ハリケーンブロッサム   作:びしゃもん

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第18話です。
前回は嵐花が泣き、鞠莉が泣きの話でした。
泣いた後には何があるのか…
どうぞ!


あなたのために

ーーー嵐花・鞠莉・梨子:大瀬崎ーーー

 

3人は床が抜けたダイビングショップで小休止を取っていた。

ダイビングショップのインストラクターは、「これはこれで良いモニュメントになる」と言って笑っている。

鞠莉の補償の話も断っていた。

 

(この人には悪いけど…相当変わってるわね…。)

 

梨子は寛大な措置に感謝しつつ、そんなことを思っていた。

 

「入り口だし、ボンベの頭も良い感じに見えてるからこのままでいいんだって…。考え方がアーティスティックね…。」

「いや…そう言う鞠莉ちゃんは…。」

「?」

「いや!なんでもない…!ハハ…。」

 

2人の話をそばで聞いていた梨子は、その金銭感覚にめまいを覚えていた。

鞠莉が取り出したタブレットの画面には、見たこともないカタログや数字が大量に出ていた。

 

(さすが…次期当主…。)

 

2人から離れ、とんでもない世界に思いを馳せている梨子のもとに、嵐花が近づいてくる。

 

【梨子ちゃん、】

「ん?なに?」

 

先ほどまでとはうって変わりはっきりとした言葉づかいで嵐花は話す。

梨子はそれに気づく素振りもない。

 

【鞠莉ちゃんは?】

「え?鞠莉ちゃん?…えと…あ!あっちだよ。」

 

梨子は入り口付近でくつろいでいる鞠莉を指差す。

 

【ありがとう!】

 

嵐花は鞠莉の方へ近寄っていった。

 

ーーー嵐花・鞠莉ーーー

 

【鞠莉ちゃん…ごめんなさい。】

「へ?」

 

突然かけられた言葉に、鞠莉は驚いて振り返る。

嵐花はさっきまでの子供っぽさが無く、もう泣きべそもかいていない。

そして何よりーー

 

(花丸……じゃないわね…。まだ…)

 

雰囲気が花丸に近くなっていた。

 

(早くなんとかしなくちゃ…。でも…)

 

それは分かっているが、どうすればいいのか分からない。

今は自分のやり方を信じるしかなかった。

 

【梨子ちゃんを危険な目に遭わせちゃった…】

「あぁ…そのこと…。」

 

嵐花の話はさっきのことだった。

もう全てを出し切った鞠莉は、特に嵐花を責めようとも思わなかった。

 

「梨子にはもう話したのよね?…だったら、もう大丈夫よ。私が嵐花を責める理由は無いわ。」

【でも…】

「?」

 

嵐花が一瞬言い澱む。

 

【梨子ちゃんは鞠莉ちゃんの…大切な人…だから…。】

「…。」

 

真剣な顔の嵐花を見つめる鞠莉。

その表情を確かめてから、口を開いた。

 

「嵐花。昨日した約束、覚えてる?」

【…うん。】

 

今なら真っ直ぐに自分の想いを伝えることができるーー

鞠莉はそう確信した。

 

「『遊んであげたら、言うことをひとつ聞いてくれる』なんて…遠回しな言い方だったわ。今、私が嵐花にお願いしたいことはひとつなの。

ーー花丸を返して欲しい。」

【…うん。】

 

鞠莉が願うのはたったひとつーー

それを聞いて嵐花はひとつ頷くが、表情は苦いままだった。

 

「花丸も私にとって…ううん。Aqoursのみんなにとって大切な人なの。私たちは1人でも欠ければ『Aqours』ではいられなくなる…。それがとても怖いの…。」

【うん…。】

 

嵐花の顔つきが変化する。

苦悶の表情から決意の表情へ。

 

「だからーー」

【鞠莉ちゃん。】

 

鞠莉の言葉を制して、嵐花は口を開いた。

 

「…なに?」

 

多少の緊張感を保ちながら、嵐花は話し出す。

 

【それは私にはできないよ。】

「えっ………。」

 

鞠莉の顔が一瞬で疑念と戸惑いに包まれる。

それを嵐花は真っ直ぐに見つめていた。

 

「どうして…?だって、今までだって何度か花丸は表に出てきてた…。私たちを助けてくれたよ…?だから、きっとーー」

【私には!!できないの…。】

 

うろたえる鞠莉の言葉を遮る嵐花。

 

【もう…一緒にいすぎたの。私にはどうすることもできない…。

何かできるとすれば…それはこの子の意志。その『あくあ』?のみんなと一緒にいたいと、強く願えばあるいは…。】

「そんな…。」

 

嵐花の言葉に肩を落とす鞠莉。

いよいよ自分が何をすべきか分からなくなってしまった。

 

【でも…まだやりようはある…。】

 

ここで嵐花が言葉を切る。

鞠莉のすがるような表情を見ながら嵐花は言葉を続けた。

 

【あの子が出てきてくれるのは、私が風を起こした時…。だから、その時に強く呼びかければ戻ってこられるかもしれない…。】

「風を起こした時…?」

 

鞠莉はさっきまでのことを思い出す。

嵐花は酸素ボンベをいとも容易く持ち上げていた。

普通フライボードがクルーザーごと砂浜まで飛んでくることなどありえない。

つまりーー

 

「その不思議な力を使えば花丸が出てくるっていうことね…。」

【そう。そういうこと。】

 

嵐花は大きく頷く。

少し希望が見えてきて、鞠莉の表情が明るくなる。

それを見て、嵐花は少し寂しそうに笑った。

 

「そうと決まれば……あれ?でも…。」

【?】

「そんなに力を使って、あなたは大丈夫なの?その…『風』?にも限りがあるんじゃ…。」

 

力には限りがある。

それは当たり前のことだが、聞かずにはいられなかった。

 

【ううん。そこは大丈夫だよ。それも含めて『私』みたいなものだから…。】

「ふーん…?」

 

嵐花は楽しそうな笑顔で鞠莉の疑問に答える。

 

【それでね、鞠莉ちゃん。】

「うん。」

【私から改めてお願いするね。

ーー鞠莉ちゃん、私と遊んでください!】

 

そう言って、嵐花は鞠莉に手を差し出す。

鞠莉は一瞬手を出すことを躊躇したが、嵐花とのやりとりを通して自分の考えを改めた。

 

(嵐花は本気だ…。だから私もそれに応えなきゃ…。)

 

嵐花の手を握る鞠莉。

 

「分かった。…でも、手は抜かないわ。覚悟してね?」

【うん!鞠莉ちゃんこそ!…油断してたら吹き飛ばしちゃうからね♪】

「うっ…それはやめてほしいデース…。」

 

そんなことを言い合いながら笑う2人。

そんな2人を梨子は嬉しそうに見つめていた。




第18話『あなたのために』いかがでしたでしょうか。
嵐花が花丸に馴染んできましたね。今までの子供っぽい嵐花もそうですが、姿形、声も花丸なので違いと言えば急に文章力が上がったことくらいでしょうか。
さて、これで和解した鞠莉と嵐花、次回、何をして遊ぶのか?
お楽しみに〜。
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