可能性を少しでも排除するための、なのはさんの策だろう。

 

「はあぁっ!」

 

 遠間からのヴィヴィオのハイキック。私は地面を這うように姿勢を下げてそれを避け、四つん這いの状態から突進。低い姿勢のままから瞬時に跳ね上がり、顎を狙ってのアッパー。

 ヴィヴィオは仰け反るように避ける。間髪置かず、私は更に二連の回し蹴り。ヴィヴィオは一発目を避け、二発目は避けきれずに腕で防いだ。

 ヴィヴィオのライフが50減る。いつの間に回復していたのか、残りライフは1950だった。

 私の残りライフは1000。ヴィヴィオのライフは私に比べてほぼ二倍だ。分が悪い。

 

――でも、逃げるなんてもったいない。

 

 私は拳同士を打ち付け、焔を纏う。

 ヴィヴィオはそんな私を見て、にこっと笑った。

 それに対し、私も笑う。きっと私の顔は、人が見ればお兄ちゃんのように()()()()()()()()、とでも表現されるんだろう。

 そう、逃げるなんてもったいない。

 だって――

 

「倒すよ、ヴィヴィオッ!!」

「うん――受けてたつよ、レイナッ!」

 

 ――ヴィヴィオとの真剣勝負の(こんな)機会なんて、めったに無いんだから。




正直やらせたいバトルが多くてまだ続きますが、この二組で最後です。バトルしかなかった回ですが許してください。


〇一騎となのは
 全力で接近戦に持ち込むことができれば一騎の方が優勢です。なんだかんだで彼は強くなっています。
 ただ、ここまで圧倒したのは初めてなので、なのはさんも今後対策してくるでしょう。ここでなのはさんを倒せなかったのはかなり悔しかったようです。


〇ティルクの大弓
 とうとう奴が弓を持ちました。魔力弾を撃てない彼ですが、弓と矢というデバイスなら扱うことができます。
 弓とは言いますが、剣に使われるものと同じ金属で作られているため、重いし()()()こともない、およそ常人では矢を飛ばすことが出来ない頭の悪い構造の弓です。ティルクは常人ではないので使いこなせます。
 弦と矢尻は所有者の魔力を変換して生成されます。変換はデバイスがしっかりやってくれるので、無能力者のティルクでも安心。
 命中率は十発中六発くらいのぼちぼちな確率です。なのはさんに誤射していたらなのはさんのライフは吹き飛んでいたかも。


〇ティルクとアインハルト
 万全であればティルクの圧勝ですが、片手が使えないとなるとどうなるか、という感じのあれです。強キャラ同士がぶつかる感じの展開好きです。


〇レイナとヴィヴィオ
 同じストライクアーツで、カウンターヒッターとインファイターの真っ向勝負です。レイナの戦い方を頑張って考えていた時代がありましたが、今になってみると、まあ良い感じの対比になったのではないかな、と思います(自賛)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。