恐れることは何もない。
君がもう、私が守らずとも良いほどに、遙か高みまで強くなったからだ。
哀しむことは何もない。
願いも、寂寞も、憎悪も、恩讐の果てに灼き尽くされてしまったからだ。
私を止めるものは、もう何もない。
時は満ちた。
あとはすべてを、壊すだけだ。
「昨日の午後9時頃、××市空座町の西端に位置する県営アパート集合地域において、大規模な火災が発生しました。これによりアパートのC棟、D棟、E棟に住んでいた住民およそ160名が死亡、また行方不明になっています。火元はD棟の駐輪場付近と予想されていますが、原因は未だ不明とのことです。
また今回の火災は、かなり大規模なものであったにも関わらず、隣辺のB棟やF棟に全く火の手が回らなかったことや、多くの被害者の遺体が著しく損壊していたことなど、不可解な点も多く、災害研究者達は『風向きを巧妙に利用した殺人放火なのではないか』などと事件性にも言及しています……」
卍
いつもと変わらない朝だった。
陽を翳らせる雲は一つもなく、初夏の突き抜けるような太陽の日差しが、学校へと吸い込まれていく生徒達を容赦なく照らし出し、うだらせている。
「おぉっはよぉ~、いっちごー!!」
教室のドアを開けると、このクソ暑い日にどういう体構造をしているのか、朝っぱらからテンションだだ上がりの啓吾が飛びついてきた。
「おーっす」
それを軽い手さばきで撃沈してやってから、教室に入る。中には年々厳しくなる夏の暑さにも負けず、もう結構な人数の生徒が居揃っていた。
「おっす水色」
「おはよう、一護」
窓際の机に寄りかかっている水色にも挨拶すると、奴はいつもの女ウケする甘い表情で笑い返して見せた。
「おっす一護! 昨日『逃走中』やってたけどさ、見た? あんた」
「おぉ……いや、見てねえ」
啓吾も負けちゃいねえが、いつきもいつきで元気なもんだ。毎度のように井上に抱きつこうとした本匠を、羽交い締めにしつつ質問してくる。
俺はそれに答えながら、身体をひねって教室の出入り口に目をやった。
間もなくドアをぶち破るようにして教室に入ってくるであろう、クラスメイトのことを思い浮かべながら。
「昨日は伊吹が来たからな」
「おぉーっす!!」
そら来た。
威勢の良い声と共に、だぁん、と言うけたたましいドアの音が耳に飛び込んでくる。鬱陶しい暑さをさらに増長させるような音に、深くため息をついた。
ったく、どいつもこいつも朝っぱらからやかましいことだ。
特にコイツは。
「っあーーーっついなぁ、今日も!! お、おっす啓吾、水色!!」
「おおっす、伊吹!」
「おはよう」
そいつはタオルを首に巻き、男のようながさつな仕草で啓吾と水色に手を振りながら、教室に入ってくる。
奴は俺の同級生――白銀伊吹だ。
数年前、私が夢小説にハマった頃から温めていた物語です。
まだ詰めが甘い部分もありますが、頑張って書いていこうと思います。
よろしくお願いします!